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純白の「白衣」はもう古い? 医療現場に浸透するカラフル+高機能な「白衣」

みなさんは「白衣」と聞いて、どんなイメージを抱きますか?

学者や研究者などの高い専門知識を有した職業に就く人が着る衣類、大学の教授が着ている衣類、調剤薬局の薬剤師さん、教員が講義のときにチョークの粉で服が汚れるのを防ぐために着ているもの、あるいは、権威的で近寄りがたいイメージ、清潔感があって信頼できる人が着る衣類など……。

「白衣」を着ている人というと、いろいろなイメージが思い浮かびますが、なかでも「白衣」を着る職業 といえば、 誰もがまっさきに思い出すのが、医師、看護師に代表される医療従事者といえるでしょう。

ところが近年、そうした医療現場で“白くない白衣”が増えていることをご存じでしょうか?

実際に医療をテーマにしたドラマでも、医師や看護師が青や緑などのユニフォームを着ている姿をよく目にしますよね。でもなぜ、“白くない白衣”が増えているのでしょうか。実は、そこにはちゃんとした理由があるのです。白衣の歴史をひもとくとともに、その理由を解説していきましょう。

医療現場で白衣を身に着けるようになったのは、いつ?

白い衣をまとう医師は、紀元前のインドに存在していたことがわかっています。

当時から医師は清潔であるべきとされ、白い衣をまとっていました。しかし、西洋医学において公衆衛生への意識の高まりは今から百年少し前からのこと。実は、19世紀まで医師が施術前に手を洗う習慣さえなかったとか。

というのも、いにしえの医療行為は宗教的儀礼色が強く、西洋の医師はもっぱら黒いコートを着用していたことに所以します。その後、19世紀に入ると西洋医学の急激な発展に伴い、医療業務に効率化や衛生概念も生まれていきます。そして19世紀末になると、西洋においても医師が白衣を着るように変化していったのです。

日本においては、明治時代から医師の白衣着用が一般的になりました。当初は和服の上に羽織る白い衣類でしたが、洋装が普及するにしたがって、コートの形をした白衣が着られるように変化していきます。

一方、看護師の白衣は、かのナイチンゲール(1820年〜1910年)が活躍した19世紀後半のスタイルが、その起源といえるかもしれません。ナイチンゲールは世界初の宗教系でない看護学校を設立し、それまで修道女が務めていた病人の看護を、宗教とは切り離した職業として確立した人として知られます。同時に彼女は高い衛生意識をもって、茶色い長袖ワンピースに袖なしの白いエプロン、ナースキャップを着用を推進したのです。

日本で看護師教育が始まったのは1885 年。ナイチンゲールの影響もあり、普段は筒袖の上着と袴のような長いスカートの上に白いエプロンという制服がオーソドックスなスタイルとされていたのですが、その後1937年に、日本赤十字社が日中戦争の戦場に女性看護師を派遣した際に、初めてワンピース型の白衣が登場します。このときのいでたちは、長袖にロングスカート、大きなナースキャップというものでした。

医師の白衣は、大ヒットドラマの影響で形が変わった!?

医師の白衣は、1960年代にアメリカで放映された医療ドラマ「ベン・ケーシー」の大ヒットによって、主人公が着ていた半袖、スタンドカラー、体にフィットするタイプの白衣が流行し、そのスタイルは劇的な変化を遂げます。

この白衣のタイプはドラマ名から「ケーシー型」と呼ばれ、現在でも外科医や歯科医、男性看護師、臨床工学技士、作業療法士、理学療法士などが多く身につけています。「ケーシー型」はセパレートタイプなので、下半身はパンツスタイル。それまでのコートタイプに比べてとても動きやすい、という利点がありました。

1990年代には、アメリカで医療ドラマが再ヒットします。それはご覧になった人も多い「ER緊急救命室」です。このドラマの影響もあり、「スクラブ」が広く着用されるようになるですが、「スクラブ」もセパレートタイプですが、「ケーシー型」との大きな違いは「首元がVネック」にあります。

「スクラブ」は、“ゴシゴシ洗う”という意味を表す「scrub」からその名がついたように、強く洗っても簡単にはヘタらない生地であり、さらに、シンプルな作りゆえに脱ぎ着しやすく、安価という利点があったのです。

現在では、スクラブのカラーバリエーションが豊富になり、日本のドラマ「コードブルー」で人気アイドルタレントが着ていた色のスクラブや、「救命病棟24時」で人気女優が着ていた色のスクラブが、当時大変な売れ行きとなりました。

ちなみに、10年ほど前に放映された科学警察研究所(通称・科警研)に所属する脳科学者の活躍を描いた人気ドラマで人気俳優や女優、キャストが着用していたのは、イタリア式のテーラード技術を用いたシルエットが美しい、文字通り「純白の白衣」でした。この白衣は、その美しいシルエットから2008 年にグッドデザイン賞にノミネートされたもの。さらに、生地の強度や生産地を厳選するなど、さまざまこだわりが凝縮しているおしゃれさが魅力で、気になる価格も一般的な白衣の2〜3倍するとのこと。でも実際に、コストはもちろん、イタリア製のテーラード白衣を颯爽と着こなせる医療従事者は、日本では少ないといえるかもしれませんね。

看護師のユニフォームである白衣の変遷

看護師の白衣も、昭和初期の長袖・ロングスカート・ナースキャップというスタイルから、時代とともに変化を重ねていきます。

第二次世界大戦後、女性の権利の回復とともに白衣にも動きやすさが、さらに求められるようになり、袖やスカート丈が短くなっていきました。また、保健衛生法や環境衛生法が制定され、綿100%のワンピース型白衣が全国的に普及することになります。

1960年代といえば、ミニスカートが世界中で大流行した頃。同時に、白衣もデザイン性が重視されるようになっていくのですが、ちょうど自動洗濯機が開発・発売されたのもこの当時のこと。洗いやすい素材かつ、手入れが楽ちんなポリエステルなどの化学繊維が主流になり、見た目だけでなく、機能性も格段にアップしていきます。

1970年代にはパンツスタイルの白衣が……、また、DCブランド※が流行した1980年代には、白衣にもデザイナーズブランドのものが登場。「白衣」と呼ばれているにもかかわらず、カラフルでスタイリッシュなスタイルは人気を博し、同時に、機能面でも大きな進化を遂げます。

※DCブランド = デザイナーズ(Designer’s ) & キャラクターズ(Character’s)の略

それは例えば、「静電気が起きにくい」「汚れにくい」「しわになりにくい」「菌の繁殖を抑える」などの高い機能を示しますが、この変化を受けて、素材の開発も一気に進化します。

さらに1990年代には、スクラブを着用する医師が増えたこと、また男性の看護師が増えたことや動きやすさ、感染予防の観点から、看護師にもスクラブ着用が広がったのです。

すっかり見なくなったナースキャップ

ところで最近、看護師の頭にナースキャップが乗っていないことにお気づきですか? 実は、1990年代から多くの医療機関でナースキャップを廃止する動きが広がったのです。

ナースキャップは一枚の布を折りたたんで帽子状にしたもので、多くの場合、形を保つためにノリで固めています。そうした特性から毎回洗濯して形状維持し続けることが難しく、ナースキャップに付着した頭部の皮脂やフケから菌が繁殖し、病気の感染源になる恐れが発生したことから、廃止の流れとなったのです。

そもそもナースキャップは、医療業務中や、患者の処置中に髪が落ちないよう「髪の毛をまとめる」という目的で使用されていました。しかし、目的を達成する意味から考えると機能的とはいえず、それどころか、点滴袋やチューブなどの器具にキャップが引っかかるなど、業務の邪魔になることさえあったのです。また、ヘアピンで髪に固定するスタイルも、髪の毛や頭皮に負担がかかると看護師の間では不評だったようです。

そして、看護“婦”という名称がなくなり、看護師の職業名が一般化されるとともに、男性看護師も増加していきます。そうしたさまざまな要因や変化から、今ではごく一部の医療機関でしかナースキャップを目にすることはなくなってしまいました。

白衣が白くなくなった理由とは?

さて、近年白くない「白衣」が増えているのには、「ファッションの多様化」だけが理由ではありません。医療現場において二つの重大な問題があったのです。

●白くない「白衣」が増えている理由「補色残像」

ひとつ目の理由は、「補色残像」という問題によります。

人の視覚は、長時間同じ色を見た後に目を離すと、それまで見ていた色の補色(対照色)の残像が見える、という現象が起きます。例えば、外科手術では血液の鮮やかな赤色を長く見続けていると、視線を動かすたびに補色である青緑色の残像が視界に現れることになります。医師や看護師はこうした作用によって、業務に支障をきたしていたのです。

やがて科学的な研究によって、青色や緑色をあらかじめ周囲に配することで、補色残像を緩和できることが判明します。お気づきの人も多いと思いますが、白衣だけでなく、手術室の壁やカーテン、病室のシーツや枕カバー、手術用白衣なども白から青や緑色に変化していたのです。実はこの変化も「補色残像」がきっかけなのです。

●白くない「白衣」が増えている理由二つ目「白衣性高血圧」

白い白衣が着られなくなってきたもうひとつの理由は、「白衣性高血圧」です。

「白衣性高血圧」とは、患者が病院で血圧を測ると、普段よりも高い数値が出てしまう現象のことをいいます。病院という患者にとって緊張やストレスを強いられる場では、血管が収縮してしまうことによって血圧が高くなることが原因とされていますが、同時に白い白衣も患者を緊張させるという懸念から、最近多くの病院でさまざまなカラーをあしらった白衣が採用されるようになったのです。

とはいえ「白い白衣はダメだ」というわけでは、もちろんありません。

手術着は緑色でも診察などは白い白衣という病院もありますし、血圧測定は白衣を着ていないスタッフが担当するところもあります。白い白衣にはやはり清潔感や信頼感をもつ方が多くいることから、昨今では、全体時に白を基調にしているものの、真っ白ではなく差し色やアクセントカラーを配した白衣も多く展開されています。

白くない白衣、実は種類豊富

手術室では青色や緑色を身に着けるのが常識となりましたが、現在医療機関で見られる「白衣」は、他にもさまざまなカラーのものがあります。特に小児科や産婦人科ではやさしい印象の色の白衣を身に着けることが多く、サーモンピンクや若草色、水色などが人気色なのだそう。また、ドラマの影響か、外科医や救急医にはネイビーやボルドーが好まれているそうです。

身に着ける色によって見る人の印象や心理状態が変わるといわれますが、ともすれば、体調や健康状態に視覚に入るカラーが影響をおよぼすことも。医療機関では、そういった面に配慮して「白衣」のカラーを選ぶことも必要ですよね。

ここでは、カラー別にその特徴と効果を見ていましょう。

■ピンク色……見る人に安らぎを与えるとされ、医療現場でもいち早く取り入れられてきたカラーがピンクです。ピンクには女性のイメージがあるので、女性医師や看護師の「白衣」として定着しています。

■青色……落ち着いた印象で清潔感もあり、医療従事者にぴったりのカラーといえます。特に最近は、院内でネイビーや水色の「白衣」を着用した人をよく目にします。

■緑色……生命力を象徴するカラー。目にも優しく見る人に癒しや安心感を与えます。手術室では補色残像緩和のための濃い緑色、それ以外ではエメラルドグリーンや若草色など、色の濃さを使い分けているケースも多いようです。

■黄色……陽気さや明るさを感じ、患者の落ち込んだ気持ちや不安を解消する効果も期待できますが、色味の強さによって、場合によってはストレスを与えることも。そのため、実際の医療現場で用いられるのは、少しくすみのあるマスタード色や、ベージュ色に近い淡い黄色とされています。

■赤色……情熱や活力、暖かさを感じるカラーですが、血液のイメージを抱きやすい点から医療現場で真っ赤な「白衣」はまず見かけません。半面、近いカラーとして、ピンクと紫の中間のようなマゼンタやボルドー、ワインレッドといったカラーはオシャレ感があるため、男女ともに人気色なのだそう。

このように、最近の医療現場では実にさまざまなカラーの「白衣」が用いられていますし、単色のユニフォームに限らず、城をベースに、赤、ピンク、紫など多彩な色で記号や文字をあしらったおしゃれな白衣を着用した大手の大学病院も登場しています。このように医師や看護師がカラフルな「白衣」を身に着けていれば、患者は緊張感やストレスを感じず、診察や処置を受けられそうですね。

白衣は清潔感が命!日頃のお手入れも怠りなく

どんなカラーの「白衣」を着ようとも、医療現場の衣服である以上最も留意したいのは「清潔感」ではないでしょうか。

スクラブのようにガンガン洗えるものはもちろん、作業着であるからにはコマメに洗濯することが大切ですが、コートタイプやワンピースタイプのものは、頻繁に洗濯を繰り返すと生地を傷めてしまう場合もあります。そこで、衛生を保ちながら長く着用できるよう、普段のお手入れをしっかり行う必要があります。

まず、一日一度のブラッシングでほこりを落としましょう。このとき、毛先の柔らかいブラシで上から下へササッと軽く払うようにブラッシングするのがコツです。

しわがつきやすいコートタイプの白衣は、ブラッシング後に全体的に霧吹きをかけてしわを伸ばし、風通しのよい日陰に干しておきましょう。ハンガーは型崩れを防ぐため、厚めの木製のものを使用しましょう。ワイヤーやプラスチック製のものは静電気を起こしやすく、空気中のほこりが衣類に吸い寄せられてしまうからです。

また、あらかじめ皮脂などの汚れがつきにくくなるよう工夫する方法もあります。ベビーパウダーを軽くはたいておくと、汗を吸収し皮脂汚れを防いでくれる効果が。特に袖口や襟元などにベビーパウダーをはたいておくと予想以上の効果が得られるはずです。

── 変化する社会情勢や医療技術の進化の中、実用性とファッション、そして医療機関ならではの配慮や工夫を凝らし、さまざまな形や色を変化してきた「白衣」。

これからもさらなる変化を重ねていくことが必至な白衣の10年後、20年後、50年後……。AI看護師が登場した際に、そのAIがどんなカラーなのかも気になるところですが、未来の「白衣」どのようなスタイル&カラーなのか、とても楽しみですね!

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