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物流界を支えるトレーラーが展開するダイナミック・ワールド!

長くてスマートかつ、ダイナミックな車体が印象的な「トレーラー」。

現在、日本で最も多く走っているトレーラーの全長は16.5mほどで、その存在感のあるフォルムから、運送や物流に縁のない人でも、高速道路や国道で陽光や街灯を反射する銀色のダイナミックな荷台を、日常の一風景として思い起こす人も多いことでしょう。

トレーラーのドライバーは、昔から「運送業界の花形」と呼ばれる存在。そのゆえんは、高度な技術と豊富な経験値、そして繊細な感覚が運転操作に必要とされる点にあります。普通車を運転する人にとってもその難しさは容易に想像できますが、狭い日本の道路を長い車体を自在に操って走行させるテクニックは非常に高度な技術であり、ハンドル操作のなかでもバックしながらトレラーを車庫入れする場合や右左折する場合、トラクタとトレーラーの連結部が“くの字”に折れ曲がるため、その難しさは運転技術の中でも最高ランクと呼べるもの。

また最近では、運送会社の作業着(作業服)を凛々(りり)しく纏(まと)い、颯爽とハンドルを操る女性ドライバーもなかりの頻度で見かけるようになりました。

そんなトレーラーのドライバーの活躍の場は多岐にわたり、食品、建築資材、石油、車をはじめ、ときには軍用車両や小型飛行機や船舶など、多種多様なものがトレーラーにて運搬されています。それは、日本の国土を人体になぞらえれば、「物流」は物資やお金を流動させる血管にたとえることができ、実際に「動脈物流」という物流界独特の表現もあります。日本の大動脈を日々東奔西走するトレーラーは、物資の製造元と消費者である私たちをつなぐ存在であり、物流が滞れば私たちの暮らしのみならず、日本経済もたちまち成り立たなくなってしまうことになります。

そうした存在のトレーラーですが、最近では物流領域においてトレーラーに注目が集まっていることをご存じでしょうか。今回は、規格サイズの規制緩和など、最新トピックが更新され続けている点や、意外と知られていないトレーラーの種類や免許、魅力などをさまざまな角度からお伝えします。

あのタンクローリーもミキサー車もトレーラー

「トレーラー」……。この表現は、一般的に運転席のある車の頭の部分から荷台の最後尾までを指す場合が多いのですが、本来トレーラーとは「被牽引車(ひけんいんしゃ)」と呼ばれ、牽引されるための装置を備えた原動機(エンジン)を持たない車両のことを指します。

一方、「被牽引車」を牽引する車両については、「トラクタ」「牽引車」「トレーラーヘッド」とさまざまな呼称があるなか、一般的に「トラクタヘッド」と呼ばれます。そして、「トレーラー」と「トラクタヘッド」を合わせた呼称を「牽引自動車」といい、牽引自動車は「トレーラー連結車」や既述の「トレーラー」とも呼ばれます。

さらに、トラクタは2種類に、トレーラーは3種類に分類され、それぞれに特徴があります。

【トラクタ】

◾️セミトラクタ

運転席のみで荷台がなく、単体では荷物を運べません。

◾️フルトラクタ

運転席も荷台もあり、一見してトラックに見えます。単体でトラックとしての利用もできますが、荷台の後ろにトレーラー(フルトレーラー)を連結することもできます。

◾️セミトレーラー

荷台部分のみであり、タイヤも後輪のみのタイプなので、トラクタに連結されていないときには自立させるために補助足が必要になります。トラクタ(セミトラクタ)に連結して荷物を運びます。

◾️フルトレーラー

前輪・後輪があるのでトラクタに連結されていないときでも自立が可能。トラクタ(フルトラクタ)に連結して物資を運びます。

現在、日本に最も普及しているのは、「セミトラクタとセミトレーラーが連結されたタイプ」です。

では、具体的にこれらのトレーラーがどのようなものを運搬しているのか、セミトレーラーに分類される「タンク型」と「コンテナ型」に絞ってご紹介しましょう。

【タンク型】

タンクローリーとして「危険物ローリー」「非危険物ローリー」「高圧ガスローリー」に大別され、それぞれのタンクの材質は、その運搬物の性質によって材質や搭載される機能が選ばれています。また、タンク内はひとつのつながった空間ではなく、「仕切り板」によっていくつかの小部屋に間仕切りされており、この一部屋が約4000L以下になるように設計されています。

これは、最大積載量が3万L(30t)もの大量の運搬物を取り扱う運搬車であることに関係しています。間仕切りがされていないひとつの空間に30万Lもの液体を入れた場合、運転時にその液体が同一方向に揺れると、その液体の重力で車体のバランスが崩れ、横転するリスクが高まるからです。

そのため、一方向に大量の液体が傾くことを防ぐため、タンク内を小部屋にわけているのです。さらには、部屋ごとに違う種類の液体を入れることも可能なので、一回の運搬で数種類の液体を運べるメリットもあります。

◾️危険物ローリー

国の消防法により「車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、または取り扱う貯蔵所」と定義されており、これを「移動タンク貯蔵所」といいます。「危険物取扱者」の資格を有した者の運転か、同乗が義務づけられており、運搬されるのは石油や劇薬などの危険物。

タンクの材質は化学変化の起こりにくい普通鋼や強度を上げた高張力鋼材などが多く使われ、アスファルトや液体硫黄のように、外気温で固まってしまうものを運ぶ際は、タンクが二重保温構造になっているものや、加熱装置が設置されているものを使用します。

◾️非危険物ローリー

ハチミツなどの食品や飲料、セメントなどを運搬します。食品や飲料を運ぶ目的にそって、腐食に強く、傷がつきにくいステンレスが多く使われています。ちなみに、セメントを運ぶのは「ミキサー車」ですが、このミキサー車は、生のコンクリートを撹拌し続けながら走行する機能を持つタンクローリーのひとつに数えられています。

◾️高圧ガスローリー

高圧ガスを運搬します。圧力に耐えうる必要性から、複数枚を溶接した普通鋼や高張力鋼材が使われています。

【コンテナ型】

主に海上コンテナの運搬に活用されており、各港や空港の周辺で見かけられます。国土交通省の調べによれば、2010年の日本の港湾における輸出入コンテナ貨物量は約2億5000tであり、その国内輸送の9割以上がこのトレーラーによる輸送です。コンテナは、多彩な物品の輸出入の際に用いられているため、海上輸送用に国際的な規格がそれぞれ取り決められています。

この海上輸送には、世界における輸送インフラのギャップを整える目的で、国際的に用いられているのが「ISO規格」コンテナ。1961(昭和36)年に米国の連邦会事務局と規格協会である「ASA(American Standards Association)」が、米国規格を制定するとともに、国際標準化機構である「ISO(International Organization for Standardization)」に国際規格化を申し入れました。これにより、翌1962(昭和37)年に国際規格が制定されたのです。この規格統一により、それまで国によってバラバラであったコンテナサイズが整えられ、輸送作業の効率化と輸送料金の単一化に役立っています。

また、日本で用いられているISO規格サイズは以下の4種類に分類されており、これらは、多種多様なものを輸送するために、一般の貨物に用いられる「ドライコンテナ」や、冷凍機能や冷蔵機能を持ち合わせている特殊な「リーファコンテナ」など、さまざまなタイプのものがあります。

ちなみに、畳1帖を1.62平米(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)とすると、20フィートコンテナは約9帖、40フィートコンテナは約17帖におよびます。人が生活できるほどの十分な広さがあることがわかりますね。

環境問題や人員不足解消に向け、更新され続けるトレーラー・トピック

ここまでは、トレーラーの基本的な仕様についてご紹介してきましたが、ここからは、このトレーラー連結車がなぜ物流界にとって不可欠なのか、どのような可能性を秘めているのかについてスポットをあてていきます。

【海上コンテナ45フィートの導入】

●2015年4月1日の改正

セミトレーラーの連結全長の長さの制限がこれまでの最大17mから18mへと緩和

●2019年1月25日の改正

フルトレーラー連結車の車両長の限度を現行の21mから25mへと緩和

フルトレーラーへの規制緩和は、日本を代表する運送会社や商用車メーカーの連携・協争があり実現したものといえますが、2016年、国土交通省は「生産性革命プロジェクト」と銘打ち、車両長21m超の走行の実証走行実験を開始。これまでに日本梱包運輸倉庫、ヤマト運輸、福山通運、西濃運輸の4社がこのプロジェクトに加わってきました。

国土交通省の調べによれば、12m車両の大型トラックと比較した場合、「ダブル連結トラック」は「21m車両」で約2割、「21m超車両」では約5割の人員削減、Co2にいたっては「21m車両」で約3割、「21m超車両」で約4割もの削減がのぞめることが検証されています。

ここに言う「ダブル連結トラック」とは、いすゞと日本トレクスが共同で開発した、フルトラクタにフルトレーラーをつなげた車体のこと。「ダブル連結トラック」にすることで、トレーラー連結車1台で大型トラック約2台分に相当する22tもの荷物を運べるようになったのです。

規制緩和がなされて以降、しばらくの期間、主な通行経路区間は新東名・海老名JCT~豊田東JCTに限られていましたが、8月以降は、東北自動車道(北上江釣子ICまで)、圏央道、東名高速道路、名神高速道路・新名神高速道路、山陽自動車道、九州自動車道(太宰府ICまで)に拡充。

また、ほとんどのセミトレーラーはもともと後ろの貨物車部分に重量税がかからず、トラクタのほうのみに税金がかかる仕組みになっていました。しかし、今回のセミトレーラーへの規制緩和によって、重量税がかからない点は変わることなく運べる荷物が増えるようになったことで、この変化が物流業界に大きな影響・変化をもたらす、といわれているのです。

コスト削減のカギとなる「リフトアクスル」とは?

トレーラーには「車軸自動昇降装置(リフトアクスル)」という優れたシステムが多くの車体に搭載されています。このシステムは、積み荷の積載重量に応じて、自動でトレーラーのタイヤを地面に接地させたり、浮かせるなどの制御によって、トレーラーの「車軸数」を変更する機能を指します。

車軸数とは、左右のタイヤを対(つい)につなげている軸のことで、車を真横から見たときのタイヤの数=車軸数となります。

このシステムは世界中のトレーラーに搭載されており、日本では2001年から導入されていますが、さまざまなメリットが期待できるシステムゆえに、導入からの歳月が浅いにもかかわらず、すでに広く普及しています。そのメリットとは、以下の5つです。※以下、タイヤを浮かせている状態を「リフト」と記載します。

①タイヤやブレーキパットの磨耗を軽減

②燃費向上

③アスファルトを痛めることを軽減

④運転操作時のバランスをとりやすくする(ハンドル操作が軽くなる)

⑤高速道路料金を削減

日本の高速道路では、車軸数で通行料が決まるので、リフトアクスルを搭載することにより、かなりのランニングコスト削減がのぞめることになります。

リフト時は、道路とタイヤが接地していないことによって摩擦抵抗が減り、①~④のメリットが生まれますが、導入の主目的ともいえるのが、⑤の高速道路料金の削減です。ちなみに、NEXCOの高速道路における車種区分は以下のように定義されています。

【NEXCOの高速道路における車種区分】

●大型車/トレーラー(牽引普通車と被牽引自動車(2車軸以上)との連結車両、牽引中型車と被牽引自動車(1車軸)との連結車両および牽引大型車(2車軸)と被牽引自動車(1車軸)との連結車両)

●特大車/トレーラー(牽引中型車と被牽引自動車(2車軸以上)との連結車両、牽引大型車と被牽引自動車との連結車両で車軸数の合計が4車軸以上のものおよび特大車が牽引する連結車両)

つまり同じトレーラーでも、3軸の場合は「大型車」の高速料金となり、4軸の場合では「特大車」の高速料金となるのです。

たとえば、これから冬に向けて旬を迎えていく北陸で水揚げされた魚介を、東京の豊洲市場までトレーラーで運搬するとしましょう。この場合、石川県の「金沢西」から東京の「豊洲」までの高速道路を走行することになります。

片道の高速料金(時間帯などの条件により金額は変動)

●大型車  1万9440円

●特大車  3万1500円

往復とも特大車で高速道路を往復した場合、高速通行料金は6万3000円になりますが、往路を特大車、復路を大型車で走行した場合、5万940円となります。

一回の運行の差額は1万2060円ですが、日々運行することを考えれば、年間にした差額がかなり大きな金額になるのはいうまでもありません。

また、片道にして6時間以上もかかる石川県から東京への長い道のりの往復を考えれば、ハンドル操作が軽くなることは、運転手の疲労軽減に大きく影響します。なんといっても人手仕事であることに間違いないトレーラーの運転ですから、大型化が進むなかで、運転操作の疲労の軽減は、コストとは比べようのない大きなメリットなのです。

またこのシステムは、ETCにも対応しています。トレーラーのETC車載器をセットアップする際、「牽引装置あり」にセットしておくと、ゲートで車軸数をETCのセンサーが検知するしくみになっているのです。

トレーラー運転手になるために必要な免許

トレーラー運転手になるために不可欠な免許ですが、牽引免許は以下の3つに分類されています。

①牽引自動車免許

750kg以上の貨物トレーラーを運転できる第1種免許。海上コンテナやタンクローリー、ダンプカーなど物流の仕事に不可欠な免許。

②牽引第二種免許

車両総重量が750kgを超える車両に乗客を乗せて運転できる免許。トレーラーバスなどを運転する際に必要となりますが、日本国内ではトレーラーバスがほとんど運行されていないのが実情です。ちなみに、毎年約2000人がこの資格を受験します。実用であまり使うことができないにもかかわらず、この免許が高い人気を誇る秘密は、牽引二種免許が国内の運転免許の中で“最難関”に位置づけられているから。この点も“人気”に大いに関係しているといわれています。

③牽引小型トレーラー限定免許

通称「ライトトレーラー免許」と呼ばれ、750〜2000kg以下のトレーラーに限定して牽引できますが、この免許は、教習所ではなくはじめから免許試験場で受験をしなければいけません。また、試験のために自前の試験車両を持ち込む必要があり、受検者は当然ながら運転できないので、すでに牽引免許を持っている人に運転してもらい、試験場に行かなければなりません。

次に、この3つの免許のうち、運送業の仕事に携わるうえで不可欠な「自動車牽引免許」にスポットをあてます。

牽引自動車免許は、18歳以上で、大型免許・中型免許・普通免許・大型特殊免許のいずれかを取得していることが条件となります。何より、トレーラーの運転手として働く場合、扱う車種は大型トレーラーがほとんどであることから、実際に就職する際は「大型免許」が必要とされることが多い点に加え、業務の裾野を広げることにもつながる利点もあるので、大型免許の免許を取得しておいて損はないといえるでしょう。

この自動車牽引免許は、普通免許のような仮免許や修了検定がなく、学科もありません。また、技能教習も路上教習はなく、場内のみで行われるという特徴があります。

免許の取得方法は二通りあり、「公安委員会」公認の「指定教習所」で取得する方法と、運転免許試験場で受けるいわゆる「一発試験」に分けられます。

すでに普通車以上の車を運転できる前提の人が受けるのですから、どちらがいいとは一概にはいえませんが、その運転操作の難易度から、運送の「花形」といわれる牽引車の場合、トラックと比較しても「後退」「方向転換」「縦列駐車」の難易度はとても高いので、技術を習得できない運転免許試験場よりも、教習所でコツを身につけたうえで免許を取得する人のほうが、年代を問わず多いようです。

── 戦後復興からバブル時代、そして、その崩壊を経てきた日本は、経済の発展をめざすとともに、環境への配慮や人員不足解消に向けた工夫など、さまざまなことがらにおいての経営努力が求められています。そうした意味でも流通・運送業界において、それら現代社会が抱える多面的な課題を打開できると国をあげて注目されているのが、このトレーラーであることは一面の真理といえるでしょう。

そして、これまでの車体の大きさゆえの華やかさやハンドルさばきの難度に加え、環境問題などの将来的なリスク要因の低減に対応できるトレーラーをあやつるドライバー。その存在は流通・運送業界のみならず、日本経済を支える屋台骨として、その将来性と可能性が期待されていますし、さらには貢献性をもあわせもった「運送業界の花形」として、今後もますます期待が寄せられることになりそうです。

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