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カーボンニュートラルで注目される「自動車用燃料」の基礎知識

2020年10月、菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。

カーボンニュートラルとは、CO2やメタンなどの温暖化ガスの排出量を、森林吸収や排出量取引などで吸収される量を差し引き、全体としてゼロにするということ。これまでの日本政府は「2050年に80%削減」としてきましたが、今回は明確な年限を示したうえで「ゼロにする」と踏み込んだことに大きな意味があります。

この脱炭素社会の実現に大きくかかわるもののひとつに自動車用燃料があります。日本政府は、2030年代半ばにガソリン車の新車販売を禁止する方向で最終調整に入ったと報じられていまることからも、将来的にはガソリン車などの化石燃料を使う自動車に代わり、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などが主流になっていくことは間違いないでしょう。

新たなエネルギーに代わりゆく自動車用燃料ですが、現状はどのようなものが使われているのでしょうか。今回は、そんな自動車用燃料にスポットを当て、それがどのような燃料でどのようできるのかについてまとめます。そのうえで、カーボンニュートラルの時代の自動車用燃料についても考えてみましょう。

自動車用燃料は石油由来が主流

現在、自動車の燃料として使われているものは3つあります。「ガソリン」、「軽油」、そして「LPG(Liquefied Petroleum Gas=液化石油ガス)」です。この3つは、いずれも石油由来の燃料という共通点があります。

他にも一部ですが、自然に産出する「天然ガス」、アルコールの一種である「メタノール」、天然ガスや石炭など石油以外のものから製造する「合成ガソリン」、穀物由来の「エタノール」などを燃料とする自動車もあります。しかし、現在ほとんどの自動車は、石油がなければ動かすことはできません。

そもそも石油は、どのようにしてできるのでしょうか。

生物などの有機物が死ぬと、水などに運ばれて海底深くに堆積し、バクテリと水の影響で二酸化炭素と水に分解されます。分解されなかった有機物は泥として地中深くに埋もれ、互いに化学結合して「ケロジェン」という大きな有機物の塊を形成します。大きく成長したケロジェンは高温の地中深い場所で熱分解され、二酸化炭素と水に分解されます。さらに数千メートルより深い場所では、ケロジェンは二酸化炭素と水の他、炭化水素が放出されるようになります。これこそが“石油になるもの”の正体と言われています。

炭化水素は岩や石の割れ目を移動し、地中の石灰岩の隙間などに溜まるようになります。こうして濃縮された炭化水素が集まるところは石油鉱床と呼ばれ、液体なら石油、気体ならガス田となるわけです。

ガソリンはどうやって作られる?

油田から採掘したままの状態の石油を「原油」といいます。自動車燃料となるガソリンや軽油は、この原油から作られるのです。原油からはさらに灯油や重油、アスファルトなども作られます。

原油には不純物も含めてさまざまなものが混じっていますが、ガソリンに適した成分は20%以下、LPGに適した成分はおよそ1%と言われていて、50%以上は重油などに使用され、それ以外は不純物です。

ご存じの通り。ガソリンは石油精製を行って作られます。中東などから輸入された原油は、製油所の加熱炉で350℃まで加熱され、石油蒸気となって加熱炉から蒸留塔に送られる仕組みです。

蒸留塔は上に行くほど温度が低く、下に行くほど温度が高くなります。蒸留塔では、沸点の違いでいろいろな燃料が作られるのです。上から、沸点30〜180℃ ➡ ガソリンやナフサが、沸点170〜250℃➡ 灯油やジェット燃料が、240〜350℃ ➡ 軽油が、350℃以上 ➡ 重油やアスファルトが抽出されるのです。

ガソリンなど製品価値の高い石油製品は、原油の中にそのままの分子構造で含まれているわけではありません。したがって、原油を分化させる蒸留工程で原油を分別すること加え、化学反応させる工程も必要です。こうした多くの過程を経ることによって、自動車用燃料として使用できるガソリンや軽油を作ることができるのです。

レギュラーガソリンとハイオクの違いとは?

ガソリンには、レギュラーガソリンとハイオクガソリン(プレミアムガソリン)があることくらいは車を運転する人ならご存知でしょう。では、レギュラーとハイオクはどう違うのでしょうか。その区別は「オクタン価」によって決定されます。

オクタン価とは、ガソリンのエンジン内での着火のしにくさ、ノッキングの起こりにくさを示す数値のこと。

ガソリンは自然発火しやすい特徴があり、自動車用燃料として使用するとエンジン内で異常燃焼を起こし、ノッキング現象という不自然な動きや振動を起こします。こうしたノッキング現象を起こしにくくするために、自動車用燃料となるガソリンには添加物が加えられ、異常燃焼を起こさないように工夫されています。

つまり、オクタン価とは異常燃焼の起こしにくさを示す数値のこと。

オクタン価が高ければ高いほどそのガソリンは異常燃焼を起こしにくくなります。そして、このオクタン価の数値によってハイオクかレギュラーかの区別がされます。

ハイオク             オクタン価 96以上

レギュラー          オクタン価 89以上

ハイオクとは「“オク”タン価が“高い”ガソリン」という意味なのです。これは日本産業規格(JIS)で決まっています(日本工業規格から、2019年7月より日本産業規格に改称)。

石油精製所

ハイオクガソリンのメリットを知ろう

ハイオクガソリンはレギュラーガソリンよりもオクタン価が高く、スポーツカーや高排気量車に適していると言われています。

では、ハイオクはレギュラーよりも秀でたガソリンなのでしょうか? ハイオクはレギュラーと比較して価格が高いため、レギュラーよりハイオクのほうが品質的に優れているガソリンだと考えている人も多いようですが、それは本当でしょうか?

自動車のエンジンは、ガソリンと空気の混合気を圧縮し、プラグで点火し爆発させることで動きます。スポーツカーや排気量の大きい自動車などは、この混合気の圧縮比が高く、シリンダー内の温度も圧縮比に伴って上昇します。すると異常燃焼してノッキング現象が起きやすくなります。このとき、レギュラーより“異常燃焼しにくい=燃えにくい”ハイオクなら、混合気の圧縮比を高めてもノッキング現象が起こりにくくなります。これによって燃焼効率が高まり、ハイスピードで力強い走行が常時可能になります。

つまり、圧縮比が高いほうが、より大きな力を生む。

逆に、レギュラーはハイオクに比べてノッキング現象を起こしやすく、それだけエンジンを傷めやすいと思われるかもしれません。しかし、軽自動車や普通車などはスポーツカーのように高い圧縮比は必要なく、レギュラーでもノッキング現象を起こすことはありません。むしろ、レギュラー仕様車にハイオクガソリンを入れても、かえって燃費が悪くなるだけ……という可能性があるのです。

つまり、エンジンに適したガソリンを使うことが大切で、レギュラーがハイオクよりも劣っているというわけではない。

ハイオクがレギュラーよりも値段が高いのは、オクタン価を高くするために添加物などを多く入れているからです。また、ハイオクは添加物が入っている分だけ燃えカスもたくさん出るため、この燃えカスを洗浄するための洗浄剤も含まれています。

つまり、ハイオクのほうがレギュラーよりも値段が高いのは、こうした理由があるから。

「軽油」は、軽自動車専用燃料ではない

ガソリンスタンドに行くと、「レギュラー」「ハイオク」と並んで「軽油(ディーゼル)」という油種もあります。この軽油とは、どのような自動車用燃料なのでしょうか。

ガソリンの項でも説明しましたが、原油は蒸留塔で沸点の違いによって分別されます。ガソリンの沸点は30〜180℃と低温である点に対して、軽油は240〜350℃の高温です。さらに高温の350℃以上に沸点があるのが重油です。こう説明するとわかると思いますが、軽油は重油に対してつけられた名称であって、決して「軽自動車用の燃料」という意味ではないのです。

沸点が240〜350℃ということは、軽油はこの温度で蒸発するということ。つまり、軽油はガソリンよりも高温で蒸発する燃料なであり、蒸発温度の違いが、両者の燃料特性の大きな違いです。

軽油はディーゼルエンジンに使われる燃料です。ガソリンエンジンが霧状のガソリンと空気の混合気にプラグで点火するのに対して、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも圧縮比を高めた空気に、霧状の軽油を噴射して自己着火する仕組みです。ディーゼルエンジンには点火装置がないので、高圧・高温でよく燃える軽油が用いられるのです。

また、ディーゼルエンジンは燃料消費量が少ないため、トラックやバスなどに多く使われています。また、一般車の中でも車両重量の重いRV車などにもよく用いられます。ただ、軽油はガソリンよりも単素数が2倍も多い燃料であることから、将来的なカーボンニュートラル、脱炭素社会の中では、だんだんと使用範囲が限定されていくと予想されています。

クリーンな燃料の代表「LPG」

ここでは、その3つ目、LPGについて解説していくことにしますが、最初に自動車用燃料の主力は「ガソリン」、「軽油」、そして「LPG(Liquefied Petroleum Gas=液化石油ガス)」3つであり、そのいずれもが石油由来であると説明しました。

LPGは、ブタンとプロパンを主成分とした石油由来燃料でのこと。ただ、完全な石油生成物ではなく、天然ガスなど、石油以外に由来するものが約半分を占めます。LPGは液化すると体積は気体の250分の1になります。

一般家庭でもよく使われているプロパンガスのボンベの中身は、プロパンに圧力をかけて液化したもの、100円ライターの中の液体はブタンに圧力をかけて液化したものです。よくLPGを「プロパンガス」と混同している人がいますが、自動車燃料用のLPGは、プロパンガスよりもブタンを多く含んでおり、この2つを全く同じものと認識するのは正しい解釈ではないことを理解しましょう。

大きな特徴であるLPGの長所は、硫黄成分を含まないクリーンな燃料だということ。

このため、エンジン本体の構造はガソリンエンジンと変わりはありませんが、腐食や摩耗が少なく、耐久性が高くなります。このような理由により、国内のタクシーの約95%に使用されている他、フォークリフトなどの作業車にもよく使われています。LPGは専用のボンベに溜められ車載されています。例えば、タクシーのトランク内などに積まれたガスボンベを見たことがある人も多いことでしょう。この燃料は国内に約2000カ所あると言われるLPGガススタンドで燃料補給されます。

LPGは硫黄成分を含まないクリーン燃料として、ディーゼルエンジンへの適用も研究されています。また、最近よく耳にするエコファーム(燃料電池方式の家庭用コジェネレーションシステム)の燃料としても注目されています。

これから注目される石油代替燃料

現在使われている自動車用燃料は石油由来のものがほとんどです。しかし、将来的なカーボンニュートラルを見すえ、このままの状況が今後も続いていくことはなさそうです。

ここでは、カーボンニュートラルの時代に注目される、石油代替燃料について紹介しておきましょう。

●天然ガス

天然ガスといっても、その成分のほとんどはメタンです。天然ガスを高い圧力で圧縮したものを圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas=CNG)と言います。これを燃料とするCNG自動車は、2013年にはすでに国内で4万台が販売されている実績があります。

天然ガスは石油の項でも説明したように、有機物が海底に沈み、それが長い年月をかけてできる炭化水素から生まれます。液体なら石油になり、地熱などで温められて気化し、地中に溜まったものが天然ガスとなります。日本の周辺には、“燃える氷”とも言われるメタンハイドレード(メタンを中心に水分子が囲んだ形の固形結晶)が多く存在することが確認されています。また、新しいガス田も続々と発見されており、これらの非在来型ガスの回収可能な埋蔵量は約250年とも言われています。

天然ガスには有害な一酸化炭素が含まれず、また空気より軽いので漏れると上へとのぼります。空気より重いため、漏れると低い所にた溜まるプロパンガスに比べて安全なガスと言えるでしょう。天然ガスには臭いがないので、万一漏れた時にわかるようにわざわざ臭いをつけています。脱炭素社会を目指す日本にとって、将来のエネルギー源として大きな期待が寄せられています。

CNG自動車の構造は基本的にガソリン車やディーゼル車と同じであり、異なるのは燃料系統だけです。燃料となる天然ガスは高圧に圧縮されてガス容器に充填。車載したガス容器から燃料配管を通ってエンジンに供給される仕組みです。

●メタノール

メタノールとは、メチルアルコールのこと。1970年代に起こった石油危機以降、最初に注目された石油代替燃料です。1994年にもメタノール車の普及拡大が政策として掲げられたこともありましたが、これまであまり大きな広がりは見られませんでした。しかし近年、メタノールはCO2排出量の削減効果のある再生可能エネルギーのひとつとして、再び注目を集めるようになっています。

近年では燃料電池自動車の燃料としても注目を集めています。メタノール燃料には硫黄分が含まれないため、燃焼しても硫黄酸化物が発生しません。また、窒素酸化合物の濃度も低く抑えることができるので、クリーンなエネルギーとして期待されています。ただし、腐食性が強いので、自動車の燃料タンクや燃焼系部品に腐食対策が必要となることが課題です。

●エタノール

エタノールとは、お酒やビールのアルコール成分として知られるエチルアルコールのこと。カーボンニュートラルを目指す現代社会において、石油代替燃料として注目されるエタノールですが、実は、自動車が誕生した草創期には自動車用燃料として使用されていました。1908年に発売されたフォード・モデルTは、1927年まで基本的なモデルチェンジをしないまま約1500万台生産されました。この自動車には、ガソリン以外にエタノールも使われていたのです。

お酒に含まれるエタノールは、体内に入ると肝臓に運ばれてアルコール脱水素酵素の働きによってアセトアルデヒドという物質に分解されます。このアセトアルデヒドはさらに酢酸に変換され、最終的には二酸化炭素と水に分解されます。この体内で行われる「エタノール ➡ アセトアルデヒド ➡ 酢酸 ➡ 二酸化炭素・水」という化学変化の力を自動車に応用したものが、エタノールエンジンの作動原理。酵素の力を借りることなく、エタノールと空気を高温下で燃焼させ、熱エネルギーを得るのです。

Ford Model T, 1908-1927

●バイオマスエネルギー

光合成によって生物(植物)が生み出す物質を原料としたエネルギー(燃料)をバイオマスエネルギーと言います。自動車用燃料としては、デンプン質や糖質、油分、食物繊維、木材チップ、藻等から作られる天然ガス(メタン)、メタノール、エタノールなどがあります。この項で紹介した自動車用燃料は、すべて生物から作り出すことができるバイオマスエネルギーというわけです。

このバイオマスエネルギーは、それを燃焼させることによってCO2を発生します。しかし、これはもともと植物が光合成によって大気中から取り込んだもの。したがって、植物資源を再生すれば大気中のCO2濃度を上げずに済むことになります。地球温暖化問題や化石燃料の枯渇問題に対応し、カーボンニュートラルの時代にマッチしたエネルギーとして、今後ますます注目を集めることになりそうです。

ここまで、自動車用燃料についていろいろと説明してきました。これまでガソリンが主流だった自動車用燃料も、将来のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指して大きな岐路に立っていると言えます。地球に優しいエネルギーを模索するとともに、自動車のあり方そのものも大きく変化していくのかもしれません。私たち一人ひとりが、エネルギーの面から自分たちの未来を考えていく必要がありそうです。

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