近頃よく聞く“ロジスティクス”。意外と知らない、その意味とは?
2019.08.27暑かった夏も終わりが見えてきました。夏にお世話になったものといえば、冷たい飲み物やアイスクリームなど要冷蔵・冷凍食品ですね。最近は、商品が作られた場所から小売店までず~っと冷やされたまま保管・配送された状態で私たちの手に入りますし、ご家庭で食事の準備をする方なら、食材の買い出しに行くのも億劫な暑い日は、食材配達サービスやお取り寄せ、料理の宅配サービスなどを利用している方も多いことでしょう。冷たいものを冷たいまま、生鮮食品を新鮮なまま、必要な時間に届けてくれるサービスは本当に重宝かつ便利ですね。
こういった便利なシステムは、皆さんご存じのクロネコヤマトや佐川急便などをはじめとした宅配サービスはもちろん「ロジスティクス」によるものといえます。
「ロジスティクス」は、近年一般的にも知られるようになったワードですが、みなさんはその正確な意味を正しく理解していますか? よく「物流」という意味合いで使われていますが、厳密には違うのです。また、似たような言葉に「流通」や「運送」などがありますが、これらの違いはどうでしょう? 明確に説明できる方はそう多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、「ロジスティクス」など知っておきたい用語や、物流業界を取り巻く現状と今後の展望などを解説していきましょう。
「物流」「流通」「運送」の違い、わかりますか?
物流とは「物的流通」を指し、商品が消費者へ届くまでに経る地理的な移動に伴う活動 のこと── 。
つまり、保管(原料・商品を物流倉庫に保管)、加工(ラベル貼りや箱詰めなど)、荷役(出荷指示に応じて商品をピッキング)、梱包(ピッキングした商品を梱包)、運送(梱包した商品をトラックなどで運ぶ)、情報処理(在庫や配送状況の情報を提供)のことをいいます。
一方の流通とは、商品が消費者へ届くまでの一連の“流れ”のことを指します。たとえば、小売店における販売は「物流」とはいいませんが、「流通」の一部といえます。つまり、流通は物流よりも広範な意味を持つことになります。
ちなみに「流通」には「物流」と「商流」があり、商流とは一連の流れにおける「所有権」の移転で、交渉や契約を経て金銭や情報が流れることをいいます。このように、商品を地理的に移動させる「物流」と、金銭のやり取りを含む所有権の移動「商流」を合わせたものが、「流通」というわけです。
もうお気づきかと思いますが、「運送」は物流の活動(保管・加工・荷役・梱包・運送・情報処理)における運送部分のみを指し、「物流会社」と「運送会社」は業務範囲がまったく異なります。
ロジスティクス ≠ 物流
さて、では「ロジスティクス(logistics)」と「物流」はどう違うのでしょうか。
JIS(日本工業規格)の定義では、「ロジスティクス」は以下のように記されています。
●物流の諸機能を高度化し、調達・生産・販売・回収などの分野を統合して、 需要と供給との適正化を図るとともに顧客満足を向上させ、併せて環境保全・安全対策などをはじめとした社会的課題への対応を 目指す戦略的な経営管理
上記文言をひもとくと、「物流」が商品の保管・加工・荷役・梱包・運送・情報処理といった一連の活動に限定されるのに対し、ロジスティクスには、“需要と供給の適正化”や“顧客満足向上”の観点が入ることがわかります。
そもそもロジスティクスとは、軍事用語で“兵站(へいたん)の”という意味。兵站とは、戦地において武器、軍需品、食糧、兵、馬などの供給・補充の管理運用を担う部署・機関のことであり、これらを適切なタイミングで必要な場所に届けるという後方支援部隊のこと。現代の情報化社会とは異なり、いにしえの時代の戦いでは、武器や食糧、兵士をいかに戦略的に搬送・配置するかが、勝敗の分かれ目に直結しました。この戦略的な物流・管理の観点が、現在の「ロジスティクス」につながっているのです。
そしていまでは、単なるモノの流れとどまらず、商品の原料調達から生産、販売、そして消費者のもとへ届けるという“すべての工程”を包括的に管理することが、効率的な物流の実現に向けた不可欠な要素とされています。
翻れば、最適なロジスティクス化を実現するためには、社内すべての部署との連携が必要で、さらに取引先や販売先など社外との緊密なコミュニケーションをも要するのです。
なぜいま「ロジスティクス」がアツいのか!
ではなぜいま、ロジスティクスの必要性が声高に叫ばれ、大きく注目されているのでしょうか。
かつての高度経済成長期ならば、時勢に合った(多くの場合“最新の”)商品を大量生産し、それを確実に消費者のもとに届けること、すなわち「物流」がスムーズであればよいとされていました。当時、つくればつくるほど売れ、企業の収益確保につながったことから「大量消費の時代」と呼ばれました。
しかし、長い不況で消費者心理は冷え込み、消費者は慎重に「本当に必要なもの」「自分だけに合ったもの」を見極め、求めるようになりました。また、インターネットの普及やグローバル化で個人の趣味、嗜好、個性が多様化したことで、ニーズは細分化され、生産現場も大きな変化を求められることに。このような状況下では、企業はつくりたいものを闇雲に生産するわけにはいきません。
売れなければそれは当然、余剰在庫(=損失)になるのですから、「売れる見込みのあるものを売れる分だけ生産する」必要があるのです。もちろんそれは変化に合わせてスピーディになされなければならず、物流においても消費者の厳しい目に適うよう、商品の適切な保管(丁寧な梱包・適切な温度管理など)、配達のフレキシブルさ(時間・場所など)など高度なサービスが求められるように変化していったのです。
一方で、物流を取り巻くコスト(人件費、輸送費、保管費など)は増加の一途をたどっています。消費者のニーズを見誤まれば、たちまち不良在庫や欠品へとつながり、コストはさらに増大し、経営を圧迫しかねません。ニーズの変化や流行に迅速に対応し、いま確実に売れるモノを見極め、効率的な保管や輸送など物流計画ありきで必要量を正確に生産する。このロジスティクスなしでは、企業経営は成り立たない時代になったのです。
「ロジスティクス」がもたらすメリット
ロジスティクスを進めるうえで避けて通れないのが、システムやテクノロジーの活用です。
たとえば、WMS(倉庫管理システム)を導入すれば、倉庫における入出荷・保管などの状況を正確に把握でき、リアルタイムで在庫管理が可能となるうえ、ロボット導入でピッキングや荷揃えの完全自動化も実現するでしょう。また、販売履歴や気象データなどのBD(ビッグ・データ)とAI(人工知能)の活用によって、正確な需要予測も可能になります。
このようなシステムやテクノロジーの活用によって、ロジスティクスが実現するメリットは次のようなものとなります。
■コスト削減
ロジスティクスの最大のメリットはコスト削減です。正確な需要予測が実現すれば、ムダな生産は減ります。ムダな生産(=余剰在庫)は、その材料費などはもちろん輸送費や保管費にもムダが生じ、大きな物流コストを生みます。適正量の生産はダイレクトにコスト削減へとつながるのです。
そしてまた、原材料の調達や商品の物流工程すべての適正化、効率化ももちろんコスト削減へとつながります。物流拠点や輸送手段、輸送ルートの見直しもそのひとつでしょう。こういった従来のやり方を点検し、コストを可視化することがロジスティクスの第一歩となります。
■顧客満足の向上
正確な需要予測は生産の適正化を可能にします。余剰在庫はもちろん在庫不足もなくなるため、販売の機会損失を防ぐことができるわけです。顧客が求める商品をスピーディに顧客のもとへ届けられるので、顧客満足の向上にもつながります。
一方で、原材料の調達から生産、商品の物流工程が効率化されれば、新商品の開発や生産へのハードルが下がり、変化する消費者のニーズに合わせたスピーディな事業展開も可能になります。これもまた、顧客満足の向上につながるでしょう。
■営業効率UP
ロジスティクスは営業上のメリットにもなります。なぜなら、ロジスティクスが実践されていない企業では、営業担当者が在庫管理を兼ねているケースが多いからです。ロジスティクスによる生産や在庫の適正化が行われれば、営業が本来の業務に集中できるようになります。さらに、物流管理データの信頼性は高まり、蓄積されたデータはもちろん営業活動に活かされるでしょう。
■人手不足の解消
物流の各工程における作業が効率化され、ミスやロスが減るとともに、いままで人の手を介していた膨大な作業が最小化されます。つまり人手が要らなくなり、人手にかかっていたコストも軽減します。実はこれが、いまの物流業界において大変重要な意味をもちます。さっそく物流業界を取り巻く現状を見ていきましょう。
物流業界を取り巻く現状
いま物流業界は、大きな転換期を迎えています。その大きな要因がAmazon、楽天、Yahoo!をはじめとする「インターネット通販」です。
ご存じの通り、PCやスマホでいつでもどこでも時間をかけずに買い物ができ、数日待てば商品が届く。この数年前なら信じられないようなサービスが開始されるやいなや、急激に利用者数を伸ばし、今後もしばらく年10%前後の成長が見込まれているといいます。そして同時に、物流業界にもこの大きな波が襲いかかってきているのです。
それは例えば、従来はメーカーから卸、そしてスーパーへの大量物流が主流でしたが、個人への小口物流が急増し、手間が格段に増えたことも大きな波のひとつといえるでしょう。そのほかの大きな波としては、トラックの積載率は悪くなり、単身者世帯や共働き世帯の増加もあいまって不在配達、再配達が急増、配達効率も低下。そのうえ昨今では、購入した商品を「気に入らなければ返品できる」というサービスが登場したことで、“往”のみならず、“復”の配達も担うことに……。こうしたことが一人ひとりの配達スタッフの負担増へとつながっているのです。こうた要因が“波”となり、物流業界では大きな悲鳴が上がっているのです。
こうした背景の下、少子高齢化や労働人口減少が進む現在においては、業界を問わず人手不足が深刻な問題となっています。なかでも、物流業界においてはひときわ深刻な状況となっています。
●「力仕事が多い」
●「伝票操作など煩雑で大変な作業も多い」
●「勤務時間が長い場合が多い」
●「厳しい時間制約の中で、仕事に追われることが多い」
●「給与体系など労働環境が魅力的でないことが多い」……
こうしたマイナスイメージが若手人材の物流業界離れにつながり、現役としている活躍する40代~50代のドライバーの疲弊につながっているともいわれています。人手不足が改善されない中での仕事量増加が、物流業界の危機感を高めており、速やかに改善策を講じる必要性に迫られているのです。
人手不足を解消する新たな取り組み
ロジスティクスによる人手不足の解消効果については先述しましたが、そのほかにも、物流業界の人手不足問題に対してさまざまな取り組みがなされています。いくつかご紹介しましょう。
■「改正物流総合効率化法」
国土交通省も物流業界の人手不足問題に取り組んでおり、その一環として、平成28(2016)年10月に「改正物流総合効率化法」が施行。これは物流業務の効率化を促す狙いがあり、代表的な施策は「共同配送」と「モーダルシフト」です。
●「共同配送」とは、2社以上の企業が1台のトラックを使うことで積載率を上げる方法のこと。これによって必要ドライバーの数は減り、人手不足解消の一助になるとされています。
●「モーダルシフト」とは、トラックによる輸送を鉄道や船などに切り替えること。長距離輸送の大部分を担うトラックを鉄道や船に切り替えれば、一度に大量の荷物を運べるようになるとされています。
つまり、トラックドライバーは長距離ニーズがなくなり近・中距離に人手を集中させられるため、人手不足も解消するというわけです。また、CO2排出量が多くエネルギー効率が悪いとされるトラックに対して、鉄道や船が比較的低エネルギーで大量輸送できることから、環境負荷の低減にもつながるとされています。
実際の例では、商船三井フェリー、大東実業、佐川急便の3社が連携して関東~九州をトラックから海上輸送へと切り替える施策がすでに導入されていて、CO2排出量を52%、トラックドライバーの労働時間90%削減を実現しています。
■労働環境改善
肉体労働、長時間勤務、低賃金のイメージが根強く、若手人材の物流業界離れが起きている中、労働環境改善の取り組みも始まっています。主なものは「配達日制限」と「賃金UP」です。
従来、個人への配達サービスは年中無休で行われてきました。それがここへきて配達日制限を設ける企業が出てきたのです。この施策によって、たとえば日曜定休など配達しない日を設ける企業も誕生し、ドライバーや配達スタッフが十分に休息できる労働環境を構築。もちろん、配達制限によって逆に業務がたまってしまう……という懸念も生じますが、一方で配達需要の落ち着きにひと役買うとの見方もあり、こうした一部の企業の取り組みは今後、他の企業にも広がっていくかもしれません。
さらに、労働環境の改善策として、賃金引き上げを実施する企業は増えています。高まる配達ニーズによって激増した業務量には、相応の対価が支払われるべきです。しかし、激務に対して十分に見合う賃金かというと、まだまだ疑問符がつくのが現状であることはたしか。ロジスティクスを含めたさまざまな業務効率化によって、抜本的な問題解決が実現すれば、おのずと労働環境も改善されることになるでしょうし、そういう意味でも、ロジスティクスの実現が強く望まれているのです。
■クラウドソーシングの活用
「クラウドソーシング」も新たな取り組みのひとつです。クラウドソーシングとは、crowd(群衆)とsourcing(調達)からできた造語のこと。企業がインターネットを介して、不特定多数の人に業務を委託することを指します。委託される側は働く場所や時間に拘束されず、フリーランスや退職者など幅広い層(=必ずしもプロフェッショナルではない)が対象となります。
物流業界では、専属ドライバーではない個人ドライバーの確保によって、乗り手のいないトラックというリソースも活用しつつ、人手不足が解消できると期待されています。ただし課題がないわけではありません。荷物の安全性の担保や物流業界で恒常化している高いサービス性をどこまでどう維持していくのか、その仕組みづくりが急がれます。
物流業界の今後の展望
来年は東京2020の年。経済的な盛り上がりが期待される中、物流業界においても需要拡大が見込まれています。また、東京2020開催にともなう交通インフラ整備は、より安全でスピーディな物流を可能にすることでしょう。
また、インターネット通販を含むeコマース業界の成長は右肩上がりで、配達ニーズは今後も拡大し続けると予測されています。不在配達・再配達による物流業界への負担は昨今の報道も手伝い、いまや広く認知されています。そのため、個人宅でも宅配BOXを設置するなど再配達をなくしていこうという気運が高まっています。現在はあくまで“気運”ですが、今後はそうした方法が“当たり前”になっていくことでしょう。
そしてまた、この問題はAI(人工知能)の活用によっても解消できるともいわれているのです。たとえば、AI(人工知能)によって正確な配達時間を予測し、配達先へ事前通知する、または個人の在宅(不在)確率から、より在宅の可能性が高い曜日・時間などに配達するようスケジューリングするなども、その効果とされています。
日本のみならず、海外においてもeコマース業界の拡大、躍進は目覚ましく、それだけにロジスティクスは重要な課題とされています。その中で試みられている施策のひとつが「ドローン配達」です。実用化に向けた実験が繰り返され、導入に向けた動きは国にかかわらず加速しています。また、自動車の自動運転技術は日々進化しており、将来的にトラックの自動運転も可能になり、近い将来、日本の大動脈である東名高速道路等で無人トラック往来している光景もさほど珍しくない日がくるかもしれません。
このように物流業界の今後の展望を短期的に考えていくと、物流業界の見通しは明るい……といえそうですね。
── しかしながら楽観はできません。というのも、ドローンも自動運転も日本ではまだ法整備が整っていないからです。課題は山積していますが、こうした新しいテクノロジーが、物流業界のあり方を変革する大きな手段となることは確実でしょう。
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