【連載シリーズ】全国47都道府県の伝統的工芸品を巡る《その1》
2020.10.09ここ近年、海外でも注目が高まっている日本の伝統工芸品。全国には、各地域に古くから伝わる工芸品が1300種類以上あり、いずれも卓越した職人の手仕事・匠の技によって生み出されています。
その中でも、経済産業省が指定する工芸品は「伝統的工芸品」と呼ばれ、『伝産法(伝統的工芸品産業の振興に関する法律)※』に基づいて、国が持続的な振興と伝承を支援。その数は、織物や陶磁器、木工品などを中心に235品目(2019年11月20日現在)に上ります。
とはいえ、自分の出身地や地元の地域では、どのような伝統的工芸品が受け継がれているのか……意外に知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回から、全国47都道府県の伝統的工芸品235品目のすべてを、連載シリーズで一挙にご紹介。第一回目は、伝統的工芸品に関する基礎知識とともに、北海道・青森県・岩手県・秋田県に伝わる伝統的工芸品にフォーカスします。
※伝産法……古くから受け継がれてきた伝統文化を次世代にも引き継いでいくために、産業振興と地域経済の発展を目的として、1974年(昭和49年)に制定された法律。正式には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」という。
伝統的工芸品の指定要件と審査について
まず、日本各地に数多くある工芸品の中から、伝統的工芸品に指定されるための条件について解説します。その指定要件は、先述した伝産法(伝統的工芸品産業の振興に関する法律)の第二条により、以下のように定められています。
【1】主として日常生活の用に供されるもの
【2】その製造過程の主要部分が手工業的
【3】伝統的(※1)な技術、または技法により製造されるもの
【4】伝統的(※1)に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
【5】一定の地域において少なくない数の者(※2)がその製造を行い、またはその製造に従事しているもの
※1……「伝統的」とは、おおむね100年以上の継続的な歴史を有しているものを指す
※2……「少なくない数の者」とは、おおむね10社以上、または従事者30名以上を目安とする
伝統的工芸品として国の指定を受けるためには、上記の5要件をすべて満たす必要があり、とくに※1・2の解釈により指定のハードルが高くなっています。そのため、「起源は江戸時代でも、戦争などで製造技術がいったん途絶え、100年以上続く歴史を証明するのが難しい」「100年以上続く歴史は証明できても、製造できる職人が数人しか残っていない」といった場合、全国的に有名な工芸品であっても指定外になっているケースがあります(東京都の江戸すだれ、鹿児島県の薩摩切子など)。
また、伝統的工芸品の指定は、要件を満たす案件に自動的に行われるわけではなく、産地からの申請を受けて初めて審査が始まります。よって、産地として伝統的工芸品の指定を受けようという明確な意思と、地域ぐるみで技術を伝承していく連携体制が不可欠となるのです。
── ではさっそく、北海道~東北地方北部3県の伝統的工芸品を一点ずつ見ていくことにしましょう。
北海道の伝統的工芸品(2品目)
【二風谷イタ/木工品】2013年(平成25年)指定
二風谷イタは、北海道沙流郡平取町二風谷に伝わる木製のイタ(平らな盆・皿)です。材料には沙流川流域で採れるクルミ・カツラ・エンジュなどの木材が使われており、江戸時代には東北地方にも交易品として輸出されていました。盆の表面には「ラムラムノカ(うろこ模様)」「モレウノカ(渦巻き模様)」「アイウシノカ(刺模様)」と呼ばれるアイヌの伝統文様が彫刻で施されています。
【二風谷アットウシ/織物】2013年(平成25年)指定
北海道沙流郡平取町で主に生産される二風谷アットウシ。アットウシとは、オヒョウやシナノキなどの樹皮の繊維を紡いで織った織物で、産地として形成されたのは18世紀後半ごろとされています。アットウシを使った衣装は、アイヌの伝統的な正装として受け継がれてきましたが、軽量で耐久性・はっ水性に優れていることから、江戸~明治時代に日本海海運で活躍した北前船の先頭たちにも愛用されていました。
青森県の伝統的工芸品(1品目)
【津軽塗/漆器】1975年(昭和50年)指定
津軽塗は17世紀後半、津軽藩主の津軽信政が経済政策の一環として漆工芸を奨励したのが起源とされ、江戸時代中期までは「弘前塗」と呼ばれていました。漆を何度も塗り重ね、平滑に研ぎ出して文様を描いていく独自の技法が特徴で、堅牢かつ優美な漆器として全国的にも高い評価を得ています。藩政時代にはさまざまな塗の技法が存在しましたが、現在は「唐塗」「七々子塗」「錦塗」「紋紗塗」の4技法が受け継がれています。
岩手県の伝統的工芸品(4品目)
【岩谷堂箪笥/木工品】1982年(昭和57年)指定
岩手県の奥州市・盛岡市を中心に、江戸時代中期から生産されている岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)は、北上山系の欅(けやき)や桐などの木材を使った、漆塗りの堅牢な箪笥です。引手・蝶番などの金具には、手打ちの彫物や南部鉄器が使われ、深みのある漆塗りの風合いとともに、重厚感のある表情を醸し出しています。
【秀衡塗/漆器】1985年(昭和60年)指定
岩手県の各市町(盛岡市・花巻市・一関市・奥州市・滝沢市・西磐井郡平泉町)で主に生産される秀衡塗(ひでらぬり)は、金箔をふんだんに用いた優美な漆器です。12世紀、奥州藤原氏の日用道具として作らせたのが起源とされ、当時は「南部塗」と呼ばれていましたが、明治以降は三代目の秀衝にちなんだ名称に改められました。
【浄法寺塗/漆器】1985年(昭和60年)指定
岩手県の二戸市浄法寺を中心に生産される浄法寺塗(じょうほうじぬり)は、8世紀に建立された天台寺の僧侶が、日常使いの簡素な漆器を作り始めたのが起源とされています。その後、上質な漆を産出する浄法寺は、全国有数の漆器産地として繁栄しました。現在生産されている漆器も、漆本来の美しさを堪能できるよう、無地で仕上げた製品が主流となっています。
【南部鉄器/金工品】1975年(昭和50年)指定
南部鉄器は、岩手県の奥州市・盛岡市で生産される鉄製の鋳造器具で、茶の湯などに使われる「鉄瓶(湯を沸かす急須)」や風鈴がとくに有名です。奥州市で作られていた鉄器は11世紀、藤原清衝が近江の鋳物師を呼び寄せ、生産を始めたのが起源とされています。また、盛岡市で作られていた鉄器は16世紀、盛岡藩の奨励によって生産が開始されました。その後、両市の鉄器はそれぞれ独自の発展を遂げてきましたが、1959年に県内統一の協同組合が設立され、総称して南部鉄器と呼ぶようになりました。
秋田県の伝統的工芸品(4品目)
【樺細工/木工品】1976年(昭和51年)指定
秋田県仙北市で主に生産される樺細工(かばざいく)は、桜の樹皮を用いた木工工芸品で、茶筒や小箱、煙草入れなどに利用されています。桜の樹皮には湿気を寄せつけにくい性質があるため、乾燥物の保存に古くから使われていました。樺細工が現在の形で生産されるようになったのは18世紀ごろとされ、藩政時代は下級武士の副収入源となっていたそうです。
【川連漆器/漆器】1976年(昭和51年)指定
秋田県湯沢市で主に生産される川連漆器(かわつらしっき)は、13世紀に稲庭藩主・小野寺重道の弟である道則が、武具への漆塗りを家臣に命じたのが起源とされています。その後、江戸時代に入ると、身近な柿渋の下地を使用した椀物も生産されるようになり、丈夫で安価な漆器として人気となりました。堅牢で価格も手ごろな川連漆器は、現在も日常使いの漆器として幅広く利用されています。
【秋田杉樽桶/木工品】1984年(昭和59年)指定
秋田県の能代市・大館市を中心に生産される秋田杉樽桶(あきたすぎおけたる)は、その名の通り、秋田杉を原料とした樽桶で、その起源は16世紀ごろとされています。江戸時代には藩のもとで生産が拡大し、樽桶の産地として全国に知られるようになりました。柾目(木の年輪に対して直角に裁断した木材)の杉材を、竹や銅などでしっかりと組んでいるため、長年使用しても変形や狂いが少なく、その美しさにも定評があります。
【大館曲げわっぱ/木工品】1980年(昭和55年)指定
秋田県大館市に伝わる大館曲げわっぱは、天然の秋田杉を使用した円筒形の曲物で、主におひつや弁当箱、わっぱ飯などに利用されています。江戸時代、領内の豊富な天然杉に着目した大館城代佐竹公が、武士の内職として生産を推奨したことが始まりといわれています。
── 以上、今回は北海道・青森県・岩手県・秋田県に伝わる11品目をご紹介しました。次回の《全国47都道府県の伝統的工芸品を巡る~その2》では、東北地方南部(宮城県・山形県・福島県)の指定品目にフォーカスします。
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