工務店の業態・工事による種類や仕事内容は?リフォームも扱う?
2021.06.04地域に密着した建設会社である工務店は、規模や業態が様々です。工務店では、木造在来工法による住宅を中心にした建築物を建てていますが、昨今ではリフォームをメインとする会社もあります。
工務店の業態の種類や仕事内容などについて紹介していきます。
そもそも工務店とは?
工務店には明確な定義はありませんが、一般的には比較的狭いエリアで事業を行い、戸建て住宅などの施工を行う、地域密着型の建設会社を指します。工務店は総合的な企画や調整を行い、複数の専門工事業者のマネジメントをして、施工管理を行う役割を担っています。
工務店は施工を担うだけではなく、自社設計にも対応していることも特徴です。また、工務店は木造在来工法(木造軸組工法)を中心に取り扱っています。
工務店の業態による種類
実際のところでは、一言で工務店といっても規模は幅広く、様々な特色を持つ建設会社が「工務店」と名乗っています。
・地域密着型
社長と少人数の社員、あるいは家族経営で運営している工務店です。主に、社長や社員は設計や施工を担い、専任の営業担当者はいないことが多いです。設計を行わず、施工に特化した工務店もあります。いわゆる「町の工務店」が該当します。
・デザイン重視型
設計力があり、デザイン性の高い住宅の設計を手掛ける工務店です。設計だけではなく、施工までをカバーするところが、設計事務所との主な違いです。
・下請け型
ハウスメーカーの下請け工事を中心に請け負っている形態です。
・リフォーム型
新築住宅をほとんど扱わず、リフォームに特化した工務店です。新築住宅の着工数は減少傾向にあることなどから、リフォームを主に扱う工務店もあります。
・フランチャイズ型
フランチャイズチェーンの加盟店になり、FC本部から設計や施工のマニュアル、建材などの提供を受け、本部にロイヤリティを支払う形態です。フランチャイズチェーンへの加盟は、FCの看板で営業ができる、ハウスメーカーのように均一した品質の住まいを提供できるといったメリットがあります。
・中堅ビルダー型
一般的な工務店よりも広いエリアで営業し、着工棟数が多い工務店です。独自のブランドによる規格型住宅を展開し、モデルハウスを設けるなど、ハウスメーカーに近いのが特徴です。
工務店とハウスメーカーの違いは?
注文住宅を建てるときに、比較されることが多いのがハウスメーカーです。工務店とハウスメーカーでは、企業規模やプランの自由度、施工の制度などが異なります。
ここでは、工務店の中でも地域密着型やデザイン重視型を中心に、ハウスメーカーとの違いをみていきます。
企業規模や事業エリア
工務店は事業規模が小さく、立地する市町村や周辺エリアを中心とした比較的狭い範囲で、施工を行っているところが中心です。これに対してハウスメーカーは、全国に支店や営業所を持つなど、全国など広いエリアで事業を展開しています。
設計の自由度
工務店は基本的には個別に案件ごとに設計を行うため、設計の自由度が高いです。施主が間取りを自由に決められるのはもちろん、キッチンやお風呂、洗面台、トイレといった設備や、フローリングやタイル、壁紙などの内装材、外壁材や屋根材などの外装材といった仕様も、自由に選ぶことができます。
ハウスメーカーは間取りパターンの中から間取りを選び、決められた仕様の中から選ぶ、規格型の住宅が中心です。自由設計を手掛けるハウスメーカーもありますが、間取りパターをベースに変更を加えるケースや、仕様も選べるものが決まっているケースがあるなど、一定の制限があることが多いです。
施工の精度
工務店の施工は、職人の腕や現場監督の品質管理によって差があります。ハウスメーカーは工場で部材の加工を行っているため、均一した品質が保たれやすいのが特徴です。
注文住宅を建てるときの工期
工務店で戸建て住宅を建てるときの工期は4~5ヶ月程度が目安です。ハウスメーカーの工期は工法による違いもありますが、3~4ヶ月程度が目安になります。
注文住宅の坪単価
工務店で戸建て住宅を建てるときの坪単価は60万円程度が目安です。
ハウスメーカーは、ローコスト住宅を扱うメーカーと高性能な住宅を扱うメーカーでは価格帯に違いがあります。ローコスト住宅のハウスメーカーは坪単価30万円~50万円が目安です。高性能な住宅を取り扱うハウスメーカーは坪単価70万円以上が目安であり、坪単価が100万円を超えるメーカーもあります。
ただし、いずれも規模のほか、内装材や外装材、設備などのグレードにもよります。
アフターメンテナンス体制
工務店の中には定期的に点検を行い、アフターメンテナンス体制が充実しているところもありますが、対応には差があります。地域密着型を活かして、定期的に訪問を行ったり、不具合があったときにはすぐに駆け付けたりするなど、小回りの利いた対応を行う工務店もみられます。
ハウスメーカーは定期点検を社内で制度化し、アフターメンテナンス専門のスタッフが在籍するなど、体制が整備されているのが一般的です。
工務店で家建てるメリット
工務店で注文住宅を建てる場合のメリットについて、地域密着型の工務店の場合を中心にまとめました。
設計の自由度が高い
工務店で家を建てると、オーダーメイドでの設計となるため、設計の自由度が高いことがメリットです。間取りの制約が少なく、キッチン、浴室、洗面台などの設備は幅広い選択肢から選ぶことができます。内装では、壁をクロス貼りのほか、塗装仕上げや珪藻土仕上げにしたり、床には無垢材やタイルを貼ったりするなど、仕様の自由度も高いことが多いです。
コストパフォーマンスがよい
工務店はハウスメーカーのように、テレビCMなどの広告宣伝費をかけずに、地域に根ざした事業展開を行う会社が多くを占めます。ハウスメーカーのように、建築費に広告宣伝費が上乗せされていないことから、コストパフォーマンスが良いこともメリットです。
また、設計事務所に設計を依頼して、施工を工務店に依頼する場合には、設計料を設計事務所に支払い、工事費を工務店に支払う形となります。工務店に設計施工を依頼する場合も設計料はかかりますが、工事費から利益が得られるため、割安な費用となっていることが多いです。
工務店で家を建てるデメリット
工務店で注文住宅を建てるのにはデメリットもあります。ただし、工務店の技術力や施工体制による部分が大きいです。
施工品質が一定ではない
工務店で家を建てると、施工の品質が職人の腕によって左右されることがデメリットです。ただし、豊富な経験を持つ職人を抱えている工務店であれば、品質が確保されることが期待できます。
設計力の差が大きい
工務店に設計から依頼した場合は、設計力は会社による差が大きいです。デザイン性が高く、施主や家族に合った住まいが実現できるかは、工務店によります。ホームページなどで、過去の施工事例をチェックしてみましょう。
アフターメンテナンス体制に差がある
定期点検を実施する工務店やアフターメンテナンスの専用のスタッフを抱える工務店は限られています。
ただし、不具合があったらすぐに見に行くなど、迅速な対応をとる工務店もあります。また、現場の状況をよく知る施工担当者がアフターメンテナンスを行った方が、スムーズに対応できるケースもあるため、一概にデメリットとはいえないでしょう。
工務店の主な仕事内容は?
工務店の規模によっては、専任の営業担当者は配置されてなく、設計担当者も置いていないのが一般的です。また、設計から施工管理、アフターメンテナンスまで、一人の担当者が担うこともあります。
ここでは地域密着型工務店の営業や設計、施工管理についてみていきます。
営業
規模の小さい工務店では専任の営業担当者を設けておらず、既存の顧客からの紹介や地域の人脈、あるいは、つながりのある設計事務所からの案件の受注が中心です。施工や見積もりに多くの人材を投入し、営業に専念させる人材を置くゆとりがないケースが少なくありません。こうしたケースでは、社長が営業の窓口となっていることが多いです。
営業としての仕事は、施主と打ち合わせを行い、設計プランや仕様、見積書を提示して、受注活動を行います。
設計
小規模な工務店では設計担当者を置かず、施工に専念しているケースもあります。住宅など建築物の設計を自社で手掛けるには、建築部の規模や構造に応じて、一級建築士や二級建築士、木造建築士が在籍していることが必要です。一級建築士であれば、すべての規模や構造の建築物の設計を手掛けられます。
設計の仕事では、現地調査を行ったうえで、土地の条件や施主からのヒアリングによる希望条件を踏まえたうえで、設計案を提案します。大まかなプランが決まったら詳細を詰めていくとともに、設備や内装材、外装材などの仕様を提案し、施主との打ち合わせを通じて、一つ一つ決定していき、設計図などにまとめていきます。
設計は図面作成を行うほか、工事の着工などに必要な建築確認申請のための書類を準備し、行政官庁や民間の指定確認検査機関に申請をします。
施工管理
施工管理は工務店の中心となる業務です。施工の主な業務は4つに分けられ、施工の4大管理と呼ばれています。工事のスケジュールを管理する「工程管理」、利益を確保するために工事にかかる費用を管理する「原価管理」、設計図通りの仕様や品質になるように各種試験や検査を行う「品質管理」、建設現場で安全に作業を行える環境を整える「安全管理」があります。
工程管理や予算管理では、工事を受注すると工程表や予算を組み、施工図を作成して、大工や左官職人、電気工事業者などの専門工事業者への発注や資材の手配を行います。そして、現場では作業の段取りをして、専門工事業者に指示を行い、スケジュールを管理します。現場でトラブルが起きたときの対応や、専門工事業者の調整を行うのも、施工管理の担当者の役割です。
品質管理では、設計図通りの寸法やデザイン、材質になっているかどうか、確認しながら、各工程の工事を進めていきます。品質を証明するため、各工程ごとに写真を撮って記録に残すのが一般的です。また、中間検査や完了検査、消防検査、自主検査、施主検査といった各種検査に立ち会います。
安全管理では、現場での専門工事業者との打ち合わせの際や作業中に声掛けを行うなど、安全に作業ができる環境を構築します。
このほかに、規模の小さな工務店では、積算業務も施工担当者が担っていることが多いです。
独立して工務店を営むには建設業の許可は必要?
工務店の仕事に従事している人の中には、独立することを考えている人もいるのではないでしょうか。そこで、気になるのが、建設業の許可の必要性です。
一定以上の規模で建設業を営むためには建設業の許可が必要になります。建設業の許可を取得せずに工務店を営むこともできますが、請け負える工事の規模が限られます。
建設業の許可で工務店に必要な業種は?
建設業の許可は業種別許可制で、建設工事の種類ごとに許可を取得します。建設工事の種類は29業種あり、工務店を営む場合は建築一式工事に該当するのが一般的です。
工務店で建設業の許可が必要となる基準
工務店を営むにあたって、建設業の許可は必ずしも必要ではありません。軽微な工事のみを請け負う場合に限り、建設業の許可を受けずに営業することもできます。
建築一式工事の場合は軽微な工事は、請負代金1,500万円未満の工事、あるいは延べ面積が150平米以下の木造住宅の工事が該当します。ちなみに、建築一式工事以外の業種では、軽微な工事は請負代金500万円未満の工事に限られます。
ただし、一定規模以下の工事は建設業の許可を取得していなくても請け負えるとはいえ、許可を取得していた方が顧客の信頼を得られやすい面があります。
一般建設業の許可と特定建設業の許可とは?
建設業の許可は下請契約による工事規模から、一般建設業の許可と特定建設業の許可の2種類があります。特定建設業の許可は発注者から直接請け負った工事の下請契約が、建築工事一式の場合は6,000万円以上となる場合に必要になります。その他の業種では、発注者から直接請け負った工事の下請契約が6,000万円以上となる場合に、特定建設業の許可が必要です。
この基準を超えない場合には、一般建築業の許可を取得すれば問題ありません。一般建設業の許可よりも、特定建設業の許可の方が厳しい要件が設けられています。
一般建設業の許可の主な要件
建築一式工事で一般建築業の許可を取得するための主な要件として、次のものがあります。また、このほかに欠格要件が定められています。
・経営業務の管理責任者の設置
経営業務の管理責任者に該当するのは、建築一式工事での経営経験が5年以上ある人や、建築一式工事以外の建設業の業種での経営経験が7年以上ある人などです。
・専任技術者の設置
建築一式工事で専任技術者になれるのは、一級建築士と二級建築士、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築)の有資格者と、学歴ごとに決められた一定の実務経験を持つ人です。
・財産的基礎
「自己資本が500万円以上」「500万円以上の資金調達能力がある」のいずれかに該当することが必要です。更新の場合には継続して5年以上営業していることでも認められます。
工務店への就職・転職に有利な資格は?
工務店の求人では、建築関係の有資格者は優遇されるものが目立ちます。また、車での移動が中心となるため、普通自動車運転免許が求められることが多いです。
建築に関する資格の有資格者は有利
施工管理の仕事で建築に関する資格は必ずしも必要ではありませんが、一級建築士や二級建築士、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築)の有資格者は有利です。これらの資格は一般建設業の許可の専任技術者や、建設業の許可を取得している場合、すべての現場に配置が義務付けられている主任技術者になることができる資格です。
また、特定建設業の許可を取得する場合の専任技術者や、建築一式工事で6,000万円以上の下請契約を結ぶ場合に、主任技術者に代えて配置が必要な監理技術者になれるのは一級建築士と1級建築施工管理技士の有資格者のみです。
設計の仕事に就くには、新卒での採用の場合を除くと、一級建築士や二級建築士の資格が求められることが多いです。
公共工事の入札における経営事項審査で、技術職員として加点の対象になることからも、工務店では有資格者が求められています。
さらに、有資格者は顧客への信用が高まるという面でもプラスに働き、特に一級建築士の有資格者は評価されます。
普通自動車運転免許は必須
工務店では事業所や各現場を車で移動することが多いため、普通自動車免許が必須とされる求人が目立ちます。多くの求人はAT限定可ですが、不可とする求人も見られるため、注意が必要です。
まとめ
工務店は業態や規模によって、取り扱う工事や仕事の進め方に違いがあります。工務店への就職や転職を考えるときも、工務店で家を建てることやリフォームをすることを検討するときも、業態の違いにも着目しましょう。
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