航空自衛隊の仕事とユニフォームを見てみよう！

近年、北朝鮮による核・ミサイル開発や中国による軍事力の急激な強化、ロシア軍機の活発な活動などにより、日本周辺の安全保障が脅かされる事態が増えてきました。日本の空を守る唯一の組織である航空自衛隊としては見逃せない状況です。2019年度の緊急発進回数は947回を数え、過去３番目の多さとなっています。

航空自衛隊は多種多様な任務を着実に遂行することをモットーに、陸上自衛隊や海上自衛隊と手を携え、それぞれの領域を総合的に融合させる相乗効果により、全体的な国防力を増幅させようとしています。今後は新たな領域であるサイバー空間への対応や宇宙領域にも取り組むなど積極的な姿勢で活動する予定も打ち出されています。

今回はそんな航空自衛隊の主な活動とそのユニフォームについて、簡単にご紹介しましょう。

※この記事のトップ画像は「Ryan Fletcher / Shutterstock.com」その他の画像は「防衛省・自衛隊HP」および「航空自衛隊HP」より引用したものです。

航空自衛隊とは

海・空・陸の３方向からの外敵の侵入を未然に防ぐ任務を持つ我が国の自衛隊。海からは海上自衛隊、陸の上では陸上自衛隊が、そして上空を担当するのが３つの中でもっとも新しい組織となる航空自衛隊です。事務官などもいますが、主な任務を担う自衛官は2019（令和元）年３月末現在で4万2750人が在籍しています（出典　防衛白書〈令和元年版〉）。

防衛大臣をトップに、東京の市ヶ谷にいわゆる上層部である「航空幕僚監部」を配置し、航空戦闘任務を与えられている実動の主力編成隊として全国に「航空総隊」が置かれます。

そのほか、航空作戦を支援する「航空支援集団」、教育を一元的に実施する「航空教育集団」、航空機や装備品の開発や航空医学などの開発実験機能を持ち・研究する「航空開発実験集団」、燃料や弾薬、機材の調達や補給、整備などを担当する「補給本部」などがあり、それぞれの任務を日々遂行しています。

ちなみに、ブルーインパルスは「航空教育集団」下に属します。また、通信システムを担う「航空システム通信隊」のほか、国際的なイベントや国家的行事などで演奏をする「航空中央音楽隊」も航空自衛隊の組織の一部です。

航空自衛隊の職種とその制服について

航空自衛隊なので、戦闘機や輸送機などを操縦する飛行業務がメインとなりますが、職種はそれだけではありません。そのほかにも多種多様な業務に基づいた職種があるのをご存じでしょうか。

その内訳は航空業務（飛行）、航空管制、警戒管制、気象、電算機処理、補給、施設、輸送、高射、航空機整備、武器弾薬、通信、警備、衛生、音楽、会計など、多岐にわたっています。直接国防に関わるものから後方支援まで、どれもが重要な任務といえるでしょう。

航空自衛隊では職種ごとに制服があり、それぞれに業務や季節に適したユニフォームを着用しています。会計や総務など行政事務の担当はブレザーにパンツ、スカートといった常装服を使用します。秋から春にかけて着用する常装冬服と、夏用の服があります。

画像では、陸・海・空の自衛隊の制服が紹介されていますが、自衛隊ごとにデザインが異なるのがわかるでしょうか。

例えば、冬服の場合、陸上自衛隊と航空自衛隊は濃紺を基調に、海上自衛隊は深緑をベースにした上下のスーツです。夏服ではシャツにパンツ、もしくはスカートですが、海上自衛隊だけが上下とも白の装いとなっています。航空自衛隊の夏服のシャツは、空の色に合わせたようで薄いブルーで統一されているのが特徴です。

航空自衛隊の特徴的な職種とユニフォーム

航空自衛隊ならではのメイン業務はやはり航空業務関連です。戦闘機、輸送機、偵察機、救難機を操縦して、防空、偵察、輸送、救難などを行います。いわゆる「スクランブル」と言われるF-15戦闘機の緊急発進は、国籍不明機に対する領空侵犯措置であり、24時間体制で空域を監視するうえで国防を担う任務です。スクランブルは偵察機や救難機でも行われます。

F-15戦闘機を運用している基地のひとつに、小松基地所属の第6航空団飛行群第306飛行隊があります。第306飛行隊は、日本における「トップガン」部隊として知られ、全国から選りすぐりのパイロットを招集してF-15戦闘機での技量を磨く「戦技教育」を行っています。戦闘機に乗務する場合はいわゆる戦闘服である深緑色のつなぎに、フライトジャケットを着用するのが基本です。

また、「高射」も航空自衛隊ならではの業務のひとつといえるでしょう。攻めてくる航空機や巡航ミサイルを撃破することが任務であり、そのために使用するペトリオットミサイルシステムが適切かつ正確に運用できるよう、常に器材の操作や整備を行っています。勤務時は作業服である迷彩柄のつなぎを着用します。

ちなみに、政府専用機の操縦も航空自衛隊が担っています。機体は千歳基地に駐機されていて、運用時は不測の事態を避けるため、2機同時に運航されています（1機は予備として運航）。操縦だけではなく、機内サービスや整備などすべてにおいて、千歳基地の特別航空輸送隊が担当しています。

航空自衛隊の主な活動とは

航空自衛隊の主な活動には次のようなものがあります。

■災害派遣

時と場所を選ばず、日本各地にもたらされる災害が増えている昨今。地震や津波、台風による水害や強風、豪雨などの自然災害のほか、爆発やビルの倒壊など事故も相次いでいます。そんなときに航空自衛隊も災害派遣要請に基づいて出動し、人命救助や給水支援、廃棄物処理、物資輸送などで活躍しています。こんなときに着るのはいわゆる迷彩服といわれる作業着です。カモフラージュ柄とも呼ばれ、グレーを基調にしており、活動拠点ともなる滑走路をイメージしたものです。

■訓練等

航空自衛隊として基地内で飛行訓練を行うだけではなく、他国との共同訓練への参加、国外での運行訓練、輸送機を使用した寄付物資の輸送などを行います。2019（令和元）年12月には人道支援・災害救援の共同訓練として、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの各空軍とともに、ミクロネシア連邦においてクリスマス・ドロップと呼ばれる生活用品などの寄付物資の投下を行いました。

このようなときは迷彩柄ではない深緑色一色のユニフォームを着用することが多く、右腕には各部隊のエンブレムが、左腕には日本の国旗が縫い付けてあります。

■防衛交流

航空幕僚長と他国の空軍参謀長との間で電話やテレビを含む会談、お互いの公式訪問が行われるほか、部隊間の交流として現地での意見交換を通じて相互理解の促進、信頼関係の強化に努めています。

海外でのエアショーに参加して交流を図り、航空自衛隊の優れた技術力を発信することもあります。着用する制服は基本的に深緑色のユニフォームです。

■国際貢献

航空自衛隊は緊急支援の要請があった場合は日本国内だけではなく海外へも赴きます。

近年では、2018（平成30）年10月に、インドネシアで起こった地震と津波被害に対して、また、2020（令和2）年1月に起こったオーストラリアでの森林火災について、国際緊急援助活動を実施しました。オーストラリアの森林火災では長引く火災の中、16日間にわたって活動し、消火及び復旧に関連した人員や物資の輸送を行いました。関連人員延べ約600名と物資延べ約11トンの空輸を完遂しました。

国際貢献でのユニフォームは深緑色のつなぎと迷彩柄の作業服が主に着用されています。

航空自衛隊名物は「空上げ」？

近年、航空自衛隊として各基地で力を入れているのが「空上げ（からあげ）」です。航空自衛隊の給食として提供される鶏の唐揚げを基地ごとにご当地調味料などで味付けしたもので、“航空自衛隊全体でより上を目指す”という意味が込められています。

全国各地の基地自慢の空上げを一部ご紹介しましょう。

■松島基地

ブルーインパルスの本拠地である松島基地からは「海苔空上げ」です。東松島産の青まぜ焼きのりを使用し、磯の風味とサクサクの食感がポイント。

■入間基地

埼玉県の入間基地は、地元の歴史ある狭山茶を使った「狭山茶空上げ」をアピール。鮮やかな色合いとあっさりながらコクのある味なのだそう。

■串本分屯基地

和歌山県串本分屯基地からは紀州名物の梅を使った「紀州梅空上げ」。梅干しの酸味が肉の臭みを消して柔らかくしてくれるうえ、疲労回復にもいいそうです。

■静浜基地

2019（令和元）年の航空教育集団調理競技会で最優秀賞を受賞したのが、静岡県の静浜基地の「空上げ3種盛」です。焼津特産の桜海老とかつおぶし、藤枝特産のしいたけを風味豊かに調理しました。静浜基地には操縦教育としてパイロットを目指す隊員を指導する「第11飛行教育団」があり、学生たちの活力になるようにと考えられたレシピとのこと。

鶏肉はどこでも入手できる材料であり、比較的安価であること、大量調理が可能なこと、隊員の好みに合うこと、などから航空自衛隊の定番料理として「唐揚げ」が採用され、「空上げ」とネーミングされました。現在では、各基地や分屯基地の統一献立として、毎月最終金曜日に「空自空上げの日」が設定されていて、イメージキャラクター「からっと隊長」も登場しています。 航空自衛隊のHPには他にも各基地の空上げレシピが掲載されているので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。

出典：防衛省・自衛隊　KIDS SITE　自衛隊図鑑　/　航空自衛隊　Webサイト

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