一般の人や店舗のユニフォームにも人気!作務衣のルーツは禅寺にあった!
2019.06.26禅寺の修行僧が掃除や薪割りなど、日常の業務(作務)を行うときに身につけていた作務衣(さむえ)。作務衣はもともと「長作務衣(ながさむえ)」という上衣が膝くらいまである作務衣を一般的に指していましたが、第二次大戦中、女性が着物代わりに着用していたズボン裾を絞った「もんぺ」を原型に動きやすさを追求した結果、現在の作務衣になったともいわれています。
そんな作務衣には柔らくて温かい和の雰囲気がありますが、雰囲気だけでなく、動きやすさと便利さを兼ね備えた作務衣は昭和の時代に急速に広まり、各宗派に属する修行僧はもとより一般の人々にも広く普及します。
それは例えば、部屋着、普段着、寝間着……として。
あるいは、陶芸、書道、蕎麦打ち、庭仕事などの作業着として……。
さらに、和食店や整体、旅館業のユニフォームとしてなど、男女年齢を問わずその用途は広がっています。そこで今回は、日本人ならず海外の人にも高い注目を集めている作務衣についてご紹介しましょう。
まず、作務衣について知ろう
禅寺の修行(修道)が普段どんなことしているか、一般の人にはあまり知られていないといえるでしょう。
僧は、庭掃除、畑仕事、調理、建物の修繕……など、修道生活と寺の維持に必要な一切の仕事を行いますが、この総称を作務(さむ)といい、作務は禅寺の修行僧の一般的呼称である「雲水」が行います。
例えば、普段は足音を立てず静かに振る舞うことを求められる雲水であっても、作務の時には渾身の力で雑巾をかけます。このように、作務は一般世間の仕事や労働とは異なり、その目的は修行にあります。そうした意味からも「動く座禅」ともいわれています。
禅寺の一日
ではここで、禅寺の一日を見ていくことにしましょう。
ご紹介するのは、最初に作務衣を用いたという説もある大本山永平寺の一日になります。
●起床4時/雲水の鳴らす鈴、振鈴(しんれい)で起床は
●洗面/歯磨き、頭、顔、耳の裏までを桶一杯の水で洗う
●暁天座禅(きょうてんざぜん/起床後、最初の坐禅)
●朝の勤行
●朝食/小食(しょうじき)と呼ばれ、玄米のおかゆ、たくあんにごま塩など
●朝の掃除(作務)/500メートルの回廊を15分で磨き上げる
永平寺では三黙道場といわれる「僧堂」「東司」「浴室」で音を立てることを禁じられているが、この掃除の時だけは音を立てることが許され、「動く禅」とも呼ばれる
●昼の勤行
●昼食 /中食(ちゅうじき)、麦飯に一汁一菜
一人ひとりが自分の麦飯から七粒差し出し、敷地内の野鳥に捧げる。料理は食べるのも作るのも修行。野菜や豆類などの植物性の材料で作る精進料理
三徳:永平寺の精進料理の基本となる3つの要素
これを満たすことを念頭にして調理される。「軽軟(きょうなん)」・見た目は軽く、味はやさしい。「浄潔(じょうけつ)」・清潔でさっぱりしている。「如法作(にょほうさ)」・正しい作法で作る
●作務、各寮舎の仕事
六知事:雑事や庶務を受け持つ6つの役職
「都寺(つうす)/寺の一切の事務を監督する」
「監寺(かんす)/寺内の事務を監督する」
「副寺(ふうす)/会計を担当する」
「維邦(いの)/僧に関する庶務を担当する」
「典座(てんぞ)/寺内の食事を担当する」
「直歳(しっすい)/伽藍の修理、山林、田畑などを管理する」
●夜の勤行
●夕食/薬石(やくせき)と呼ばれる。麦飯、みそ汁、漬物、おかず2品
古来、禅門では朝と夕の二度しか食事をとらず、寒い冬、修行僧は火の中に石を入れ、それを布に包んで腹にあてて暖をとった。この石を「薬石」と呼んだことから、正式な食事とはみなされず、飢えをしのぐための「薬」として食する
●夜坐(やざ) 夜の坐禅/一日をしめくくる
●就寝 午後9時/開枕(かいちん)の鈴とともに就寝
一人の雲水に与えられる寝るスペースは畳一畳。ふたつの布団を重ねて紐で縛って袋状にし、その中で眠る
このように、修行(修道)にはさまざまな作務があり、一日の中で細かい日課と作法が連続、すべてが修行とされます。
午前と午後それぞれの作務では作務衣を着用しますが、色は「修行僧は黒」、住職など資格をもつ「高僧は藍や茶など」を着用します。そして作務衣はあくまで作業着であり、正式の座禅や法要には着用しません。
また、三と八のつく日には普段目の届かない隅々まで掃除し、年間作務には、布団運び作務、ガラス磨き作務、竹簀運び作務、障子張り替え作務、川作務、山作務、草履作り作務、木の芽拝登作務、大煤払い作務……などがあります。
一般の人が日常着として作務衣を着る利点は?
最近、部屋着の代わりに作務衣を着用する人が増えてきました。そうした人にとって、作務衣はどんなメリットがあるのでしょうか。
○着心地のよさ
作務衣は紐の結ぶ位置でサイズ感をある程度調整できるため、窮屈でなく、くつろいで着用できます。
また、暑い季節には風通しがよいため涼しく感じられ、寒い季節には重ね着ができて体温調節が簡単。生地は綿や麻、絹といった天然素材が着心地がよいとされ、天然素材に比べるとポリエステルなどの化学繊維はゴワつくような肌触りのものもあるようです。
○使い勝手のよさ
着心地がよく、ゆったり着られるメリットから、部屋着や寝間着に最適。
また、上下揃いのためきちんと感があり、来客や近所の買い物にも対応可能。最近は、カジュアル感やオシャレさを取り入れた作務衣も誕生し、気楽な和装として遊び心あふれる作務衣を普段着に選ぶ人も増えています。
ユニフォームとして愛される作務衣
一般の人が作務衣を日常着として着ることが多くなった一方、和食店などの飲食店でユニフォームに用いられるケースも増えてきています。
●飲食店のユニフォームとして
作務衣のもつ和のテイストは、着物ほど堅苦しくなく親しみを感じさせます。また作務衣は、動きやすく手入れも簡単な点から甘味処や蕎麦屋、うどん屋、お好み焼き屋、居酒屋……などでユニフォームとして広く使用されています。
ユニフォームにこだわる飲食店の中には、縁(ふち)がなく頂(いただき)が平らな円筒形の和帽(一休帽、茶人帽)と作務衣を合わせたケースもよく見かけるようになっています。
作務衣はもともと作業着であることから、こげ茶、茶、藍色、深緑、えんじなど落ち着いた色が多いのですが、近年は赤やピンクなど明るい色や、花柄が入った作務衣も登場しています。客層が若くカジュアルテイストのお店では、このような作務衣が着用され、日本人だけでなく外国人観光客からも注目が集まっています。
●整体師やマッサージ師のユニフォームとして
作務衣の落ち着いた和の雰囲気は、相手に安心感やリラックス感を与える効果があります。整体師やマッサージ師の仕事は長時間、汗をかきながらの作業になるため、動きやすく通気性のよい作務衣は作業をするうえでさまざまなメリットがあるようです。
●旅館やホテルでのユニフォームとして
落ち着いた雰囲気に加えて、相手に安心感や親しみやすさを与える作務衣は、旅行客を受け入れる旅館やホテルのユニフォームにも適しています。また、浴衣より作務衣のほうが着心地がよいといった意見も多くなり、宿泊客へのオリジナルサービスの一環として浴衣を売りにする旅館などでは、最近は浴衣の代わりに作務衣を置くケースも増えています。
ところで、作務衣と甚平の違いは?
作務衣と同じく、和の伝統的なくつろぎ着として甚平(じんべい)があります。どちらも縁日や花火大会などによく見かけ、似たかたちをしていますね。
でも、作務衣と甚平、どのように違うのか答えられない人も多いはず。ここでは、両者の違いを比較してみましょう。
作務衣はもともと、禅寺の僧侶が寺の業務(作務)をするのに着用した作業着ですが、その一方、甚平は「甚兵衛羽織(じんべいばおり)」の略で、「甚兵衛という名の人が着ていた」という説と、江戸末期に庶民が着た「袖無し羽織(そでなしばおり)」が、「武家の用いた陣羽織(陣中で鎧・具足の上に着た上着)に似ていた」という説があります。
■ひとめでわかる作務衣と甚平の最大の違い
それはズバリ、ズボンにあります。作務衣のズボンは足首まである長ズボン。一方の甚平は、膝下ぐらいまでの半ズボンが一般的な仕様です。
■脇がタコ糸仕様か否か
次に大きな違いは、風通しをよくするために脇がタコ糸で編まれているかの違いです。つまり、甚平か作務衣をひと目で見分けられるポイントは、甚平の多くは脇がタコ糸になっている点にあります。
■着用する季節が異なる
作務衣は季節を問わず着用されますが、甚平は基本的に夏用の衣類。作務衣に比べると甚平の着用シーズンは短く、日本の夏をいかに快適に過ごすかを考えて作り出された衣服といえるでしょう。
こうした点から、甚平には落ち着いた雰囲気に欠けるものの遊び心があり、粋な夏の装いとして浸透。男性は甚平、女性は浴衣といった出で立ちで縁日などのイベントに出かける姿も多くみられます。
■異なる素材
男性と子どもの着用に限られ、素材は綿と麻の混紡、または麻100%のものも。オールシーズン着用される作務衣は季節に合わせてバリエーションがあり、綿の生地も分厚い綿生地から、かなり薄い生地まで幅広く使われています。
■その他にも違いはあります。
一般的に、上着の袖の長さは作務衣のほうが甚平より長く、甚平は背中に通気口がついています。
禅寺の厳しい修行生活のなかで、修行僧が自給自足生活を維持する作業(作務)のために身に着けた作務衣。
それがいまや、性別、年齢を問わず一般の人に広く普及している点は、作務衣が衣服として非常にすぐれた特性を持ち合わせているということを表します。
── 最近では通信販売やホームセンターなどでも簡単に購入できるようになり、素材や価格、色、柄、また用途に応じて様々なバリエーションが選べるようになりました。なかには、名前、ロゴなどの刺繍を入れることもでき、「父の日」や「敬老の日」のプレゼントにも作務衣は人気なのだそう。
日本の伝統を再現しつつ、時代とともに進化し続ける作務衣。和服を着る機会が少ない人も生活に取り入れていきたいものですが、作務衣を着て街を歩いていると、もしかしたら外国人観光客から「一緒に写真を撮ってほしい」なんてお願いをされるかもしれませんね。
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