建築塗装工事の基本を解説!屋根や外壁の塗料、仕上げの種類は?
2019.07.05建築塗装は単に色を塗るだけではなく、建築物を保護して、耐久性を高める役割を持っています。昨今では中古住宅市場の拡大と住まいの維持管理の重要性が認識され始めたことにより、塗装リフォームの需要が拡大して来ました。建築塗装工事の流れや塗料の種類、塗装の工法などについて解説していきます。
建築塗装とは?
建築塗装とは、建築物の屋根や外壁、内壁、床などに塗料を塗り、仕上げを行う工事。建築塗装の主な目的は美観をよくすることと、建物を保護することです。建築物にはコンクリートやモルタル、鉄、木材といった素材が使われていますが、風雨や湿気、紫外線の影響によって、サビが生じたり、もろくなったりしてしまいます。塗装を施すことによって、建築物を美しく保つとともに、素材の表面を保護することができます。
建築物を美しく保つため、建築塗装工事は新築時以外にも、定期的に修繕工事として塗り替えが行われています。
外壁塗装の流れ
建築塗装はどのような流れで工事を進めていくのか、住宅の外壁の塗り替え工事を例に説明していきます。住宅の外壁塗装工事は、通常10日間ほどの期間が目安です。ただし、実際には日曜日を休日とし、天候によっては作業を休止することから、2週間程度かかることがあります。
・足場の設置<期間:1日>
外壁塗装は高所での作業となるため、足場業者が足場を組み立てます。
・高圧洗浄<期間:1日>
汚れが付着した状態では塗料がつかないため、外壁や屋根の高圧洗浄を行い、コケやカビ、汚れを落とします。また、濡れた状態では塗装できないため、乾かす時間も含め、高圧洗浄には丸1日必要です。高圧洗浄機が使えない場所はブラシを使って手作業することになるため、手作業する箇所が多い場合には、作業期間が長引きます。
高圧洗浄時には汚水が隣家に飛散してしまうことがないよう、足場のまわりに飛散防止シートをかけておきます。また、念のために前日に周辺の住宅に周知しておきましょう。
・下地処理<期間:1日>
クラック(ひび割れ)があれば補修を行って埋めた後、ケレンと呼ばれる古い塗膜やサビを落とす作業を実施します。ケレンは作業方法や既存の塗膜をどこまで剥がすのか、作業内容によって4種類に分類されています。塗膜面などの状態から適切な処理方法を選択することが大切です。
1種ケレンは、高圧ホースで研削材を吹き付けるブラスト工法によって、すべての既存塗膜を除去するものです。2種ケレンは電動工具で既存の塗膜をすべて除去します。3種ケレンは既存の塗膜の割れや膨らみ、サビがある部分だけを電動工具で除去するものです。4種ケレンは粉化物や汚れをワイヤーブラシやサンドペーパーで除去します。
1種ケレンは鉄部の腐食が激しい場合に用いられますが、住宅で行われることはほとんどありません。2種ケレンはサビが発生している部分が30%以上あるケース、3種ケレンはサビの発生している部分が5%以上30%未満のケースです。4種ケレンはは塗膜の劣化が軽微な場合に選択されます。
・養生<期間:1日>
養生は塗料が付着してはいけない場所を養生シートなどで覆う作業です。窓や玄関ドア、エアコンの室外機のほか、植栽や車などにも養生を行うことがあります。養生テープの貼り方は仕上がりを左右しますので、直線部分はピンときれいに貼って見切るなど、丁寧な仕事をすることが大切です。
・下塗り<期間:1日>
下塗りは外壁面を均一にし、上塗り塗料が密着しやすくなるように行う作業で、塗料が染みこむのを防いだり、既存の塗料の色を消したりする役割もあります。下塗り材の色は透明や半透明で、中塗りや上塗りに使う塗料とは異なります。
・本塗り<期間:2日>
本塗りは中塗りと上塗りの2回行い、同じ塗料を使用します。塗料を2回塗るのは膜厚をつけることが目的です。下塗りが乾いてから中塗り、中塗りが乾いてから上塗りと進みますので、下塗りと中塗り、上塗りは最低でもそれぞれ1日ずつ必要です。
・点検や手直し<期間:1日>
塗り残した場所や塗りムラがないか点検した後、お客様に確認いただき、不良箇所が見つかった場合は手直しを実施します。
・足場の解体と片付け<期間:1日>
養生シートの撤去や足場の解体、ゴミの片付けなどを行い、お客様に最終確認をしていただき、工事が完了します。
下塗り材のシーラーとフィラーの違い
建築塗装で使われる下塗り材にはシーラーやフィラーなどがあります。シーラーとフィラーは何が異なり、どのように使い分ければよいのでしょうか。
・シーラーとは
シーラーは粘土が低く、色は透明や半透明です。シーラーは本塗りの塗料を密着させやすくするほか、コンクリートのアルカリの抑制や木材など塗料を吸収しやすい素材の目止め効果などもあります。
シーラーは大きく分けると水系シーラーと溶剤シーラーに分類でき、シーラーと塗料のタイプが合っていないと、塗膜が剥がれやすくなるため注意が必要です。本塗りに水系塗料を用いる場合は水系シーラー、溶剤塗料を使う場合は溶剤シーラーといった形で選びます。
・フィラーとは
フィラーはシーラーよりも粘度が高く、穴やひび割れを埋めて表面を平らにし、本塗りの塗料と密着させやすくするために用います。モルタルの外壁の塗装に使われることが多いです。フィラーには、シーラーの機能も持つ微弾性フィラーや、防水効果を持つ弾性フィラーといった種類もあります。
フィラーはシーラーよりも付着性が弱いため、下地の状態によっては、シーラーを下塗りした後にフィラーを塗ります。
塗料の成分と種類
塗料の種類は、使用されている樹脂によるもののほか、塗料の成分を溶かす液体による種類や、硬化剤の有無によって分けられます。
・塗料を構成する成分
塗料の成分は、樹脂と顔料、添加剤とこれらを溶かす液体で構成されています。樹脂は塗膜をつくる役割。アクリルやウレタン、シリコン、フッ素といった樹脂の種類によって、塗膜の耐久性が大きく変わります。顔料は色をつける役割があります。添加剤は塗料の性能をアップさせるためのものです。
・水性塗料と油性塗料の違い
水性塗料と油性塗料という種類は、塗料の成分を溶かす液体の違いによるものです。水性塗料は塗料の成分を水で溶かしたもので、油性塗料は溶剤で溶かしたものと弱溶剤で溶かしたものがあります。油性塗料の方が水性塗料よりも、雨水に強いなど耐久性に優れ、塗料が密着しやすくツヤを維持しやすい、低温下でも乾燥しやすいといったメリットがあります。一方、水性塗料の方が価格が安く、匂いが少ないです。ただし、最近では水性塗料の開発が進み、性能の差は以前ほどではなくなってきています。性能を重視したいけれども匂いが気になる場合は、油性塗料の中でも弱溶剤が向いています。
・1液型と2液型の違い
さらに、塗料は硬化剤の配合の有無によって、1液型と2液型という種類があります。1液型は、硬化剤が配合されていて塗料単体でそのまま使えるもの。2液型は硬化剤を加えて使用する塗料です。2液型は硬化剤を混ぜる手間がかかり、混ぜてから6~8時間以内に使い切らなければなりませんが、耐久性に優れ仕上がりもきれいです。
・塗料は種類が細分化されている
塗料はこれらの種類の組み合わせで商品が展開されています。たとえば、シリコン樹脂塗料だけでも、水性と弱溶剤と溶剤、さらにそれぞれの1液型と2液型という6種類があるのです。
続いて、塗料の樹脂の種類による違いについて詳しくみていきます。
樹脂による塗料の種類と耐久性の違い
塗料は配合されている樹脂によって耐久性が異なり、基本的に耐久性と価格は比例しています。主な塗料の想定委されている耐久年数や特徴をまとめました。屋根塗装と外壁塗装では、屋根の方が雨や紫外線による影響を受けやすいため、外壁よりも耐久年数が短くなります。
・フッ素塗料
<耐久年数:屋根‐約7~10年、外壁‐約15~20年、1缶の価格4万~10万円>
フッ素樹脂は蛍石からつくられた樹脂で、耐候性や耐薬価性が高く、紫外線に強いのが特徴です。また、油脂性の汚れをはじく特性から、外壁など汚れが気になる場所での使用にも向いています。フッ素塗料は耐久性が高く、屋根塗装は約7~10年、外壁塗装は約15~20年、持つとされています。ただし、フッ素塗料は固いため、塗装を施した箇所にひび割れが起こると、割れてしまうケースがあることが難点です。フッ素塗料は耐久性の高さが魅力ですが、価格の高さなどから住宅で使われることは少なく、頻繁に塗り替えるのが難しい橋梁や大型ビルなどで使われることが多いです。
・シリコン塗料
<耐久年数:屋根-約5~7年、外壁-約7~10年、1缶の価格1万5,000円~4万円>
シリコン塗料は耐候性が高く、親水性の高さから汚れが付着しにくいことが特徴です。耐久年数は、屋根は約5~7年、外壁は約7~10年が目安です。シリコン塗装は耐久性と価格のバランスがよいとされ、以前よりも価格が下がってきたこともあり、住宅の外装工事で使われる塗料の主流となりました。遮熱性能を付加した機能性の高いシリコン塗料もあり、光沢のあるツヤありとマットなツヤなしが選べるなど、商品のバリエーションも豊富です。ただし、シリコン塗装は商品による品質や価格の差が大きいですので、信頼できるメーカーのものを選びましょう。
・ウレタン塗料
<耐久年数:屋根-約3~5年、外壁-約5~7年、1缶の価格5,000円~2万円>
ウレタン塗料はポリウレタンからつくられた塗料で、柔らかく、弾性に富んでいて密着性が高いのが特徴。取り扱いやすさからDIYでよく使われています。ウレタン塗料の耐久年数は、屋根は約3~5年、外壁は約5~7年であり、かつては住宅の屋根や外装に使われる塗料の主流でした。今でも、弾性の高さから木製の外壁材や雨どいなどを中心に使われることがあります。ウレタン塗料を用いると、光沢のある独特の仕上がりになります。
・アクリル塗料
<耐久年数:屋根-約2年、外壁-約3~5年、1缶の価格5,000円~1万5,000円>
アクリル塗料を用いると、光沢のある仕上がりになります。かつては、アクリル塗料が屋根や外壁の塗装に使われていましたが、ウレタン塗料やシリコン塗料の価格が下がったことなどにより、今では住宅の外装の塗装工事にはほとんど使われなくなりました。耐久年数が屋根は3年持たず、外壁は約3~5年と短いのが要因です。耐久性の高い塗料を用いて、塗り替えの回数が少ない方が長い目で見ると、コストパフォーマンスがよくなります。
ただし、「ピュアアクリル」という商品は、アクリル塗料の不純物を取り除いた塗料で、フッ素塗料並みの耐久性があるとして注目されています。
機能性塗料の種類
機能性塗料とは、添加剤を加えることなどにより、機能や性能を付与した塗料です。主な機能性塗料を挙げていきます。
・遮熱塗料
遮熱塗料は太陽光の赤外線のうち、近赤外線を反射することで建物への熱の影響を緩和し、室内の温度の上昇を軽減します。ただし、冬場も近赤外線を反射してしまうため、室内があたたまりにくいことがデメリットです。また、塗装色による遮熱効果の違いが大きく、白色や淡彩色で塗装したときと同じ効果が濃色では得られないため、塗装色に制限があります。
・断熱塗料
断熱塗料は太陽光からの熱を塗膜に溜めこむことで、室内の温度上昇を抑える塗料です。熱伝導率の低さから、室温を保持できるため、夏は涼しく、冬は暖かい住まいの実現を目指します。ただし、断熱塗料は白をベースにしてつくられたカラーバリエーションのため、塗装色は限られます。
・光触媒塗料
光触媒塗料は、セルフクリーニング機能のある塗料。酸化チタンという物質が太陽光に当たると活性化酸素をつくって汚れを分解。雨が降ったときに水をはじく状態になっているため、雨水が汚れと塗膜の表面の間に入って汚れを流す仕組みです。光触媒塗料には、気中の汚染物質も除去する効果があります。また、カビや藻が生えにくいため、湿気の多い立地の外壁の塗装にも向いています。ただし、太陽光の当たりにくい場所では効果が薄れる点に中止が必要です。また、光触媒塗料は耐久年数が20年とされていますが、実際にはまだ塗装してから20年経った建物がないことから、耐久性に関しては未知数です。
・防カビ塗料
防カビ塗料はカビの発生を抑制する防カビ剤が配合された塗料です。市販のカビ取り剤や防カビ剤は、指定された13種類の菌のうち3~5個の菌に効果がある商品であれば、JIS規格のカビ取り剤や防カビ剤として認定されます。しかし、実際にはカビの種類は57種類あるとされているため、市販のカビ取り剤や防カビ剤では効果が感じれないことがあるのです。多くの種類のカビに効果のある強力な防カビ剤が配合された防カビ塗料であれば、湿度の高い環境下であっても、カビの発生を抑制することが期待できます。
塗装の工法の種類
塗装の工法は、ローラー工法と吹付工法の2つが主流です。施工箇所によってはハケ塗りも用いられています。
・ローラー工法
ローラー工法は広い面を均一に塗りやすい塗装方法で、飛散する塗料も少ないため、効率よく塗料を使うことができます。ローラーにはウールローラー、砂骨ローラーなどの種類があります。ウールローラーは柔らかな毛が特徴で、壁面の模様を潰さずに塗ること可能。毛足の長さで、凸凹した表面に使用する長毛ローラー、使い勝手のよい中毛ローラー、平に塗りやすい短毛ローラーがあります。砂骨ローラーは多くの小さな穴が開いているのが特徴で、たくさんの塗料をつけて厚みをつけて塗りたいときなどに向いています。
ローラーでは細かい場所や端の部分は塗りにくく、ヘコミのある場所は塗料が溜まりやすくなるため、刷毛を併用することが多いです。
・吹付工法
吹付工法は吹付機を用いて噴射して塗装していく方法で、短時間で広範囲の塗装ができることがメリットです。また、複雑な模様をつくれることから、重厚感のある仕上がりにすることもできます。ただし、職人の技量によって仕上がりには差が生まれます。
主な仕上げ方法を挙げると、リシン仕上げは、砂や石などの骨材を塗料に混ぜて吹き付けるもので、リーズナブルなことから住宅でよく用いられています。特に和風のデザインの住まいに合う施工方法です。スタコ仕上げは、塗料に大理石や砂などの骨材やセメントなどを混ぜて吹き付ける方法で厚みがあるため、立体感や高級感を感じられます。吹付タイルは粘度の高い塗料を口径の広い吹付機を用いて吹き付けます。
まとめ
建築塗装は単に塗料を塗る技術だけではなく、下地調整や塗料の選び方なども仕上がりに大きく影響します。適切に下地調整を行っていなければ、塗膜が剥がれやすい状態になってしまいます。塗料の種類による違いを理解したうえで、施工箇所や使用年数、予算に合った商品を選びましょう。
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