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運転中に「あれ?」と感じた不思議。その答えは道路の「舗装」にあった!?

「大量の雨のしずくでずっと視界が悪かったのに、急に水滴の量が減った……」

「隣の車線の路面には雨水が溜まっているのに、自分が走る車線は水が全然溜まっていない」

「交差点を曲がってから、タイヤの音が全然しなくなった……」

車の運転をする人であれば、誰もが一度は感じたことがあるこうした感覚。

私たちはドライバーは、道路のことを普段気にすることなくハンドルを握っていますが、実は多くのドライバーが気づかぬうちに道路は進化を遂げていたのです。

今回は、走行中の安全性はもとより、円滑・快適機能や環境機能も兼ね備えた道路舗装についてご紹介しましょう。

まず、アスファルトとコンクリートの違いを理解しよう

最初に、道路はどんな材質で舗装されているかご存じでしょうか。その答えは、次の2つに大別されます。

■道路の色が白っぽい灰色の「コンクリート舗装」
■道路の色が黒っぽい「アスファルト舗装」

次に、コンクリートとアスファルトの材質をはじめ、さまざまな相違について表で整理していきましょう。

ここでいったん最初の話に戻ります。

激しく雨が降る日に高速道路を走行中、ふとした瞬間からそれまでフロントガラスに降りかかっていた大量の水滴が、「えっ?」と思うほど急激に減少することがあります。あるいは、タイヤの音が急に静かになったりします。そんなとき、その不思議な感覚の理由がわからないまま、ドライバーはフル稼働させていたワイパーを最小モードに切り替えたりしますが、実はこうした現象が起こる原因は道路の舗装にあったのです。

街中のあちこちでみかける、灰色と黒い道路の違いって?

通行量が多い国道や高速道路をはじめ、私たちが何気なく使用している道路は、ミルフィーユのように幾層もの構造で成り立っています。その構造をおおまかに説明すると、地中1mほどに砂を重ねて突き固めた「路体」や「路床」があり、その上に砕いた砂を敷き並べて転圧した「路盤」があり、そしてその上の「路盤」「基層」「表層」をあわせたものが、普段私たちが目にする舗装と呼ばれる部分になります。

※舗装下の構造は「下層」「上層」で構成された「路盤」などさまざまです

例えば画像①のように、片側3車線の高速道路を走行中、1車線のみ道路の色が他の2車線と比較して黒っぽいことがあります。これはコンクリート舗装だった道路を、アスファルト舗装に補修した跡であり、あるいは画像②のように、地中を工事した後や舗装の補修によって、あるラインから一定区間だけ道路の色が異なるケースも街のあちこちで確認することができます。※②の右端のブルーの部分は自転車専用走行路。

このように、コンクリート=白っぽい灰色、アスファルト=黒っぽい色という特長は、目で見てすぐに判別できます。

つまり、路上に溜まった雨水や、前方を走行する車から大量の水が跳ね上がっていたため、それまでワイパーをフル稼働していたのに、急に水の量が減少したのでワイパーを最小モードに切り替えた。

運転中に起きるこうした不思議さも、舗装の特長や違いを理解することによって、ある区間や車線によって舗装の材質が異なっていることで起きた現象……と理解できますね。

ところが最近では、

── 排水性が悪くて、道路上に雨水が溜まりやすい。それが、灰色っぽい色のコンクリート舗装 ──

── コンクリート舗装の道路を大型車が激しい雨の日に走行すると、大量の水しぶきが上がる ──

こうした常識や通説を覆す舗装技術が続々と開発され、コンクリート舗装であっても透水・排水性に優れている……といった高機能を備えた舗装も登場しているのです。

劣悪な道路事情から、一気に車社会へと変貌

世界各国で道路が整備され始めていた明治の時代。日本では“文明開化”の名の通り西洋文化が花開き、動力も石炭から電気・ガスへと移行していきます。その象徴として、近代文化発祥の地・横浜市中区の馬車道では、明治5(1872)年に日本初のガス灯が点灯。しかし、そうした西洋化はごく一部のことであり、街のあちこちを人と馬が行き交い、道と呼べるものの大半は土や砂利でできた粗悪なものでした。

時代が大正に移り変わっても、激しい雨が降った後の東京の道路は、田んぼと呼ばれるほどのぬかるみ状態になり、人々の往来や流通に大きな支障をきたしていました。

そこで、自動車産業の黄金期にあったアメリカに追いつけ追いこせと、1919年に道路法が成立。いよいよ道路整備が本格化するかと思いきや、戦争によって物資と人手が不足したことで道路整備は後まわしにせざるをえなくなり、依然として日本の道路事情は劣悪な状態が続くことになります。

そして、通産省が「国民車構想」を発表した昭和30(1955)年。日本に「高速道路時代」が幕開けし、わが国は“世界に類を見ない成長”といわれ る高度経済成長期(1960年〜1970年)に突入していきます。折しも時を同じくモータリゼーションが急速に進展し、各自動車メーカーが軽自動車の開発にしのぎを削る中、1963(昭和38)年に日本初の高速道路・名神高速道路が開通し、その5年後の1968(昭和43)年には、日本の大動脈・東名高速道路が開通します。

道路のみならず、新幹線等のインフラ整備も急ピッチで進み、昭和39(1964)年には“夢の超特急”と呼ばれた東海道新幹線が、東京オリンピック(10月10日〜)目前の10月1日に華々しく開業。同年開催の東京オリンピック、昭和45(1970)年の日本万国博覧会(大阪万博)と国家プロジェクトが次々開催され、車社会へと一気に変貌を遂げた日本には活気がみなぎります。

敗戦から立ち直り、道路、鉄道、空港、下水道、橋、ダム、トンネルといった社会インフラ整備が加速度的に進んだ日本。その躍進を象徴したものこそがコンクリートであり、高度経済成長期とはすなわち「コンクリートの時代」であったことがわかります。

巨額の税金を充てていたコンクリートから、ヒトへ?

長きにわたり劣悪な道路事情にあった日本も、モータリゼーション、高度経済成長によって道路の整備が本格化します。その起点を「高速道路時代」が幕開けした昭和30(1955)年とするなら、50年以上もの長きにわたって“日本の道づくり”が進められてきたことになります。しかし、21世紀に入ってその方向性が大きく転換することになったのです。

それは、「コンクリートからヒトへ」のスローガンを掲げた民主党が政権交代を果たした2009年。道路、空港、ダムなどの大型建造物(コンクリート)に巨額の税金を充てていた社会構造が、政権交代によって大きな変革点を迎えたのです。

このとき、民主党(当時)がスローガンに掲げた「コンクリート」の道路での使用割合を見てみましょう。

図・出展= 国土交通省道路局 資料「舗装の長寿命化・LCC(ライフサイクルコスト )縮減に向けて」

水色で示されたコンクリート舗装の割合が1965年頃から急激に減少し、ピンク色で示されたアスファルトの割合が圧倒的割合を占めていきます。この変化は「初期コストが高い」「維持修繕が困難」というコンクリート舗装のデメリットによる、とされています。

もちろん、民主党が掲げた「コンクリートからヒトへ」のスローガンにある“コンクリート”は、道路、鉄道、空港、橋、ダム、トンネルといった公共事業全般を指し示しているのですが、道路に限って言葉尻を捉えるなら、「コンクリートからヒトへ」ではなく、「アスファルトからヒトへ」が正しい表現なのかもしれません。

海外メディアにミラクルと称賛された、高速道路の早期復旧

年を追うごとにアスファルトの使用割合が増え、コンクリート舗装の割合が減少していったことが、国土交通省道路局が作成した表によって理解できたところで、ここでは道路を取り巻く最近のトピック的出来事に目を向けてみましょう。

それは、2011年に発生した東日本大震災のことでした。

未曾有の災害が発生したことにより、東北・常磐自動車道をはじめとする高速道路の随所で崩落が生じ、通行不能に陥ったことで物流が寸断。東日本エリアは逼迫した状態に陥ります。

しかし、常磐自動車道上り線(那珂IC〜水戸IC間・約12km)は、震災発生後わずか6日で「再開の見通し」を発表。この驚くべきスピードには、日本人である私たちも大いに驚かされましたが、海外メディアでも“ミラクル”の文字が大きく紙面を飾り、その早期復旧が報じられました。

驚異的なスピードで寸断状態にあった道路を復旧させた要因は、6強の余震が続く困難な状況下で工事に携わったNEXCO東日本(東日本高速道路)の英知と努力なくして語ることはできませんが、それ以外の要因として「工事費が安い」「固まるまでに時間を要さない」「施工後数時間で走行可能」といった特性をもつアスファルト舗装が、スピード復旧を支えた陰の立役者でもあったのです。

コスト安だったアスファルト価格が上昇! 

ところが昨今、新たな視座でコンクリート舗装が見直されるようになっているのです。その理由とは……、

●100%輸入に頼らざるをえないアスファルト価格が上昇

●価格上昇により、コンクリートとのイニシャルコスト(初期費用)の差は縮小傾向に

●LCC(ライフサイクルコスト)に換算すると、コンクリート舗装のほうがコスト安のケースも

●限られた予算内で、耐久性に優れたコンクリートを適材適所で使い分ける方法も着目

それまではコンクリートの工事単価の半分ほどだったアスファルトですが、2017〜18年にかけて道路舗装用アスファルト合材の原材料ストレートアスファルト(ストアス)の価格が上昇。それを受けてコンクリートとアスファルトにかかるコスト差異が縮まることになり、結果、生涯費用を表すLCC(ライフサイクルコスト)の重要性が見直されたことで、コンクリート舗装の採用が再び検討の俎上に上がっているのです。

昭和中期から一気呵成に進んだ道路整備ですが、平成の世では安全性、景観性、ヒートアイランド抑制効果などの多様なニーズに沿った新機能を備えた道路が開発が求められることに。加えて、コスト安と短期で工事できる店が魅力だったアスファルトの価格が上昇……。

“日本の道路づくり”は50年を経て、いま大きな曲がり角に立っている、といえるのかもしれません。

舗装には、大きく分けて3つの機能が求められる

長い年月の中で進化を遂げてきた道路の舗装。進化の恩恵は車を運転している人だけのものではなく、歩行者や自転車を愛用する人にとってもさまざまな利点があります。

古くは道路表層に防水加工を施し、雨水が地中に浸透しない舗装が主流とされてきました。その理由は舗装下に水が浸透すると、地下水系を分断するだけでなく、水の作用によって内部が空洞化し、道路の陥没・崩落事故が想定されたことによります。

そうした指摘を受け、歩道の舗装に1970年頃から「透水性舗装」が少しずつ用いられるようになりますが、車道の場合は車の重量がかかるため、舗装下に雨水を浸透させる構造にすると、それだけ路盤劣化が早まるという新たなデメリットが生じたのです。

こうしたさまざまな課題を解決すべく、道路の機能性は次々と改良され、昨今では雨水を排水桝に集める構造をもった「排水性舗装」も登場。さらに、昨今のアスファルトの価格上昇を受け、あらためて頑丈で補修期間が短くて済むコンクリートのメリットが見直され、コンクリート版上に透水・排水機能を備えたコンクリート舗装も新たに誕生しています。

その他にも、さまざまな機能において進化を遂げている道路。進化の目安となるのが次に挙げた3つの「機能」になります。

【1】安全機能

「耐流動性」「耐摩耗性」「耐荷重性」「すべり抵抗性」「排水性」「防眩性」「ハイドロプレーニング抑制」「走行速度抑制」「凍結抑制」

【2】円滑・快適機能

「迅速施工性」「長寿命性」「耐ひび割れ性」「水はね・しぶき抑制」「視認性」「平坦性」「透水性」「防塵性」「弾力性」

【3】環境機能

「騒音低減」「振動低減」「明色性」「景観創生」「省資源」「地下水の涵養」「地球の温暖化抑制」「ヒートアイランド減少抑制」

安全機能、円滑・快適機能、環境機能の3つの機能は、それぞれいくつものカテゴリーに分類されますが、それらの要素と照らし合わせながら、高速道路、橋、高架の道路、国道などの一般道路、騒音が問題化している道路、渋滞が多い道路、都市部の幹線道路、縦・横断勾配や山間部などの路面性能が求められる個所、トンネル、サービス・パーキングエリア……などに見合った用途をベースに、コスト縮減&工期短縮と照らし合わせて最適な道路づくりが選択されることになります。

歩行者や自転車愛用者も注目すべき、道路舗装の進化

ところで、2017年に改正された道路交通法以降、ブルーやグレーなどの色が塗られた自転車用走行路をよくみかけるようになりましたね。これは目立つように色を塗っているだけでなく、色が施された走行路(保水性舗装)には、次のような高機能が備わっている場合が多いようです。

●舗装下に水分をある程度溜める構造にして、水分を蒸発させやすくしている

●水分蒸発による気化熱で、夏の直射日光の反射率を抑える

●直射日光の反射率を抑えることで、路面温度の上昇を抑制している

●自電車を運転する人が熱中症にかかりにくくするなどの効果も

私たちの日常生活の中で当たり前のように存在する道路ですが、自転車用走行路が、ただ単に歩行者と区別するために色が塗られているだけではないように、その機能性や変化について理解を深めていくと、足下に横たわる道路は、実は大きな進化の塊であることが再確認できることでしょう。

── 夏の暑い日に自転車に乗るとき、自転車専用走行路の色に秘められた体温上昇抑制機能を知っていれば、上手に熱中症対策を図れるようになるでしょうし、車を運転する人であれば、激しい雨が降った日にハンドルを握ったとき、路面に溜まった雨水量の違いや、色の違う車線を走り分けたときの雨のしぶきの跳ね返りの違いから、あらためて事故抑制につながる安全への心構えをもつことにつながります。

これまでとは違う視点で、見慣れたいつもの光景に目を向けてみる……そうすると、意外かつ新たな発見があるかもしれませんね。

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