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【メカの秘密シリーズ】タッチパネルはどうして触れただけで反応するの?

銀行や駅などにあるATMや自動券売機をはじめ、スマートフォン、タブレット、デジタルオーディオプレーヤー、携帯ゲーム機、コピー機、ファックス、カーナビなど、さまざまなデジタル機器に使用されているタッチパネル。液晶パネルのような表示装置の上を触れるだけであらゆる操作ができるディスプレイは、いまや私たちの生活には欠かせないものとなっています。

いつの間にか私たちの身のまわりにあふれていたタッチパネルですが、その使い方に困ったという記憶はありません。初めて触れる人でも、何の問題もなくちゃんと操作ができますね。そこがタッチパネルのすごいところです。でも、タッチパネルはどうして触れただけで操作できるのでしょうか。今回はそんな身近でありながら、意外と知られていない疑問を深掘りしていきます。

タッチパネルの進化

タッチパネルは「表示」と「入力」の2つの機能を、同一の表示面に備えているディスプレイです。コンピューターなどからの画像情報を表示するとともに、操作をする者がその画面に表示された文字や絵、ピクトグラムなどの点(領域)に指で触れたり、専用の入力用ペンで圧力を加えたりすることで、指示された情報を感知し、それを情報信号として出力する装置です。

タッチパネルが一般化するまで、機械のオン・オフは、スイッチを押したり、ひねったりすることで操作していました。しかし、タッチパネルはスイッチを押したりひねったりするのではなく、単に画面に触れるだけで操作できます。タッチパネルの登場によってすべての操作が容易になり、現代のあらゆる機械が大きくその姿を変えることになったのです。

タッチパネルは、1965年には論理として存在していましたが、1975年にアメリカの発明家、ジョージ・サミュエル・ハーストによって、抵抗膜式タッチスクリーン(次項で解説します)が開発されました。大きく進化したのは1995年以降のこと。実用化されたのは2000年代に入ってからのことで、タッチパネルはわずか20年ほどの歴史しかないことになります。

多くの人がタッチパネルに触れた最初の経験は、銀行のATMだったのではないでしょうか。初期の頃は表面を押すと少し凹む感触のパネルでしたが、不特定多数の人が操作する自動販売機などに使われるようになり、その存在はいつの間にか私たちの知るところとなっていきました。

さらにタッチパネルを身近にしたのは、やはりスマートフォンの登場です。タッチパネルを搭載した世界初のスマートフォン「Simon」(IBM製)が登場したのは1994年のこと。国内初のスマートフォン「W-ZERO3」(シャープ製)もタッチパネルを備えており、2005年に登場しました。さらにAppleの「iPhone」が登場したのが2007年。不特定多数が使用するところに採用されていたタッチパネルが、この頃からごくパーソナルなものに装備されるようになり、私たちの日常から切っても切れない存在になったのです。

こうした歴史から、21世紀に入って誕生した幼い子どもたちにとって、タッチパネルは日常に当たり前のように存在するものになっています。 実際に、大人が操作に戸惑うタッチパネル式のゲーム機やデジタル機器を、子どもたちはいとも簡単に扱うようになっていて、5歳の孫が祖父にスマートフォンの操作を教えてあげるといった微笑ましいシーンも、今ではよく見かけますね。

タッチパネルの代表的な4つの方式

ひと口にタッチパネルと言っても、その方式はいくつかあります。ここでは代表的な4つの方式について説明しましょう。

ATMでもおなじみの抵抗膜方式タッチパネル

「抵抗膜方式」は、銀行のATMや駅の券売機をはじめ、FA(ファクトリーオートメーション)など、多くの産業用途において採用されている仕組みです。手袋をしながらでも操作できるため、工業用機械のスイッチの操作パネルなどに使用されています。

ガラス基板状に透明な酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜フィルム(ITO透明導電膜)が2枚貼られており、2枚とも両端は電極につながれています。つまり、この2枚は接触すれば通電する仕組みで、スイッチで言えば「オン」の状態になるわけです。ちなみにITOは可視光の透過率が約90%もあります。

2枚の薄膜フィルムの間には、厚さ30ミクロン(0.03ミリ)ほどの超薄い電気を通さない絶縁体(ドットスペーサー)が挟まれています。これで通常の状態なら2枚の薄膜フィルムは触れ合わず、通電しないことになります。

このタッチパネルを上から指やタッチペンで触れると、その圧力で上の薄膜フィルムが凹み、上下のフィルムが触れ合って通電します。接触位置によって2枚のフィルムにつながれた電極にかかる電圧が変わるため、この値を測定することでタッチした位置の座標がわかり、該当した指示が機械へと伝わってコンピューターがその情報を処理することになります。

実際にはフィルムを押して通電させるので、「感圧式」と呼ばれることもあります。実際は押していますが、30ミクロンほどしか下に押していないので、指で押したような感覚はなく「触れる」感覚で操作できるのです。

最も普及している「静電容量方式タッチパネル」

スマートフォンやタブレットなどに採用され、現在、最も普及しているタッチパネルが「静電容量方式」です。この静電容量方式も、その原理自体は案外シンプルです。

タッチパネル表面(導電膜)には、電気信号を受ける物質が塗布されています。パネル四隅には電極が設けられ、表面全体には一定の電圧がかけられています。タッチパネルに指が触れると、塗られた物質によって指とパネルの間に微細な放電現象が起きます。

寒い時にドアノブなどでバチっと静電気が発生することがありますが、静電容量方式も同じ原理です。ただし、ここで起きる放電現象は人間が感じ取れないほどわずかなもの。人体に害はありません。指とパネルの間に起きたわずかな放電現象による電圧差(電流)を感知することで、タッチパネルのどの位置に触れたのかが機械に情報として伝わり、該当する指示をコンピューターが処理する仕組みです。

公共スペースでも広く使われている「超音波方式タッチパネル」

「超音波方式」は、POSやATM、キオスク端末など、公共スペースでも広く使われている方式です。抵抗膜方式の短所である見にくさを解消し、明るく視認性が高いタッチパネルを実現するために開発されました。

ガラス基板の隅に複数の発信子(圧電トランスデューサ)を配置し、パネル表面に振動として伝わる超音波表面弾性波を発信し、これは発信子の向かい側にある受信子で受けています。タッチパネルの画面に触れると、超音波表面弾性波が指などに吸収されて弱まるため、この変化を検知することで位置を特定する仕組みです。指で触ったときに振動を感じるようなことはなく、操作性のよい方式として知られています。

超音波方式と似た仕組みの「赤外線方式(光学式)タッチパネル

超音波方式と同じような仕組みですが、「赤外線方式」はパネル表面に赤外線を流し、指で触れた場所だけが遮断、あるいは吸収される変化を感知する仕組みです。超音波方式同様に透過率が高いほか、指や手袋をしたまま、あるいは通常のペンを使って入力ができます。またその構造上、パネルの大型化もでき、センサー部に直接触れないため耐久性が高いといった長所もあります。

ただし検出精度が外光の影響を受けやすく、照明が画面に強く反射したり、光沢素材などでタッチ操作したりすると、誤作動を起こしやすいというデメリットがあります。

他の方式のタッチパネル

タッチパネルには、上記の4つの方式以外にもさまざまな方式があります。簡単に触れておきましょう。

電磁誘導方式

パネル表面に流した電磁波によって座標を検出する方式です。専用の電子ペンが必要です。

音響パルス認識方式

パネル表面を伝わる音響波(タッチしたときに発生する振動)を利用して、タッチ位置を検出する方式です。

画像認識方式

イメージセンサで、タッチする指などの画像を撮影し、その画像解析結果からタッチ位置とタッチしたことを判断する方式です。

白物家電にも急速に拡大するタッチパネル

まだまだ多くの方式があり、それぞれの方式は適材適所で活躍の場を広げています。タッチパネルがデジタル家電のみならず、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電にも急速に普及し出しているのも、そんなタッチパネルの進化が影響しているのです。当たり前すぎてその存在は忘れがちですが、触れるだけで簡単に操作できるのですから、忙しい家事の負担を軽減させるには強い助っ人となりますね。

現在、タッチパネルの世界シェアは、日本と台湾が世界市場でトップを競っていますが、静電容量方式で先行した台湾メーカーが主導権をにぎりつつあるようです。これからもどんどん新しい方式のタッチパネルが登場し、世界のタッチパネル市場は拡大していくものと予想されています。

その進化には大きな期待が寄せられますが、時代の変化とともに指で触れずとも、声を発するだけで操作が可能になる家電も近い将来登場するかもしれません。ますます便利になっていく私たちの生活。その陰でエンジニアたちの熾烈な技術競争が繰り広げられていることは間違いないでしょう……。

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