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インフラの代表格「橋」。工法、構造、形状など、知られざる橋にまつわるトリビア!

近年、水害や地震など大規模な自然災害が相次ぎ、地震や土石流等よって道路や鉄道の路線、橋がまたたく間に破壊されていくシーンを目にする機会が増えているように感じます。道路、鉄道などのインフラは社会の基盤であり、私たちの暮らしになくてはならないもの。それらが一瞬にして失われてしまうことは、経済的にも精神的にもとても大きなダメージになります。

壊れてしまったものは再び建て直さなければ、私たちの暮らしは元どおりにはなりません。また、造ったものはしっかりメンテナンスしなければ、長く使うことはできません。大規模災害で多くのインフラを失っていることに加え、日本の多くのインフラの多くは老朽化しており、今後ますますそれらの補修や再建工事が増えていくと考えられます。

巨大インフラの代表格のひとつに「橋」がありますが、河川の両岸を結ぶ橋は、人や物の流れをスムーズにするためには絶対に欠かせないもの。今回は数あるインフラの中から、橋にかかわるさまざまな知識を集めてみました。橋にはどのような種類があり、どのように造るのか……。橋のメンテナンスはどのように行われるか……などについてのトリビアをご紹介! 橋の建設工事にかかわる専門家だけでなく、多くのインフラ工事に携わる人、さらにはこれからその業界を目指す人に向けて、わかりやすく解説しましょう。

橋とは何か、をあらためて考えてみよう

慢性的な渋滞緩和と、湾岸エリアと都心を結ぶ大動脈として東京湾に架けられた「レインボーブリッジ(東京港連絡橋)」

現在日本には70万橋以上の道路橋と、10万橋以上の鉄道橋があるといわれています。日本の国土は起伏に富んでおり、多くの橋が必要な地形なのです。私たちが一歩外に出れば、橋を利用することなく移動することは不可能で、それほど橋は私たちの生活と密接な関係があり、身近に存在する構造物といえます。では、橋とは一体どういったものなのでしょうか。ここであらためて考えてみましょう。

普段、何気なく使っている橋ですが、その長さや形は実にさまざまです。しかし橋を架ける目的はとてもシンプル。最大かつ唯一の目的は「人や物を渡すこと」にあります。川、あるいは谷や海を渡るように架け、人や物を往来させるために架けるのです。これによって私たちの暮らしは便利になり、豊かになります。橋によって他の地域との交流が盛んになり、文化的な発展も期待できるのです。

橋の目的を果たすために求められるのは、何よりも構造物として安全で快適に使用できるかどうかということ。せっかく架けた橋がとても危険なものであっては意味がありませんし、公共構造物としての耐久性も求められます。つまりは、長期間(おおむね100年以上)の耐久性を持ち、人や物が安全かつ快適に行き来できるものでなければなりません。

さらに、建設や維持管理に膨大なコストがかかるようでは公共構造物としては失格なため、経済性も考慮する必要があります。加えて、他のインフラ費用とのバランスも考え、適正な金額で建設や維持管理ができることも大切なポイントです。これらの諸条件を満たしつつ、周囲の景観と調和のとれた美しさを持ち、人、物を渡す目的を超えた文化的な豊かさを期待できるものが、“いい橋”として人々に認知されることになります。

橋の基本構造と形について知ろう

「耐用年数100年を目指す橋梁」をコンセプトに、多彩な最先端の施工技術が導入された「東京ゲートブリッジ(通称・恐竜橋)」

橋にはさまざまな形があります。どのような形の橋があるかは後に詳しく説明しますが、まずは基本構造としては下部構造と上部構造について解説しましょう。

下部構造

下部構造とは、橋を支える部分のことを指し、上部構造からの荷重を地盤に伝えるもの。橋を架ける場所の地形や地質はさまざまで、勾配があったり地盤がゆるかったりと、同じ条件はひとつとしてありません。それら多様な場所で、丈夫で安定的な下部構造を建設するには、周囲の地盤や地質などの環境をきちんと評価する必要があり、それによって下部構造の形も変わってきます。

上部構造

下部構造の支えの上に造られるのが上部構造です。上部構造の形は下部構造の形と密接して決まります。人が歩く程度の橋なら木造でもいいでしょうが、大型トラックが頻繁に通行する橋なら鉄骨が必要になり、重さも大きく変わってきます。つまりは、人や車など、移動するものの重さをどのように安全に支えるかによって、上部構造自体の重さも決まることになります。さらに、その重さをどのように支えるかが「仕組み」であり、橋の仕組みは、力の伝わり方と深いかかわりを持っています。

例えば、重い石を積み上げるアーチ橋などは、川の両岸が岩のような硬い地盤の場所に向いています。地盤がゆるいと次第に橋は横に広がってしまうことになり、アーチが沈んでしまう危険性があるため、ゆるい地盤にこの仕組みを用いることは間違っていることになります。また、上部構造に使用する材料によっても仕組みは変わってきます。木のように軽い材料を用いた上部構造と、鉄骨を組んだ重い上部構造では、支える重さがまったく変わり、それを支えるための仕組みも変わって当然なのです。

このように、上部構造に作用する力を安全に下部構造に伝える仕組みを造る必要がある点から、さまざまな理由や条件にそって橋の仕組みは決まります。このときに必要となるのが「力学の観点」です。要は、上部構造に作用する力を安全に下部構造に伝える仕組みを造る力学の観点によって、橋全体の形が導き出されことを最初に理解する必要があります。

橋にはどんな種類がある?

ここからは代表的な橋を紹介しましょう。橋と一言で言っても、実にさまざまな形がありますが、あなたが普段利用する橋はんな形ですか? 旅行先で印象に残っている橋はどんな橋でしたか? 何気なく見ている橋をじっくり観察すると、そこにはさまざな構造、形状に対する多様な技術が秘められていることに気づくはずです。

桁橋(けたばし・けたきょう)

桁橋(けたばし・けたきょう)は、橋としてもっともシンプルな形をしています。歴史の記録に残る最も古い橋とされるのは、古代バビロニアの首都バビロンのユーフラテス川に架けられた木の橋とされていいますが、この橋も構造的には桁橋です。桁橋は、橋桁(桁・主桁)を水平に架け渡したもので、主桁の断面の形状によってI桁橋、箱桁橋などがあります。比較的短い橋に多い形ですが、途中に橋脚を設置して橋桁を渡していくことによって長くもできます。

アーチ橋

主にアーチ形の構造を活用した橋で、長崎の眼鏡橋、岩国の錦帯橋などが有名です。何よりアーチ橋といえば、優美で美しい橋が多い点が大きな特徴といえるでしょう。アーチは上からの荷重(重力)が鉛直方向にかかることに加えて、水平方向にも反力が生じることで橋桁が強固になります。このアーチ形式の橋には、発案者名にちなんでランガー橋、ローゼ橋、ニールセン橋等があります。

五連アーチからなる山口県岩国市・錦川に架かる「錦帯橋」は、世界的に珍しい木造アーチ橋として知られる

ラーメン橋

ラーメンは、ドイツ語で「骨組み(Rahmen)」の意味。ラーメン橋は、橋桁の途中に斜めに柱を設け、橋桁と斜め柱を一体化するように接合して強度を高めた構造を持つ橋のことです。建物でも柱と梁とを一体化するように接合するラーメン構造のものがあります。

日本一の高さを誇る、東海北陸自動車道上に架かるコンクリートラーメン橋の「鷲見橋」(岐阜県郡上市)/三井住友建設施工実績HPより画像転載

トラス橋

トラスとは、棒状の部材の両端をピンで接合して三角形状に組み立てた構造のことであり、トラス橋はその名の通り、このトラスを主桁に使用した橋を指します。三角形を組み合わせた骨組みは、互いに引っ張る力と引っ張られる力がつり合い、外からの力に強く、形が崩れにくいというメリットがあります。このため材料コストを抑えても強く、大規模構造物を造ることができます。

三角形につないだ構造を繰り返して桁を構成する、コンクリートトラス橋の「安家川橋梁」(岩手県野田村)は日本最大規模を誇る/日本コンクリート工学会HPより画像転載

吊橋

吊橋は、ケーブルなど引張耐力(引っ張りに耐える力)が大きく曲がりやすい部材で、桁や床版(人や車が通るところ)を吊り下げた橋のこと。橋の両端を硬くて強い地盤や大型の橋台に定着させ、主ケーブルから垂らした吊り材で桁や床板を支えますが、たわみやすい構造であるがゆえ、風に対する安定性に関しては十分に検討する必要があります。現在、世界最長の吊橋は、神戸市と淡路市を結ぶ明石海峡大橋で、全長3911 m、中央支間1991 mです。

神戸市と淡路市を結ぶ「明石海峡大橋」は、世界最長の架け橋としてギネス世界記録にも認定

斜張橋

吊橋と同じように橋の途中に塔を建て、その塔から斜めに伸ばした複数のケーブル(斜材)で、桁やトラスを直接吊る構造です。吊橋と斜張橋は、いずれもケーブルの張力を利用した吊り構造です。吊橋は塔の間に渡した主ケーブルから垂らしたハンガーロープで桁を吊るのに対して、斜張橋は塔と桁が直結していることが大きな相違です。

1999年5月に開通した「しまなみ海道」を構成する全長1480 m、中央支間長890 mの規模を誇る日本最大級の斜張橋「多々羅大橋」

橋はどのように造られる?

橋が造られるときは、どのような工程を経て造られるのでしょうか。ここでは橋建設の概要について順を追って説明していくことにしましょう。もちろん、橋の建設は一大事業です。地域の事情や社会環境によってさまざまに変化するので、必ずしも以下の通りとはなりませんので、その点はあらかじめご了承ください。

橋を架ける場所の地盤の違い等、さまざまな条件を勘案しながら先進技術によって多様な形状に枝分かれした橋梁

①橋の計画(どこに橋を架けるか)

橋の建設計画は、さまざまな条件を勘案して総合的に考える必要があります。まず考えなくてはいけないことは、「どこ(路線)に橋を架けるか」です。この路線決定については、鉄道や道路の路線に合わせることはもちろん、地形、地域の土地利用の事情、交通の安全性と快適性、環境に対する影響、建設費や維持費等の経済性など、多様な条件によって決定されます。

河川に渡す橋を造る際は、川が分流・合流する付近、川が曲がっている場所、川床の勾配が変化しているような場所を避け、橋ができるだけ川と直角になるように建設します。こうすることで橋の長さを短くすることができ、桁の高さも低く抑えることができます。これにより、経済効果のよい橋となります。

②橋の形の選定(どんな橋を架けるか)

橋の形をどのようにするか……。もちろんどのような形にしてもいよいのですが、安全性や経済性を考えると、さほど多くの選択肢はありません。そのうえで優先すべき点は、「人や車が安全に通行できること」「100年以上利用できる耐久性があること」、そして「周囲の環境に悪い影響を与えず、景観とも調和し、維持管理も容易にできる」といった条件が挙げられるでしょう。

また、どのような形の橋を造るにせよ、上部構造と下部構造は互いに関連し合っているため、常に同時に考えを進めていく必要があります。このとき、下部構造を決める際に地盤状況は大きな条件となり、基礎を支持する層の位置と強さをしっかり把握し、支持層が弱いほど丈夫な基礎を作る必要があります。上部構造については、橋の支間長(橋を支持する点の間の距離)が形を決めるための大きな要素となります。

③下部構造の造り方

下部構造を支える基礎には、直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎があり、基礎を設置する地盤の深さによって、どれを選択するかを決めます。

直接基礎

直接基礎は、支持層となる硬い地盤が地表から5mほどの比較的浅いところにある場合に多く用いられます。支持層までの土を掘削し、フーチングと呼ばれる底版と橋脚を建造し、その上に土を戻します。

杭基礎

杭基礎は、支持層がおおむね10m以上の深いところにある場合に用いられます。地中に杭を打ち込んで支持層まで届かせ、その杭の頭部をフーチングと結合し一体化させた基礎です。

ケーソン基礎

ケーソン基礎は、支持層が40〜60mと深い場合に用いられます。ケーソンとは、筒状や箱状になった枠を、土砂を掘削しながら自重などの力で支持地盤まで沈下させて設置し、構造物を支えるもの。橋脚や港湾構造物などによく使われます。

④上部構造の造り方

上部構造は、鋼製とコンクリート製に大きく分けられます。鋼製は、橋に用いられる各部材がコンクリートよりも軽いことが大きな特徴で、そのため鋼橋の部材は工場で造られ、輸送され、現地で組み立てられる方法が一般的です。コンクリート橋の場合は、工場で部材を造って運ぶことができない場合、現地でコンクリートを打設します。

コンクリート橋は、鉄筋コンクリート橋(RC橋)とプレストレスト・コンクリート橋(PC橋)に大別されます。プレストレストコンクリートとは、コンクリートの引張(ひっぱり)に対する弱点を補強するため、緊張材(PC鋼材)をコンクリートに入れ、あらかじめ圧縮しておく構造のこと。鉄筋コンクリートよりもひび割れの制御が自由にでき、強度を増すことができます。コンクリートの強度が増すことで、長く、大きな橋を造ることが可能となります。ですが、どちらのコンクリートを利用したとしても、手順に大きな差はありません。

橋の造り方、今と昔ではどう違う?

世界最古の橋は古代バビロニアに架けられた橋と前述しましたが、そもそも橋は人間が架ける(造る)以前から自然にあったものと考えられます。川に木が倒れて横たわっていたり、川の中に飛び石が並んでいたりすれば、人間はそれを活用して川を渡ったはずです。これが現在に続く橋の原型と考えてよいでしょう。

一方、日本の橋の架設工事について考えてみましょう。江戸時代以前は石や木の橋が主流でした。材料はできるだけ近くの産地で採取し、加工して運ぶことが効率的でした。また、工事自体は熟練の棟梁の経験が最重要視されました。橋の架設の精度は“人間の勘”がものをいったのです。

明治期に入ると鋼橋が登場。1968年、長崎(長島川)に架けられた銕(くろがね)橋が、わが国初の鉄の橋とされています。これは長崎という土地からも推測できる通り、当時の最先端である造船技術、特に鉄板加工技術を用い、政府お雇いの外国人技術者などの知識を総動員して造られたと考えられます。さらにリベット接合技術が発達すると、あらかじめ加工した部材をひとつずつ現地で順番に接合するようになります。しかし、ひとつずつの部材はまだまだ小さなものでした。

戦後に入って溶接技術が発達すると、工場で橋桁のブロックを造り、それをトラックで現地に輸送し、溶接によって組み立てるようになります。この頃になるとひとつのブロックは大型化し、輸送経路なども入念に検討されるようになりました。現代ではそのブロックはさらに大型化し、海上輸送されることも珍しくありません。大型の橋の建設が可能になったのは、工場で大きなブロックを造れるようになったことと、輸送方法が進化したことなども大きな要因といえそうです。

浜町アーケードから臨む1990年に架け替えられた3代目の「銕(くろがね)橋」(長崎)/GoogleMAPより

橋の維持管理のポイント

日本には70万橋以上の道路橋と、10万橋以上の鉄道橋があると前述しましたが、それらの多くは老朽化しているのが現状です。さらに、全国の2m以上の橋は約66万橋あり、このうち建設50年を超えるものは2023年に43%、2033年には67%に達します。なかには建設年度がはっきりしないものも30万橋もあるため、危険度が増している橋はまだまだ多くありそうです。

高齢化している橋をできるだけ長寿化させるための方法は、予防保全に尽きます。橋が傷む前にあらかじめ対策を施すことによて、橋の寿命を伸ばすことができることになりますが、橋の点検は、主に人間の目によって行われます。

上部構造の点検ポイントとして、鋼橋なら床版のひび割れ、抜け落ち、鋼部材の変形や腐食、部材や溶接部のひび割れ、連結するリベットやボルトの欠損などが挙げられます。コンクリート橋ならコンクリートのひび割れ、剥落、鋼材の露出や破断などがあります。

下部構造については、橋脚や橋台のひび割れ、コンクリートの剥落、地盤の支持力の不足による傾きや沈下などがポイントとなります。上部構造も下部構造も、点検する際に重要なことは、とにかく現場に行って目で確かめること。「現場・現物・現状」が、橋の点検の3原則といわれています。

長い年月をかけて木の根を鍛えて編んでつくられた、インド・メガラヤ州チェラプンジェ市の生きた根の橋

防災・減災の意識を高く保つことが大切

日本は、あらゆる地域が災害によって大きな被害を受ける危険性をはらんでいます。近年の自然災害の多さ、甚大さを鑑みれば、その危険性はますます高まっているといえるでしょう。私たちの社会生活の基盤を守っていくために、今後はより多くの対策を施していく必要があります。

そして何より、防災、あるいは減災への具体策として、必要とされるのは人材の確保です。

AI技術が発達し、さまざまなシーンで人間の力を介さなくても問題を解決できることは増えているものの、こと防災や減災に関しては人の力は不可欠です。これはつまり、橋建設の技術や維持管理の技術を継承していくために、一人でも多くの橋のスペシャリストを育成していく必要があることを示唆しています。橋の知識を習得することは、将来にわたって重宝されることは間違いないでしょう。

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