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【メカの秘密シリーズ】電子レンジが食品を温める仕組みとは?

大家族、一人暮らしにかわらず、どの家庭でもベッドや冷蔵庫と同じくらいの必需品であり、いまやキッチンになくてはならない存在の電子レンジ。

そんな身近な電子レンジですが、「電子レンジの最大の機能とは?」と問われたら、あなたは何と答えますか。もちろん「食品を温めること」という答えが返ってくるのでしょうけど、実はそれだけでは不完全です。

食品を熱するだけなら火でこと足りますし、熱源ということを考えれば、むしろ火力のほうが電子レンジに勝るでしょう。つまり、電子レンジの機能は単に食品を熱するだけでなく、「ごく短時間に、食品内部まで加熱すること」が電子レンジの最大の機能といえます。加えて「食品を加熱しながらも、それが入る容器を温めないこと」も大きな特徴になります。

でもどうして、そんなことが可能なのでしょうか。毎日使っている電子レンジですが、そのメカとしての仕組みをきちんと知っている人は少ないはず。今回はそんな電子レンジの秘密に迫ってみましょう。

ゆっくり時間をかけて家庭に浸透した電子レンジ

米国で開発された電子レンジが、初めて製品として発売されたのは、第2次世界大戦後の1947年のこと。この製品は評判を呼びましたが、高価なうえに大型の装置であったため、当初はごく一部のレストランなどで使われるだけでした。それでも多くの人が電子レンジというものに興味を持ち、他の電気メーカーがこぞって開発に参入するきっかけを作ります。

日本では、1961年に国際電気(現・日立国際電気)が、国産初の業務用電子レンジを発売したことが始まりです。しかし、一般家庭に普及するようになったのは、それから20年ほど経った1980年代になってから。

日本国内で爆発的に普及しなかった理由は、調理家電としてはかなり高価だったこと、レンジで「チン」の便利さが料理を手抜きするイメージにつながったから……といわれています。それから40年ほど経った現在では価格帯も手頃になり、普及率がほぼ100%になったわけですから、時代とともに日本人の感覚も大きく変化したことになります。

電子レンジは、レーダー技術から誕生した

さて、米国で電子レンジの原理が発見されたのは1945年のこととされ、当時マサチューセッツ州にあった軍需会社レイセオン社で、レーダーの研究技師をしていたパーシー・バロン・スペンサーがその発見者といわれています。現代社会における便利な商品やサービスのモトをたどると、軍事技術が転用・応用され、科学技術と結びついたものが非常に多いのですが、電子レンジもそのひとつだったようです。

レーダーに関する技術は1930年代の英国で開発され、第2次世界大戦時に米国で著しい進化を遂げます。この研究過程で、特に航空機の探知にはより波長の短い電磁波「マイクロ波」が有効とわかってきたのです。

この研究に従事していたスペンサーは、ある時、ポケットに入れておいたチョコレートが溶けていることに気づき、この些細な変化から「マイクロ波は食品に熱を与えるのではないか」と考えたそう。そこでチョコレート以外の食品でも実験してみると、あらゆる食品が熱を帯びることがわかりました。ここから本格的な研究がスタートし、終戦直後の1946年に電子レンジを発明し、1947年の製品化につながったのです。

マイクロ波が食品中の水分を振動させて加熱

ではここから、電子レンジが食品を温める仕組みについて、具体的に説明していきましょう。

電子レンジの心臓部には「マグネトロン」と呼ばれる電子管があります。これは磁電管とも呼ばれ、電磁波の一種である強力な「マイクロ波」を発生する機械のこと。もともとレーダー技術は、空に向けて電磁波を放ち、その反射波を観測して敵の位置を探知する技術ですが、この電磁波は飛行中の航空機にも反射することがわかり、第2次世界大戦中に敵機の探知用に対空レーダーが研究されるようになりました。そして、航空機の探知にはより波長の短い電磁波が適するとわかり、マイクロ波を発振するマグネトロンが開発されたのです。

電磁波とは、マイクロ波をはじめ電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線(エックス線やガンマ線)などの総称です。また電磁波は、電場(電界)と磁場の変化を伝わる波(波動)なので、1秒間に何度もプラスとマイナスの間を行き来する特徴があります。これを「周波数」と言い、それぞれの電磁波が固有の周波数を持っています。マイクロ波は電磁波の中でもその周波数が極めて高い(波長が短い)ことが知られています。テレビに使われている電波の周波数はおよそ90〜770MHzですが、マイクロ波の周波数は2450MHzです。

この高周波数のマイクロ波を水分にあてると、水分に含まれた分子が回転運動をします。この水の分子運動は、食品内部に含まれた水分でも同じように起こります。すると、水の分子と食品に含まれる水以外の成分との間に摩擦が起こり、それによって摩擦熱(熱エネルギー)が発生して、食品全体が温かくなるのです。これが電子レンジの原理です。

一方で、ガスコンロなどで鍋やフライパンに入れた食品を加熱するときは、炎という外部からの熱によって食品が温まります。しかし、電子レンジはマイクロ波の働きによって食品内部の成分を動かし、その摩擦熱によって内部から発熱する仕組みになります。外部から温まるか……、内部から温まるか……が火と電子レンジ大きな違いなのです。英語では電子レンジのことを「microwave oven (マイクロウェーブ・オーブン)」と呼びますが、この名称はまさに機能通りの表現と言えるでしょう。

マイクロ波の特性を、きちんと理解しよう

火とは異なる方法で食品を温める画期的な方法であることが発見されたマイクロ波ですが、その特性は万能ではなく、マイクロ波はあてる材質によって反応が変わることも特性のひとつとなります。

例えば、マイクロ波は耐熱ガラス容器などは通過する反面、金属には反射するという特性を持っていますし、木製の器はマイクロ波を吸収します。この特性から考えると、マイクロ波を通過させる器に入れた食品は温まりやすく、通過させない器に入れた食品は温められません。さらに、マイクロ波を吸収する材質の器は、その器自体も温めてしまうため、熱で変形させてしまうなどの可能性があります。

また、マイクロ波は人体に悪影響をおよぼすとの評価もあり、ガンや白内障などの危険性があるなどの調査結果が出されていることから、直接浴びることには危険が伴います。マイクロ波の人体への影響に対して、電子レンジは扉のガラス面を黒くしたり、金属製の網を入れたりして、マイクロ波が外に漏洩しないようにきちんと工夫されています。また、扉をきちんと閉めないと作動しない仕組みになってもいるのはこのためです。したがって、日常生活の中で電子レンジを使用することで、マイクロ波による健康被害を心配する必要はありません。

ちなみに、電子レンジには食品を置くテーブルが回転する「ターンテーブル式」と、床面はそのままの「フラットテーブル式」があります。マイクロ波は金属に反射するので、レンジ内の壁や床面に乱反射して食品にあたります。ターンテーブル式は食品自体を回転させ、そのマイクロ波をまんべんなくあてようとする機能であるため、食品が大きくて回転させられない場合は、温め方にムラが出る可能性があります。一方のフラットテーブル式は、食品を回転させなくてもまんべんなくマイクロ波があたるよう、マイクロ波が出るアンテナを回転さたり、アンテナ付近に金属のプロペラのようなものを付けて拡散させるなどの開発がなされています。

どうして電子レンジは「チン」になった?

ところで、電子レンジのことを「チン」と呼びますよね。食品を温めることを「チンする」とも言いますし、最近では電子レンジを活用した簡単な調理法を「レンチン料理」と言ったりします。この日本独特の呼び方は、どのようにして生まれたのでしょうか。

時は1960年代、日本の電子レンジの黎明期です。当時はまだ電子レンジは一部のレストランなどで使用されているだけでしたが、ある時そのメーカーにクレームが入ったと言います。それは「温め終わったのに気づかなかった」というものだったそう。火とは異なり、あまりに短時間で温まる機能に慣れていなかった人々にとっては、そろそろ温まっただろうと取り出してみたら、すでに冷めていた……ということが当時はよくあったようです。

そこでメーカーの開発者は、混雑するお客さんのざわめきや調理器具を扱う音が響くレストランの厨房でも確実に聞き逃さない合図とはどんなものか……を考え、新機種の電子レンジには仕上がりの合図をつけることにしたそう。そんなある日、会社の同僚たちとサイクリングに出かけた開発者は、自転車のベルに着目します。実際に路上で「チーン」とベルを鳴らしてみたところ、一緒にサイクリングを楽しんでいた人がみな開発者のほうを振り向いたことから、「これだ!」とひらめいたそう。

こうして自転車の部品メーカーから仕入れたベルを電子レンジの機能に装着したところ、電子レンジは大ヒット商品となり、現在に至ります。今では温め終了の合図は「チ〜ン」以外にも電子音の「ピーッピーッ」やブザー音など、いろいろな音が採用されていますが、それでも多くの人が電子レンジで温めることを「チンする」と言います。これは一部の地域にとどまらず、全国各地で浸透している日本ならではのニックネームとなっているわけです。

特に最近の電子レンジの機能向上はめざましく、オーブンレンジなど複合機能を持つものや、さまざまなオート機能を装備したものなど、時代とともに電子レンジは大きな進化を遂げ、複雑かつ手間のかかる料理も簡単に“チン”してくれます。今後も「チン」の愛称のままさらに進化していくに違いありません。

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