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【メカの秘密シリーズ】時計が正確に時を刻めるのはなぜ?

現代社会に欠かせないマストアイテムのひとつに「時計」があります。仕事をするうえでも、余暇を過ごすうえでも、時間の概念なくして物事を行うことはできません。つまり私たちは常に時間の制約の中で生きているわけです。もしもこの世から時計がなくなれば、社会は大混乱、いや、それどころか私たちの社会そのものが成立しなくなることは間違いないでしょう。

携帯電話が普及したことで、腕時計をする人が少なくなったとも言われますが、時計の重要性は今も昔も変わっていません。そんな貴重な機能を持つ時計が、どうして正確に時を刻むことができるか……そんなことを考えたことがありますか?

時計内部で小さい歯車がたくさん動いていることは知っていても、それがどうして正確に動くのかということを説明できる人は少ないのではないでしょうか。今回は時計がなぜ正確に時を刻めるのかについて、時計の進化の歴史とともにその秘密に迫ります。

時計のルーツは紀元前にまでさかのぼる

時計のルーツとして考えられているものは「日時計」です。紀元前4000年頃、エジプトで考案されたというのが一般的です。地面に真っすぐの棒を立て、この棒に日光が当たった時の影の位置や長さで時刻がわかるような仕組みでした。これが人類最古の日時計の始まりといわれています。今も公園の花壇などで日時計を見かけることがありますが、案外正確な時間を示していて驚きますよね。

紀元前4000年頃に日時計が考案されたエジプトは北半球に位置するので、地面に立てた棒の影は右回りに移動していきます。これが現在の時計の針が右回りになった理由と考えられています。もし南半球で最初の日時計が考案されていたら、時計の針は左回りになっていたかもしれません。

日時計の弱点は、太陽が出ていないときは使えないこと。そこで紀元前1550年頃のエジプトでは、夜用の時計として「水時計」が用いられました。現存する最古の水時計は、かめの底に穴が開いており、その穴から一定の速さで水が流れ出るように作られていました。これは水が流出し、残っている水の水面の高さで時を読み取る仕組みです。かめの内側には月ごとに違う目盛が刻まれ、季節によって夜の長さが変わることにも対応していました。

紀元後には、さまざまなみの燃やして時を測っていた

ローソクの燃焼具合を目盛りで計測する燃焼時計のひとつ「ローソク時計

紀元後になると、さまざまなものを燃やし、その燃焼時間で時刻を知る「燃焼時計」が登場します。まずは「ローソク時計」。ローソクに火を灯し、残りの長さで時刻を計る時計です。1世紀頃、イングランドのアルフレッド王時代には、長さが12インチ(約30cm)で目盛が12あるローソク時計が使われていました。これは4時間で燃えたと伝えられていますから、1目盛が20分だったのでしょう。

紀元後の中国では「香盤時計」が使われていたようです。お香が燃えるスピードがほぼ安定していることを利用し、燃えた長さで時間を計る時計です。これは奈良時代に日本にも渡来し、「常香盤」や「香時計」などと呼ばれて寺院で使われました。その後は、油を燃やしてランプを灯し、その油が減っていく残量で時を計った「ランプ時計」も誕生しました。夜間の灯火と時計を兼ねていた優れもので、油を入れる容器には夕方から翌朝にかけての時間の目盛が刻まれていたものが多かったようです。

みなさんもよく知っている「砂時計」は、8世紀頃に誕生したとも言われていますが、遅くとも1300年代に描かれたフレスコ画に砂時計が描かれています。砂時計は揺れや寒暖など環境の変化に強いため、航海中の船上でよく利用されました。15〜16世紀に活躍したコロンブスやマゼランは多数の砂時計を携行したと伝えられています。日本には16世紀の中頃にヨーロッパから伝わりました。

ガリレオが考案した振り子時計の原理

時は進み、自然の力を借りていた時計に大きな変化が現れます。

世界初の「機械式時計」が発明されたのは、1270〜1300年頃のルネッサンス期のこと。北イタリアから南ドイツのあたりで作られた「塔時計」だといわれています。まだ文字板や針はなく、吊り下げた錘(おもり)が下に下がっていく力を利用して歯車を動かし、鐘を鳴らして時を知らせるものでした。初期のものは1日に30〜1時間も誤差があったようです。

やがて、時計にとって画期的な原理が発見されます。それは、1583年、イタリアのガリレオ・ガリレイが発見した「振り子の法則」です。振り子は短いと速く振れ、長いとゆっくり振れますが、その速さに関係なく一往復する時間は一定であるという「振り子の等時性の法則」です。この原理を利用して生まれたのが「振り子時計」です。

ガリレオが発見した原理を応用・発展させ、1656年、誤差を補正する振動装置を発案するなどして画期的に正確な振り子時計を発明したのは、オランダのクリスチャン・ホイヘンスでした。ホイヘンスが作った時計は、誤差が一日に数分程度の精緻さだったと言われています。

機械式時計はどうして正確に時を刻めるのか

いよいよ現代の機械式時計の仕組みの秘密に迫っていきましょう。

17世紀、錘の下がる力で動力を得て、振り子によって時計の正確性はかなり向上しました。しかしこの時計は大型で、持ち運んだり、斜めにしたりすることはできませんでした。携帯できる時計の誕生のためには、さらに2つの大きな発明が必要だったのです。

ひとつは、時計の動力となる「ゼンマイ」です。

これは簡単に言えばバネのことで、薄い銅板を渦巻き状に巻いてあるものです。外部からネジを巻くことによってゼンマイを締めると、ゼンマイは逆に元に戻ろう(ほどけよう)とします。この時に発生する力が時計の動力となります。現在も手巻き式の腕時計などでは、リューズ(ネジ)を巻くことでゼンマイが締まり、それがほどける力を利用して各歯車が動く仕組みとなっています。

もうひとつは「テンプ」です。

テンプは車輪のような形をしており、ひげゼンマイと呼ばれる細いゼンマイが仕込まれています。ひげゼンマイは一端がテンプの軸に、反対の端が時計本体に固定されています。これが伸縮することで、テンプは軸を中心に左右に往復運動をします。ひげゼンマイには振り子と同じ等時性があるので、これに伴ってテンプは正確に行ったり来たりするのです。テンプは、振り子に代わる役割で時計に精度を与えます。このテンプを発明したのもクリスチャン・ホイヘンスで、時は1667年のことでした。

機械式時計はゼンマイとテンプの発明によって進化を遂げ、携帯できる時計の誕生につながります。テンプは、アンクル、ガンギ車と総称して「脱進機(一定速度で歯車が回転するための仕組みのこと)」と呼ばれます。アンクルはT字型をしたパーツで、テンプとつながっています。T字の横棒の両端は爪状になっていて、歯車であるガンギ車とつながっています。アンクルがガンギ車のギザギザに噛み合うことで、速度を一定に保つのです。

巻き上げたゼンマイを何の抵抗もなく解放すれば、一気にほどけてすぐに動力を使い果たしてしまいます。機械式時計のゼンマイも同様で、何もなければすぐにほどけて止まってしまいます。脱進機はゼンマイが一気にほどけることを制御し、滑らかに回転するように調整するパーツなのです。脱進機の進化こそが時計の進化であり、長い時計の歴史の中で幾度なく改良が繰り返されています。

複数の歯車がつながって回転して動力を伝えている

現代の機械式時計(手巻き式腕時計)は、リューズを巻くとゼンマイが巻かれ、それがほどける力で動力を得ています。その力は、1〜4番の4つの歯車で構成される輪列機構によって順番に伝達されていきます。

  • 1番車

香箱車とも呼ばれ、ゼンマイが収められています。リューズを巻くことでゼンマイが巻かれ、機械式時計は動作を始めます。

  • 2番車

分針が取り付けられており、この歯車は60分で1周する設計となっています。

  • 3番車

2番車と4番車をつなぐ役目を果たします。精度に関わる重要なパーツです。

  • 4番車

秒針が取り付けられており、60秒で1周するように設計されています。

機械式時計は、ゼンマイのほどける力で1〜4番の歯車を順に回し、最後に脱進機につながります。脱進機が、ゼンマイが一気に解放することにブレーキをかけ、振り子の代わりに速さを調節し、正確に時を刻む役割を果たしているのです。

機械式時計はシンプルな構造で、パーツの数もそれほど多くありません。しかし、それぞれのパーツは1000分の1mm単位で精密に設計されており、さらに入念な組み立て・調整を経て製品化されます。熟練の職人技があってこそ完成するものなのです。

自動巻き腕時計はローターが手巻きの役割りを担っている

斜線で示した部分が、自動巻き腕時計の「ローター」

手巻き式腕時計は、1〜3日程度に1回はリューズを巻かないと止まってしまいます。これに対して、自動巻き腕時計は、リューズを巻かなくても自動的に動き続けることが可能です。自動巻き腕時計のことをオートマチック(automatic)とも呼ぶゆえんはここにあります。

自動巻き腕時計の中には「ローター」と呼ばれる半円形の金属部品が内蔵されています。ローターは自由に回転するように設計されており、時計を装着した腕の日常的な動作(手を振ったり、上げ下げしたり……)によって回転し、それが自動的にゼンマイを巻き上げます。自動巻き腕時計は、いちいちリューズを回さなくても単に腕につけているだけでゼンマイを巻き、それによって歯車を回す動力を得ているわけです。

自動巻き腕時計と手巻き腕時計の違いは、ローターで自動的にゼンマイが巻かれるかどうかの違いであり、その他の歯車や脱進機の役割などは同じです。自動巻き腕時計は、1777年にスイス人のアブラアン・ルイ・ペルレが世界で初めてそのルーツとなる懐中時計を発明。1924年にイギリス人のジョン・ハーウッドが、半回転式のローターを利用した腕時計で特許を取得しました。

その後、ローレックスが1931年に360度回転するローターを持つ、現代の自動巻き機構の原点ともいえる有名な「パーペチュアル」を開発し、さらに1963年に日本のセイコーが「セイコースポーツマチック・ファイブ」を発売して、自動巻式腕時計の普及に大きく貢献しました。

クォーツ時計の登場で正確性が飛躍的に向上

電気信号を受けた赤いステップモーターが歯車を動かし、時計の針を1秒ずつ進める構造のクォーツ時計

現代の時計の多くは、手巻きや自動巻に代わって電池をその動力源としています。けれども、これは単純に電池がモーターを動かして、それで時計を動かすといったことではありません。時計は何より正確に時を刻む機能が大切ですが、そのために電池が生み出す電気が必要なのです。

1960年、スイスのブローバ社が音叉時計「アキュトロン」を開発・発売し、世界の時計業界に衝撃が走りました。ブローバの音叉時計は360Hz、一日の誤差はわずか2秒でした。これは物理学者マックス・ヘッツェルが「金属は電気を通すと細かい振動を起こす」ことを利用して開発した、全く新しい時計でした。これをきっかけに、腕時計の正確性追求への動きが加速されました。

その流れの中で生まれたのが「クォーツ時計」です。クォーツ時計は、水晶(クォーツ)に電気を流すと、1秒間に3万2768回の速さで均一の振動を起こします。これを「水晶(クォーツ)発振」といい、この原理を利用して、水晶が3万2768回振動したら1秒とカウントする仕組みを作ったのです。日本のセイコーは1958年に放送局用水晶時計を開発しましたが、これは大型ロッカー並みのサイズでした。そして1969年12月25日に、世界初のクオーツ腕時計「セイコークオーツアストロン35SQ」を発売。価格は45万円で、当時の大衆車と同等の価格でした。

クォーツ時計には電池、コイル、水晶振動子、そしてその振動を数えるICチップなどが内蔵され、機械式時計に内蔵されていたゼンマイや脱進機は姿を消しました。ちなみに水晶が1秒間に3万2768回振動するというのはあくまで標準値ですが、仮にこの振動が1回ずれたとしても、3万2768分の1秒しか誤差は生まれません。それまで、一般の高精度な機械式腕時計で一日の誤差が数秒から数十秒だったことに対し、セイコークオーツアストロン35SQは一日の誤差がプラスマイナス0.2秒、1カ月の誤差はプラスマイナス5秒だったと言いますから、まさに驚異的な正確性を実現したことになります。

原子の力を使って時計はさらに進化中

クォーツ時計は精度面において革新的な時計となりました。が、現在ではさらに高精度な時計が登場しています。それは原子の振動数を基準にした「原子時計」です。超高精度を保つセシウム原子時計をもとに送信される標準電波を受信し、時刻やカレンダー修正を行う機能のある時計です。

原子は元素の最小単位であると、化学の時間に習いましたね。そして原子は、中心にある原子核と、その周りの軌道を周回する電子でできているとも。量子力学では、この電子の軌道や電子のもつ磁力の強さなどの違いにより、原子はそれぞれエネルギーの異なる状態があることが明らかにされています。そして原子は、エネルギーの異なる状態に変わるとき、電波や光を特定の周波数で吸収したり放出したりしていることもわかっています。原子時計は、この電波や光の周波数を振り子やテンプの振動のように時間の基準としている時計なのです。

原子時計にはさまざまな仕組みがありますが、現在はセシウムをはじめとしたルビジウムや水素など、周期表のI族の原子が多く使われています。その方式には「受動(パッシブ)型」と「能動(アクティブ)型」の2つがあります。

受動(パッシブ)型

現在の原子時計の大半に採用されている方式で、さまざまな周波数の電磁波を原子に当て、共鳴するものを見つけることで、周波数を特定する方式です。受動型はさらにいくつかの方式に分類されます。

  • 原子ビーム式

「セシウム133原子時計」に使われている方式です。高い真空のタンクの中でセシウム原子を熱して原子ビームを作り、そのビームに中央で2回電磁波を照射し、セシウム原子の周波数を特定します。2回の測定の間隔が長いほど特定すべき周波数の幅が狭まり、測定の効率と精度が上がります。

  • 冷却原子泉式

原子ビーム式の精度を、さらに高める工夫を施した方式です。計測過程で、原子を噴水のように垂直に打ち上げます。まずセシウム原子を絶対零度近くに冷やして、その動きを秒速1cm程度まで遅くした上で、垂直に打上げて重力で自由落下させます。この上昇時と落下時の2回測定する仕組みです。このやり方だと、精度が100倍上がります。宇宙で原子泉式を使えば、無重力に近い状態で落下速度が遅くなり、精度はさらに10倍上がると予想されています。最近の原子泉式は、3億年に1秒の誤差に相当すると言われています。

  • ガスセル式

構造が簡単なため、小型で低価格のものが作りやすい方式ですが、精度はやや劣ります。高精度なものではGPS衛星などにも使われている「ルビジウム原子時計」があります。

能動(アクティブ)型

原子から電磁波を出させて測定する方式です。このタイプには、以下のような方式があります。

  • アクティブメーザー式

短い時間で測定できる方式で、「水素メーザー」が主流となっています。現在日本標準時は、ベースの時間を水素メーザーで作り、セシウムを使った冷却原子泉式で、微細な誤差を修正して作っています。

原子時計を元に作られた正確な時刻情報は標準電波として放送されており、その電波を受信してクォーツ時計の誤差を修正しているのが、最近普及している「電波時計」です。電波時計は、時計に内蔵されているアンテナが、送信所から送信される標準電波を受信し、時刻情報へ変換しています。その時刻情報で時計の時刻やカレンダーが修正され、常に正確な時を刻むことができるのです。

紀元前に日時計から始まった時計は、長い年月の中で携帯性や正確性を求め、休むことなく進化してきました。そして今、原子の振動数を利用して究極の正確性を持った時計も登場しています。さらに、2010年代に入ってそのファッション性と機能性が大きな注目を集めたウエラブル端末やスマートウォッチにおいては、スマホがあれば腕時計は必要ないよね……と言っていた人の多くが身につけるようにもなっています。

技術の進化や時代性と密接にかかわり、腕時計の枠を越えて様々な機能を付加し、進化し続ける時計……。これからどのように変化していくのか、ぜひ注目していきたいものですね。

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