大工入門者におくる、大工道具の基礎知識〈2〉
2020.04.02大工初心者必見として「大工入門者におくる、大工道具の基礎知識〈1〉」に続き、大工見習いの人に向けた大工道具の基礎知識講座2回目です。
前回は鉋(カンナ)、鑿(ノミ)、鋸(ノコギリ)についてご紹介しました。引き続き今回も、大工道具の基礎知識について解説しましょう。
大工を志したらどのような道具が必要になってくるか……、どのようなものを選べばよいか……、手入れはどうしたらよいか……など、大工初心者が陥りがちな悩みを解消すべく、今回は「槌(ツチ)」「定規類」「錐(キリ)」「砥石」について解説していきます。
プロとして正しい使い方が求められる槌(ツチ)
「槌(ツチ)」と聞いて「?」となるようでは、一人前の大工職人への道はまだまだ厳しく果てしないものといえそうです。そんな人でも「金槌(カナヅチ)」「トンカチ」と言えば、その形が思い浮かぶかでしょうか。そう、「ツチ」とは木製などの柄の先に金属製などの打撃部分が付いた、ものを叩くための道具のこと。英語なら「ハンマー」、大工職人なら「玄翁(ゲンノウ)」、あるいは「殴り(ナグリ)」などと呼ばれています。
●玄翁(ゲンノウ)
打撃部分が金属でできたカナヅチは主に釘を打ち込むために使いますが、中でも玄翁(ゲンノウ)は大工道具として古い歴史を持つ道具のひとつです。左右両方に打面があるのが特徴で、両口玄翁などとも言います。打面が二つあるのは欧米製のハンマーなどとは大きく違うスタイル。でもなぜ、打面が二つあるのでしょうか。
二つの打面をよく見比べてみるとその違いがわかります。一方の打面はまっ平であるのに対し、もう一方はわずかに凸状の曲面となっています。平らな打面は、釘をガンガン強く打ち込ときに使います。釘を打ち込む序盤から中盤までの間、強く叩いても釘の頭から打面が滑らないように平らになっているのです。
一方、曲面の打面は、釘が木に打ち込まれる終盤に使用します。この最後の締め打ちでは、釘の頭が木面よりわずかに沈んでいるように打ち込みたいわけですが、そのときに平らな打面で打つと木面に傷をつけてしまうことも。そこで、曲面の打面を使用するのです。つまり、1本の釘を打ち込むとき、途中でゲンノウの打面を変えることが“大工職人のプロの技”と言えるわけです。
ゲンノウには多様な大きさ(重さ)があり、そのバランスもさまざま。一般的に200g台〜300g台のものが主流ですが、持ってみて自分が使いやすいバランスのものを選べばよいでしょう。なかには格安のものもありますが、あまり安いものだと使っていくうちに打撃部分が変形することがあるので、しっかりと焼きの入ったものを選びたいもの。また、打撃部分の片側が釘抜きになっているものもありますが、これは案外使い勝手が悪いとされています。釘抜きは専用工具を別に用意したほうがよいでしょう。
●木槌(キヅチ)
打撃部分が木でできているものを、そのものズバリ「木槌(キヅチ)」と言います。キヅチは、カンナの刃をカンナ台から出し入れして、削り具合を調節するときなどに使います。カンナ刃を抜くときにはカンナ台の頭部を叩き、入れるときには刃の頭を叩いて押し下げます。金属製の釘を打つと打面が傷んでしまうので、釘を打つときには用いません。
美しい物づくりに欠かせない定規類
大工道具といえば、木材を切ったり、削ったり、穴を開けたり、打ちつけたり、組み合わせたりと、材料を加工するために使用するさまざまな道具が思い浮かびます。しかし、いきなり木材を加工しようとしても、きちんとサイズを測っておかなければ仕事になりません。何よりも先に、材料の寸法を正確に測ることがスタートラインなのです。つまり、定規類は大工にとって絶対に欠かせない道具ということになります。それだけに使いやすく、長く使える定規類を選びたいものですが、大工がよく使う定規類は数種類あるので、順番に紹介していきましょう。
●差し金(サシガネ)
差し金は大工職人が使う独特な定規です。曲尺(カネジャク)、曲金(マガリカネ)などいろいろな呼び名がありますが、直角定規と直定規を組み合わせたスチール製のL(エル)字型をした定規のこと。大工の仕事では、材料を加工して組み合わせていくさまざまな段階で、常に直角を出すことは非常に重要な条件となります。そのため、差し金はもっとも大切な大工道具のひとつとなります。
L字の長いほう(長枝・長手)を垂直にし、短いほう(短枝・短手)が右側になる向きに置いた面が表で、こちらに刻まれているのが正規の目盛り(表目)です。現在はセンチ・ミリ単位で刻まれたものがほとんどですが、なかには尺寸で刻まれたものも販売されていて、裏面には、表目にルート2(√2)を掛けた寸法が刻まれています。これを裏目(角目)と呼びます。この裏目を刻んだ定規は日本独特のもので、外国ではまず目にすることはありません。いわば日本の大工の最大傑作とも言えるアイテムなのです。
この裏目を上手に活用すると、差し金は単に定規としてだけではなく、実にさまざまな使い方ができます。ざっと挙げただけでも以下のようなことを導き出すことができるのです。
・直角を確かめることができる
・材料を等分割できる
・30度、45度、60度の角度がわかる
・しならせて曲線を描くことができる
・円の直径を測って円周がわかる
・丸太の直径を測り、何センチの角材が取れるかわかる
これらのことが、電卓などを使わなくてもすぐに計算できる優れものなのです。大工として仕事を続けていくのなら、差し金の使い方をしっかりマスターしましょう。
●直尺
直尺とはいわゆる直定規のこと。材料に押し当てて長さを測ったり、ノコギリで切断する線を描いたりする時などに使います。スチール製で30センチ仕様のものが基本となりますが、制作物によっては15センチ、60センチ、1メートルなどの仕様のものを使い分けます。
●直角定規
材料の側面に当てて直角を確認したり、切断用の線を描いたりするときに使います。木製の直角定規は材料に傷をつけにくくて便利ですが、大工職人には自作している人も多くいます。木工の練習にもなるので、サイズの違ったいろいろな直角定規を作ってみるのもよいかもしれません。
●巻尺
直尺では測り切れないような長いものを測るときに便利なのが巻尺です。通常使用としてまずは3〜5メートル用を用意するとよいでしょう。ただし、巻尺はその性格上、ものの長さを精密に測ることはできません。ある程度の長さを大雑把につかむために使用し、正確な測定は他の定規で測り直すことが必要です。
上手に使いこなすことが意外に難しい錐(キリ)
材料に穴を開ける目的で使う錐(キリ)。意外かもしれませんが、キリを上手に扱えるようになるには時間と経験が必要ともいわれます。キリ揉みが満足にできれば一人前ともいわれ、大工道具使いの難しさを言い表す用語に「一キリ、二カンナ、三チョウナ」という表現もあるくらいです。
そんなキリですが、ただ穴を開ければよいというものではなく、思ったところに、思ったような大きさの穴を、思ったような角度で開けられる技術が求められることになるため、使いこなすには経験則が必要とされてます。キリにはいくつか種類がありますのでご紹介していきましょう。
●四ツ目キリ
刃の先端が四角になっているキリで、四方キリとも呼ばれます。キリ穴は最初から最後まで同じ太さになります。
●三ツ目キリ
刃の先端が三角になっている、もっとも一般的なキリ。キリ穴の径が最初と最後で変わります。
●剣キリ
硬い木材に穴を開けるときに使います。切り口が丸くなっていることが特徴です。
●三叉キリ
キリの先端が三つに分かれているもので、釘の頭を隠すための穴を開けるときなどに使用します。
他にもいろいろな種類があり、太さも仕様もさまざまなです。まずは基本的なものを用意し、必要に応じて徐々にバリエーションを揃えていくとよいでしょう。
大工にとって重要な道具のひとつ、砥石(トイシ)
砥石はもちろん大工道具ではありませんが、腕のよい大工は自分の道具の手入れも入念に行います。ノミやカンナの刃を常に最善の調子に保つことは、美しい加工品を作るということだけではなく、ケガを防ぐという意味からも重要です。切れない道具を使えば余計な力が入って、思わぬ事故につながることもあるのからです。
刃物を研ぐ作業は、荒研ぎ・中研ぎ・仕上げ研ぎに分類されます。砥石の目の荒さは、この順に細かくなっていきます。荒研ぎには#120〜#300、中研ぎには#800〜#1200、仕上げ研ぎには#4000以上の番手が目安です。まずはこの3つの砥石を用意するとよいでしょう。刃物を研ぐ技術は一朝一夕では身につきません。自分の道具をいつまでも長く使えるよう、心を込めてこまめに手入れしていくことが大工道具を使いこなすための上達のコツともなります。
── 以上、大工初心者に向けた大工道具の基礎知識についてまとめてみました。大工道具はまだまだたくさんの種類があり、そのすべてを一気に揃え、すぐに使いこなせるようになることは不可能です。ひとつずつ時間をかけて揃え、しっかり使いこなせるようにすることを目標にしましょう。
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