助産師とは母子の命を預かり、女性の一生に寄り添う仕事。今注目される「助産師外来」!
2020.09.29古くから「おめでた」とも呼ばれる女性の妊娠。いざ出産して母親になることは、本人にとっても家族、親族にとっても一大イベントといえるでしょう。新しい生命の誕生、家族が増える……時代は移り変わっても、それは幸せの象徴として不動のものといえるのではないでしょうか。
そんな「おめでた」にかかわる仕事には、産婦人科の医師・看護師・助産師などがあります。助産師といえば、出産の介助をする専門家であることはなんとなく知られていても、具体的な仕事内容や資格の有無、活躍の場などは、あまり知られていないかもしれません。
日本では社会問題ともいえる少子高齢化にともない、出産そのものが減少しつつあり、そうした中で、助産師の仕事は産科だけでなく婦人科での仕事も増えるなど、多様化しています。今回はそんな助産師について、仕事内容やなり方、待遇、活躍の場などをご紹介しましょう。
助産師の仕事内容
ではまず、助産師の仕事について、出産前・出産・出産後に分けてみていきましょう。
【出産前】
〇妊婦に対し妊娠への心得や注意事項、食べないほうがよいものや積極的に食べたほうがよいもの、食べすぎて体重が増えすぎないよう体重管理の指導など、生活・健康指導。
〇妊婦のお腹の大きさや血圧・体重などの測定、胎児の心音を聞いたり、エコー(超音波)で胎児を診断するなど、妊婦と胎児の健康状態をチェックするため定期的に行う妊婦健診。
〇「母親学級」などのプログラムを通して母親、父親になる心構えや出産の基礎知識(陣痛の周期、出産から入退院までの流れなど)を伝えたり、妊婦の相談に応じて不安を取りのぞくなど。
〇出産が始まると母子の状態を確認し、異常がなく、正常な分娩ができるようなら助産師が中心となって出産を助ける。異常があった場合には産科の医師が中心となり、助産師は医師のサポートをする。
【出産】
〇出産中には分娩の進行や母子の健康状態をチェック。呼吸法やいきみのアドバイスをし、できるだけスムーズにお産が進むようサポート。また、不安になっている妊婦がリラックスできるよう声かけをする。
【出産後】
〇入院中には母子の様子を確認しながら、赤ちゃんのお世話を指導。オムツ替えや沐浴(もくよく/体を水で洗い清めること)、授乳などのサポートも。
〇出産後の女性はホルモンバランスの崩れで精神的に不安定になりやすいため、精神的なサポートも重要。
〇1ヶ月健診で産後の体の回復を診察し、育児の悩みなどを聞きながら赤ちゃんの成長を確認する。
助産師は出産の介助だけでなく、妊娠・出産にかかわる女性の心と体に寄り添う仕事といえますね。
助産師には、看護師資格が必須
では、助産師と看護師を比較しながら、その違いをみていきましょう。
助産師は国家資格であり、同じく国家資格である看護師免許を取得していなければ助産師国家試験を受けることができません。看護師の資格は、厚生労働大臣指定の看護系の学校で3年以上学んだ後、看護師国家試験に合格することで取得できます。
助産師の資格を取得するコースには、主に以下のようなものがあります。
【助産師資格の取得方法】
〇看護師免許を取得してさらに指定の助産師教育機関で1年以上学び、国家試験を受ける。
〇教育課程に看護師・助産師、それぞれの課程があり、卒業と同時に看護師・助産師、両方の国家試験を受験できる大学を選ぶ。
〇大学で看護師の勉強をしてから大学院で助産師の勉強をする。
どれも大変そうですが、それだけ「助産師」という仕事は責任の重い、やりがいのある仕事といえるでしょう。
医師の指示なくとも、助産行為が行える!?
助産師になるには看護師資格が必須ということからも、助産師の仕事は看護師以上に専門的な領域にかかわることがわかりますね。
助産師の主な業務は、出産をサポートすること。出産前から出産後までの女性の体調管理や生活指導も行い、出産時に赤ちゃんを取り上げる業務に加え、誕生した赤ちゃんの健康管理も助産師の仕事です。
一方の看護師は、病気やケガをした患者の治療や診察の補助、入院中の患者の生活のサポートを行います。治療や診察時は医師の指示のもと作業し、患者の治療を看護師の判断で行うことは認められていません。
また、産婦人科に属する看護師の場合、妊婦の病院内での生活サポートは(助産師と同様に)行いますが、助産師は正常な分娩に限り医師の指示がなくても助産行為が行えるのに対し、看護師はどのような場合にも助産行為を行うことはできません。
こうした点から、助産師は看護師のスキルに加え、出産にかかわる専門スキルを有しているといえるでしょう。
助産師の病院勤務は産科もしくは産婦人科
病院勤務の場合、看護師の配属先は、内科、外科、小児科と病院内のあらゆる科に配属になる可能性があり、配属先の移動も珍しくありません。一方、助産師は出産の専門知識があるため、配属先はほとんどの場合が産科や産婦人科となり移動はほぼなし、と考えてよいでしょう。
看護師が産婦人科に配属になる場合、出産以外の婦人科の患者の対応もあり、そこにおいては看護師と助産師の業務の違いはありません。
助産師には開業権がある
助産師には医師と同じく開業権があり、自分で助産院(助産所)を開くことが認められています。ただし、助産院を開くには、医療法の定めに従って開設届を提出する必要があります(主な記載内容は助産所の名称・所在地・敷地・従業員人数など)。指定の用紙に記入したうえで、地域管轄の保健所へ提出します。また、分娩を扱う場合には嘱託医師の確保が必要となります。
助産師の活躍の場は?
助産師が働く場所は「病院」が圧倒的に多く、これは助産師単独では母子ともに問題のない「正常分娩」しか分娩介助を行うことができず、帝王切開など「異常分娩」の場合は産科医の介在が必要となります。そのため、医師の配置が義務づけられている病院で出産を行うケースが多くなるためといえるでしょう。具体的にみていきましょう。
【病院】
〇20床以上の入院施設を持つ医療機関。医師・看護師・薬剤師などの最低配置人数が定められており、医療を最大限に利用しながら、正常・異常を問わずさまざまなタイプのお産に対応。
〇病院で働く助産師の配属は、産科または産婦人科。産科医と連携しながら、妊産婦・新生児のケアや分娩介助を行う。
〇最近では、産科医の代わりに助産師が妊婦健診(診察)を担当する「助産師外来」を設ける病院も増えてきている。
〇婦人科も併設する病院の場合、婦人科の患者の看護も担当業務として行う。
【診療所(クリニック)】
〇無床もしくは19床以下の入院施設をもつ医療機関。医療行為をともないながら、産科医と助産師が連携して出産を行う点は病院と変わりはない。
〇勤務するスタッフも訪れる妊産婦も大規模病院に比べて少なくなるため、アットホームな雰囲気の職場が多い。
〇入院施設がないなどの理由から分娩には対応しないところも存在し、その場合、助産師としてかかわれるのは妊婦健診まで。分娩介助に携わりたい人には注意が必要。
【助産院(助産所)】
〇助産師が管理する、ベッド数が9床以下の施設。
〇「女性がもつ自然の力を最大限に引き出す」を基本理念とし、妊婦と一緒に考えたバースプラン(出産計画)に基づき「理想のお産」を目指す。
〇妊婦の希望を大切にするため、さまざまなスタイルのお産に対応。
〇助産院で行えるのは、妊娠中から母子ともに経過が順調な場合のみ。妊娠経過が順調であっても、分娩時に問題が発生した場合は、提携病院に緊急搬送されることもある。
〇妊娠時から分娩時まで基本的に一人の助産師が担当し、自宅のような温かな雰囲気であることから、妊婦と助産師が家族のようにコミュニケーションできる。
【出張専門助産師】
〇自宅での妊婦健診や分娩を望む妊婦宅に出張し、必要なサポートを行う。出張専門助産院のほか、助産院からの派遣、助産師が個人で独立して業務を行っている場合もある。
〇産前・産中・産後を問わず、一人ひとりにきめ細かな対応が特徴。母乳がうまく出ない母親への母乳相談、育児相談、母子へのマッサージなど、産後ケアまで充実している場合が多い。
【産後ケアセンター】
〇出産後の育児支援を目的とした、母親と赤ちゃんが一緒に過ごせる宿泊型ケア施設。
〇母親が赤ちゃんのお世話の仕方を学ぶだけでなく、ヨガやアロママッサージ、カウンセリングなどを受けられる。夜間は赤ちゃんをスタッフに預け、ぐっすり睡眠をとれるため、睡眠不足による疲れやストレスなどが解消される。
〇助産師や看護師を中心に、臨床心理士、産後ケアリストなどの専門スタッフが24時間体制でケアを行い、産後の母子が安心してゆっくり過ごせる環境を整えている。
【不妊治療専門クリニック】
〇患者は「これから妊娠を望む人」が相手になるため、一般的な助産師の仕事とは内容が異なり、不妊治療に対する知識が必要。
〇身体的にも金銭的にも負担が重い治療に臨む患者の不安を取り除くことも、助産師の大切な役割。
〇パートナーである男性も患者としてサポートすることになる場合もある。
【保健所・保健センター】
〇地域の子育て支援活動、乳幼児検診の補助、新生児のいるお宅への訪問、育児相談、女性の健康相談など、主に産後の母子の生活をサポート。
〇保健所や保健センターは地方自治体の機関になるため、働くためには公務員試験を受験する必要がある。
「人間の自然な営みをお手伝いする」助産院
ではここで、助産師が管理する助産院について詳しくみていきましょう。
助産院(助産所)とは医療法第2条に「助産師が公衆または特定多数人のためその業務を行う場所をいう」と規定されています。具体的には、妊婦健診や新生児の保健指導のほか、正常分娩であれば助産師が医師の指示を必要とせずに分娩介助できる、助産師が管理する9床以下の施設をいいます。分娩を取り扱う助産所には嘱託医師および連携医療機関が定められています。
また、先にも述べたように助産師に認められているのは「正常な分娩での助産および新生児のケア」。従って、逆子や双子・三つ子などの多胎妊娠、以前に帝王切開の手術を受けたことのある妊婦、頻産婦(5回目以上のお産)などは対応できないことになります(不妊治療による妊娠や35歳以上の高齢出産で初産の場合などは応相談)。万が一の事態に備え、必ず嘱託医師や医療機関と連携することになっています。
では、それ以外に、助産院が他の医療施設と異なるような点を簡単にまとめてみましょう。
【助産院の特徴】
〇助産院の施設は、助産師の自宅の一部や敷地内に開院している場合がほとんどで、病院やクリニックのように白衣を着用せずに業務にあたる助産院もある。
〇アットホームな雰囲気のなかで助産師と妊産婦、その家族が一丸となって出産に臨む。助産師が妊婦の自宅を訪れ、出張して助産介助を行う場合も。
〇ベッド数が9床以下のため、一組の母子に対して助産師による手厚いサポートが受けられる。
〇病院では分娩台での出産が基本だが、助産院では畳の部屋や布団の中など、分娩台を使わず、立つ・しゃがむ・寝転ぶなど妊婦が一番ラクだと感じる姿勢で分娩する「フリースタイル分娩」などに対応。
〇夫や子ども、妊婦の姉妹などが出産に立ち会え、家族で赤ちゃん誕生の瞬間を分かち合うことができる。
すべての妊婦が助産院を利用できるわけではありませんが、アットホームな雰囲気のなか、リラックスして出産できるというのは理想的かもしれません。第一子を助産院で産んだ人は、二人目も助産院で産む場合が多いといわれます。
注目される「助産師外来」
助産師の新たな活躍の場として、昨今「助産師外来」という仕組みが誕生し注目を集めています。
助産師外来の普及を進めているのは厚生労働省。その背景には、産科医不足の問題があります。お産は24時間いつ始まるかわからず、それだけに産科医には体力が必須。女性の産科医は、自らの出産や子育てのため仕事を続けることが難しく、分娩を扱わない婦人科に移行する例が多いこと。また、出産に際しては訴訟に発展するなど社会問題となる事例もあったことなどから、なり手が少ないのも産科医不足の原因とされています。
一方、助産師は正常な妊娠・分娩では医師の指示がなくても処置が可能。正常妊婦を対象とした助産師外来があれば、医師はハイリスク妊娠の妊婦健診に専念できます。医師の負担が軽減され、助産師のスキルも活かせるなど、双方にメリットが多い助産師外来。国では今後も導入を促進させるため、研修や設備整備事業などに力を入れています。
助産師外来では、従来医師が担当していた妊婦健診を助産師が行います。また、正常な妊産婦のケアや助産も、助産師がプロデュースできます。
助産師外来を持つ病院では、産科医と助産師が協力して妊婦健診のスケジュールを組み、助産師が担当する日は妊婦とお産についてゆっくり語り合え、院内の外来のため、何かあればすぐに医師と連携が取れるという安心感もあります。
看護師よりも給与は高い?
では次に、助産師の勤務時間や待遇についてご紹介しましょう。助産師の勤務時間は施設によって違いがあります。
【入院患者がいる産婦人科病棟の勤務体制】
主な勤務は昼間の仕事ですが、準夜、深夜の勤務がローテーションで行われます。
〇日勤(昼間の仕事)
〇準夜(夕方から真夜中の仕事)
〇深夜(真夜中から明朝までの仕事)
助産師の夜勤は、大きな緊張感や重労働をともなうことが少なくないため、病院によっては日勤の後に深夜勤務を入れない、あるいは準夜勤で夜中まで働いた次の日は休みにするなど、働きやすい労働環境を整えているところもあります。
【産科クリニックの勤務体制】
〇日勤(昼間の仕事)
〇当直(夕方から翌朝までの仕事)
当直は勤務時間が長いため、途中の休憩はもちろん仮眠が認められているところがほとんど。当直人数は、病院の規模やスタッフの人数、業務量にもよります。
【助産院の勤務体制】
〇開院時間に合わせた勤務が基本
〇お産のある時には呼び出しや、泊り込みになることもある
休日は、基本的に病院や産科クリニック勤務の場合は、シフト制。お産はいつ始まるのか予測が難しく、加えて出産には何時間必要なのかも赤ちゃんが誕生するまでわかりません。それだけに助産師の勤務時間は出産にあわせる必要があり、どうしても不規則な勤務時間や休日になってしまうことは、やむを得ないといえるでしょう。
また助産師の給料は月給25万円〜35万円くらいが相場となります。看護師よりも給与が高く設定されている病院が多くあります。あわせて夜勤手当があるため、夜勤の有無によって給与が変わります。
助産師(midwife)は女性と共に……
助産師はかつて「産婆(さんば)」と呼ばれていました。1948年の「保健婦助産婦看護婦法(保助看法)」の公布により「助産婦」と称されるようになり、2002年の法律改訂に伴い「助産師」へと名称が変わり、現在にいたります。
産婆が活躍した子だくさんの時代に比べ、平成30年の一人の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)は1.42となり、一人っ子が普通の時代を迎えています。「産む」「産まない」の選択、産まれた子をどのように育てるか、難しい問題ともいえるでしょう。
「midwife」は英語で「助産師」という意味。「mid」は古典英語で「with(寄り添う)」、「wife」は「woman(女性)」。 つまり助産師とは、「女性の人生に寄り添う」という意味があります。
学校で性教育の指導をはじめ、出産にかかわり、閉経してからホルモンバランスによる女性の体の変化などに関する相談の仕事は、助産師の大切な役割となります。
助産師にとっては結婚や出産、子育てなどが仕事のリスクとなるどころか、経験として大いに生かされるところも注目したいところです。お産が減っても、助産師は女性の一生に寄り添う幅広い活躍を期待されています。
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