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現代社会のさまざまなシーンで活躍する“ロボット”のルーツと変遷、未来

みなさんは“ロボット”と聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか?

映画やアニメーションに登場するキャラクターロボ、工場で製品を組み立てるアームロボット、外食業界の人手不足を補う調理ロボット、家事の負担を減らしてくれる掃除ロボット……など、ひと口にロボットといっても、そのカタチや役割はさまざま。ここ最近は、ペット型の「AIBO(アイボ)」や人型の「ASIMO(アシモ)」「Pepper(ペッパー)」など、AI(人工知能)を搭載したコミュニケーションロボットも次々と登場し、人と共生するパートナーとして人気を集めています。

そこで今回は、ロボットのルーツや発展の歴史をたどりながら、年々進化するロボットの未来について考えてみたいと思います。

“ロボット”の種類・定義

一般的に“ロボット”と呼ばれるものには、大きく分けて「産業用」と「非産業用」の2種類があります。

まず、産業用ロボットは「マニュピレーティング・ロボット」とも呼ばれ、日本工業規格では「プログラミングによる自動制御によって、マニュピレーション機能(作業内容や用途に応じて、アームなどの工作機器に多様な動作を実現させる機能)を駆使し、諸産業に用いられるもの」と定義されています。このマニュピレーティング・ロボットは、主に工場の製造ラインや建築現場などの各工程で使用され、とくに重量物の移動や大きな力を要する作業に威力を発揮します。

これに対して、非産業用ロボットは「サービスロボット」とも呼ばれ、その多くは私たちの身近な場所で、人間の仕事や生活をサポートする役目を担っています。人・動物の姿を模したキャラクターモデルや、人間の感覚・感性に配慮したものも多く、ペットや案内係の代わりに人間とコミュニケーションをとったり、家庭や公共施設の清掃作業を自動で行うなど、その形態・役割は多岐にわたります。

“ロボット”のルーツと原型

ロボットのルーツは意外に古く、紀元前8世紀に記されたホメロスの叙情詩に登場する〈黄金の美女〉や、紀元前3世紀のギリシャ神話に登場する〈青銅人間タロス〉など、「人のカタチをした人間ではない何か」というロボットの概念は、紀元前から存在していたとみられています。

その後、時代が進んで8世紀頃になると、イスラム圏でロボットの原型とされる「からくり人形」が登場。12世紀以降はフランスを中心とした欧州でも、ゼンマイやバネで動く「オートマタ」呼ばれる自動人形がつくられるようになりました。日本でも17世紀、大阪でからくり人形の芝居小屋が旗揚げされたとの史実があり、オートマタと同じ機構の〈茶運び人形〉などが人気を博したといいます。

時計台の上で時刻を知らせる鐘を打つ「自動人形 = オートマタ」(イタリア)

“ロボット”という言葉の語源

“ロボット”という言葉が初めて使われたのは、1921年、旧チェコスロバキアの劇作家カレル・チャピック氏が創作した 『Rossum’s Universal Robots(ロッサム万能ロボット商会)』 という劇作の中でした。氏が名づけたロボットという名称は,労働者を意味するチェコ語の「ロボータ」と、スロバキア語の「ロボトニーク」を合わせた造語です。

ちなみに、『Rossum’s Universal Robots(ロッサム万能ロボット商会)』の劇のあらすじは、人類を助けるためにつくったロボットが、次第に武器として使われるようになり、ついにロボットたちが反乱を起こして人類を滅亡させてしまう──  という結末になっています。同様のあらすじのハリウッド映画を思い浮かべる人も多いことでしょうが、それはあくまで架空の話でしはなく、現実的に実現しうるストーリーともいえるでしょう。

その後、1950年にアメリカの生化学者で作家のアイザック・アシモフ氏が、SF小説『われはロボット』の中で「ロボット工学三原則」(以下参照)を提唱し、のちのロボット研究者に大きな影響を与えたといわれています。

【ロボット工学三原則】

◎第1条……ロボットは、人間に危害を加えてはならず、また人間に危害が加えられるのを見過ごしてはならない。

◎第2条……ロボットは、第1条に反しない限り、人間に服従しなければならない。

◎第3条……ロボットは、第1条と第2条に反しない限り、自身の生命を守らなければならない。

“産業用”ロボット発展の歴史

現実の世界に存在する産業用ロボットの歴史としては、1961年に開発されたユニメーション社(米国)の「ユニメート」が、世界で初めて実用化された産業ロボットとされています。このユニメートは、工場のベルトコンベヤーに設置するアーム型のロボットで、ジョイスティックなどで操作した動作を記憶させ、それを何度も繰り返し実行できるという点で反響を呼びました。

日本国内では、川崎重工業が前述のユニメーション社と技術提携し、1960年代後半に「日本版ユニメート」の生産を開始したことがロボット産業の始まりとされています。日本版ユニメートは、主に自動車製造のスポット溶接作業に使用され、日本のモノづくり産業の発展に大きく貢献しました。

そして、1970年代に入ると、国内大手製造業の多くがロボット産業に進出し、1980年代には自動車・電気機械産業を中心に、産業用ロボットを生産・導入する企業が急増。日本ロボット工業会の調査によると、1975年の産業用ロボットの年間生産台数は4418台でしたが、2000年には8万9399台、2015年には15万3785台と、40年で40倍近くまで拡大しています。

自動車生産ラインに設置された自動溶接アームも、産業用ロボットのひとつ

“非産業用”ロボット発展の歴史

一方、産業用と比べると非産業用ロボットの歴史は浅く、日本では1990年代から一部メーカーで製造・販売が始まり、産業用にはなかった人型や動物型のモデルも登場。なかでも、1999年にソニーが発売した犬型ロボット「AIBO」が大人気となり、家庭用エンターテイメントロボットという市場が生まれました。また、2002年に本田技研工業が発表した二足歩行の人型ロボット「ASIMO」が、ニューヨーク証券取引所で、史上初の「人間以外で初めて取引開始の鐘を鳴らす」役目を担い、国内外で大きな話題を集めました。

さらに近年は、医療代行ロボット、介護作業のパワーアシストスーツ、調理ロボット、農業ロボット、警備・巡回するセキュリティロボット、災害現場・危険地帯のレスキューロボットなど、多分野で活躍する非人型ロボットも次々と登場。一般家庭でも掃除ロボットや全自動炊飯調理器、スマートスピーカーなど、人工知能を搭載したロボットが家電として普及し始め、人間に代わる労働源・生活のパートナーとして社会に浸透しつつあります。

“ロボット”と共存・共栄する未来へ

このように、いまやロボットは産業用途だけでなく、日常生活・医療・介護・家事・接客・警備・レスキューなどのサービスに使われるものや、業務用・公共福祉用・家庭用・個人用など、その役割も活用の場も大きく広がっています。そうした中、これからもロボットが担う作業分野は、国内外でますます拡大していくと予想されます。とくに、少子高齢化が進み、働き手となる労働人口が年々減りつつある日本において、ロボットは人に代わる労働力として、社会に欠かせない存在になっていくことは間違いないでしょう。

一方で、より進化した人工知能ロボットが開発されることで、人間の仕事がロボットに奪われるのではないか……という懸念の声も多く聞かれます。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授が発表した論文『未来の雇用』によると、アメリカの現行職業のうち47%が、20年以内にロボットに置き換えられる可能性が高いと予測されています(図表参照)。今後、実に多くの職業がロボットにとってかわられると推測されていますが、みなさんの仕事はどうでしょうか。

いずれにしても、高度な人工知能を有するロボットが、人々の生活や社会経済の基盤を支える未来がやってくることは、そう遠くない現実のようです。

そんな未来の明暗を分けるカギは、ひょっとしたら先述した「ロボット工学三原則」の中に隠されているのかもしれません。人工知能という技術が台頭し、ロボットの機能や性能が日々進化する中、私たちも人間としての英知と強みを発揮していく……。これこそが、ロボットと共存・共栄できる豊かな社会につながっていくのではないでしょうか。

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