建設業界で役立つ国家資格を紹介(第五回)~「技能士」②
2021.07.20
わが国において建設業は長らく職人の世界でした。江戸時代の職人の代表格といえば、大工、左官、とびの三職。増え続ける人口に対応した町づくりや、火事の多かった江戸の街並みを再建する建設の仕事は、彼ら華の三職が担っていたのです。
大工の棟梁は今でいえば建設会社の社長のようなもので、設計士と現場監督を兼任していました。技術や知識の伝承はマニュアルではなく徒弟制度による経験の積み重ねで代々伝えられていきます。厳しい下積みの時代を経て職人になっても、親方や棟梁になるための道のりは険しいものでした。一人前となった大工、左官、とびはそれを経た自信から気概を持って働き、粋な心意気を持つ江戸の華としてもてはやされたのです。
これは遠くヨーロッパの中世においても同様であり、靴屋、大工、金細工師などそれぞれのギルド(商工業者の同業者組合)ごとに、徒弟、職人、親方という厳格な徒弟制度のなかで技術が伝承されていきました。職人の世界で長らくこうした制度が維持されてきたのは、技術や知識が形式知としてマニュアルで網羅できるものではなく、暗黙知として経験を積むなかで親方から伝えていく必要があったからです。徒弟から職人になるには親方が認めなくてはならず、親方になるには親方作品をギルドに提出し、合格しなければなりませんでした。
現在の「技能検定」は、このようないにしえの徒弟制度における親方や個別のギルドだけの判断ではなく、働くうえで必要とされる技能の習得レベルを国家検定で評価するものです。前回に引き続き、こうした技能士のなかから建設業で役立つ資格の二回目として、「とび技能士」、「建築大工技能士」、「鉄筋施行技能士」を取り上げます。
とび技能士

1.とび技能士(とび職)とは
高層の建物が増えた現代の都市における建設現場では高所作業を担うとび(鳶)が大活躍しています。ドーム球場の鉄骨工事やスカイツリーなどの鉄塔建設、ビル工事の足場建設などでは『とび職に始まり、とび職に終わる』と言われるように、まさにとび職は工事現場の花形といってよいでしょう。
とび職の名称は江戸時代、彼らが使っていた「とび口(鳶口)」という道具の名前に由来します。鳥のとびの口ばしに似た鉄製の鋭いかぎを付けた棒のような道具で、木材を引き寄せるためや、消火作業の際に建物を壊して延焼を防ぐためなどに使われました。戦国時代に城郭の普請で活躍していたとび職は太平の世には町とびとなり、高所作業が得意なことから町火消の役もあわせて担うようになったのです。
現代におけるとび職の仕事は以下のような専門分野に分かれています。
1)足場とび
危険な高所に最初に足を踏み入れ、他職が安全に作業できるための足場を組みます。
コンサート会場でステージの足場を組むのもこの足場とびの仕事です。
2)鉄骨とび
ビルの基礎となる鉄骨をクレーンで組み立てます。
超高層ビルの建設現場でタワークレーンを組み立てたり、工事用のエレベータも組み立てます。
3)橋梁とび
ベイブリッジなどの橋を架けたり首都高速の高架などの鉄骨工事を受け持ちます。
鉄塔の建設やダム工事なども橋梁とびの仕事です。
4)重量とび
建物内部の大型機械などの重量物の据え付けを行います。
プラントや電気設備工事において高所での重量物の設置作業も重量とびの役目です。
2.資格概要
とび技能士はとび作業の段どりや仮設建設物の組立や解体、その他とび職に必要な能力を認定する国家資格であり、名称独占資格です。等級には1級から3級まであり、それぞれ上級技能者、中級技能者、初級技能者が持つべき技能の程度と位置づけられています。
次のように、実技試験の内容からそれぞれの等級が求められる技能レベルを知ることができます。
1)1級
・丸太または鋼管を使用して「真づか小屋組(しんづかこやぐみ)※」の作業を行う。
※切妻屋根を支える小屋組みで、棟木の下に支える「真づか」があることから、この名称がある
・そりに乗せた重量物の運搬作業を行う。
・三種類の重量物の目測の作業を行う。
2)2級
・丸太又は鋼管を使用して「片流れ小屋組※」の作業を行う。
※傾斜した屋根面が一つあるだけの「片流れ」屋根を支える小屋組み
・三種類の重量物の目測の作業を行う。
3)3級
・枠組、単管及び木製足場板を使用して「枠組応用登り桟橋※」の組み立てを行う。
※作業員が歩いて登り下りできるように組み立てられた勾配のある仮設通路
建築大工技能士

1.建築大工技能士(大工)とは
大都会の中心部では鉄骨の建物が主流となった現代でも木造建築が盛んに行われている日本。世界最古の木造建築物である法隆寺をはじめ神社仏閣の修復や改築はもちろんのこと、一般の住宅の新築や改修など木造建築の現場において中心的な役割を果たすのが大工です。木材の加工や組立、出窓の工作や収納戸棚の造作など、大工なしには木造建築の現場は成り立ちません。つまり、親方のもとで修業を重ねて磨いた大工の技能を国家が認定する資格が「建築大工技能士」です。
2.資格概要
等級には1級から3級まであり、それぞれ上級技能者、中級技能者、初級技能者が有すべき技能と程度と位置づけられいます。受験資格としては、原則として1級が実務経験7年以上、2級が実務経験2年以上、3級は実務経験を問わない、となっています
建築大工技能士はその多くが建設会社や工務店で大工として勤めており、木造建設の建築や修理で活躍しています。大多数は一般的な木造住宅の建設にたずさわる「家屋大工」ですが、釘を使わない伝統的な技法を身につけ、神社仏閣の修理や改築を行う「宮大工」という技能者もいます。
一般住宅のプレハブ化や防災対策によるコンクリート建築の増加により木造建築の需要は昔ほど多くはありませんが、大工が建築現場における立役者であることに変わりはありません。親方から弟子へと技術を伝える徒弟制度が残っていることからも後継者不足が深刻な大工ですが、多くの人がこの検定を受けて励みとし、わが国における木造建築の伝統を継承し続けてほしいものです。
鉄筋施行技能士

1.鉄筋施工技能士(鉄筋工)とは
木造の一般住宅を除く現代の建築物は、鉄筋コンクリート造りや鉄骨鉄筋コンクリート造りのビル、マンションであり、建築には鉄筋工が不可欠です。彼らは建築物の構造体となる鉄筋を網目状に組む仕事を担っています。完成するとコンクリートで覆われてしまうため目にすることはありませんが、建築物の根幹である骨組みをつくる重要な役割を有します。鉄骨のビルにおいても、床スラブや柱などにさまざまな太さの鉄筋が組んであり、部位によって適切な材料を選択し、その鉄筋を素早く結束するためには熟練の技術が必要なのです。
鉄筋工は設計図や仕様書をもとに、加工帳や施工図を作成します。鉄筋の切断や曲げなどの加工をされた鉄筋が現場に送られてきたあとは、クレーンなどを用いて材料を搬入し、鉄筋を取りつけます。鉄筋を配筋する過程で鉄筋をつなげる作業を行い、鉄筋が交差する部分では結束線で鉄筋をとめていきます。素早く水平垂直並行にまとめあげるのが鉄筋工の腕の見せどころです。
2.資格概要
現代の工事現場で必要不可欠な鉄筋工としての技能を認定する国家資格で1級から3級の等級があります。鉄筋工事業者においては1級・2級の鉄筋施行技能士に資格手当を支給する会社が多く、職長への登用に際しては1級鉄筋施行技能士の取得を条件としている会社もあります。
また、鉄筋工事業の一般建設業の許可を持つ事業者は、営業所に選任技術者を配置し、工事現場には主任技術者を配置することが義務づけられています。この選任技術者や主任技術者になるためには、1級鉄筋施行技能士、2級鉄筋施行技能士の資格が必須条件です。さらに公共工事においては、1級鉄筋施行技能士の常駐が義務づけられる場合もあり、この資格を取得することがキャリアアップにつながる重要な国家資格といってよいでしょう。
資格取得には、駆体施工図の読み取りや鉄筋材料の選定、積算などの施工図作成の技能・知識とそれぞれの級に応じた建築構造、施工法、材料、関係法規、安全衛生に関する知識が求められます。そのうえで、鉄筋組立作業の技能として、1級は「複雑な鉄筋組立ができるレベル」、2級は「一般的な鉄筋組立ができるレベル」、3級は「2級に含まれる鉄筋組立の段どり、鉄筋・鉄筋加工材の選定、鉄筋工事の良否判定などを含まないレベル」とされています。

── 縄文・弥生の時代から人々は村落に竪穴式住居を建て、そこで生活してきました。大和朝廷が誕生した後は宮殿や寺院など大型建造物の建設が始まり、世界最古の木造建築物である法隆寺はいまも斑鳩の里に凛とそびえています。
建設は社会資本を整備する根幹です。コロナ禍の影響でいくぶん低迷している建設産業もいずれ勢いを取り戻すに違いありません。歴史のなかで先人たちが築き上げた技術を次の世代に継承するためにも、多くの人々が今回紹介したさまざまな国家資格を取得することでキャリアアップしていき、建設業界全体が発展していくことを願います。
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