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マンションの大規模修繕工事とは?工事内容・周期・発注方式を解説

マンションでは建物の性能を維持するために、12年周期で大規模修繕工事を実施するのが一般的です。大規模修繕工事はマンションの資産価値を保つためにも重要なものです。大規模修繕工事の工事内容や周期、発注方式などを解説していきます。

マンションの大規模修繕工事とは?

マンションの大規模修繕工事とは、マンションの築年数の経過による劣化を修繕する大規模な工事をいいます。分譲マンションの大規模マンション工事は共用部分を対象に、区分所有者からなる管理組合が主体となって行います。大規模修繕工事は長期修繕計画にもとづいて計画的に実施され、工事費用に充てるのは区分所有者から毎月徴収する修繕積立金です。

マンションの大規模工事では、外壁補修やシーリング工事、防水工事、鉄部の塗装工事、給排水管工事などが行われます。

マンションの大規模修繕工事はなぜ必要?

マンションは建築基準法にもとづいて、一定の耐震性や耐久性が確保されて建てられているため、「修繕工事は必要ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、マンションの大規模修繕工事は、美観だけのために行われるものではないのです。

適切な時期に修繕を行わなければ、屋根やバルコニーは、防水層の劣化によって雨漏りが起こるリスクがあります。外壁はひび割れが生じるほか、タイルは剥がれて落下する危険性があります。給排水管は亀裂や詰まりが生じることで、漏水が起こる恐れが生じます。

こうした理由から、大規模修繕工事は建物の性能を維持して、安全で安心な暮らしが送るために、必要なものなのです。また、マンションの資産価値を維持するためにも、大規模修繕工事が必要です。

大規模修繕工事の主な内容

マンションの大規模修繕工事では、主に以下の箇所の工事が行われます。

屋上・バルコニー・外廊下…屋上やバルコニー、外廊下には防水処理がされていますが、経年劣化によって防水層が劣化します。防水工事には種類があり、それぞれの工法に応じて、再度、防水工事を行います。

外壁…タイルの剥落打診を行い、割れや浮きがある箇所は貼り替えをします。また、塗装部分はひび割れなどの下地補修を行った後、壁や天井などを全面的に塗り替えます。

シーリング…外壁面の目地、鋼製扉の枠やサッシ枠のまわりのシーリングの打ち直しを行います。

鉄部塗装…メーターボックスの扉、鉄骨階段など鉄部の塗装を行います。

大規模修繕工事の周期は?

大規模修繕工事は12年周期で行うのが一般的です。これには主に2つの理由があり、1つは、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」で12年周期と示されているためです。

2つ目の理由は、足場が必要な工事の耐用年数によるものです。一般的に耐用年数は、鉄部塗装は3年程度、シーリングは8年程度、外壁の塗装は10年程度で、防水処理はメーカーの保証は10年が多いですが、一般的には12年程度持ちます。

耐用年数に合わせて個別に工事を行うのは経済的ではありません。特に、防水工事や塗装工事といった足場の設置が必要な工事は、まとめてやる方が経済的です。また、美観が損なわれても安全性には影響しませんが、防水処理の劣化は漏水につながります。そこで、防水処理の耐用年数に合わせて、12年周期で大規模修繕工事を実施するのが一般的です。

また、地域によってはマンションは定期報告が必要な特定建築物に該当するため、外壁タイルの全面打診調査が必要なことからも、10年から12年の周期で大規模修繕工事が実施されています。

マンションの大規模修繕工事の費用

マンションの大規模修繕工事は、管理組合が区分所有者から毎月、徴収する修繕積立金から支払われます。

国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

国土交通省が2017年に実施した調査によると、1戸あたりの工事金額は「75万円~100万円」が30.6%で最も多く、「100万円~125万円」が24.7%、「50万円~75万円」が13.8%で続きます。

国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

また、1㎡あたりの工事金額を見ていくと、「1万円~1万5,000円」が41.1%で4割以上を占め、「5,000円~1万円」が31.8%となっています。

出典:国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査

マンションの大規模修繕工事の発注方式

マンションの大規模修繕工事の発注方式として、代表的なのは「責任施工方式」と「設計監理方式」です。

責任施工方式とは

責任施工方式とは、管理組合と施工会社が工事請負契約を結び、建物調査診断から改修設計、資金計画、工事までのすべてを一社に一任する方式です。

施工会社になるのは一級建築士が在籍し、設計部門や工事部門を持つ会社で、マンションの大規模修繕工事の専門会社やゼネコン、管理会社が該当します。

責任施工方式では、従来は管理会社の勧める施工会社に見積もりをとるのが一般的でした。昨今では、管理組合が選定した数社に見積もりを依頼して、施工会社を選定する方法をとるケースが主流となっています。

設計監理方式とは

設計監理方式は第三者のコンサルタント会社が、建物調査診断や改修設計、資金計画、施工会社の選定の技術的なサポートを行うとともに、工事中は工事監理を担う方式です。施工会社とは工事請負契約を結びます。

コンサルタント会社になるのは、一級建築士が在籍する設計事務所や管理会社です。管理組合からコンサルタント会社に対して、コンサルタント料の支払いが発生します。

責任施工方式のメリット・デメリット

責任施工方式は、施工会社と工事請負契約のみを結ぶシンプルなやり方で、コンサルタント費用が発生しないといったメリットがあります。一方で、管理組合の負担が大きい点や、第三者である専門家が介入しないことから、適正な工事が行われているか判断が難しいという点がデメリットに挙げられます。

責任施工方式のメリット

責任施工方式は、建物調査診断から改修設計、工事までをすべて一社に任せることができます。窓口が一本化されるため、管理組合が工事状況を把握しやすく、理事会の運営を合理的に進めやすいことや、コンサルタント費用がかからないことがメリットに挙げられます。

責任施工方式のデメリット

責任施工方式は施工会社を選定する段階では、数社の施工会社とのやり取りが必要となることから、管理組合の負担が大きい点がデメリットです。見積書は通常、会社によってフォーマットが異なるため、比較がしにくいことも管理組合の負担が大きくなる要因です。かといって、相見積もりをとらずに、一社から見積もりをとって依頼する場合は、工事費用が割高になる傾向があります。

工事が始まってからは、管理組合による検査が必要になることも、負担になります。

また、責任施工方式では第三者の専門家による検査などのチェック体制がありません。そのため、適正な工事が行われたのか判断するのが難しく、品質の低下を招く可能性があることもデメリットです。また、一部の区分所有者の利害関係が優先されてしまうケースがあるなど、公正性や公平性が保ちにくい面もあります。

設計監理方式のメリット・デメリット

設計監理方式は第三者であるコンサルタント会社が入ることから、透明性が担保されるとともに、工事監理によって適正な工事が行われやすいことがメリットです。ただし、コンサルタント費用がかかることがデメリットに挙げられます。

設計監理方式のメリット

設計監理方式はコンサルタント会社が入ることで、工事仕様書や見積書の仕様が統一され、見積もりの比較検討がしやすくなります。また、ムダな工事を省くなど、必要な工事内容を精査したり、管理組合の要望に合わせて調整したりしやすいこともメリットです。第三者が入ることで、透明性が担保されやすくなり、大規模修繕工事の関わる管理組合の合意形成が図られやすくなります。

工事に入ってからは、コンサルタント会社が工事監理を担い、設計図書通りに適正に工事が行われているかチェックが行われるため、手抜き工事が起こりにくいこともメリットに挙げられます。

設計監理方式のデメリット

設計監理方式は、大規模修繕工事の工事費用以外にコンサルタント費用が発生することがデメリットです。ただし、コンサルタント会社が必要な工事内容や適正な工事費用をアドバイスすることで、トータルでかかる費用を抑えられるケースもあります。

マンションの大規模修繕工事の実施までの流れ

マンションの大規模修繕工事は、大規模修繕工事の実施を管理組合の理事会で検討してから、工事の着工に至るまでに通常、2年程度の期間がかかります。設計監理方式の場合の一般的な流れをまとめました。

【修繕委員会の立ち上げ】
大規模修繕工事を円滑に進めるため、有志による修繕委員会を立ち上げます。修繕委員会は理事会の諮問機関として設置されるケースが一般的です。

修繕委員会を立ち上げる理由は3つあり、1つ目として、理事会が通常の運営業務以外に、大規模修繕工事にまで深く関わるのは、理事の負担が大きいことです。

また、管理組合の理事会は1年、あるいは2年で理事が交代するのが一般的ですが、大規模修繕工事の検討から工事が完了するまでには数年かかります。そのため、委員を固定して継続性を持たせることが2つ目の狙いとして挙げられます。

さらに3つ目として、区分所有者の中に建築関係の専門家がいれば、大規模修繕工事の技術的な判断に加わってもらうことも理由になります。

【発注形式の選択】
責任施工方式と設計監理方式などから、いずれの発注方式をとるか、決定します。

【コンサルタント会社の選定】
設計監理方式を採用する場合、設計事務所や管理会社などから、コンサルタント会社を選定します。

【総会での大規模修繕工事の実施の承認】
管理組合の総会で大規模修繕の実施などについて承認を受けます。

【コンサルタント会社とのコンサルティング業務契約の締結】
コンサルタント会社と大規模修繕工事のコンサルティング業務の契約を締結します。

【建物調査診断】
建物調査診断は建物の劣化や不具合の状態を把握し、原因の追究や推定を行うものです。建物調査診断を実施することで、修繕工事が必要な箇所を把握することができます。

【修繕計画・改修設計】
コンサルタント会社が修繕基本計画を作成した後、改修設計を行い、仕様書や積算資料の作成を行います。

【施工会社の選定】
コンサルタント会社の主導のもと、施工会社の募集を行い、見積書の提出を受けます。選定のポイントとなるのは見積書の金額や施工実績、経営状況などです、修繕委員会や理事会で各社にプレゼンテーションを実施してもらい、工事中の安全対策など、プレゼン資料やヒアリング内容なども参考に決める方法もあります。

【総会での工事金額・施工会社の決定の承認】
管理組合の総会で大規模修繕工事の工事金額や施工会社の決定に関する承認を受けます。

【工事請負契約の締結】
コンサルタント会社のサポートのもと、管理組合と施工会社が工事請負契約を結びます。

【工事説明会】
工事に着工する前に、施工会社の主催による工事説明会が実施されます。マンションの大規模修繕工事は居住者が住みながら行うものであり、騒音やホコリなどが発生することがあります。また、工事期間中は足場から室内が見えやすく、窓を開けられない日や洗濯物が干せない日があるといった制約も伴います。また、バルコニーに置いている物の撤去も必要になります。

そこで、工事説明会は居住者に理解と協力を求めるために実施されます。工事説明会では、施工会社が挨拶を行い、工事期間や工事内容、工事の管理体制、安全対策や防犯対策などの説明をして、居住者からの質疑を受け付けるのが一般的です。

【工事着工】
工事の着工後は、修繕委員会はコンサルタント会社や施工会社との定例会で、進捗状況などを確認します。

【工事完了】
工事が完了した後は、契約内容通りに工事が実施されたか、竣工検査で確認します。そして、管理組合は竣工図書を受け取ります。

マンションの大規模修繕工事にかかる期間は?

大規模修繕工事にかかる期間は工事内容やマンションの規模などによって異なります。

規模による工事期間の違い

総戸数50戸未満の小規模マンションの場合、大規模修繕工事にかかる期間は3~4ヵ月が目安です。50戸~100戸未満の中規模マンションは4~6ヵ月程度が目安です。100戸以上の大規模マンションは半年~1年程度が目安になります。

大規模マンションの中でもタワーマンションは、1年以上の工事期間がかかることがあります。通常、マンションの大規模修繕工事は建物の周囲に足場を組んで行われますが、通常の枠組足場は20階程度までしか組めないため、昇降式足場やゴンドラでの作業になることが要因の一つです。また、マンションによって形状などが異なるため、オーダーメイドの対応が必要になることも、工期に影響します。

一般的な大規模修繕工事の流れと期間

一般的なマンションの大規模修繕工事の流れと期間の目安をまとめました。

【足場・仮設の設置工事】
大規模修繕工事を行う際には、建物の周囲に足場を設置し、道具や材料の落下や飛散を防ぐため、メッシュシートを張ります。また、資材置き場や工事事務所などを設置します。こうした足場・仮設の設置工事にかかる期間は小規模マンションでは15~20日程度ですが、大規模マンションでは、倍以上の期間がかかることがあります。

【下地補修工事/シーリング工事/鉄部塗装工事】
下地補修工事では、外壁のひび割れや浮きなどの補修を行った後、高圧洗浄で汚れやコケなどを落とします。高圧洗浄を行うのは塗装のつきをよくするのが目的です。シーリング工事ではサッシ枠や鋼製扉の枠のまわり、外壁の目地のシーリングの打ち直しを行います。鉄部塗装工事は、メーターボックスの扉などの塗装を行う工事です。これらの工事にかかる期間は、劣化状態や施工範囲にもよりますが、2週間~1ヵ月程度が目安になります。

【外壁塗装工事/防水工事】
外壁塗装工事は養生作業を行った後、下塗り、中塗り、上塗りという工程で行います。防水工事は屋上やバルコニー、外廊下などの防水処理がされている箇所の防水性能を回復するため、既存の工法に合わせて再施工を実施します。外壁塗装工事や防水工事は、工事範囲にもよりますが、1~3ヵ月程度が目安です。

【足場・仮設の解体工事】
すべての工事が完了した後、足場などの解体が行われます。

まとめ

マンションは適切な時期に大規模修繕工事を実施することで、建物の性能を維持することができます。設計監理方式はコンサルタント費用がかかりますが、プロである第三者が入ることによって、専門的なアドバイスが受けられるというメリットがあります。

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