ワーカーズトレンド

より軽く、より強靭に。自動車の進化とともに変わるボディ素材

「自動車のボディは鉄製」……。 これまではこの考え方が常識だった。

しかし、これからの自動車では、なかなかそうとも言えなくなりそうだ。燃料やエンジン性能が進化すると同時に、ボディに使われる材料もさまざまに変化しているのだ。

自動車のボディ素材は、これからどのように変化していくのだろうか。

鉄が主流だったこれまでの自動車の歴史を振り返るとともに、最新技術を投入したこれからの自動車のボディ素材について調べてみた。

今日の自動車の始祖「T型フォード」

今日のモータリゼーションの起爆剤となったのは、1908年に発売開始となったアメリカフォード社の「T型フォード」だ。ガソリンエンジンで走るこの20馬力の車は、エンジンを手回し式クランクで始動させる典型的クラシックスタイルの自動車。1900年代初期を舞台とするアメリカ映画などでよく目にする形だ。このT型フォードは大きなモデルチェンジをしないまま、1927年までに累積生産台数が1500万台にものぼった。

その後、自動車がどんどん近代化されていくと同時に、自動車のデザインがスタイリッシュになっていくに従って、カラーバリエーションも増えていく。さらには、割れても破片が飛び散りにくい安全ガラスや自動ワイパーの開発など、自動車の安全性、機能性、デザイン性が三位一体で進化していくことになる。

こうした進化に伴い、ボディに使われる材料も変わっていった。当初のT型フォードは、木製でフレームを作り、それを鋼板で覆って成型するという手間のかかるものだった。それが後年は、全金属製の閉鎖型ボディに移行。この変化は自動車の量産のためには不可欠な変化だったかもしれないが、これがT型フォードにとって重荷になっていったことも事実だ。

近代化により終焉を迎えた「T型フォード」

もともとT型フォードはオープンカーとして設計され、世に出た車だ。そのためシャシーが軽く作られており、重い全金属製の閉鎖型ボディを乗せて走ることには無理が生じてきた。それでなくても電装部品が追加されたり、内外装に手が込んできたりと、徐々に重量を増してきていたからだ。そのうえさらに、全金属製の重量のあるボディまでが加わることで、軽量の車を想定した20馬力のエンジンではまったく合わなくなってきてしまったのだ。

その頃には、他社から性能が優れた自動車も多く登場し、スローペースでしか走れないT型フォードは他車のスペックと比較して、大きく見劣りするようになった。T型フォードが終焉を迎えたのはそのような理由もあっただろう。

自動車には、安全、環境、燃費、近年ではリサイクルや情報化など、多くのキーワードが求められる。さらにHEV(ハイブリット車)やEV(電気自動車)の登場によって、今後はますます自動車を構成する個々の材料に関して複雑さが増すことになる。

常に進化し、変化が必要とされるこれからの自動車ボディ素材について、さらに探っていこう。

モノコックシャーシ登場で、鉄製ボディ一辺倒に

これまでの自動車ボディの流れを見てみると、鉄製ボディが主流だったことは間違いない。しかし、自動車の黎明期から常に鉄ばかりが使われてきたわけではない。T型フォードに例にとるまでもなく、木を採用していたものは多かったし、大量生産品以外ならFRP(繊維強化プラスチックFiber Reinforced Plastics)や、アルミニウムなどの素材も使われてきた。

それは、古い自動車がフレーム(台車)とボディが別々の構造だったためだ。フレームの上にボディが乗せる構造のため、軽さが求められ、なおかつ強度はさほど求められていなかったのだ。しかし、これを大量生産するとなると、その加工に手間やコストがかかる点が課題だった。

ボディの素材として鉄が主流になったのは、フレームとボディを一体化させたモノコックシャーシが登場したからだ。これならフレームとボディを分けて生産するよりコストを低く抑えることができ、なおかつ手間も少なくて済む。しかし、その反面、加工は複雑化することになる。そのためにも、加工しやすい素材として鉄が用いられるようになったというわけだ。

車重軽量化に向け、ボディ素材も見直しへ

前項のような理由から、長きにわたって「自動車のボディは鉄製」というのが常識となっていた。

しかし、その間にもエンジンやサスペンション、電子装備品など、自動車の装備はどんどん進化。さまざまな部分が進化していくと同時に、自動車はどんどん重量を増していった。つまり、新型車が出るたびに自動車は確実に重くなっていったことになるのだ。

ボディも例外ではなく、安全を重視して衝突時の剛性を高めていくたびに重量を増していった。実は、現代の自動車の中で最も重量を占めるのがボディだ。エンジンが自動車総重量のおおむね10%程度なのに対し、ボディの重さは20%ほどにもおよぶ。

一方、ガソリン価格が高騰を続ける近年、自動車メーカーが力を入れるのは自動車の燃費性能の向上だ。もちろん、環境問題が注目される昨今の社会的なムーブメントも、その大きな理由のひとつに挙げられる。

そして、燃費向上のためには、次の点が必要になってくる。

●エンジン自体の燃費性能を上げる

●自動車のデザインを工夫して空気抵抗を減らす

中でも最も重要なのは、車両重量の軽量化だ。結局、いちばん重いボディをいかに軽量化するか……ということに行き着くのだ。とはいえ自動車からエアコンを外すわけにも、エアバッグを外すわけにもいかない。カーオーディだって必要だし、シートを安価な仕様にして簡易化するわけにもいかないのだから。

高強度のハイテンとアルミニウムに注目

これまで、自動車のボディは鉄製が当たり前だった。けれども、ひと口に鉄といってもさまざまな種類がある。これまではモノコックボディの採用により、加工しやすい軟らかい鉄が多く使われてきた。軟らかいということはつまり、衝突したような場合には大きく損傷してしまうということ指し示す。これでは安全性の確保は難しい。

このため近年では、より高い強度の鉄が多用されるようになってきている。そのひとつが「ハイテン(High Tensile Strength Steel)」と呼ばれる高張力鋼板で、これなら少ない量でも同じ強度を保てるメリットがあるうえに、自動車重量の軽量化にもつながる。自動車の開発現場では、私たちには同じ鉄製ボディに見えるが、強度の違う先進素材を開発・採用して、車重の軽量化、燃費向上にしのぎを削っているわけだ。

また近年は、アルミニウムを使用する自動車も目立ってきている。アルミニウムは鉄よりも軽量であることに加え、さまざまな形状に加工しやすい特徴を持っている。しかし、鉄とは違って溶接が難しいため、これまでのモノコックシャーシにはなかなか採用されてこなかった背景がある。

しかし、近年では接着剤でアルミニウムを接着する技術が進化し、溶接しなくても自動車ボディに採用されることも多くなっている。現在では、多くのメーカーがボディの一部にアルミニウムを使用するようになっているが、その代表ともいえるのがランドローバーの「レンジローバー」だ。「レンジローバー」はボディをすべてアルミニウム製にし、その結果、総重量を最大で420kgも軽量化することに成功。これにより、燃費性能が大きく向上していることは言うまでもないだろう。

FRPが、ボディの軽量化を実現

アルミニウム以外にも、近年注目を集めているボディ素材がある。

FRP(繊維強化プラスチックFiber Reinforced Plastics)、中でもCFRP(炭素繊維強化プラスチックCarbon Fiber Reinforced Plastics)だ。

軽量で耐久性がよいためFRPの特性から、バスタブなどの住宅設備機器、公園の遊具、ベンチ、ゴルフクラブのシャフト、釣ざお、小型船舶の船体、航空機の機体、自動車・鉄道車両の内外装、医療機器など、さまざまな領域で幅広く使われている。

その代表格となるCFRPは、鉄やアルミなどの金属と同じ強度・剛性を持ちつつ、より軽量化が可能な特徴から、スポーツ・レジャーから航空・宇宙まで幅広い分野で利用されている。しかしながら、まだまだ高価であることは否めない。

高級車のボディに使用されたFRP量産がカギ?

FRPは、これまでもスーパーカーなど、一部の高級車のボディに使われてきた。つまり、一般車ではなく、ごく少量のこだわりの自動車に使われてきた素材に位置づけられていた。これを大量生産の一般車に採用するとなると、かなりハードルが高くなる。現在、量産車の位置づけでボディにCFRPを採用しているのは、BMWの「i3」などごく一部だ。

しかし今後、HEV(ハイブリット車)やEV(電気自動車)などが自動車の主流になっていけば、FRPの量産技術はそれに付随する次世代技術の核となるはず。こうした点からすでに自動車業界では激しい開発競争が繰り広げられている。BMWだけでなく、今後は他メーカーもFRPボディを積極的に採用していくことは間違いないだろう。

ボディの軽量化により、燃費性能や走行性能は大きく向上していく。燃費性能の向上をめざして軽量ボディが進化してきたわけだが、それに伴って運転という作業自体も魅力的になっていくはずだ。新素材のボディが、自動車のまたひとつ、新しい進化の形を見せることになる。

作業服、ユニフォームを買うならWAWAWORK(ワワワーク)

WAWAWORK(ワワワーク)は、日本最大級の作業服の通販サイトです。

WAWAWORK(ワワワーク)では、オシャレでかっこいい最新の作業服・作業着・ワークウェアから、機能的で便利な定番のワークアイテムまで、幅広い品揃えの商品を激安特価でご提供しているほか、刺繍やオリジナルロゴ入り等のカスタムも対応しております。

作業着、ユニフォームをお探しであれば、通販サイトWOWOWORK(ワワワーク)をぜひご覧ください。webサイト:https://wawawork.work/

同じカテゴリーの記事

【メカの秘密シリーズ】CTとMRIの仕組みはどう違う?

【メカの秘密シリーズ】タッチパネルはどうして触れただけで反応するの?

【メカの秘密シリーズ】エスカレーターの階段が消えるのはなぜ?

【連載シリーズ】全国47都道府県の伝統的工芸品を巡る《その11》

【連載シリーズ】全国47都道府県の伝統的工芸品を巡る《その10》