ボイラーの基礎知識と、ボイラー技士について
2019.08.22「ボイラー」という言葉はわりとよく耳にしますが、それを直接見たことのある人はどれほどいるでしょうか。しかも、ボイラーとは一体どんなもので、どのよう目的で使用されるものなのか、ボイラーを操作するためにはどんな資格が必要なのかなどについて、きちんと答えられる人はほとんどいないでしょう。
今回は、そんなボイラーに関する基礎知識と、ボイラー取り扱いのための資格などについてまとめてみました。
ボイラーとは、一体どんなもの?
料理でよく「ボイルする」などと言います。食材をお湯で茹(ゆ)でることですね。英語のボイル(boil)には、茹でること、液体を沸騰させること、などの意味があります。
ボイラーは、このボイルから派生した単語。つまり、液体を沸騰させるための装置です。
ボイラーの一般的な定義としては「密閉された鋼鉄製や鋳鉄製の容器に水などを入れ、加熱して高温・高圧の蒸気や温水を作り出し、それを他の設備や機器に供給するための装置」ということになります。
ボイラーはどのように利用されている?
ボイラーは、オフィスビル、ホテル、学校、病院、大型店舗など、さまざまな場所で多様な目的に使われています。どのように利用されているか、細かくみていきましょう。
●給湯・暖房
一般家庭で使うキッチンや洗面用の小型給湯器、あるいは風呂用給湯器などは、厳密にはボイラーとは呼べませんが、ボイラー機能の原点ともいうべき機械です。これらの家庭用給湯器は、水道管に水が流れ出すと自動的にガスが点火し、水道管を温めて温水を作ります。こうした仕組みで作った温水を暖房用として利用するのが床暖房システムです。
寒冷地の大型施設やオフィスビルなどでは、ボイラーで大量の温水を作り、これを配管で各部屋の放熱器に送り込んで暖房します。ボイラーは給湯や暖房に使われ、生活に必要な快適な温度を作り出しているのです。
●加湿
部屋が乾燥しすぎると人間が過ごしにくくなるだけでなく、例えば博物館などでは収蔵品の損傷につながったり、電子機器工場では静電気の発生で思わぬトラブルを招いたりするなど、さまざまな不具合や事故につながります。そのため加湿が行われますが、この加湿器にもボイラーが利用されます。
家庭用ではなく、広い空間の空調システムでは、ボイラーで発生させた蒸気が使われます。病院などでは、空調が院内感染の原因にならないよう、衛生面に徹底した配慮がなされて過失を防ぐほか、手術室や集中治療室などは、独立したボイラーで発生させた蒸気を利用する加湿器が使われるなどします。製薬工場でも医療現場と同じような衛生管理がなされた加湿器が使われます。
●調理
一般家庭にある圧力鍋は、ボイラーと同じ原理の調理器具です。圧力鍋は鍋と蓋をゴムパッキンなどで密閉して蒸気を逃さないようにし、鍋の中の圧力を高くすることで、食材を短い時間でやわらかく煮ることができます。鍋の中の圧力が高まることで、水が沸騰する温度を高くできるからです。
ボイラーで作り出す蒸気を使う調理法には「過熱水蒸気処理」というものがあります。これは大気圧下で水を沸騰させ100度の水蒸気を作り、それをさらに加熱して120〜500度の高温の水蒸気を作る方法です。余分な塩や塩分を取り除く調理ができたり、栄養素を維持したまま調理ができたり、焙煎などもできたりしります。
●洗浄・殺菌
移動式のボイラーで蒸気を作り出し、それを土の中に送り込む蒸気土壌消毒法というものがあります。蒸気の熱で土の温度を上げて消毒する方法なので毒性がなく、防除効果も高いとされています。この方法は、家畜や近隣の作物などにも影響があない点も魅力とされています。
多くの食品工場では、殺菌や減菌の処理のために、ボイラーで作り出した高温の蒸気を利用しています。また、医療施設においても、医療器具の洗浄や殺菌処理のために、ボイラーで作り出した蒸気の熱エネルギーを利用した処理が行われています。
●醸造・化学工場
ウイスキーなどの蒸留酒は、酵母菌で発酵させた醸造酒を温め、蒸発するアルコール蒸気を冷却して液体にしたお酒です。この蒸発させる過程でボイラーは必要不可欠の装置となります。
この蒸留技術を、より大規模に行うのが、ガソリンや石油化学製品の原料を作る化学プラント工業です。原油を加熱、蒸発させて冷却すると、沸点の違いによって重油、経由、灯油、ナフサといった違う石油製品が完成します。原油や石油製品に直接火を当てると、火災や爆発などの大事故を引き起こしかねないため、ボイラーの蒸気によって加熱する間接加熱方式がとられます。
●蒸気機関車
ボイラーを利用して、蒸気の力で動かすものの代表例が蒸気機関車です。誰もが知っているように、蒸気機関車の燃料は石炭ですが、この石炭を燃やし、高温の燃焼ガスを発生させます。この熱は機関車本体内を走る過熱管の中の水を温め、その水を蒸気に変えるのですが、発生した蒸気は機関車内の蒸気だめに送り込まれ、車輪を回すためのピストンがある駆動部へと送り込まれる仕組みになっています。
機関車は常に石炭を燃焼させる必要があり、石炭の補給が不可欠です。同時に、蒸気となることで水の量も減少していくため、水の補給も必要です。そのため、蒸気機関車のすぐ後ろには「炭水車」と呼ばれる、石炭と水を積む専用車両が連結されています。
蒸気機関車は今ではほとんど見ることができなくなっていますが、観光用の機関車やミニSLなども、基本的には同じ仕組みで動いています。
●発電
ボイラーは火力発電所でも活用されています。電気を作り出すには、巨大な発電機を高速で回転させることが必要ですが、この発電機を回すために、ボイラーで発生させた蒸気の力でタービンを回転させます。
ちなみに、このタービンを高い位置から落下させた水の力でまわすのが水力発電、核燃料が反応するエネルギーを蒸気にしてまわすのが原子力発電です。
ボイラーは危険な装置なの?
「密閉された容器の中で水などを加熱し、蒸気を作る」装置であるボイラーの扱いには、常に危険が伴います。その理由は2つあります。
それは「ボイラー内に大きな圧力がかかる」こと
そして「ボイラー本体の温度はかなり高くなる」ことです。
運転されているボイラー内には、この2つの要素から、非常に膨大なエネルギーが蓄積せれることになります。保守管理がずさんだったり、運転時に操作ミスなどが行われたりすると、爆発などの重大な事故につながる可能性が高くなるため、慎重な操作と保守が必要となります。
ただし、ボイラー自体が危険な装置というわけではなく、その取り扱いに問題があれば大きな事故につながるということで、その危険性を認識しつつ、正しく取り扱う必要があるのです。
鋼鉄製ボイラーにはどんな種類がある?
ボイラーは、大きく分けて「鋼鉄性ボイラー」と「鋳鉄製ボイラー」の2つがあります。
「鋼鉄性ボイラー」と「鋳鉄製ボイラー」について、さらに細かく見ていきましょう。
鋼鉄性ボイラーは「丸ボイラー」「水管ボイラー」「特殊ボイラー」3つに分類されます。まず、この3つのボイラーについて、それぞれ説明しましょう。
●丸ボイラー
丸ボイラーとは、その名の通り円筒形をしたボイラーのこと。鋼鉄製の円筒の中に水を満たし、その中に燃焼ガスなどが通る煙管群を入れるのが基本構造です。円筒の直径は1~3mで、ボイラーのなかでも比較的小規模のものが大半です。
丸ボイラーは構造が簡シンプルなうえ比較的安価とされます。また、点検・掃除が簡単、寿命が長いなどのメリットもあります。その反面、立ち上がりが遅い、事故になった時の被害が大きいなどのデメリットもあります。
丸ボイラーは、その構造からさらに4つに分類されます。
①立てボイラー
鋼鉄製の円筒の胴を直立させ、その下に燃焼室を下に配置したものが「立てボイラー」です。比較的容量が小さいタイプのボイラーで、接地面積が小さく、据え付け工事も簡単であるなどのメリットがあります。
②煙管ボイラー
煙管は、燃焼室で熱した燃焼ガスを通す管。円筒の中にいくつもの煙管を設けて伝熱面を増やし、円筒内の水を加熱します。熱効率のよいボイラーで、代表例は蒸気機関車のボイラーです。石炭などの燃料でも機能するメリットがありますが、構造が複雑でメンテナンスが面倒というデメリットもあります。
③炉筒ボイラー
円筒の中に筒を貫通する炉筒(円筒形の燃焼室)を設けた形式です。構造がシンプルで、メンテナンスがしやすい点がメリットとされます。熱効率が高い分、接地面積は広くなります。
④煙管炉筒ボイラー
炉筒と煙管が円筒内にあるボイラーです。丸ボイラーのなかで、最も効率がよいボイラーといえます。煙管と炉筒が一体となってパッケージ化されているので、構造がシンプルで、据え付け面積も少なくて済みます。現在の主流はこの「丸ボイラー」とされています。
●水管ボイラー
鋼鉄製ボイラーの中には、水管ボイラーに分類されるものもあります。
水管ボイラーは、上部と下部のドラムを多数の水管でつないだ構造で、その水管の周囲を燃焼ガスで加熱して水管内の水を温め、蒸気や温水にするボイラーのこと。
水管の中に水を通し、その周囲を高温で温める仕組みなので、一部の水だけを熱することがないよう、常に水を循環させておく必要があります。そのため、大量の水が必要となります。
3つに分類される水管ボイラー
①貫流ボイラー
貫流ボイラーは、水を水管の一端から給水ポンプで給水し、循環させることなく蒸気に変える水管ボイラーのことを指し、管の入り口と出口の圧力差で水を流動させます。水を循環させる必要がないため、ボイラー本体を小型化できるうえ、起動時間が早く、効率がよい点もメリットとされます。
②自然循環ボイラー
水の温度差でできる比重によって、水管内の水を自然に循環させる構造のボイラーです。高温・高圧のボイラーなどで臨界圧近くで運転をすると、水と水蒸気の比重差が少なくなって水の循環がうまくいかなくなるデメリットがあります。
③強制循環ボイラー
自然循環ボイラーに対して、循環ポンプの駆動力を使って、水を強制的に循環させる方式のボイラーのこと。運転圧が臨界圧に近くなると、水と蒸気の比重差が少なくなり、対流による自然循環力が低下します。このため強制的に循環させます。臨海圧の近くで運転する高温・高圧のボイラーは、この強制循環ボイラーになります。
特殊ボイラーにはどんな種類がある?
特殊ボイラーは、構造としては一般のボイラーと同じですが、特殊な燃料や水以外の熱媒を用いるボイラーのことをいいます。
主に以下の4つがあります。
①廃熱ボイラー
他の熱発生施設などから排出された高温ガスなどを利用して運転するボイラーのこと。ボイラー自体には燃焼装置がありません。
②特殊熱媒ボイラー
沸点が水より高い200〜400度の有機熱媒を利用するボイラーのこと。工場での過熱や蒸留、乾燥などの熱源として利用されることが多いようです。
③特殊燃料ボイラー
木工工場から出る木くず、製糖工場から出るサトウキビの搾りかす、籾がらなどを燃焼させる「廃棄物燃焼ボイラー」と、パルプ工場から出る廃液などからできる苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を回収して利用する「ソーダ回収ボイラー」があります。
④間接加熱ボイラー
燃焼ガスなどで一次加熱した水などの熱媒を強制循環させ、熱交換器で二次的に加熱した水から蒸気を取り出すボイラーのことをいいます。
鋳鉄製ボイラーの特徴、メリット・デメリット
鋳鉄製ボイラーとは、鋳鉄で製造されたボイラーのこと。主に暖房や給湯などを目的に、低圧ボイラーとして使われます。構造規格は法令で下記のように定められています。
●暖房用の蒸気ボイラーで最高使用圧力0.1MPa以下
●給湯用の温水ボイラーで0.5MPa以下、温水温度120℃以下
鋳鉄製ボイラーは、鋳鉄製のセクションという部品を複数つなげて作られます。セクションの連結部は多くも少なくも作ることができるので、自由に大きさを設計することや、運搬がラクなメリットがあり、組み立ても比較的簡単なので、どのような場所にも設置しやすい点が特徴です。
給湯用や暖房用のボイラーは、集合住宅用、一般住宅用など、その使用する建物や目的に応じて、さまざまな大きさや容量が求められます。鋳鉄製ボイラーなら、セクションを組み合わせるだけで、どのような建物にもフィットさせることができるわけです。
反対に、鋳鉄だからこそのデメリットがあります。
鋳鉄は、接合部分が弱いという特徴があります。そのため、ボイラーとして組み立てて、高い圧力をかけると破損や爆発の恐れが生じることに。そうした点から鋳鉄製ボイラーは、低圧用しか使えないことになります。
ボイラーを取り扱える資格
ボイラーは高温・高圧になるものなので、その操作には常に危険が伴います。間違った運転をすれば大爆発となり、人の命をも奪ってしまう危険性をはらんでいます。
そこで、ボイラーを取り扱うためには、「ボイラー技士」という国家資格が必要です。また、事業所で選任される「ボイラー取扱作業主任者」という資格もあります。
ボイラー技士とは?
ボイラー技士とは、ボイラーの操作・点検・管理・調整・検査などを行うことができる国家資格取得者のこと。
ボイラーは暖房や給湯・動力源などの目的で、さまざまな施設に用いられています。オフィスビルやショッピングモール、ホテルなどの不特定多数の人が利用する施設の暖房・給湯、工場・鉱山・発電所など、その使用範囲は広範です。ボイラーがあるところすべてにボイラー技士が必要ですから、資格を取得すれば転職や就職に役立つはずです。
●ボイラー技士の資格区分
ボイラー技士には、特級・一級・二級と3種類の資格区分があります。
ボイラー技士は、安全衛生技術試験協会が主催する、ボイラー技士試験に合格することで取得できます。受験資格と免許取得には以下のような条件があります。
・二級
誰でも受験することができます。免許取得のためには、ボイラー運転に関する規定の普通職業訓練を修了するなどの条件があります。試験に合格した後で職業訓練を受けることもできます。二級を取得した後に経験を積み、資格を一級、特級へとステップアップしていくことが一般的です。
・一級
二級ボイラー技士免許があれば受験することができます。免許の取得のためには、2年以上のボイラー取り扱い経験、もしくは1年以上のボイラー取扱作業主任者の経験が必要です。
・特級
一級ボイラー技士免許があれば受験できます。免許の取得には、5年以上のボイラー取り扱い経験か、3年以上のボイラー取扱作業主任者の経験が必要です。
●ボイラー技士の試験
ボイラー技士の資格取得のための試験は、
・ボイラーの構造に関する知識
・ボイラーの取扱いに関する知識
・燃料・燃焼に関する知識
・関係法令 この4科目について出題されます。
4科目各10問ずつ(特級のみ6問)が出題されます。すべての資格区分で科目数は同じですが、二級の試験時間は3時間、特級と一級は4時間です。
各科目で40%以上得点し、全体で60%以上の得点率で合格。1科目でも40%以下の得点率があれば不合格となります。
受験は、安全衛生技術試験協会などで無料配布している願書に必要事項を記入して申し込みますが、郵送で取り寄せることも可能です。一級と二級は1年間に複数回試験があり、1年に複数回受験することができます。
ボイラー取扱作業主任者とは?
ボイラー取扱作業主任者とは、労働安全衛生法に定められた作業主任者のひとつ。一定規模以上のボイラーを設置し、取り扱う事業場では、選任が義務づけられているものです。
選任される条件は、ボイラー技士の資格(特級~1級)を取得しているか、ボイラー取扱技能講習を受けていることになります。
この選任が必要なボイラーは、伝熱面積の合計が25㎡未満、25㎡以上500㎡未満、そして500㎡以上に分類されます。貫流ボイラーは250㎡未満と以上に分類されます。
特級ボイラー技士の資格があれば、これらすべての伝熱面積で取扱作業主任者になることができます。
まずはボイラー技士二級の資格を取得し、職場でボイラー取扱作業主任者に選任され、経験を積んで一級、特級とランクアップしていくのが一般的方法ですが、2級ボイラー技士免許を取得すれば、どのような大きなボイラーでも運転 できます。 ただし、ボイラー取扱作業主任者に選任されるにはボイラーの大きさや種類により免許の種類が異なります。上位の資格区分を取得すれば、より大きなボイラーの取扱社業主任者になることが可能です。
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