【メカの秘密シリーズ】エレベーターが昇降する仕組みとは
2021.05.21ふだん、何気なく使っているエレベーター。デパートやショッピングセンター、オフィスビル、マンションなど、おおよそすべてのビルに備えつけてある昇降マシンです。簡単な操作で、誰もが安全に上下のフロアを昇降できるのですから、まさに現代の“どこでもドア”。現代人にとってはなくてはならない機械のひとつです。
特に土地の狭いわが国では、都市部を中心にビルがどんどん高層化しています。エレベーターの進化は、そんなビルの高層化を後押ししている要因のひとつとも言えるでしょう。けれども、そのエレベーターが昇降する仕組みを、あなたはご存じですか?
いつも何気なく使用していても、その機械がどのように動いているのかはなかなかわからないものです。今回の【メカの秘密シリーズ】は、エレベーターが昇降する仕組みについて、ご紹介しましょう。
古代ローマ時代に、すでに人力エレベーターは存在していた?
エレベーターの昇降のしくみについて説明する前に、まずは簡単にエレベーターの歴史をご紹介しましょう。
この世にエレベーターが登場したのは、紀元前236年のことと言われています。予想以上に古い時代のことで驚かれる方も多いと思いますが、発明したのは古代ギリシアの数学者であり、物理学者でもあったアルキメデス。もちろん、今のように電力などはありませんから、動力は人力ということになります。
そして、ローマ時代になると皇帝ネロが宮殿内に人力エレベーターを設置します。そのほか同時代を舞台にしたアカデミー賞作品賞等を席巻した『グラディエーター』を鑑賞すると、帝都ローマのコロッセウム(大闘技場)が舞台として描かれていますが、剣闘士とともに戦う猛獣を闘技場のフロア(地上階)まで運ぶ人力エレベーターの様子も、一部描かれています。このようにエレベーターの歴史が紀元前、ローマ時代にまでさかのぼるなんて本当に意外ですね。
長い年月を経て、1835年に動力エレベーターが登場
世界で初めて動力で動くエレベーターが発明されたのは、アルキメデスの発明からおよそ2000年後の1835年のこと。英国で蒸気機関を動力としたエレベーターが作られました。ただし、これは人間用ではなく貨物用であり、1840年代に入るとアメリカでも導入が広がりましたが、この蒸気で動くエレベーターは非常に速度が遅く、安全性にも問題があったようです。
人間を運ぶためのエレベーターが発明されたのは、1853年のこと。米国のエリシャ・オーチスが、逆転止め歯形による非常時の落下防止装置を取りつけた蒸気エレベーターをニューヨーク万国博覧会で発表したのです。「エレベーター」という名称も、このときオーチスによって命名されたとされています。
冬季に水が凍結すると運航できなくなってしまう蒸気機関のエレベーターの弱点を受け、1882年に世界初の電動式エレベーターがニューイングランドで実用化されます。その後、電気が安定的に供給されるようになるとともに、エレベーターの動力源として電動式が主流となっていきました。
エレベーターの駆動方式には2つの方式がある
現在、私たちが使っているエレベーターの動力はもちろん電力です。そして駆動のしくみは大きく2つに分けられ、「ロープ式」と「油圧式」の方式になります。この違いは、設置するビルが高層か低層かという建物の形状や設置場所の状況によって、駆動のメカニズムが選択されます。では、この2つ方式について順に説明していきましょう。
ロープ式エレベーターは現在の主流タイプ
エレベーターの駆動方式には2つあると言いましたが、一般的に私たちが利用するエレベーターのほとんどはロープ式です。ロープ式エレベーターは、さらに「トラクション式(つるべ式)」と「ドラム式(巻胴式)」に分類することができます。今日のエレベーターは「ドラム式」から始まりましたが、現在のロープ式エレベーターは「トラクション式」が主流になっています。
●トラクション式(つるべ式)
ロープ式エレベーターのトラクション式は、いわば“井戸のつるべ”と同じ原理を用いたもの。つるべ式の井戸は、井戸の口の上に滑車があり、その滑車を通して紐が吊り下げられ、その紐の両端に水を汲む桶がつながれています。つるべで楽に水を汲めるのは、この両端に桶がつながれていることが大きなポイントです。
水を汲むことだけが目的なら、紐の片側にだけに桶をつなぎ、その桶を井戸に投げ込み、紐の反対側を手繰り寄せることでもできます。しかしそれでは、水の重さがそのまま手繰り寄せる力として必要になります。つまり桶に入った水の重さが5kgなら、まるまる5kgを持ち上げるだけの力が必要になるわけです。ところが、つるべ式の井戸は滑車を挟んで、もう一方にも桶がつながれています。仮にもう一方の桶に3kgの水が入っていれば、5kgの水を手繰り寄せるのに単純計算であと2kgの労力で済むわけです。トラクション式のエレベーターは、まさにこの原理をうまく利用したしくみなのです。
トラクション式のエレベーターは、「人が乗るかご」と「釣り合いおもり」がワイヤーロープによって「つるべ式」につながっていることが大きな特徴です。かごと釣り合いおもりを釣り合わせているため、昇降させる巻上機(モーター)にかかる負荷が半減され、容量を小さくできるのです。また、トラクション式には「機械室ありタイプ」と「機械室なしタイプ」があります。
トラクション式機械室ありタイプ
トラクション式エレベーターの機械室ありタイプは、もっとも基本的なタイプです。一般的にエレベーターの機械室は昇降路の最上部、すなわちビルの屋上などにあり、巻上機の他、かごの異常速度を検出する調速機(安全装置)、かごの動きを制御する制御盤などが設置されています。システム構成もシンプルで、低層ビルから超高層ビルまで、あらゆる建物に採用されています。
エレベーターの昇降路内には、かご、釣り合いおもり、その両方をつなぐワイヤーロープ、かごや釣り合いおもりが沿って動くガイドレール、かごと制御盤をつなぐ制御ケーブル、かごの位置を検出するスイッチなどが設置されています。
トラクション式機械室なしタイプ
トラクション式エレベーターの機械室なしタイプは、巻上機や制御装置をコンパクト化し、昇降路の中に設置することで、屋上の機械室を不要にしたタイプです。機械室がなくなれば、建物の屋上に突出物が必要ありません。そのため、建物の高さ制限や日影規制の影響が少なくなったり、昇降路の設計の自由度が大きくなったりするなどのメリットがあります。巻上機の設置場所は、昇降路内の上部に設けるタイプと下部に設けるタイプがあります。
ドラム式(巻胴式)
ドラム式エレベーターは、巻上機がドラムを回転させ、ワイヤーロープを巻きつけてかごを昇降させるシンプルな構造のエレベーターです。トラクション式との大きな違いは、釣り合いおもりがあるかどうかです。
ドラム式は、ワイヤーロープが長くなればなるほどドラムが大きくなります。したがってワイヤーロープを長くしなければならない中高層のビルに設置するのは不向きです。しかし、トラクション式エレベーターと比べると構造が簡単なため、低層建築物に設置されるケースは多くあります。
油圧式エレベーターは重量物の搬送に最適
ロープ式エレベーターに対して、もう一つの方式が「油圧式」です。電動ポンプで油圧ジャッキを動かし、エレベーターを昇降させる方式のエレベーターです。油圧式エレベーターの設備は、油圧パワーユニット、油圧ジャッキ、かごという比較的シンプルな構成。油圧パワーユニットの設置は比較的自由にレイアウトができるため、屋上に機械室を設置する必要がありません。
トラクション式エレベーターの機械室なしタイプが登場する以前は、高さ制限や日影規制をはじめ、屋上に重い設備を乗せられないなどの制約がある場合に、油圧式エレベーターが採用されてきました。積載力が大きく、重量物の搬送に適しているため、現在は工場や倉庫などで多く稼働しています。その構造上から、低層の建物で採用される場合がほとんどです。
この油圧式エレベーターの駆動方式は、「直接式」「間接式」「パンタグラフ式」の3つに分類することができます。
直接式
直接式は、エレベーターのかごの底部に、油圧シリンダー内のプランジャー(上下する部分)を直結させて昇降を行います。つまり、油圧ジャッキが直接かごを支え、下からかごを持ち上げたり下ろしたりするわけです。自動車修理の時に使う油圧ジャッキと同じ原理で、重いものを昇降する工場などで多く利用されています。
間接式
油圧ジャッキのプランジャーの動きを、ロープや鎖を介して間接的にエレベーターのかごに伝え、昇降を行う仕組みです。日本国内に納入されている油圧式エレベーターの大部分は、この間接式で占められています。
パンタグラフ式
電車の上部にあるパンタグラフのようなアームと油圧ジャッキで、アームの先に取りつけられたかごを昇降させる仕組みです。
さまざまな形態のエレベーターをご紹介してきましたが、エレベーターが昇降の仕組みはご理解いただけたでしょうか。
ここでひとつ、エレベーターつながりで新入社員がまだまだフレッシュなこの時期に、ちょっとしたうんちくをご紹介しましょう。今の時代にサラリーマンの間でこうした話が受け継がれているか定かではありませんが、広告会社に勤める新入社員が業務上でちょっとしたミスをおかしたとき、先輩はこう言って若手を諌めたエピソードがあります。
── 君が起こしたミスで人を傷つけたり、命を落とすようなことはないかもしれない。うっかり間違えてしまった数字や言葉の表記ミスは、程度によって謝って済むことも多いが、自分がなぜミスをおかしてしまったのか、自分の何がいけなくて、足りなくてミスにつながったのかをじっくり考える必要がある。もし、君がエレベーターや電車車両の保守担当社員だったら、君が今回起こしたケアレスミスは決して許される話ではない。うっかりミスによって人が命を落とす危険性や大事故に繋がりかねない可能性があるからだ。だからこそ今回のミスをしっかり肝に銘じて、今後二度とミスおかさないよう行動に責任をもつべきだ──
先輩が新入社員を諭したこのエピソードは「エレベーターの事前保守」と呼ばれていましたが、翻れば、このエピソードがエレベーターの保守点検を担う技術者の安全に懸ける思いや、技術力の高さを物語っていたといえるでしよう。
50階相当の高層ビルやオフィスビルでは、無音、無振動で驚くほどのスピードで昇降する最新技術が搭載されたエレベーターも最近では珍しくなくなりましたが、ひと口にエレベーターといっても、実にいろいろなタイプがあるのです。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって非接触タイプのボタンが増えるなど、私たちの目に見えるインターフェイスもさまざまに進化しています。今度エレベーターを利用する際には、それがどのような仕組みで動いているのかに考えをめぐらせみませんか。
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