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多様なネジの締め付け工具。その種類と正しい使い方を知ろう!

私たちの身のまわりにある工業製品には、ほぼすべてに「ネジ」が使われています。多くのネジが使われているということは、その分、そのネジを締め付ける「締め付け工具」も多種多様に存在することを意味します。ものの製造現場に携わる人やDIYを趣味とする人であれば、無意識のうちに日常的にいろいろな締め付け工具に触れていることでしょう。しかし、あらためてそれがどのような特徴を持った工具なのかを考えたことは少ないのではないでしょうか。

何より、ネジを締め付ける工具の代表といえばドライバーですが、実はそれ以外にも多くの締め付け工具が存在することは、ホームセンターの陳列棚を見ても明らかです。そして各種の工具には、その目的や使い方など、それぞれ異なる特徴があります。

そこで今回は、さまざまな製造現場で使われる締め付け工具についての基礎知識をまとめてみました。工具の正しい知識を得ることは、製造現場で働く人にとっての基本中の基本。しっかりチェックしておきましょう。

ネジを締め付けるドライバーの主流はプラスドライバー

− + ★ ● ■などネジを締結するための工具穴がついた頭部の形状も、中央に向かって盛り上がる「丸」、真っ平らな「平」、上面が平坦で座面は円錐の「皿」、上面に丸みを持った「丸皿」、丸頭よりも大径で背の低い「トラス」、上面の角に丸みがある「鍋」、径が大きく上面が丸い「バインド」、側面にやや傾斜がある「低頭」とさまざま

ネジの締め付け工具として最もポピュラーなものは「ドライバー」です。一般家庭にも広く普及しているものなので、知らない人はいないでしょう。ちなみに直径8mm以下の小ネジを「ビス」といいますが、現在はほとんどのビス頭部に十字穴が加工されており、これに対応するのが「プラスドライバー」です。十字穴付き用のプラスドライバーは、JISでは「十字ネジ回し」として規定されています。

ドライバーは本体とグリップ(握り部)の結合の仕方で、ドライバーの軸がグリップの途中までの「普通形」と、グリップを貫通している「貫通形」の2種類に分類されます。貫通形はグリップ後部をハンマーで叩くことができ、これによってきつく締め付けられているネジに衝撃を与えて緩める仕組みです。また、ドライバーの軸の先端部が磁力を帯びているかどうかでも分けられます。磁力があればビスを引き寄せて締め付けたり緩めたりすることができるうえ、作業時のネジの紛失を防ぐこともできます。

頭部に直線のすり割りがついているビスには、「マイナスドライバー」が対応します。非常にシンプルな構造のため、小ネジ誕生の初期から使われてきましたが、プラスドライバーよりもドライバーとビス頭部が接合するのに時間がかかり、作業効率に劣る弱点があります。これにより、最近では泥や油汚れで十字穴が塞がれてしまう個所をのぞき、プラスドライバーが主流となっています。

ドライバーのグリップ部はさまざまに進化しており、現在ではその素材や形は千種万別です。基本的には太いグリップほど回転力(以下トルク)が強くなるので、大きめのネジやより強く締め付けたい時に用いるネジには、太いグリップのドライバーが用いられます。逆に、メガネや時計などに用いられる極小のネジを締め付けるには、通常よりもサイズが小さい「精密ドライバー」が使われます。精密ドライバーには強いトルクが必要ないのでグリップも細く作られていますが、グリップの端が空まわりするように作られており、この部分に手を当てて回転させることで作業がスムーズにできる工夫がなされています。

時計機構に使用されている極小ネジの開閉に用いる精密ドライバー

ボトルやナットを確実に締め付けるスパナ・レンチ

頭部に十字穴などの加工がされていないボルトやナットは、通常は正六角形をしています。この締め付けには「スパナ」や「レンチ」が用いられます。どちらも同じ目的で使われる工具ですが、この2つはどう違うのでしょうか。

どうやら、同じ目的の工具をイギリス英語ではspanner(スパナ)、アメリカ英語ではwrench(レンチ)と呼んでいるようです。日本では一般的に、開口部がコの字型に開いているものをスパナ、それ以外をレンチと呼ぶようですが、その区分けははっきりしていません。

日本では一般的に、左がwrench(レンチ)、右がspanner(スパナ)と呼ばれる

スパナには、開口部が柄の片側だけにある「片口スパナ」、両側にある「両口スパナ」などの種類があります。そのサイズは一般的な家庭によくあるもので3〜20ミリほどですが、建設現場、工場、工房など使われる場所や用途によって無限にあるといってよいでしょう。

種類はたくさんあるものの、スパナを上手に使うための最大の条件は、ボルトやナットに対して平行に使うことになります。さらに、開口部の突き当たりまでしっかりボルトやナットを押し込んで使うことも重要です。なかには、平行に使いやすくするために開口部が柄に対して15度傾いていたり、開口部の先端が薄くなっていたりと、ものによってさまざまな工夫がなされています。

また、ボトルやナットをより確実につかんで作業するために、開口ではなく丸型になっているものもあります。柄の両端にボルト等を固定する円形の口があるものを「メガネレンチ」と呼びます。この名前の由来は両端がめがねのように丸くなっているから。また、片側が開口して片側が丸型になっているものを「コンビネーションレンチ」などと呼びます。メガネレンチの柄の形状は、30度や40度などの角度をつけた「オフセットメガネレンチ」もあります。これは狭い部分での作業や障害物がある場所でネジをしっかり締められるように工夫されたものです。

上 : 45度の角度がついた両端がレンチ仕様の「メガネレンチ」。下 : 左端がスパナ、右端がレンチ
の「コンビネーションレンチ」

無段階にサイズ調節が可能なモンキーレンチ

ボルトやナットサイズに合わせて調整可能な「モンキーレンチ」。使用時は開口部ナットやボルト頭部を深く密着させたことを確認して、上アゴ部分に大きな力がかかるように柄をしっかり握ってまわすことが作業のコツ

いろいろなサイズのボルトやナットを、無段階に調節して締め付けることができるのが「モンキーレンチ」です。単に「モンキー」と、省略して呼ばれることもあります。このモンキーという名称ですが、「全体がサルに見えるから」「サルでも使えるから」あるいは「1858年にチャールズ・モンキーという人が発明したから」など諸説ありますが、実際ははっきりとわかっていません。

モンキーレンチの最大の特徴は、ボルトをつかむ部分のサイズ(幅)を、ネジ状の歯車を使ったウォームギアという仕組みで無段階、かつ自由に変えられることにあります。調整可能なことから「アジャスタブルレンチ」とも呼ばれます。

モンキーレンチの開口部を正しく調整するには、まず柄の根元近くを握ってボルトやナットを開口部(口開き)に入るくらいにウォームギアをまわして広げ、柄と一体化した上アゴ部分をボルトと密着させます。次にウォームギアをまわして移動する下アゴ部分をボルトのサイズと密着するまで寄せます。そのうえで、ボルトやナットを深くくわえ、ガタつきがないことを確認してからまわすようにします。この時、固定された上アゴ部分に大きな力がかかるようにしながら、下アゴ方向に向けて回転させることが、モンキーレンチの正しい使い方です。

サイズを調節できることがモンキーレンチの最大のメリットであり、複数のサイズのレンチを用意しなくても1本のモンキーレンチでさまざまなボルトやナットを締め付けることができます。しかし、これは逆にデメリットにもなります。というのも、サイズを調整するウォームギアはネジ状の歯車であることから、わずかに“遊び”が生じるため、ぴったりサイズを合わせたつもりでもわずかに緩んで、ボルトを傷めることも……。そうした特性から、強い力で確実に締め付けたい場合は、メガネレンチを利用したほうが十分かつ確実に力を伝えることができます。

安全性と確実性を両立する最適な形状の六角棒スパナ

JISで使われている正式名称は「六角棒スパナ」。一般的に「六角レンチ」と呼ばれることも多い

断面が正六角形になっている棒状のスパナが「六角棒スパナ」です。頭に正六角形の穴のついたボルトを締め付けるために使います。「六角棒スパナ」がJISで使われている正式名称ですが、作業の現場では「六角レンチ」「ヘキサゴンレンチ(ヘキサゴン=六角形)」、さらに省略して「ヘックス」などとも呼びます。

断面が六角形をしているのは、360度で割り切れて均一な接触面を得ることができるから。四角形では接触面積が大きすぎて作業効率が悪く、八角形では接触面積が小さすぎて思うように力が伝わらないデメリットが生じます。つまり、作業の安全性と確実性を両立する形状が六角形ということになります。

六角棒スパナにはいろいろな形がありますが、基本はL字型です。長辺と短辺の両端が使え、素早くまわしたいときは長辺をボルトに差し込んで短辺を指先でまわします。逆に力を入れて締め込みたいときは短辺をボルトに差し込み、長辺を持ってトルクを高めます。

他にも握り部がT字型をしているもの、サイズの違う何本かがコンパクトナイフのようにセットになっているものもあります。L字型の六角棒スパナにも、長辺の先端を約30度斜めにカットしているボールポイントタイプがあります。これは垂直に工具を差し込みにくい場所に、斜めから作業できるよう工夫されたものです。

さまざまなネジの形に対応すべく、今回ご紹介した以外にもまだまだ多くの締め付け工具があります。それぞれの工具の特性をしっかりと理解して正しく使えば安全・確実に作業でき、作業効率も高まります。

今年はステイホームの影響もあり、専門職のみならず、DIYを楽しむ人が増えているようです。そうした工具慣れしていない人も、意外と知られていない工具の違いや、作業時のちょっとしたコツを知ると、思った以上にうまく作業がはかどるはずですよ!

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