世界に誇る美しい伝統的工芸品。匠の技を持つ伝統工芸士の仕事に迫る!
2020.04.09手先が器用といわれる日本人。これまでの歴史において、その地方ごとの特性や気候、暮らしに応じて、日常生活に密着するさまざまな日用品を生み出してきました。そのアイテムは実に多岐にわたり、今日まで大切に使い続けられています。
衣食住にかかわるものとして、織物や染物などの着物に関するもの、土地ごとの土で作り出される陶器や磁器などの焼物、和紙や硯などの文具、仏壇や家具、台所で使う鉄器や包丁など、用途によって工夫を凝らして作られ、現在も広く普及しているモノたち。また、生活に根ざしていた日用品だけではなく、その技術や技巧を極め、究極の美を追求したことで芸術品や美術品の域に達した工芸品も数多く挙げられます。
ある地方に伝わる土産物が地域を代表する産業となり、伝統を受け継いだ職人が匠の技で作り続け、人々に愛されてきた……そんなアイテムが国から「伝統的工芸品」として認定され、日本はもとより世界からも高い評価を得るようになりました。
では、具体的に「伝統的工芸品」とはどのようなものでしょうか。伝統的工芸品を生み出す「伝統工芸士」についても見ていきましょう。
伝統的工芸品とはどんなもの?
一般的に「伝統工芸」という単語はよく耳にしますが、「伝統的工芸品」について正確にご存じでしょうか。「伝統工芸」と「伝統的工程品」では明らかな違いがあることを知っておきましょう。
「伝統的工芸品」とは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品で、次の5つの要件(経済産業省HPより抜粋)に該当することが条件です。
1. 主として日常生活の用に供されるものであること。
2. その製造過程の主要部分が手工業的であること。
3. 伝統的な技術または技法により製造されるものであること。
4. 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
5. 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、またはその製造に従事しているものであること。
つまり、伝統的工芸品とは、一定の地域で伝統的な材料や技法により主に手作業によって100年以上前から作られたものであり、しかも日常的に使われるものに限られています。逆に、歴史があり素晴らしい技法で手作りされているものでも、日用品としてふだんの暮らしで使用されないものは「伝統的工芸品」とはみなされないのです。
2019(令和元)年11月20日時点では、全国で235品目が伝統的工芸品として指定されています。
また、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)」に基づいて、全国の伝統的工芸品産業の振興を図るべく「一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会」が設立されました。伝統的工芸品には類似した製品との区別を図るべく、経済産業大臣指定伝統的工芸品のシンボルマーク(伝統証紙)が付けられ、品質管理がされていることを示しています。
どんな伝統的工芸品が思い浮かびますか?
伝統的工芸品と認定されたものは全国の47都道府県で合計235品目となりますが、その種類は織物、陶磁器、漆器、木工品、金工品、石工品、和紙、文具、貴石細工、人形などとさまざまです。業種別に見ると織物が38品目で一番多く、次いで陶磁器と木工・竹工品が同じ32品目となっています。
都道府県別に見ると1品目しか認定されていないところがあれば、京都府では17品目が、東京都では実に18品目が認定されています。
ではその内容にはどのようなものがあるのでしょうか。認定品目が一番多い東京都を例に見てみましょう。
●東京都の伝統的工芸品指定品目 ※2019(令和元)年11月20日時点
・村山大島紬 ・東京染小紋 ・本場黄八丈 ・江戸挿絵
・江戸木目込人形 ・東京銀器 ・東京手描友禅
・多摩織 ・江戸和竿 ・江戸指物 ・江戸からかみ
・江戸切子 ・江戸節句人形 ・江戸木版画 ・江戸硝子
・江戸べっ甲 ・東京アンチモニー工芸品 ・東京無地染
織物や染物のほか、人形や器、ガラス製品、版画、指物などさまざまな業種があり、「江戸切子」のように国内外から高い評価を得て土産物としても人気が高いものもあれば、知る人ぞ知る逸品といったものもあります。
また、「村山大島紬」「本場黄八丈」「多摩織」のように地名が入っていると産地がわかりやすいですが、主な製造地域が分散している場合は「東京」や「江戸」という名がつけられていることが多いようです。
伝統的工芸品を作る“伝統工芸士”とは
では、これらの伝統的工芸品を作るのはどのような人なのでしょうか。
その地に生まれ育ったことで代々伝わる伝統的な技巧を受け継ぐ、いわゆる世襲制の場合や他県から移住して修業し、職人として技術を学ぶという場合もあります。
つまり、伝統的工芸品を製造する職人に特定の条件はないのですが、実務経験のある職人が受けることができる試験があり、合格することで認定を受ける資格があります。
その名を「伝統工芸士」といい、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)」に基づいて「一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会」が行う認定試験により認定される、国家資格です。
試験内容は実技試験と知識試験があり、受験資格は伝統的工芸品の製造に12年以上の実務経験を有していて、かつ、現在もその業務に従事している人が対象となります。
実技試験は各産地組合において行われ、知識試験は10月に全国一斉で実施、12月には合否が判定されます。
この制度は、後継者不足等で低迷しがちな伝統的工芸品の産業について需要の拡大を狙ったもので、1974(昭和49)年に生まれました。その産地特有である伝統的工芸品の保存や技術の研鑽に力を注ぎ、伝統工芸士は技法を後世に伝える責務を担う役目を持っています。
近年では、伝統を受け継いできた伝統工芸士の高齢化や少数化に伴い、伝統工芸士の資格を返上するところも出てきているようです。そのため、新しい伝統的工芸品を作ることが難しい事例が見受けられるようになりました。伝統的工芸品を製造する職人の後継者不足は深刻な問題であり、伝統的工芸品存続の危機が叫ばれています。
伝統工芸士の仕事内容は?
伝統的工芸品を作る職人は日々その技術を磨き、「用の美」といわれる工芸品を作り出しています。その作業は分業で行う場合と、すべてを一貫してひとりで行う場合があります。
工程は伝統的工芸品によって異なりますが、例えば、京都府の「西陣織」は先染めの糸を使って模様を織り出す紋織物で、西陣織が完成するまでの工程は多くの専門職となる人の手を経ています。デザインや企画を立てる人、製紋をする人、原料を準備する人、機(はた)の準備をする人、機織を行う人、そして仕上げをする人、といった具合に20を超えるプロセスがあります。各工程には高度な技術と豊富な知識が要求され、12ある品種により生産工程が微妙に違うのが特徴です。
また、宮崎県唯一の伝統的工芸品である「都城大弓(みやこのじょうだいきゅう)」の場合は200にもおよぶ細かい工程をすべてひとりの職人が行います。材料となる真竹やハゼノキ選びに始まり、竹の切りだしや乾燥、油抜き、弓竹・弓芯の火入れ・張り合わせ、削り加工、弓の打ち込み・張り込み、仕上げ、握束(しょうぞく)作りと、さまざまな工程をひとりでこなして仕上げていくのです。
伝統工芸士の作業内容は何を制作するかによって、さらに多岐にわたります。ハンマーなどで石を切り出しグラインダーで削ったり、チェーンソーで大きな木材を切り出したり、危険物を取り扱うことも多々あります。何十回も繰り返して時間をかけて染め出す作業のほか、ピンセットなどを使う精緻な作業も多く、仕事は根気がいるといえるでしょう。
どのような製法にせよ、およそ100年以上継続されてきた伝統的な技法を受け継ぎ、昔から使い続けられてきた材料を、工夫された道具を使って伝統工芸士をはじめとする職人の手で生み出されるのが伝統的工芸品です。製品は熟練の職人の手に触れて形づくられ、歴史を踏まえて培われてきたやり方で作業をすることにより独特の持ち味を発揮する工芸品となり、私たちを魅了するのです。
── 昔から親しまれ、使い続けられてきた伝統的工芸品。「用の美」として美しい佇まいをもち、利便性があり、長く広く愛されてきたもので、その魅力は日本だけではなく世界中に広がり高い評価を得ています。入手困難な自然素材などの材料や後継者不足という問題が見え隠れしているものの、手作りのよさを再認識し、豊かな生活を送りたい人々が多い昨今、作り手に興味を持つ人が増えています。素晴らしい伝統的工芸品の数々は、これからも私たちの暮らしを鮮やかに彩っていくに違いありません。
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