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年々進化する自動運転技術の最前線── 実用化に向けた課題や今後の展望は?

ドライバーが行きたい場所を指示するだけで、クルマが目的地まで運んでくれる。移動中の運転操作も安全確認も、すべてクルマにオマカセ。そんな夢のようなカーライフが、近い将来に実現するかもしれません。

ここ近年、国内外の多くの自動車メーカーでは、より高度な自動運転の実用化を目指して開発競争を繰り広げています。運転を支援するドライバーサポートから、完全自動運転の次世代型モビリティサービスの実現に向けて── 年々ヒートアップする自動運転技術開発の最前線を追いながら、実用化に向けた課題や今後の展望について考察します。

最先端の「センシング×AI技術」が決め手に

21世紀に入り、ドライバーをサポートする運転支援システムは、日進月歩で進化を続けています。たとえば、アクセルを操作しなくても前車と車間を取りながら追走できるオートクルーズ、前方の障害物や衝突の危険を検知して自動でブレーキを作動させるオートストップ、車間の詰め過ぎや車線逸脱などを知らせる警告システム、車庫入れや駐車の操作を自動制御するパーキングアシスト……など。つい20~30年前には考えられなかったようなサポート機能が次々と登場し、すでに市販化されているのは皆さんもご存じでしょう。

そして今、将来の実用化に向けて本格化しているのが、ハンドル・アクセル・ブレーキなどの全操作をクルマが担う、より高度な自動運転システムの開発です。とくに近年は、高精度センサーや人工知能を活用した「センシング×AIテクノロジー」の研究開発が急速に進み、完全自動運転の無人カーも技術的には実現可能とされています。

自動運転には5段階のレベルがある

自動運転の開発段階の基準となるのが、米自動車技術者協会が定めた5段階のレベル(SAEレベル)です。日米欧ではこのSAEレベルに準拠して、自動運転システムの開発が進められています(以下参照)。

【米自動車技術者協会が定めた5段階のSAEレベル】

◎レベル1(運転支援)……ハンドル操作・減加速のいずれかを、自動車のシステムが走行環境に応じて支援。運転の責任主体はドライバーにあり。

◎レベル2(部分的運転自動化)……ハンドル操作・減加速の両方を、自動車のシステムが走行環境に応じて支援。運転の責任主体はドライバーにあり。

◎レベル3(高度自動運転)……限定の領域(高速道路、同一車線、制限速度内など)で、自動車のシステムがすべての運転を実施。システムの要求に応じて、人間が運転操作に戻る。運転の責任主体はシステムにあり(システムが対応できない状況下ではドライバー)。

◎レベル4(完全自動運転)……限定の領域(高速道路、同一車線、制限速度内など)で、自動車のシステムがすべての運転を実施。人間が運転操作に戻る必要はなし。運転の責任主体はシステムにあり。

◎レベル5(完全自動運転)……すべての領域・条件下で、自動車のシステムがすべての運転を実施。運転の責任主体はシステムにあり。

現時点ではレベル2までが市販化

現在、部分運転自動化のレベル2までは、国内外の多くの自動車メーカーが、車載の運転支援システムとしてすでに市販化しています。

国内メーカーの主なシステムとしては、トヨタ自動車の「トヨタ・セーフティセンス」、日産自動車の「プロパイロット」、ホンダの「ホンダ・センシング」、マツダの「アイ・アクティブセンス」、海外メーカーでは独BMWの「ドライビング・アシスト・プラス」、独メルセデスベンツの「インテリジェントドライブ」、米テスラの「オートパイロット」などがあり、いずれもドライバーが運転主体となるレベル1・2に相当します。

レベル3相当については、独アウディが2017年、高速道路での低速走行においてハンズオフ(ハンドルから手を放したままの運転)を可能とする、「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を搭載した新型セダン「A8」を発表。世界初となるレベル3搭載の量産車として大きく注目されましたが、一般車がレベル3の自動運転で公道を走るためには、新たな法規制や交通ルールの整備が必要となるため、今のところ搭載車種は市販化にいたっていません。

日本でついにレベル3の自動運転が解禁!

ちなみに、国際条約「ジュネーブ道路交通条約」では、公道を走行できる自動車は「常時人間が運転する」と定義されており、各国の法律でも「ハンドルから手を放したままの運転」は認められていません。そのため、限定の領域でシステムが運転を担い、ハンズオフを可能とするレベル3以上の自動運転については、実用化のハードルが高いとみられていました。

そうした中、今年(2020年)4月1日、日本でついにレベル3の自動運転が解禁されたのをご存じでしょうか。今回の解禁は「道路交通法」「道路運送車両法」「道路運送車両の保安基準」の改正にともなって施行され、これにより日本の公道で、レベル3の市販車の走行が認められることになったのです(高速道路の同一車線内で、時速60キロメートル以下の低速走行に限定)。世界的なコロナ禍の影響で、あまり話題になりませんでしたが、本来であれば社会的に注目される一大トピックといってもいいでしょう。

国土交通省によると、今回施行された新ルールは「国際連合欧州経済委員会」が設ける「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」での議論を踏まえて策定されたもので、そこでWP29参画国(日・米・欧州・中国など)が了承に至れば、レベル3走行における国際基準として認証されるとのことです。

日本初のレベル3対応車種が年内にも発売へ

より高度な自動運転システムは、将来的な技術競争力の要になることから、国内外の自動車メーカー各社は先を争って開発のペースを上げてきました。

そして今回、日本が世界をけん引する形で打ち出した“レベル3解禁”を受け、いち早く動き出したのが国内メーカーのホンダです。同社・八郷隆弘社長は今年5月、年内にレベル3対応の乗用車を発売すると発表。現在は、すでに車両の訴求方法や販売方法を検討している段階で、発売されれば日本初のレベル3対応車種(世界ではアウディA8に次ぐ車種)と位置付けられることになります。

ホンダの発表を受けて、今のところ各メーカーの新たな動きは見られませんが、今後、レベル3の開発競争が一気に加速することは間違いないでしょう。これまで高度な自動運転システムの開発に力を入れてきたトヨタ自動車・日産自動車をはじめ、独アウディ・BMW・メルセデスベンツ、米テスラといった海外メーカーの動向にも注目が集まっており、自動運転技術はレベル3の実用化、そしてレベル4・5の領域へと踏み出そうとしています。

自動運転の実用化に向けた課題とは

とはいえ、自動運転に関しては、テクノロジーだけでは解決できない課題も多く残されています。

まず、運転の主体がドライバーからシステムに移行するレベル3の限定領域では、責任所在のあり方やドライバーのモラルハザードといった課題が指摘されています。たとえば、2018年にアメリカで起きたテスラ車の死亡事故では、事故当時に部分的な自動運転機能が作動していたものの、事故の数秒前にシステム側がドライバーに運転操作を行うよう警告。しかし事故発生時、死亡したドライバーはハンドルを握っていなかったことが、システムに残されたデータで明らかになっています。ただ、事故の原因がドライバーの対応ミスにあるのか、事故直前まで警告しなかったシステムの不備にあるのか……その答えを示す根拠は、いまだに不明確なままです。

また、自動運転に関する事故については、誰がその責任を負うのか(ドライバーか、システム開発者か、メーカーか、事故の相手か?)ということも議論になっています。とくに、システムが完全に運転操作の主体となるレベル4以上の領域においては、決して避けて通れない重要な課題となってくるでしょう。

いずれにせよ、現在は完全自動運転に向けた過渡期にあり、実用化に向けて解決すべき課題は山積しています。今後は、日本が示した国際的な統一ルールとともに、各国での安全基準や法規制、保険分野や交通インフラなどの整備も不可欠となってきます。近い将来、自動運転技術がどこまで進化し、その可能性を社会の中で広げていくのか……各国・各メーカーの動向とともに注目されるところです。

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