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塗装工事とはどんな仕事? 建物の外壁塗装工事の基本知識を解説

建物を新築するとき、あるいはリフォームや改装工事を行うときに必要となるのが塗装工事です。物体の表面に塗料を塗って覆い、それを美しく見せたり、風雨や日光などから保護したり、あるいは錆(錆び)を防ぐなどの役割を果たします。

もちろん、塗装するのは建物だけでなく、車や日用品など、私たちの身の回りにあるほとんどのものに塗装処理は施されています。つまり、私たちは常に塗装に触れていることになります。

そんな身近な塗装ですが、ここでは主に建物の外壁塗装工事について紹介していきます。塗装工事とはどのような仕事なのか? 基本的な仕事の進め方は? 塗装方法にはどんなものがあるか?など、塗装工事の基本を学んでいきましょう。

塗装業=ペンキ屋? 細分化される塗装業の仕事

塗装工事は、一般住宅から高層ビル、巨大インフラまで、さまざまな建築物の外壁や内壁、屋根、床に塗料を塗ったり、吹き付けたりする作業のこと。建築物の仕上げには欠かせない重要な作業です。塗装は単に着色してきれいに見せるためだけではなく、建築物を雨や紫外線から守る役割も果たし、建築物を長持ちさせることに貢献します。

この塗装工事を請け負う専門技術職が「塗装業」です。一般に「ペンキ屋」などとも言いますが、これはとても広い意味を表し、「ペンキ屋」の一語には多くの専門職が含まれることになります。一般的に塗装業界では、仕事の内容によって細かく呼び名が分かれているのです。一例をあげると……、

●エアスプレーガンによる吹き付け塗装専門……「ガン屋」

●橋梁の鉄骨塗装専門……「コツ屋」

●ビルやマンションの塗装専門……「野丁場」

●一軒家の塗装専門……「町家」

つまりは、自動車の板金塗装に従事する専門職の場合も、広い意味で「ペンキ屋」に属することになるわけですから、ひと口に「塗装業=ペンキ屋」といっても、建物の外壁塗装の職人とは限らないことになります。

塗装の基本工程は、どうなっている?

塗装は、美装のためだけに行うものではなく、保護や耐久性を向上させるなどの目的がありますが、目的の多様化に伴い、その重要性も増しています。このため、1種類の塗装材料で作られる塗装皮膜だけですべての目的を達成できないことも増えています。したがって、いろいろな性能を持つ塗料を“積層的”、かつ“複合的”に使用することによって、多くの目的を達成する複合皮膜を形成する手法がとられことになるので、それだけ塗料に関しての高い知識と経験値が求められることになります。

これらの事情を踏まえ、塗装は下記のような工程を経て行われます。特徴は素地(被塗装面)の種類によって工程の内容が変わってくることです。1)足場工事、2)養生、3)素地調整、4)下塗り、5)上塗り、6)点検・足場解体の順にご紹介していきます。

1)足場工事

建物の外壁塗装を行う場合、まずはその外壁の周囲に足場が設置されます。作業を安全、かつスムーズに行えよう、現場に合った足場を組み立てます。

2)養生

足場設置後、その周囲を飛散防止ネットやメッシュシート、ビニールで覆う養生を行います。これは近隣の民家などに、外壁を洗浄する際の水の飛散や塗料の飛散を防ぐために行います。また、ドアや窓など、塗装しない部分に塗料が付着しないよう、ビニールなどで覆うマスキングの作業をします。

3)素地調整

足場を組み、養生作業を終えても、すぐに塗装作業に入ることはできません。まずは素地を塗装にふさわしい状態にする作業を行います。これを素地調整と言います。

加えて、上でご紹介した「素地調整」は、基本的に以下の4つの作業があります。

①錆び落とし(錆び取り)/特に金属への塗装を施す場合に、ワイヤブラシやスクレイパーなどで錆びを落とします

②旧塗膜の除去/ペイントリムーバーなどの剥離剤を使用したり、ディスクサンダーなどの機械を使って古い塗膜を除去したりします。

③汚れ・油脂の除去(脱脂・洗浄)/ノズルから高圧水が噴射される高圧洗浄機を使い、ホコリや汚れを洗い流し、粉化した塗料を除去します。洗浄後は24〜48時間乾燥させます。

④素地面の平滑化/塗装面の凸凹を取り除き、平滑化させるために、ひび割れした個所や傷のある個所にパテを充填させるなどの作業を施します。

以上の作業は、素地の素材の違いによって適切な作業が選択されます。素材の違いによる素地調整のポイントについて解説しましょう。

【金属の素地調整】

金属に塗装する場合、まず素地調整として表面の錆び落としが行われます。研摩紙や研摩布、スクレイパー、ディスクサンダー、ワイヤブラシなどを用い、表面の錆びと劣化した旧塗装面を除去します。その後、ショットブラスト装置、サンドブラスト装置などを使い、素地を均質化し、高圧洗浄機によって洗浄します。

金属の素地は、鉄鋼材と非鉄金属に分けられます。鉄鋼材は塗料が付着しやすい反面、錆びやすい特徴があります。逆に、非鉄金属は錆びにくく、塗料は付着しにくい特徴があります。

したがって、鉄鋼材は錆び止め性能の向上がポイントとなり、化学処理を施して錆びにくい表面にしてから塗装するなどの作業を行います。非鉄金属は塗料の付着性の向上を目指し、表面を化学的に粗くする化学処理などを行ってから塗装します。

【プラスチックの素地調整】

プラスチックは錆びませんが、塗料が付着しにくい素材です。プラスチックは金型から作りますが、その金型から取り外す時に使う離型剤が表面に残っています。この離型剤が残ったままだと塗料が付着しにくいのです。このためプラスチックの素地調整は、この離型剤を除去と表面の活性化が目的となります。

具体的にはイソプロピルアルコールなどで表面を拭き取る方法、薬品に漬けて洗い流す方法、光を照射して表面を最適な状況にする方法などが用いられます。

【木材の素地調整】

木材は表面がやわらかいため、表面を平滑化させることが大切です。50度くらいのお湯をハケで塗り、それをウエスで拭き取るお湯拭きを行い、それを研摩紙や研摩布などで研摩します。打ち傷の跡(ヘコみ傷)などがある場合には、その個所を湿ったウエスなどでやわらかくし、その上からアイロンで温めるとヘコみ傷が目立たなくなります。

これらの作業の後で漂白剤を複数回塗り、それを再度お湯で濡らしたウエスなどで拭いて薬剤をきれいに除去します。

【コンクリートの素地調整】

コンクリートやモルタルの場合、含水率の確認が大切です。新設されたものであれば、含水率が10%程度に下がったことを確認してから、塗装の作業に入ります。含水率の高い状態で作業すると、経年変化で塗装面が膨れてきたりします。

リフォームなどで塗り替えする場合には、まず高圧洗浄機で汚れや古い塗装皮膜をきれいに除去します。その後、劣化した部分や割れた部分の補修を行います。特にひび割れた個所などは、シーリング材などを充填したのち、弾性パテで表面処理します。

4)下塗り

塗装は、塗料を1回塗って終わりとなるわけではなく、何層にも塗り重ねていきます。その一番下の層、つまり塗料と素地を密着させる接着剤としての役割を果たすものが下塗りです。素地の材質や上に塗る塗料の違いによって使用する塗料が変わり、主にシーラー、プライマー、フィラーの3種類があります。これらの違いはいろいろな見解がありますが、シーラーとプライマーはほぼ同等のものと考えてよいでしょう。

【シーラー・プライマー】

シーラーは「seal」=「接着する・覆い隠す・塞ぐ」、プライマーは「最初の」という英語が語源となっている言葉です。いずれも「最初に塗る塗料」の総称で、その上に塗る中・上塗りと素地との密着性を高める役割があります。つまり、シーラーやプライマーが、素地と上塗り塗料との両面テープのような役割を果たすことになります。

加えて、傷んでいる素地は塗料を吸い込んでしまう性質があります。そのため、シーラーやプライマーを吸収させ、上塗り塗料の吸い込みを抑制させる役割も果たします。

シーラーやプライマーには、水性タイプと油性タイプがあり、下記のような特徴があります。

【フィラー】

フィラーは、主にモルタルの外壁にクラックがある場合などに用いられる下塗り剤です。素地に凸凹があったり段差があったりするとき、それを平滑化するために使われます。素地の凸凹をならすため、フィラーは厚く塗られます。そのため、ウールローラーの2〜3倍の塗布量がある砂骨(さこつ)ローラーが使われます。

素地の劣化が激しい場合は、シーラーを塗って素地に吸い込ませてからフィラーを塗る場合もあります。フィラーは水性タイプのみで、油性タイプはありません。

5)上塗り

通常、上塗りは2回行います。したがって塗装作業は、①下塗り、②上塗り1回目(中塗り)、③上塗り2回目(仕上げ)の3回となり、中塗りと上塗りは同じ塗料を使うのが一般的です。これによって塗りムラを防ぐことができます。

6)点検・足場解体

上塗りが終了すれば、あとはチェックをして足場が解体されます。

塗装方法にはどんなものがあるの?

塗装は、仕上がりを美しくすると同時に、防水や耐久性の向上などの目的があると説明しました。期待される目的を達し、機能を発揮させるためには、素地と塗料の間に隙間があったり、塗膜に穴や弾きなどの欠陥があったりしてはなりません。そのうえで、実際の塗装方法は、これまでにさまざまな方法が試され、より簡単に、効率的に、そして美しく塗れるように進化してきました。

現在、塗装方法は大きくふたつの方法に分類されます。ひとつは塗料を直接物体に塗っていく直接法、もうひとつは塗料を微粒子の霧状にして物体に吹き付ける噴霧法です。それぞれは具体的な塗装方法にさらに細分化されます。それぞれの方法を説明していきましょう。

【直接法】

直接法には浸せき塗り、はけ塗り、ローラ塗りがあります。

※浸せき塗り/ディップ、ディッピングなどとも呼ばれ、液体や粉体の塗料の中に物体をどっぷりと浸し、引き上げて乾燥させる塗装方法です。ジャブ漬け塗りなどとも呼ばれます。

粉体塗料の場合は、粉末の微粒子の中に低圧で空気を送り込んで粒子を流動させ、そこに加熱した物体を入れます。物体と接触した粉体粒子の塗料は溶融して塗膜になります。建物の外装工事には使われませんが、水道バルブのような鋳造品などに適した塗装方法です。

【はけ塗り】

はけ塗りは非常に歴史のある塗装方法で、現在でも塗装職人の基本技術のひとつです。適用範囲が広く、簡単に、効率的に、どのような場所にも使える塗装方法です。誰もが簡単に塗れる方法ですが、それだけに熟練したプロの技術が光り、建物の外壁塗装工事にもこの方法がよく使われます。

実に多くの種類がある「はけ」の代表的なものは?

●平ばけ……毛先が平らになっているはけで、大きな面積を塗るときに使用します。

●寸胴ばけ……毛の量が多く、ニスやラッカーなど、粘度の高い塗料を伸ばして塗ることに適しています。

●筋交いばけ……柄が斜めになっているはけで、細かい部分の塗りに使用します。

また、種類だけでなく、はけの毛材もさまざまです。

●馬毛……弾力性・柔軟性に優れ、適度な腰があるために広く使われています。

●豚毛……馬毛よりも硬く腰のある毛質。低粘度の防虫剤・防腐剤の木部への塗装などによく使われます。

●山羊毛……山羊の尾の毛は腰があり、耐久性にも優れるため、高級はけに使用されます。

●化学繊維……水性塗料用のはけとしてよく使用されます。獣毛に比べて摩耗性に優れます。

●ローラー塗り

ローラーブラシを使用して塗装する方法です。ローラーブラシは一度に広い面を塗れるため、住宅の外壁などの塗装によく使われます。仕上がりの平滑性ははけ塗りに劣りますが、作業スピードははけ塗りを大きくしのぎ、高効率の塗装作業を実現します。

【噴霧法】

噴霧法は、塗料を霧のような微粒子にして物体に吹き付ける方法です。吹き付け法、噴霧塗装などとも呼ばれます。代表格はエアスプレー塗装です。

【エアスプレー塗装】

塗装用のエアスプレーガンを使用した塗装です。エアスプレーガンとは、エアコンプレッサで圧縮した空気と液体塗料を混合させ、霧状にして吹き出すことができる塗装用機械です。一気に広い範囲の塗装をすることができるので、大きな家やビルなどの塗装に適しています。時間的にも作業効率が良く、職人による力量の差も少ないと言われています。

塗料にはいったいどのようなものがあるの?

塗料にはさまざまな種類があり、その分類法もいろいろあります。外壁塗装の場合、その価格を左右するのは塗料のグレードです。このグレードによって耐久年数が変わってきますが、購入する際は、価格だけでなく塗料の特徴も踏まえて選ぶ必要があります。

それぞれの塗料の特徴を、グレードの低い方から解説しましょう。

【アクリル系塗料】

軽量で、色をくっきり見せる塗料です。コスト面でもっともすぐれていますが、紫外線に弱く、耐用年数は4〜7年と短めです。価格を抑えてリーズナブルに塗り替えたい場合や、短期間で次の塗り替えを計画している場合などにアクリル系塗料はおすすめです。

【ウレタン系塗料】

アクリル系塗料よりも防水性と耐水性に優れています。用途の範囲も広く、戸建住宅を中心に幅広い建物で使用されます。耐用年数は6〜10年とコストパフォーマンスにも優れています。

【シリコン系塗料】

ウレタン系塗料よりも耐久性、対候性、仕上がりのよさに優れています。耐用年数は8〜15年と長く、コストパフォーマンスのよい塗料で、現在もっとも人気の上質な塗料です。

【フッ素系塗料】

耐用年数は15〜20年と長く、耐候性、撥水性にも優れています。美しい光沢も魅力ですが、その反面、汚れやすいというデメリットをもつ塗料です。一般的にフッ素系塗料の価格は高いので、一般住宅ではあまり使われません。長期間外壁塗装などしたくないという場合に適しています。

この他にもラジカル系塗料、ピュアアクリル系塗料、セラミック系塗料、光触媒塗料、遮熱系塗料など、さまざまな種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

塗装にはどんな資格が必要?

塗装業は、特別な資格がなくても工事を請け負うことができます。しかし、他の塗装業者と競合となった場合などに国家資格は大きな武器となります。社会的信用度に直結する資格は、いざというときの強い味方になってくれことがあるので、取得しておいて損はないでしょう。

【塗装技能士】

装に関する知識や技能を有していると証明される国家資格です。1級〜3級があり、1級受験資格は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験が必要です(学歴により必要な実務経験年数が異なる)。

2級の受験資格は、実務経験2年以上、または3級合格者(学歴により実務経験が不要になる)となっています。3級の受験資格は不問です。

1級と2級は、学科試験で塗装一般、材料、色彩、関係法規、安全衛生が問われます。選択科目には木工塗装法、建築塗装法、金属塗装法、鋼橋塗装法、噴霧塗装法があります。加えて、実技試験として木工塗装作業、建築塗装作業、金属塗装作業、鋼橋塗装作業、噴霧塗装作業から選択となります。

塗装業の面白さ、大変なこととは?

塗装業の魅力とは何でしょうか。

塗装というのは誰にでもできて、簡単な作業のように見えます。しかし、美しく、耐久性のある塗装に仕上げるためには、専門的な高い技術力が求められます。つまり、誰にでもできるそうだけど、職人の腕の良し悪しが如実に現れる仕事でもあるのです。そうした点から、塗装のプロを目指すのであれば、自らの技能を日々高める努力が必要となってきます。

また、塗装は建築の最終段階で行われる重要な作業です。納期ギリギリの工程で進む場合、塗装の工程は時間のとの戦いになることも多い大変さが伴いますが、せっかく大工さんが素晴らしい建物を建てたとしても、塗装が悪ければその建物の評価は台無しとなってしまう可能性が。それだけ、塗装は建物の評価を左右する重要な仕事なのです。

塗装とは、責任が非常に重く、建築にとって重要な役割を果たす仕事です。それだけに非常にやりがいのある仕事と言えます。

一方、その作業現場は過酷です。真夏の炎天下の下、あるいは極寒の冬空の下での作業は辛いものがあります。そのデメリットを、仕事の面白さややりがいで凌駕することができれば、これほど面白い仕事はないでしょう。

── 自分の腕一本で勝負したい……そんな気概ある人に向いた仕事が塗装業であり、大変なことが多い分、やりがいがある仕事といえるでしょう。

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