ますます注目度が高まる、建築物の「基礎工事」とは?
2019.12.26「何事も基礎が大切」と言います。同様に、建築物を建てるときも大切なのが「基礎工事」です。この基礎工事をいい加減にやれば、その上に立つ建物の土台が揺らぐことになり、どんな頑丈に作った建物だとしても長持ちはしないことになります。こうした点から、基礎工事は建築工事において最重要の工事のひとつと言っても過言ではありません。
近年、わが国を大きな地震が立て続けに襲い、 の耐震性能が注目を集めるようになっています。もちろん、建築物の耐震性能においても基礎工事は大きな役割を果たしており、今後、その重要性や注目度はますます高まっていくばかり……゜ー。
そこで今記事では、基礎工事とは一体どんな工事なのか、どんな種類があるのかなど、さまざまな角度から調べてみました。
基礎工事とはどんな工事?
基礎工事とは、建築物の土台となる部分、すなわち地面と建物の間の部分である「基礎」を作るための工事のこと。一般的な住宅なら、建物が建つ地面から床までの間にコンクリートの土台があるはずです。これが“基礎”になります。
家は親から子、孫の世代まで、長きにわたって住み続けられることが求められます。どんなに格好よく、デザイン性に優れた家でも、すぐに壊れてしまったり、不具合がみつかるようでは、まったく意味がありません。丈夫で長持ちする家を作るためには、建物を支える土台がしっかりしていなければなりません。
基礎が傾いていたり、歪んでいたり、あるいは強度に不備があったりすれば、その上に建てた建物は当然ながら不安定な状態になり、その建物を使用すること自体に危険を伴うことになります。また万が一、建物を建てた後に基礎部分に問題があるとわかった場合は、建物を取り壊して基礎から作り直し、というようなことにもなり、莫大な費用と時間を要することになります。何よりこうした事態になれば、責任所在を明確にする必要がありますし、工事業者が誠意をもって迅速に対応してくれれはよいのですが、実際問題としてなかなかそうした快い対応をしてくれるケースはない現実にあまりないようです。
つまり、建築物を作るときに基礎工事は非常に重要な工程となり、土地の測量や配筋、コンクリート打設など、専門的な知識と技術を持った職人が、慎重かつ丁寧に行うことが求められます。
基礎工事の種類にはどんなものがある?
ひと口に基礎工事といっても、その工法によってさまざまな種類があります。建築物の種類や敷地の地盤の性質によって最適な工法が選択されます。
基礎工事は、大きく分けて「杭(くい)基礎」と「直接基礎」の2種類があります。この2種類の基礎工事は、さらに工法や使用する材質などによって細分化されます。
●杭基礎
「杭」、すなわち円筒状の柱を地面に打ち込み、基礎を安定させるのが杭基礎です。建築物を作る地盤が軟弱で、支持層(建物を支えることができる硬い地盤)が地中深い場合などに用いることになります。
古くは河川であったり湖沼であった地盤が軟弱な土地に建物を建てるときには、完成した建物全体が不安定になりがちです。そのため、そのまま建設工事を進めるわけにはいかず、数メートル〜数十メートル下の地盤の硬い支持層まで届く杭を打ち込み、基礎を安定させるわけです。一般的に軟弱地盤の場合、あるいはマンションなど、荷重の大きな高層建築物を建設する場合などに用いられます。
杭基礎は、工法の違いによってさらに「既成杭工法」と「場所打ち杭工法」の2種類に分けられます。
〈既成杭工法〉
既成杭工法とは、既製品の杭を打ち込む工法のこと。既製杭を使用するため、安定した品質を保つことができ、コストも比較的安く抑えることができます。また、施工速度が速く、施工管理も比較的容易です。
〈場所打ち杭〉
場所打ち杭とは、現場に穴を掘って、そこに鉄筋を挿入して杭を作る工法のこと。この工法では、径の大きな杭が施工できることに加え、長さの調節もできることなどがメリットとして挙げられます。
※ちなみに杭の材質には、鋼管、コンクリート杭、合成杭などがあります。
●直接基礎
地盤にじかに基礎を築くことを、直接基礎といいます。地中に杭を打ち込むようなことはしないため、建物を建てる敷地が硬く、良好な地盤であることが条件となります。また、荷重が大きくなる高層の建物には向かず、一般住宅のような低層の建物に限って採用される基礎工事となります。
直接基礎は、さらに「ベタ基礎」「布基礎」「独立基礎」に分類されます。地盤の性質や建物の種類によって、これらの工法を使い分けることになります。
〈ベタ基礎〉
建物の底面すべてに基礎スラブ(石やコンクリート製の厚板)を構築する基礎工事のこと。建物の外周や柱の下だけに基礎を築くのではなく、建物の荷重全体を鉄筋コンクリートの面で支えるため、不同沈下(建物が不揃いに沈下を起こす症状のこと)を起こしにくい基礎です。また、建物下の地面をコンクリートで覆ってしまうため、地面から上がってくる湿気を防止し、シロアリの被害も受けにくくなります。最近の一般住宅では、この“ベタ基礎”を採用するケースが多くなっています。
〈布基礎〉
鉄筋コンクリートが連続する基礎のこと。ベタ基礎が面で建物を支えるのに対して、布基礎は点、あるいは線で支える構造です。鉄筋が入っているのは、建物の外周や柱の下のコンクリートが立ち上がる部分のみで、ここで建物の荷重を支えます。
立ち上がっている部分以外は、地面の上に防水シートを敷き、その上にコンクリートを施設します。その部分のコンクリートの厚さは、ベタ基礎が15cmほどなのに対して、布基礎は5cmほど。そのためコストを抑えられます。
〈独立基礎〉
基礎自体が独立しているカタチをとる基礎工事のこと。建物を支える1本ずつの柱の位置に、その柱だけを支えるように単独で築かれる基礎となります。その基礎の部分は、コンクリートで作った直方体や四角錐など、底が広がった塊(フーチング)のため、“独立フーチング基礎”とも呼ばれます。
独立基礎は、比較的強固な地盤の場所で、荷重があまりかからない柱などに使われます。傾斜地に建てる一戸建ての家や住宅のデッキ部分の基礎などによく使われる基礎です。
基礎工事の工程は、どんな流れ?
基礎工事の工程は、おおむね以下のような過程となります。基礎の種類は違っても、工期や工程にさほど大きな違いはありません。
工程1.地盤調査
まずは建物を建てる敷地の地盤を調査し、地盤が軟弱であれば、地盤改良を行います。地盤改良は、セメントを使用して地表の周辺を固める表層改良工法など、いくつかの方法があります。地盤が弱ければどんなに頑丈な基礎を築いても不同沈下などを起こすことが想定されるため、地盤改良は大切な工程となります。
工程2.基礎の範囲を決定
基礎の底の深さまで、地面を重機などで掘削します。これを“根切り”と言い、鉄筋とコークリートを流し込むのに最適な深さを計算して掘り進めます。ベタ基礎なら建物の範囲内のすべてを、布基礎なら立ち上がり部分のみを掘削することになります。
工程4.砕石を入れる
掘削した部分に(ベタ基礎は全面に、布基礎は立ち上がり部分に)、地盤を固めて強度を持たせるため効果がある砕石(さいせき=砂利)を入れます。
工程5.防湿シートを敷き、捨てコンクリートを流す
砕石を入れて地面を固めた上に防湿シートを敷き、“捨てコン”と呼ばれるコンクリートを流し込みます。コンクリートが乾いたら、建物を建築する位置がわかるように基準となる線を書き込みます。これを“墨出し”といいます。
工程6.型枠を組み、コンクリートを流す
建物を建てる位置に鉄筋を組み込み、さらにコンクリートを流し込むために基礎の外側に型枠を組みます。その型枠の中にコンクリートを流し込み、固まったら型枠を外します。
工程7.完成
不要なコンクリートを除去し、別に必要となったコンクリート礎を打設するなどして、細かい仕上げをしたうえでようやく基礎工事が完成となります。
基礎工事に資格は必要?
基礎工事に携わるうえで、特別な資格は必要ありません。しかし、基礎工事を行うには、地盤の測量、配筋、コンクリートの打設など、専門的な知識と技術が必要となります。そのため”基礎屋さん”と呼ばれる基礎専門の職人さんが行う場合がほとんどです。
とはきには建物を建てる大工さんが基礎から担当することもあるようですが、こうした場合、その大工さんや大工さんが所属する会社が専門知識と技術を有しているのであれば問題ありません。
この仕事に従事する多くの人が目指す資格として「基礎施工士」があります。一般社団法人日本基礎建設協会によって主催・認定されている民間の資格です。試験は1年に1回行われています。
おわりに……
学校の勉強も基礎なくして応用とされる知識は身につきませんし、仕事においても、事務仕事の大切さや基礎的な社会人としてのマナーが備わって初めて、専門的なスキルを身につけることができます。同様に基礎工事は、建物の土台を支える大切な工事であり、“うわもの”がどんなに素敵で格好よくても、目には見えない基礎工事がおろそかでは、それは不良物件になってしまう可能性を秘めています。
長く快適に暮らすために、そして、地震に強い家にするために、どのような工事が行われているのかを、工事業に携わる者だけでなく、マイホームをもつ人はしっかり知ることが大切です。実際に住み始めてさまざまな不具合がみつかり、不良物件となってからでは遅いこともままありますので、リビングや寝室に配置する家具や壁紙の色といった目に見える部分にこだわることももろちん大切ですが、今回の記事を通して基礎工事の大切さがご理解いただけたでしょうか。
── 安心・快適な家づくりには、基礎が果たす役割は本当に大きいのですから。
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