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【メカの秘密シリーズ】CTとMRIの仕組みはどう違う?

新型コロナウイルスが発生して約1年半が経とうとしていますが、日常的にマスクを借用し、手洗い・うがいを励行する習慣が身についた方も多いことでしょう。こうした生活の変化からインフルエンザや風邪など、他の感染症にかかる患者数は減少しています。その一方で病院に行く機会が減り、健康診断をあとまわしにする人が増えたことによって、がんなどの重篤な病気の発見が遅れるケースが増えていることが、いま大きな社会問題になっています。

病院での検査は常に進化しています。体にメスを入れることなく人体の内側を見ることができ、病気の原因を発見する最新技術が搭載された機器は、医療技術の進歩を象徴するものといえます。今回はそうした検査機器の代表格「CT」と「MRI」について調べてみました。どちらもよく耳にする検査機器ですし、似た形状をしているものの、その内容は大きく異なります。

2つの検査機器はどのように動き、どのような仕組みで病気の原因を発見するのでしょうか。そしてまた、それぞれの検査にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。そんな知識が備われば、病院での検査もより身近なものになるはずです。

MRI、CTの脳の画像スキャンを示すコンピューター画面

CT検査って、なに?

まずはCT検査について説明しましょう。

CTとは、Computed Tomography(コンピューター断層撮影法)の略称で、レントゲン検査で使われるX線とコンピューターを組み合わせ、画像を写し出す技術のこと。体にさまざまな方向からX線をあてることで得られた透過データを、コンピューターで計算して断面像を得るのです。立体的な画像を得られるため、一枚のレントゲン写真を撮るよりはるかに正確で詳細な診断を可能とします。

CT装置は、X線管が備わったドーナツ状になっている機器の中央の穴の部分に、横たわった人間を通して検査します。そのX線管が体のまわりを回転しながらX線を照射します。X線管の向かい側には信号を受け取る検出器があり、X線管から照射されたX線は体を通過し、この検出器に入る仕組みです。つまり、体を透過したX線を検出して体の断面像をつくるのです。

最新のCT装置では、X線管は0.3秒ほどで1回転します。1秒で約3回転する速さは、一般の人が想像する以上の速さといえるのではないでしょうか。何より、X線管や検出器はそれぞれとても重量の重い装置なのですが、その重量物が約0.3秒で回転すれば、CT装置には非常に大きなG(重力)がかかり、その負荷は50Gにもおよぶと言われています。ちなみにジェットコースターで受けるGは4~5Gくらいと言われているので、その10倍のGがかかっていることに……。これは驚きの数値ですね。したがってCT装置は、それだけのGに対応できるよう検査機器自体が非常に重く、頑丈な設計になっています。

CTによってスキャンされた、医師が診断に使用するX線画像シート

CT検査のメリットとデメリットは?

メリット1 体内の臓器が重なり合わずに撮影できる

通常のX線写真、いわゆるレントゲン写真は、体を透過したX線によってフィルム上に影絵を作ります。このため体のX線写真を撮影すると、体内の骨や臓器などの部分が前後に重なり合って写ってしまい、体内の状況を詳しく観察するには難しいデメリットがありました。しかしCTは、360度方向からX線を照射して体の断面図を撮影できるので、体内の臓器が重なり合うことなく描出され、体内の状況をはっきりと認知できるメリットがあります。

メリット2  短時間で検査できる

体のどの部分でも、輪切りにしたような鮮明な画像を撮ることができるため、CT検査は脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、肝がん、膵がん、腎がん、膀胱がん……などあらゆるがん診断に極めて優れた効果を発揮します。また、通常1回の検査時間が10分以内程度と短時間で済むため、事故や急病で搬送された人の緊急検査においても活用され、CT検査を行うことで迅速な手当てや治療を施すことが可能となります。開発当初は1枚の画像を作るのに10分ほどかかっていたそうですが、最新鋭の装置ではわずか数秒で高精細な画像が撮れるように……。CT装置はその誕生から半世紀ほどしかたっていませんが、大きな進化を遂げているのです。

デメリット1 造影剤が使う必要がある

CT検査では、病変と正常組織との濃度の差(コントラスト)がはっきり撮影できないため、造影剤を使用しないと診断が難しいことから、がんなどが疑われる場合にはがん細胞をより明確に描出するため静脈から造影剤を投与します。

デメリット2 放射線被ばくのリスクがある

CT検査ではX線を体に受けるため、その放射線量に疑問を持つ人も多くいます。CT検査は、単純X線検査に比べて50~100倍ほどの被ばく量があると言われていますが、これは長年にわたってCT検査の課題とされています。もちろん被ばくは避けられませんが、この被ばくは発がんリスクにさほど大きな影響を与えるものではないと考えられています。

MRIの仕組みはどうなっている?

トンネル型と呼ばれるMRIは主に約5〜6トンの重量があり、構造上の制約で床に固定することはできない

CTの検査機器にとてもよく似ていますが、MRI検査の仕組みはCTでの検査とまったく異なります。MRIとは、Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像診断法)のことで、MRIの「M」は「マグネティック」すなわち磁石のこと。先述した通りCTは「X線」でしたので、CTでは「X線」、MRIは「磁気」である点が最も大きな違いになります。

MRIで用いられている磁気 = 磁力は、ある物質が他のある物質に引力や反発力を働かせる現象を言い、たとえば磁石のN極とS極が引っ張りあってくっつこうとしたり、S極同士、N極同士が反発して離れようとする力(磁力)を指します。なかでもMRIの磁力は、1万〜1万5000ガウスという極めて強力なもの。つまり、この強い磁力こそが体内を正確にのぞく秘密のチカラなのです。

磁力で、なぜ体内をのぞけるの?

では、どうして磁力で体内をのぞくことができるのでしょうか。人の体はおよそ60兆個もの細胞のかたまりで構成されていて、ひとつの細胞は水分、炭水化物、脂肪、タンパク質などの物質が集まって構成されています。これらの物質はさらに水素、炭素、酸素などの原子が結合してできていますが、原子はさらに原子核と陽子でできています。ちなみに、ひとつの細胞の大きさは1ミリの100分の1ほどですが、その細胞をひとつひとつ数珠つなぎに並べていくと、その長さは地球15周分相当になると言いますから、この点だけでも人体の素晴らしさと不思議に満ちているといえますね。

細胞はいくつかの原子が結合していると紹介しましたが、なかでも水素の原子核は陽子ひとつで構成されており、これを「プロトン」と呼びます。プロトンは通常、細胞内でバラバラの方向を向いていますが、ここに強力な磁力を発する(当てる)と同じ方向を向く性格を持っています。プロトンが同じ方向に向きをそろえた時、さらにそこに微弱な電波を当てると、プロトンはその電波によって共鳴し、また一斉に別々の方向を向きます。電波をストップすれば元の向きに戻ろうとしますが、この時にMR(磁気共鳴)信号を発生します。この特徴・作用を利用した検査機器がMRIなのです。

プロトンの向きが元通りになるスピードは臓器の細胞ごとに違い、MR信号の強さも変わってきます。MRIが体の断面画像を映し出せるのは、このMR信号の強弱を臓器の画像に変換しているから。また、MR信号をキャッチする検出器(コイル)は、高さ・幅・深さの三次元に存在しているので、自由な角度からMR信号をキャッチできます。これによってMRIは、水平の輪切りだけでなく、タテや斜めの画像も映し出すことができるのです。

この時、臓器の一部に異変があれば、プロトンは正常な部分とは違う動きをして、それが画像に反映されます。これこそがMRIが体の異常を発見できる仕組みなのです。

MRIのメリットとデメリットは?

メリット1 CTより微細な異変を見つけられる

人の体は約7割が水分です。その水分を含んだ体内を詳細に撮影できるのがMRIの大きな特徴です。水素原子は酸素原子と結びついて水となるうえ、人体を構成する他の物質にも水素原子は含まれています。したがってプロトンが発するMRI信号をキャッチする方法が、最も効率がよいと考えられています。実際に、MRI検査では人体の約90%の断面画像の撮影が可能です。したがって、CTではっきりわからない異変もMRIでは簡単に見つけることができる大きな利点があります。

メリット2 骨や空気の影響を受けない

目的に応じて優れた画像コントラストが得られるうえ、骨や空気による影響がないため、脳や脊髄などを鮮明に診断できます。また、造影剤を使わずに血管を写せるので、脳動脈瘤の経過観察などにもよく使用されます。このほか早期脳梗塞、骨折などの外傷・歯、内臓(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓)、血管(造影剤を使わない)、軟骨、靭帯・半月版、神経、多くの骨腫瘍病変、子宮・卵巣、前立腺・膀胱などの病変の発見を得意としています。

メリット3 放射線被ばくの心配がない

CTのようにX線を使わないために、被ばくのリスクがありません。

デメリット1 検査時間が長い

MRIは検査時間が長いことがデメリットのひとつとなっています。頭部MRI検査時間であれば20~30分程度、心臓MRI検査は1時間程度かかります。

デメリット2 体内に金属があると検査できない

磁力を用いる検査のため、ペースメーカーなど体内に金属がある人の場合は検査が行えないこともあります。

デメリット3 検査時に大きな騒音がする

MRI撮像時にコイルが振動することから、工事現場のような大きな音が断続的に続くこともデメリットのひとつです。

検診を怠ると、重篤な病気の発見が遅れることも!

ここまで、似たような検査機器であるCTとMRIについてご紹介してきましたが、その両者にはそれぞれ得意分野と不得意分野があることをおわかりいただけましたでしょうか。

ちなみにCTとMRIの検査費用をネットで調べると、(検査診療にかかる費用はさまざですが)おおまかにまとめると診療費の概算は以下の通りとなっています。なかでもMRIについては機器自体が高額なため、どうしても機器を設置できるのは大病院などに限定されますが、2018年時点の数値によると日本のCT保有数は100万人あたり約108台で、同じくMRIは約52台であり、両者とも世界でダントツトップに位置しています。

また、かかりつけ医がCTもしくはMRIでの検査を要すると診断した場合、CT機器やMRI機器を揃えた専門の検査機関に紹介されることも多く、検査機関とかかりつけ医が連携して、病気の原因解明や病変の発見を検査する態勢も用意されています。

治療に際してどの検査が最も有効かは、疑われる病気や症状を総合的に勘案して医師が適宜、判断してくれますが、患者である私たちも両者の違いをしっかりと知っておけば、安心して検査を受けるきっかけになりますね。

長い自粛生活が続くなか、ストレスや運動不足によって健康の目安となる各種項目の数値が思いの外、上昇してしまっている人も多いようです。実際に中性脂肪やALT(肝機能)、血圧の検査結果においては、2020年度中のデータが前年、前々年と比較して突出して悪化しているケースも数多く報告されています。

出歩く機会が減ったことによって体重が増加してしまった人や、コロナ禍の影響でなんとなく病院に行くのをためらっている方も、ぜひとも健康診断や人間ドックの受診を怠らず、自身の健康状態を把握するようにしたいもの。何より、健診を怠ると重篤な病気の発見が手遅れになるリスクがありますので、積極的に検査を受けるようにしてくださいね。

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