癒される「宮城伝統こけし」!シンプルで温かみのあるこけしの世界
2020.08.03日本人だけでなく、海外からの観光客にも大人気の温泉。火山の多い国だけあって日本全国に点在し、その色や温度、泉質、湯量などはそれぞれ個性があり、古くから人々を魅了してきました。
温泉があったことから作られるようになり、やがて伝統的工芸品として認められたのが「宮城伝統こけし」です。主に5つの地域で作られ、顔つきや形、柄などがそれぞれ異なる特徴があります。
顔と胴体というなんともシンプルな形状と素朴な微笑みが魅力のこけし……。その温かみのあるこけしに注目が集まり、最近は「こけ女」と呼ばれるこけしを愛する女性ファンが増えているそう。そこで今回は、宮城県の伝統的工芸品である「宮城伝統こけし」についてご紹介しましょう。
宮城伝統こけしとは?
「宮城伝統こけし」が作られ始めたのは江戸時代だと言われています。
かねてから豊富な森林を有する東北地方の山村では、その木材を使って生計を立てる「木地師」が存在しました。当時の生地師は木材を斧で切り出し、ろくろを挽(ひ)く技術を用いて、生活するためのお椀やお盆など、さまざまな木工品を製作していました。
仕事のかたわら、木地師は子ども用のおもちゃを作り始めます。男の子用には「独楽(こま)」を作り、女の子用には人形として「きぼこ」と呼ばれるこけしを作りました。これが宮城伝統こけしの始まりとされています。
やがて、こけしは温泉に来た湯治客のお土産として販売され、人気を得ることに。頭と胴体だけの簡素な形、優しく微笑むやわらかな表情は子どもだけでなく大人にも評判となりました。
東北地方では全部で11系統の伝統こけしがありますが、そのうち5つの系統が「宮城伝統こけし」として、昭和56(1981)年6月22日に伝統的工芸品として指定されました。
5つの系統からなる宮城伝統こけし
この「宮城伝統こけし」は5つの地方で作られた工芸品の総称です。主要な製造地域によって、それぞれ顔の表情や使われている色、胴体の形などが異なり、こけし工人(こけしを作る職人)の個性が表れています。5つの伝統こけしの特長を紹介しましょう。
■遠刈田(とおがった)系伝統こけし
刈田郡蔵王町にある遠刈田温泉を中心に作られたこけしで、5系統のこけしでは最も古い歴史を持ち、こけし発祥の地と考えられています。
大きめの頭部にまっすぐな胴体という形状。髪型は一般的におかっぱですが、頭部に帽子をかぶったように凸型のフォルムも見受けられます。切れ長の目をした大人っぽい顔立ちで、胴には菊や梅などの花を重ねた鮮やかなパターンが描かれています。
■弥治郎(やじろう)系伝統こけし
白石市にある鎌先温泉、その近くの弥治郎地区で生まれたのが弥治郎系伝統こけしです。農民が副業に木地業を営み、鎌先温泉に「鎌先商い」としてお土産にこけしを売り歩いていました。
その特徴はくびれたウエストのような、真ん中が細くなった形状の胴体。胸元には着物の衿が描かれ、下はカラフルな色彩でラインが施されているので、モダンな印象を与えます。頭部にはベレー帽のように見える線が引かれているのも特徴です。
■鳴子(なるこ)系伝統こけし
大崎市の鳴子温泉で作られたことからこう呼ばれています。やはり木地師が作ったこけしを温泉場で湯治客に販売していたのが発端で、現在では“こけしと言えば鳴子”と言われるほどになりました。
胴体は肩が張っていてウエストあたりの真ん中が細く、裾に向かってまた広がっているため、安定した形状です。「重菊」「菱菊」など、菊の花が写実的に描かれています。頭はうりざね顏で幼い表情のため、可憐な雰囲気が漂います。独特の技法ではめ込まれた頭部を回すとキィキィ音が鳴ることでも知られています。
■作並(さくなみ)系伝統こけし
仙台市青葉区作並にある作並温泉は仙台の奥座敷として親しまれています。そこで作られてきたこけしは、後に都市部である仙台で発達していきました。
子どもが遊ぶのに握りやすいようにと胴体が細くなっているのが特徴ですが、近年は安定して飾れるように胴体が太く円すい型のものもあります。遠刈田こけしの影響を受けたおかっぱ頭も多く作られ、胴体は図案化した菊の模様で彩られています。
■肘折(ひじおり)系伝統こけし
肘折系のこけしの発祥は山形県の肘折温泉です。月山信仰の湯治場で生まれたこけしは、鳴子系を踏襲した形であり、柄や彩りは遠刈田系の流れを汲んだもので、独特の個性が表れています。伝統的工芸品に指定された肘折系こけしは工人が仙台に移り住み、その伝統を継承しているものです。
胴体は肩が張っているもののほぼまっすぐで、模様は重ね菊が多く、腰には帯を表すラインが引かれています。顔立ちははっきりしていて、黒々としたおかっぱ頭とともに力強さが感じられる表情です。
こけしの制作工程 その1
宮城伝統こけしは前述の通り5系統あり、その作り方は系統によって違いがあります。伝統的工芸品に指定されているため、製造工程にも制約がありますが、原木を切り出すところから描彩、仕上げの工程まですべて一人で行うのが特徴で、こけし工人の個性が生かされていると言えます。ここでは一般的な制作工程についてご紹介しましょう。
1. 材料の調達
こけしの材料となる原木を選びます。使用されるのは主にミズキ、イタヤカエデです。これらの木をチェーンソーなどで切り出したら木の皮をむいて半年から1年程度、乾燥させます。これは自然乾燥であることが定められています。
2. 玉切り・木取り
乾燥した原木をつくるこけしの寸法に合わせて切り出します。これを玉切りと言います。チェーンソーや電動ノコギリを使って玉切りをしたら、こけしに適した形にするために余分な部分を切り取る作業(木取り)をナタなどで行います。
3. 荒挽き・頭挽き・胴挽き
ろくろの軸に木取りしたものを取り付けて回転させ、頭と銅の部分をそれぞれ別に鉋(かんな)で削っていきます。ろくろ挽きといい、こけし工人の技が必要なところで、こけしのおおまかな形を作ります。鳴子系は「横ろくろ」を、それ以外は「縦ろくろ」を使います。
4. 磨き
おおまかな形のこけしをなめらかな形に整えるために、仕上げ用の鉋(かんな)で削ります。その後、トクサやサンドペーパーを使って木肌を整えます。トクサは植物の茎を煮て乾燥させたもので、木目を研磨するのに昔から使われている道具です。
こけしの制作工程 その2
5. 絵付け
胴体に絵付けをします。ろくろ線を付けるために、胴体はろくろにつけて回し色を塗っていきます。赤、緑、墨色をベースに黄色や緑、紫などが使われます。
6. 差し込み、はめ込み
胴体に穴を開け、頭に作った突起をはめ込み、または、差し込んで頭と胴体をつなげます。鳴子系は「はめ込み」の技法を用いることが決められていて、頭を動かすとキュッキュッと鳴る「ガタコ」が特徴です。
7. 描彩
顏や胴体の絵柄を墨や染料で描きます。5系統のこけしはそれぞれ顔つきや柄が違い、目や口元など細かい描写はこけし工人の個性が発揮されるところ。描彩はすべて手描きであり、菊やなでしこなど、どのこけしにどの柄を描くかも決められています。
8. 仕上げ
こけしに光沢を出し、染料の劣化を防ぐためにモクロウやハクロウを使用して、ろうみがき仕上げを行います。ろうで仕上げることで材料のミズキの木目も美しく映え、こけしにツヤが出ます。これでこけしの完成です。
“こけし工人”が放つこけしの個性
頭と胴体という究極にシンプルな形状と素朴でおだやかな顔立ちをしたこけし。昨今の「こけ女ブーム」は情報過多のIT時代に疲れた現代人が癒しを求めたゆえでしょうか。
現在、こけし工人といわれる職人は減ってはいるものの、歴史のある伝統的工芸品を後世に残そうと、若い“こけし工人”が増えつつあり、彼ら“こけし工人”は伝統を継承し、現代に育むこけし工人たちは決められた技術や技法を守りつつ、新しいこけし作りにも挑戦しているそうです。
機会があったら、東北の素朴な心が宿る「宮城伝統こけし」に、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。
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