合成技術の進化で産業用から宝飾用へ──いま国内外で拡大する合成ダイヤモンド市場
2020.07.03地球の奥深い地中で、何十億年という歳月をかけて生み出される「天然ダイヤモンド」。その美しい輝きと希少性から、高価な宝石として多くの人々を魅了し続けてきました。
一方、ラボや工場で人工的に生成される「合成ダイヤモンド」は、主に工業用・医療用などの産業用途に使われ、宝飾市場に出まわることはほとんどありませんでした。しかし、ここ近年は合成技術が飛躍的に進化し、品質・コスト面でも商業ベースに乗ったことで、ジュエリーとしての需要や流通量も年々拡大しています。
そこで今回は、いま国内外の宝飾市場で注目を集める「合成ダイヤモンド」にフォーカス。その歴史や特徴、魅力とともに、天然ダイヤモンドとの違いや市場拡大の背景について解説します。
そもそも合成ダイヤモンドとは何か?
一般的に“ダイヤモンド”と呼ばれる製品には、大きく分けて「天然」「合成(人工)」「模造」の3種類があります。
まず、キュービックジルコニアなどの模造ダイヤモンドは、その名の通り、ガラスやプラスチックなどをカットした模造石で、長い年月をかけて地中で生成された天然ダイヤモンドとは、まったくの別物。対して合成ダイヤモンドは、ダイヤモンドの元となる炭素を合成することで、短時間・人工的に生成したダイヤモンドの結晶物を指します。その生成方法としては、主に「高温高圧(HPHT)法」と「化学気相蒸着(CVD)法」の2種類があります(以下参照)。
◎高温高圧(HPHT)法……天然ダイヤモンドが生成される「地中の高い圧力」「マグマの高温」など、地球内部での環境を模した装置により合成する方法。
◎化学気相蒸着(CVD)法……高温低圧環境を作り出す装置を利用し、メタンガスなどの炭素を主成分とする気体状態の物質から、種結晶となるダイヤモンドの結晶板上に蒸着させる合成方法。
こうした点から見ると、宝石としての合成ダイヤモンドは「本物ではない」「人がつくった偽物」と思いがちですが、そもそも「天然物=本物」「合成品=偽物」という区別は適切ではありません。なぜなら、合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ化学組成・結晶構造・物理的特性をもち、両者とも本質的には同じ物質だからです。
合成ダイヤモンドの歴史と合成技術の進化
18世紀後半、ダイヤモンドの成分が炭素であることが発見されて以来、世界中の科学者によって、炭素原子からダイヤモンドを合成する実験が試みられました。そして1955年、総合電機メーカーの「ゼネラル・エレクトリック社(米国/GE)」が、世界で初めて「高温高圧(HPHT)法」によるダイヤモンドの合成に成功。ただ、当初の合成ダイヤモンドはあまりにもサイズが小さく、カット加工が施せる宝飾質レベルの価値がなかったため、主に工業用研磨剤や医療レーザー等の産業用途で使われる程度でした。
その後、1970年にはGEの研究者が、ファセットカット(宝石のカット加工)が可能な品質・サイズの合成ダイヤモンドを製作。1980年代に入ると、宝飾質レベルの製品の量産が技術的に可能になりましたが、天然ダイヤモンド以上のコストがかかる点が大きなネックとなっていました。
そんな合成ダイヤモンドが、宝飾用として店頭に広く出まわるようになったのは、つい7~8年前のこと。2010年以降、中国の合成技術が飛躍的に進化し、宝飾質レベルの高品質な製品を低コストで量産できるようになったからです。
より“クリーン”なダイヤモンドを求めて……
一方、昔から多くの人々を魅了してきた天然ダイヤモンドですが、かつては紛争の資金として不正取引されることも多く、「コンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤ)」「ブラッドダイヤモンド(血のダイヤ)」と呼ばれる違法品も存在しました。また、過剰採掘による環境破壊や児童労働が問題視されるなど、天然ダイヤモンドをめぐっては、なにかとネガティブな話題がつきまとっていたのも事実です。
こうした問題を受け、2000年以降、ダイヤモンドの産地証明を義務づける「キンバリープロセス認証制度」が国連で採択されるなど、違法ダイヤモンドを国際市場から排除する動きが活発化。紛争とは無縁のクリーンなダイヤモンドを求める流れが加速し、現在は世界に流通する天然ダイヤモンドの99%以上が、産地や販売ルートの明確なコンフリクトフリーとされています。
さらに近年、天然物と同じ輝きをもつ低価格の合成ダイヤモンドが登場したことで、市場に新たなムーブメントが巻き起こります。「紛争を起こさない」「環境を破壊しない」などの観点から、エシカル志向(環境や社会に配慮するライフスタイル)の海外セレブやミレニアル世代の間で、よりクリーンな合成ダイヤモンドを支持する動きが広まっていったのです。
名門ブランドの参入で市場が一気に拡大
こうしたムーブメントを受け、国内外の宝飾メーカーも本格的に動き始めています。2018年9月には、世界最大手のダイヤモンドブランド「デビアス(英国)」が合成ダイヤモンド部門を設立し、世界の宝飾業界で大きな話題となりました。デビアスといえば「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠に)」というキャッチコピーが有名ですが、国際市場をリードする名門ブランドの新たな展開によって、合成ダイヤモンドはその存在感を一気に高めることになったのです。
これを機に、日本国内でも合成ダイヤモンド市場に参入する企業が増えています。2018年10月には、京都の老舗ジュエリーメーカー「今与(いまよ)」が、日本初の合成ダイヤモンドブランド「SINCA(シンカ)」を設立。さらに、ウエディングドレスやファッション系のブランドなど、ジュエリー以外の業界でも合成ダイヤモンドを扱う動きが活発化しており、ブライダルリングや日常使いのアクセサリーとして、若い女性やカップルにも購入層が広がっているようです。
見た目は天然物と同じでも価格は10分の1!
先述したように、天然ダイヤモンドができるまでには地中で何十億年もかかりますが、ラボで炭素などを原料に生産される「ラボ・グロウン」の合成品なら、わずか数日~数週間で大きく成長。天然ダイヤモンドでは珍しいカラーや大きさのダイヤモンドを、自在に量産できるメリットもあります。
そして何よりも最大の魅力は、そのリーズナブルな価格。一般的な合成ダイヤモンドの1カラットあたりの価格は、天然ダイヤモンドの10分の1程度といいますから、かなり格安といえるでしょう。
また、合成ダイヤモンドは模造石とは異なり、化学的な成分や結晶構造が天然物と変わらないため、特別な識別装置を使わなければ見分けがつきません。見た目では区別できないことから、以前は合成品と天然物を取り違えるトラブルもあったようですが、ここ最近は両者の住み分けが業界的に確立。合成ダイヤモンドには、内部にレーザーで製造番号を刻印するなどの対策も講じられているため、両者を取り違えるリスクはほとんどないとされています。
ダイヤモンドは消費者が自身の価値観で選ぶ時代に
では、合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドとの決定的な違いは、どこにあるのでしょうか。それは、ずばり「希少性」という点にあります。たとえその構造や輝きは同じであっても、天然石ならではの歴史と希少価値に、永遠のロマンや憧れを感じる人も多いでしょう。
とはいえ、時代とともに消費者の意識も価値観も変わりつつあります。天然物と同じ輝きなら、よりクリーンで価格も手ごろな合成ダイヤモンドを選択する……。そんなエシカル志向の流れを受け、単に高価な宝石を所有することよりも、自分の気分に合ったアイテムに価値を見いだす消費者は確実に増えています。
ファストファッションを好むミレニアル世代にも、これまでジュエリーの購買層だった中高年世代にも、合成ダイヤモンドは魅力ある新たな選択肢となることは間違いないでしょう。これからのダイヤモンド市場のニーズは、その「希少性」で選ぶか、「安さ・気軽さ」で選ぶか── 消費者が自身の価値観で判断する時代になっていくのかもしれません。
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