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【メカの秘密シリーズ】エスカレーターの階段が消えるのはなぜ?

毎回、身近な機械の仕組みをお伝えしている【メカの秘密シリーズ】。今回は「エスカレーター」が動く仕組みについて紹介しましょう。駅やビルなど、街のいたるところで見かけるエスカレーターですが、あまりにも身近すぎてその基本構造を調べたことがあるという人は少ないのではないでしょうか。

けれども、エスカレーターにもきちんと動く仕組みがあり、事故が起きないよう何重にも安全対策が施されています。そもそもそれまで階段状だったものが、乗降口付近でスーッと段差がなくなってしまうのはなぜなのか、その仕組みをあなたは説明できますか? 今回はそんな素朴な疑問をやさしく解説していきます。

「自動階段」と呼ばれたエスカレーターの歴史

一直線で105.5m! 世界一深くて古いといわれる、ウクライナ・キエフ地下鉄〈アルセナーリナ駅〉のエスカレーター

エスカレーター(escalator)の語源は、escalade(エスカレード=ハシゴ登り、ハシゴでよじ登る)+ elevator(エレベーター)と言われています。つまり、escaladeの「escala」と、elevatorの「tor」が組み合わさってできた言葉なのです。つまり、エレベーターが先にあり、それにエスカレードという言葉が組み合わさり、(階段が動く機械を表す)エスカレーター誕生したということになります。

最初に「エスカレーター」という名前が登場したのは1859年のことで、エスカレーターは米国のオーチス・エレベーター社の登録商標で、商品名でした。日本でもエスカレーターは登録商標だったため、当初はエスカレーターという名前を使えず、一般には「自動階段」などと呼ばれていました。商標権を維持できる期間が過ぎた1950年になって、ようやくエスカレーターは一般名称として使われるようになったのですが、今ではエスカレーターの言葉はすっかり身近ですよね。でも意外なことに、その名前が一般化したのは戦後になってからのことだったのです。

実際にエスカレーターが誕生したのは、1892年のこと。ジョージ・H・ウイラーが動力で動くハンドレール(移動手すり)を考え出し、また同じ年にはジェン・W・レノが「傾斜形エスカレーター」の特許を取得しました。しかし、これらのエスカレーターは安全とは言いがたく、まだ一般に普及するだけのクオリティは備えていなかったようです。

現在の原型とも言える、踏段(ステップ)状のものが付いたエスカレーターが誕生したのは1900年で、ニューヨーク市の高架駅に設置されたものが最初と言われています。このエスカレーターは、その後50年以上にわたって現役として活躍をしました。

気になる日本に目を向けてみましょう。国内に初めてのエスカレーターが設置されたのは、東京・日本橋の三越呉服店(現三越百貨店)で、1914年(大正3年)のことでした。当初は「自動で人を運んでくれる階段」であることが大きな話題となり、多くの人がエスカレーターを見物・体験するために集まったと言われています。しかし、そのわずか9年後の1923年に起きた関東大震災によって焼失してしまいました。

エスカレーターの基本構造は案外シンプル

エスカレーターの基本構造は、案外シンプルです。簡単に説明すれば、利用者が足を乗せて立つ踏段(ステップ)をループ状のチェーンに連結し、そのチェーンをモーターで動かす仕組みです。踏段と同時に、手すりも手すり駆動チェーンを介して同じスピードで動かします。総延長の長いエスカレーターでは、傾斜直線部分に複数の駆動ユニットを設けているものもあります。

エスカレーターの踏段は多数連なっており、横から見れば大きな輪になっています。乗降口で反転して、エスカレーターの下側を通って反対側に向かっているわけです。要はスキー場にあるリフトを、縦に回転させているような構造。駅や空港などでよく見かける「動く歩道」も、もちろん同じ仕組みで動いています。街で見られるエスカレーターは傾斜角30度の直線タイプが主流ですが、これより傾斜角を大きくしたもの、途中に平らな踊り場が設けられたものなど、現在ではさまざまなエスカレーターがあります。

エスカレーターが動く速度は建築基準法で定められています。その速度は角度により異なり、以下のようなルールが主に定められています。

勾配が8度まで ⇒ 分速50m(3km/h)以下

勾配が30度まで ⇒ 分速45m(2.7km/h)以下

勾配が35度まで⇒ 分速30m(1.8km/h)以下

ちなみに、最大分速50m(3km/h)とされる勾配8度までのエスカレーターとは、いわゆる「動く歩道」のこと。体感しずらいけれど、多少の傾斜のある動く歩道もあるのです。

エスカレーターの速度は、一般的には「勾配角度30度で分速30m(1.8km/h)」というのが一つの基準となっているようです。多くのエスカレーターは一定の速度で運転されていますが、速度を変えることができるタイプもあります。

例えば、ラッシュ時の駅などでは「いくぶん速度が速くなっています」といったアナウンスが流れ、分速40m(2.4km/h)程度にスピードアップしているものもあります。混雑を緩和するために輸送力を上げるための工夫がなされているわけです。また、傾斜部だけ移動速度を乗降時の1.5倍にした「変速エスカレーター」、あるいは「傾斜部高速エスカレーター」と呼ばれるものも登場しています。

乗降口で踏段が消えてしまうのはなぜ?

エスカレーターに最初に乗った時、「踏段(ステップ)はどうして乗降口でスーッと消えてしまうの?」と誰もが疑問を抱いたはずです。実はエスカレーターが乗降口の床下で折りたたまれていると考える人も多いようなのですが、実際はそうではなく、一つ一つの踏段を導くレールに秘密がありました。

ループ状のチェーンにつながれた踏段は、レールに沿って同じ軌道上を動きます。利用者が立つ踏段の面は長方形に見えますが、踏段の一つ一つは横から見ると三角形に近い形をしています。つまり三角柱を横に倒し、その一つの面に私たちは立っているわけです。

この三角柱の左右両側に、前輪と後輪2つの車輪が付いており、一つの踏段には合計4つの車輪がついていることになります。この車輪それぞれが、片側2本ずつ別々のレールの上を走っているところがエスカレーターの最大の秘密。片側2本のレールが上下に間隔を変えることでそれぞれの踏段を上下させ、段差を作ったり平坦にしたりするのです。

利用者が立つ面を常に水平に保つためには、前輪は常に後輪より高い位置にある必要があります。この前・後輪が走る別々の2本のレールの間隔を狭めれば前後の踏段には段差が生じ、間隔を開ければ段差がなくなって平坦になるのです。

最近はバリアフリーの観点から、乗降口の平らな部分を従来の踏段1.5枚から3.0枚に増やしたり、これをさらに発展させて車椅子でも利用できるようにしたりするなど、快適性と安全性が追求されるようになっています。これも前・後輪が走る2本のレールの間隔の調整で作り出しているのです。

エスカレータに施された、さまざまな安全対策

日常的に何気なく利用しているエスカレーターですが、時折、急停止して人が将棋倒しになるなど、重大事故が発生しています。そのようなことが起きないよう、エスカレーターには利用者が安心して使えるようなさまざまな安全対策が施されています。

非常停止ボタン

エスカレーター上で異常が生じた時、このボタンを押せば緊急停止できます。通常、上下2個所に設置されており、いたずら防止のためにカバーで覆われています。

インレット安全装置

手すりの入り込み口(インレット部)に手や指などが引き込まれた時に安全装置が感知し、エスカレーターを自動停止させます。

インレットブラシディフレクター

子どものいたずらなどを防ぐため、インレット部にブラシを設置し、接触することを防いでいます。

コムライト

乗降口の足下を照らし、利用者に注意を促して安全を確保します。

デマケーションライン

踏段の周囲に描かれた黄色いライン。靴などが隙間に挟まれる事故を防ぐため、利用者が自然に踏段中央に立つような視覚効果を狙っています。

エスカレーターのマナーも変化してきた

一般社団法人日本エレベーター協会 HPより

エスカレーターの仕組みはおわかりいただけたでしょうか?

かつてはいち早く目的地に行きたいと、エスカレータ上を早足で歩く人が多くいました。そのような人のために、関東では右側を、関西では左側を開けるのがマナーなどとも言われていましたね。

しかし、急ぐあまりエスカレータを早足が駆け下りる人や、他の利用者を押しのける人など、立ち止まっている人にぶつかって事故を引き起こしかねない危険性やトラブルが指摘されています。そのため、エスカレータ上を歩くことはマナー違反とされているケースがいまや当たり前〈マナー〉になっています。

実際に、大型ショッピング施設のエスカレータでは「絶対に歩かないでください」「歩行禁止」と大きく貼り紙がされていたり、「危険なので歩かず、手すりにつかまってください」と繰り返しアナウンスが流れているケースも……。実際に埼玉県では「立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない」と定めた条例が成立しています。

誰もが安全に、快適に使われるべきエスカレーター。そんなに急いでどこへ行く……という言葉が昔流行りましたが、エスカレーターに乗っている短い間くらいは立ち止まり、それが動いている仕組みにゆったりと思いをめぐらすのも悪くないものですよ。

参考:一般社団法人日本エレベーター協会

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