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板金加工とは?種類や工程などの技術、資格などについて徹底解説

「板金(鈑金)」というと、工場で曲げ加工や溶接によって製品の部材などを製造する作業や、住宅の金属の屋根材の施工、あるいはヘコミのある自動車の修理など、イメージするものは人それぞれではないでしょうか。こうした板金加工の種類や資格について触れたうえで、工場板金における材料、主な工程などについて解説していきます。

板金加工の種類

板金加工とは、板金と呼ばれる平らな金属の板材に切断や曲げ、穴開け、溶接といった加工を施すものです。板金加工は、機械を用いる機械板金と人間の手によって加工する手加工板金(手板金加工)に分類できます。機械板金に分類されるのは工場板金です。手加工板金には建築板金と自動車板金のほか、工業製品にも使われる打ち出し板金があります。

工場板金

工場板金は薄い金属板を加工して、部材や製品として工場内で製造しするものです。自動車や飛行機のボディ、家電製品のボディ、オフィスのデスクやロッカーなど様々な製品に使われています。一般的な工場板金は機械によって精密な加工を行う精密板金と呼ばれるものです。

・建築板金

建築板金とは住宅や店舗、大規模な工場などの屋根や外壁の外装仕上げ材、雨どい、ダクトや排気筒、厨房の調理台などとして、薄い金属板を手加工して、取付工事までを行うものです。建物の外部に使用するものと、内部に使用するものに分類できます。建築板金の中でも外装施工では、建築物の美観に関わるため繊細な技術や技能が必要とされ、建物の耐久性に関わる雨仕舞いの施工技術も重要視されます。

・自動車板金

自動車板金は、自動車事故や老朽化などによってできたボディやドアのヘコミやキズを、内側から叩くことによって元の形状に戻す修理をいいます。

板金加工に関連する資格

工場板金や建築板金の仕事では、工場板金技能士や建築板金技能士の資格を取得することで、技術レベルを証明することができます。

・工場板金と建築板金は国家検定の技能検定の対象

工場板金と建築板金は、技能の習得レベルの評価を行う国家検定制度である技能検定の対象職種となっています。技能検定には特級および1~3級がありますが、職種や作業によって設定されている級は異なります。3級には受験資格はありませんが、2~3級は実務経験や下位級の合格などによる受験資格があり、特級の受験には1級の合格後5年間の実務経験が必要です。試験は筆記試験と実技試験によって行われます。

合格すると「技能士」の称号が付与され、「○級工場板金技能士」「○級建築板金技能士」という形で、名刺やホームページなどで名乗ることができます。

・工場板金

工場板金は、曲げ板金作業と打出し板金作業、機械板金作業は1~3級、数値制御タレットパンチプレス板金作業は1~2級が設けられ、さらに上位資格の特級もあります。工場板金の1~2級の試験の際には、対象作業に関する安全衛生法に基づく資格証等の携帯が必要です。

たとえば、打出し板金作業3級の2019年前期の実技試験の課題は、「定盤、板金工具、砂袋等を使用し、冷間圧延鋼板(SPCC-SD 厚さ0.8mm)を加工して、リベット締めにより組立て、杯形状の製品を製作する」というものです

・建築板金

建築板金は、内外装板金作業1~3級、ダクト板金作業1~2級が設けられています。内外装作業2級を例に挙げると、2019年前期の実技試験は、「溶融亜鉛めっき鋼板を加工して、正方形の曲がりダクトに円形の短管を取り付ける」という課題が出されています。

工場板金の「板金加工」と「プレス加工」の違い

工場板金における板金加工とは、金属製の薄い板材を、せん断や穴抜き、曲げ加工、接合といった工程によって、目的の形状に製品や部材を仕上げていくものです。板金加工と類似するものとして、プレス加工が挙げられます。板金加工とプレス加工はいずれも、物質に大きな力を加えて変形させる塑性を利用した加工方法であり、同じ形状の製品を生産できるという点では共通しています。

プレス加工は製品ごとにつくられた金型を使用します。一方、板金加工は汎用金型を用いて材料を切り抜くタレットパンチプレスや、曲げ加工を行うベンダーなど、汎用性のある機械を使うことが特徴です。そのため、板金加工は柔軟に図面変更に対応できるという利点があります。他方、プレス加工は精度の高い金型が必要ですが、職人の熟練の技術を必要としないのに対して、板金加工は手仕事による技術が必要とされる加工方法です。プレス加工は大量生産に向いているのに対して、板金加工は一日に生産できる量が限られるという違いもあります。

板金加工に使われる材料

板金加工

板金加工に使われる金属材の種類や定尺材として流通しているサイズについてまとめました。

・鉄鋼材と非鉄鋼材

板金に使われる材料は大きく分けると、鉄鋼材と非鉄鋼材に分類できます。鉄鋼材には、熱間圧延鋼板(SPHC)や冷間圧延鋼板(SPCC)などの軟鋼板、軟鋼材にめっきや塗装を施した表面処理鋼板、クロムを12%以上含有するステンレス鋼板などが代表的です。非鉄鋼材で使われることが多いのは、アルミニウムやアルミ合金板、銅、銅合金板などです。

・定尺材の寸法

あらかじめ必要な寸法にカットされた板材はスケッチ材と呼ばれています。板金加工で使われる金属の板材は、規格で決められた寸法にカットされた定尺材を使うことが一般的です。板金加工に使われる定尺材のサイズと呼称、一般的に流通している板材の種類をまとめました。

熱間圧延鋼板(SPHC)や冷間圧延鋼板(SPCC)、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)など鉄鋼板のみに用いられている定尺サイズ。鉄鋼板では最も流通しています。

<3×6、サイズ:914mm x 1,829mm、呼称:サブロク>

<1×2、サイズ:1,000mm x 2,000mm、呼称:メーター板>

ステンレス鋼板やアルミ板、銅板などに用いられている定尺サイズです。

<4×8、サイズ:1,219mm x 2,438mm、呼称:シハチ>

熱間圧延鋼板(SPHC)や冷間圧延鋼板(SPCC)、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)などの鉄鋼板にも、ステンレス鋼板やアルミ板、銅板にも用いられている定尺サイズです。

<5×10、サイズ:1,524mm x 3,048mm、呼称:ゴトウ(ゴットウ)>

4×8(シハチ)と流通している板材の種類はほぼ同じですが、銅板は利用用途がほとんどないため、つくられていません。

また、鋼板には板厚による分類があり、厚板は6mm以上、中板は3mm以上6mm未満、薄板3mm未満です。

・建築板金の材料

建築板金に使用されるのは、主に厚さ1mm以下の亜鉛鋼板とカラー鋼板、ステンレス鋼板です。亜鉛鋼板は亜鉛メッキされた鋼板のことで、トタン板とも呼ばれています。カラー鋼板とは表面に塗料が塗布された鋼板をいい、意匠性に優れているだけではなく、耐食性が高く腐食しにくいという利点もあります。通常、建築板金では施工後に塗装を行いません。ステンレス鋼板も高い耐食性を持っているのが特徴です。

板金加工の基本的な工程

工場板金では主に、「読図と展開」→「外形加工と穴抜き加工」→「前加工」→「曲げ加工」→「接合加工」→「仕上げ加工」→「検品」という加工工程により製作されています。板金材料の特性に合った加工が求められます。

・読図と展開

受注した図面を読み取り、板金加工で使用する展開図を作図します。曲げ加工を行うと材料に伸びが起こるため、展開図の作図にあたっては伸びも考慮した寸法とします。

・外形加工と穴抜き加工

展開図に合わせたサイズや形状に板金を切断するせん断と呼ばれる作業や、穴抜きを行う工程です。

金きりはさみは、人力で直線や曲線にせん断する場合に使用されます。直線状にせん断に用いる機械には、シャーリングやスリッターなどがあります。凸状のパンチと凹状のダイ、金型を用いて、外形のせん断や穴抜きを行う機械として代表的なのはタレットパンチプレスです。タレパンと略して呼ばれ、汎用の金型で様々な形状に加工できます。また、レーザー加工機の登場によって、金型なしで任意の直線や曲線に一筆書きのようにカットしていくことが可能となり、複雑な形状のせん断も高精度でできるようになりました。

・前加工

前加工として、バリと呼ばれる角や面からはみ出ている部分を取り除くバリ取りや、ネジ穴を開けるタッピング加工を行います。

・曲げ加工

せん断や穴抜きされた平らな部材を曲げる工程です。曲げ加工に使われることが多いのはプレスブレーキという機械で、上型と下型の間に部材を挟み、加圧して曲げていきます。曲げ加工には、断面形状によるV曲げやU曲げのほか、補強や縁の安全性の確保のために180度折り曲げるヘミング曲げなどがあります。

・接合加工

板金加工での接合法には、リベット締めやボルト接合、はぜ組みなどによる機械的接合法と、溶接などの治金的接合法があります。

溶接は、2つ以上の部材の接合部分を溶解して凝固させることで一体化させる接合法です。板金加工で一般な溶接法のアーク溶接では、アーク放電と呼ばれる放電現象を利用して、部材を接合します。スポット溶接は、接合する部材に電流を流しながら加圧し、抵抗熱を利用して接合させる方法です。

・仕上げ加工

溶接によって発生した凹凸の処理や、製品によってはメッキ塗装などの表面処理が行われます。

・検品

検品では、製品の材料、寸法や角度などの計上、接合部分などの検査が行われます。

板金加工に使われる主な機械の種類

板金加工に使用する使用される機械の中から、代表的なものを紹介していきます。

・シャーリングマシン(せん断機)

シャーリングマシンは、はさみのようにせん断ができる機械で、せん断機とも呼ばれています。シャーリングマシンには、少し角度がついた上刃と素材に対して水平な下刃が取り付けられ、上下の刃で素材を挟んで圧力をかけることでせん断する仕組みです。足元のスイッチ、あるいは手元のボタンを押すことで、上刃を動かします。

シャーリングマシンの中でも、動力式のタイプは「メカシャーリング」と呼ばれ、せん断のスピードが速いのが特徴です。ただし、6mm以上の素材をせん断するのには向いていません。油圧式のタイプの「油圧シャーリング」は、スピードはメカシャーリングよりも劣りますが、6mm以上の素材にも対応できます。

・タレットパンチプレス(タレパン)

タレットパンチプレスは通称「タレパン」と呼ばれ、板金加工の代表的な機械の一つ。素材をシャーリングマシンで適当な大きさにせん断した後、汎用性のある丸形や扇形、四角形などの金型で打抜き加工をする機械です。

タレットパンチプレスは、何十種類もの上金型の「タレット」と下金型の「ダイ」のセットを、タレットという円形の金型ホルダーに格納できるようになっています。NC制御によってプログラミングに従って、金型が付け替えられて打抜き加工が行われます。パンチとダイに挟まれると、板に穴が開く仕組みです。 タレットパンチプレスで加工できるのは、厚みが3mmまでの板材。3mmを超える素材の加工にはレーザー加工機が向いています。

タレットパンチプレスはNC制御により稼働するため、板材の移動や使用する金型の選定はプログラミングによって正確に行われるのが特徴。精度の高い加工にも熟練の技術者を必要としませんが、プログラミングに必要な知識の習得が必要です。

タレットパンチプレスの導入には高額な設備投資費用がかかり、1台数千万円のものから数億円のものまであります。

レーザー加工機

レーザー加工機はレーザーを照射することで、素材には直接触れずにせん断のほか、彫刻やマーキングといった加工を行う機械です。厚さ3㎝程度の板材まで加工することが可能です。レーザー加工機は使用するレーザーの種類によって、炭酸ガスを使用する「CO2レーザー」と固体レーザー光線の「YAGレーザー」、は光ファイバーを用いた「ファイバーレーザー」に分類できます。

レーザー加工機は、切断面にバリやダレが生じることが少なく、切断面が美しいのが特徴です。一方で熱を使うため、変色する点や加工コストが高い点がデメリットです。まDた、グラフィックソフトに関する知識が必要です。

・ベンダー(ブレーキプレス)

ベンダーはタレットパンチプレスと並ぶ、板金加工の代表的な機械で、ブレーキプレスとも呼ばれています。ベンダーもパンチとダイの上下の金型を使用し、曲げ加工を行います。たとえば、V字の溝のあるダイの上に板材をセットし、ダイに合わせた形状の凸型のパンチで押さえ込むことで変形させる仕組みです。ベンダーには機械式と油圧式があります。

打ち出し板金とは?

打ち出し板金はハンマーなどを使って、人の手で行う板金加工の方法です。板金加工は工業製品の分野では機械化が進んでいますが、工芸品に限らず、新幹線やモノレールの先頭構体といわれる部材打ち出し板金でつくられています。

・「打ち出し板金」とは

打ち出し板金はハンマーなどを使った手加工による板金加工をいいます。流曲線など三次元曲面の複雑な形状に加工できるのが特徴で、精密板金では対応できない製品や部材の生産に用いられています。打ち出し板金に使われるのは厚さ1〜6mm程度の金属の板材です。打ち出し板金は大量生産には向かないため、小ロットの製品の生産に用いられています。

打ち出し板金は火による熱を用いず、常温のままハンマーで叩くのも特徴です。

・打ち出し板金に使用される工具

打ち出し板金に使用されるのは、ハンマーと鉄床、当て板で、成形加工機が用いられることもあります。

【ハンマー】…金属板を叩くハンマーは一つの製品をつくるのに、素材や工程によって通常5~6種類を使い分けます。打ち出し加工で使うハンマーには、鋼製の粗出しハンマーやならしハンマー、ピックハンマーのほか、木製ハンマーやゴムハンマーといった種類があります。木製ハンマーよりも鋼製ハンマーの方が、一度の打ち込みによる変形量が大きいです。
【鉄床】…金属の板材を置く台。
【当盤(当て金)】…金属の板材の裏に当てます。金属の板材を目的の形状に変形させるとともに、破断を避けるために使用します。
【成型加工機】…ハンマーが上下に動く機械。職人の負担を軽減するため、成型加工機でおおまかに曲げておくこともあります。

まとめ

板金加工と一言でいっても幅広く、工場板金や建築板金、自動車板金と多様です。工場板金だけを見ても、日常生活で使う様々な工業製品の部材として使われています。板金加工の技術は製造業界や建築業界にとって欠かせないものといえるでしょう。

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