ホームヘルパーは、利用者・家族に安心と喜びを与える介護のプロフェッショナル
2021.06.18
超高齢社会にあるわが国において、要介護者の自宅などを訪問し、必要な介護サービスや家事を行うホームヘルパー(介護保険上では「訪問介護員」)は、私たちに身近な存在となり、利用者にとっても家族にとってもその果たす役割は大きく、在宅介護の要(かなめ)ともいわれています。
一方で周知の通り、新型コロナウイルスは介護職にも甚大な影響を与えています。介護施設でのクラスターの発生や訪問介護先での感染、逆に利用者にウイルスを感染させるリスクから、高齢のヘルパーを中心に離職するケースが相次ぐなど、深刻な人手不足に陥っています。
もちろんコロナ禍だからといって、要介護者やその家族の生活がなおざりにされていいわけではありません。その対策として、厚生労働省が訪問介護職員のため、新型コロナ感染予防のガイドラインや動画を公表し、介護施設・事業所に勤務する職員に慰労金を支払うなど、さまざまな対応が動き出しています。
そこで今回は、ホームヘルパーについて、仕事内容やキャリアアップ、また、コロナ対策への対応の動きについて、みていきましょう。
サービスの柱は「身体介護」「生活援助」「通院介助」
ホームヘルパーは、自宅や入所施設で暮らす要介護者の日常生活を援助する介護スタッフ。ホームへルパー(または「ヘルパー」)は通称であり、介護保険上では「訪問介護員」と呼びます。決められた時間に要介護者の自宅や施設を訪問し、必要な介護サービスを行うのがホームヘルパーの仕事であり、主に次の3つのサービスに大別されます。おおまかにあげてみましょう。
【身体介護】
〇排せつ、食事、着替え介助、入浴など、身体に直接触れて行う介助。
〇それに伴う準備や片付け。
〇治療食や流動食の調理。
〇法令で定められた条件のもと、一定の研修を受けた職員が、たんの吸入や経管栄養などを行う事業所も増えている。
【生活援助】
〇掃除、洗濯、調理、買い物などの家事援助、薬の受け取りなど、身体に直接触れない範囲の身のまわりの世話。
*「身体介護」の調理は、身体介護の一環として行う流動食などの調理。「生活援助」の調理は一般的な食事の調理で食事介助はしない。
【通院介助】
〇通院などのための乗車・降車の介助。
〇ホームヘルパーが自ら車を運転し、利用者を病院へ連れて行く。
〇移動(歩行・車椅子走行など)や受診手続きを介助する。
どのようなサービスを行うかは「要介護」の状況によって異なり、 あらかじめケアマネージャーやサービス提供責任者と利用者や家族との間で相談のうえ、決定されています。
注意したいことは、ホームヘルパーが提供できる介護サービスは、介護保険法により厳格に定められ、利用条件やサービスの種類にさまざまな制限があること。具体的には、提供できない支援(サービス)として、「利用者本人以外のために行う支援」「行わなくとも日常生活に支障が出ない支援」「日常の家事から逸脱する支援」があげられます。
たとえば、大掃除や部屋のもよう替え、庭の手入れ、来客の対応などは介護サービスに該当しません。生活必需品や利用者の食べ物の買い物には該当しても、利用者の趣味・嗜好品の買い物は該当外。利用者の食事を作るのは該当しても、ついでに家族分も作るのは該当外。同じく家族の部屋の掃除、衣類の洗濯も該当外となります。
ただし、介護保険内では提供できない支援を受けたい場合には、「介護保険外(自費)サービス」を利用することができ、提供するサービスや利用料金などは事業所により異なります。
「できない」ことは、「できるように」支援する

介護の基本は、本人ができることは本人が行い、できないことはできるように支援すること。介護保険が目指すのは「自立支援」であり、介護によって利用者の「要介護度」が進まず維持できる、むしろ軽くなることを目指します。
その人に残された機能を使って自立支援につなげるような介護が大切であり、従って、利用者が「できない家事」をホームヘルパーが代わりにする、「動かせない身体」を動かさなくていいようにする……などは、「介護」の趣旨にそぐわないもの。ホームヘルパーが介護することにより、利用者が、身体的、精神的、社会的にも豊かな暮らしができるよう、本人が自主的に乗り切れるよう、サポートすることが重要です。
このほか、ホームヘルパーが利用者とかかわるなかで、生活や介護について相談された場合、助言やアドバイスを行うこともあります。そうしたかかわりのなかで、ホームヘルパーは利用者のちょっとした変化(異状)を見過ごさず、その日その日の状態の変化に注意を払いながら、利用者としっかりコミュニケーションをとることが大切です。
このように、ホームヘルパーは「家事の代行」ではなく、在宅介護を支えるプロフェッショナル。つまり、「利用者の自立生活支援」という大きな役割を担っている職業であることを認識しておきましょう。
無資格でもホームヘルパーとして働くことはできる
まず、資格がなくとも訪問介護事業所(ヘルパーステーション)などの介護現場でスタッフとして働くことはできますが、在宅での「身体介護」には資格を要するため、ホームヘルパーとして働く人の多くは、介護に必要な基本的知識・技術を証明する資格である「介護職員初任者研修」を受講し、資格を取得します。また、事業所によっては無資格で採用した場合、入職後の資格取得支援制度を整えているところもあります。
現在では、「介護職員初任者研修」を介護職の最初の資格とし、そこからさまざまな資格を取得することでステップアップする道が開かれています。どのようなものがあるのか、簡単にご紹介しましょう。
【介護職員初任者研修】
〇厚生労働省が定めた事業所で養成研修を受けて取得する「認定資格」、基本的に16歳以上であれば誰でも取得できる。
〇従来の「ホームヘルパー2級」(ヘルパー2級は2013年に廃止) に相当する新しい資格。
〇ホームヘルパーとして身体介護するには、最低限この資格が必要。
〇130時間の基礎知識・倫理・実務を学び、最後の試験に合格して取得できる。
〇資格取得には、数万円から数十万円の費用がかかるが、介護事業所などに採用後、無資格で訪問介護に転職する場合、介護事業者が資格取得費用を負担する場合もある。
【実務者研修】
〇介護職員初任者研修よりも、さらに知識や技能を身につけられる民間資格。
〇基本的な介護提供能力の修得に加え、医療的ケアに関する知識や技能の習得が大きな目的で、かつてのホームヘルパー1級や介護職員基礎研修に相当(2013年に実務者研修に一本化)。
〇受講時間数は450時間だが、過去の研修過程の受講によって一部が免除されることもある。
〇実務者研修を修了することにより、2012年度より医療行為である「喀痰吸引(たんの吸引)」が介護職員でも実施できるようになった(ただし「実地研修」修了が必要)。
【介護福祉士】
〇 介護職のなかでもプロフェッショナルとみなされる唯一の国家資格。
〇介護現場で働くヘルパーの指導・助言や介護計画の作成など、介護現場のリーダー的存在。
〇社会的認知度や専門職としての信頼度も高く、転職・就職時には心強い武器となり、給与などの待遇面も優遇される傾向にある 。
〇国家試験を受験するためのルートは、働きながら目指す「実務経験ルート」、介護福祉士の養成施設を卒業する「養成施設ルート」、福祉系の高校を卒業する「福祉系高等学校ルート」の3つに大きく分けられる 。

【サービス提供責任者】
〇訪問介護事業所の利用者が適切なサービスを受けられるよう、利用者および介護専門職に対してさまざまなサポートを行う。通常現場では、略称「サ責」 。
〇 在宅介護サービスを提供するための責任者、ホームヘルパーと利用者、ケアマネジャーを総括的につなぐ役割で「訪問介護計画書」を作成する。
〇サービス提供責任者になるために特別な資格試験は必要ないが、訪問介護事業所でその役職につくには、「介護福祉士の有資格者」「介護福祉士実務者研修修了者」など、一定の資格要件を満たさなければならない。
【ケアマネージャー(介護支援専門員)】
〇要介護者やその家族のニーズを把握、最適な「ケアプラン(サービス計画書)」を作成し適切なサービスを受けられるよう、自治体や事業者などと連携する。
〇ケアプラン作成のほかにも利用者情報のチェック、サービスの調整、サービスが実行されているか、効果が出ているかのチェック(モニタリング)、介護サービス報酬の計算などデスクワークが中心。
〇ケアマネージャーになるには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があり、受験資格は、指定業務を5年以上かつ900日以上経験することで取得可。
このようにホームヘルパーが資格取得してキャリアアップすることは、転職・就職にも有利であり給与などの待遇が優遇されることはもちろん、仕事の幅が広がることになります。さらには介護の現場において、自分がどのような働き方をしたいのか選択できる利点があります。
訪問介護のニーズも多様化
ホームヘルパーは、利用者の自宅や介護施設を訪れてケアをするため、主に訪問介護事業所や有料老人ホームで働いています。訪問介護事業所はヘルパーステーションとも呼ばれ、介護保険の要介護(1~5)または、要支援(1~2)の認定を受けている人が利用できます。日勤の事業所では朝の8時~18時の間で業務をこなすのが一般的、一部、18時以降の対応や24時間巡回対応を行っている事業所では夜勤の仕事もあります。
ホームヘルパーの1日は事業所への出勤から始まり、その日の訪問先への準備を行います。利用者が「一部介助」か「全介助」かを把握し、訪問先ごとの業務内容をしっかりと確認。事業所から1件目に移動し到着すれば決められた時間内でサービスを提供、次に2件目に移動して業務を行い、午前中の業務が終わると昼食休憩。午後からは3件目、4件目とこなし、事業所に戻って報告書の作成や情報の共有などをして帰宅、というのが一般的です(一度事業所に立ち寄ってから利用者宅で訪問介護を行い、そのまま直接自宅に帰社するケースもあります)。
訪問介護事業所では、基本的にホームヘルパーが利用者の自宅に一人で訪問し介護サービスを行いますが、最近では訪問介護のニーズが多様化し、たとえば、特別養護老人ホームでは医療従事者と連携をとりながら業務をこなすことが多く、有料老人ホームは各施設によって業務が異なります。介護サービス付き高齢者住宅は民間企業が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅で、ホームヘルパーが決められたスケジュールで訪問し、ケアを行います。
ホームヘルパーの働き方

ホームヘルパーの働き方としては、「正社員」「非常勤」「派遣社員」などがあり、自分のライフスタイルに合った働き方を選ぶことができます。ここでは、雇用形態別の特徴をまとめてみましょう。
【正職員・正社員など常勤として働く】
・非常勤よりも給与や待遇面で優遇され、安定して働くことができる。
・直接、人と接する仕事のため、定期的な健康診断や予防接種は欠かさず実施される。
・カウンセリングや、事業所内外での研修や講習に力を入れているところも多い。
【パートタイムなど非常勤として働く】
・無資格者でも採用している事業所や施設は多い。
・在宅介護で行う「身体介護」には「介護職員初任者研修」を修了していなくてならないが、就業時に資格を持っていなくても、働きながら資格を取得することは可能。
・賃金は時間給が多く、その割合は他業種と比較して低いケースが多い。
・利用者を送迎するための自動車の運転や調理経験を問われることもあり、正社員と同様の仕事が求められることが多くなっている。
【派遣社員として働く】
・派遣会社に登録する必要があり、近年では派遣会社が資格を取得させるケースも増えている。
・自治体の社会福祉協議会などが派遣のホームヘルパーを募集することも多い。
・時給に換算したときの給与体系は時間給の人と比較して恵まれていることが多く、非常勤として働くよりも給与が高い傾向にある。
・比較的福利厚生が充実しているところが多く、健康保険や厚生年金に加入できたり、交通費が全額支払われるところもある。
・仕事をする時間はある程度自由に選択できるため、自分の都合のよい時間、自分のペースで働ける。
・契約期間が決められ、一般的に利用者やその家族との人間関係に慣れた頃に契約が終わる場合が多い。
・派遣先でトラブルや失敗などを生じた場合には、契約を打ち切られてしまうことも。このような場合には、次の仕事に就くことは容易ではない。
実際の介護現場はパートタイムで働く人が多くを占めています。ホームヘルパーの需要は急増しており、たとえ週に1日や数時間だけであっても、ホームヘルパーとして働ける人を求める事業所はたくさんあるようです。
ただしホームヘルパーには強い責任感が求められ、どのような雇用形態であれ、正しい知識やスキルを持って介護に臨まなくてはならないことは心がけておきましょう。
ホームヘルパーの来る日が楽しみに

ホームヘルパーの利用者の多くは生活するうえで不自由を感じ、外出や社会と接する機会も少なくなり、気持ちもふさぎがちになります。さらに、家族と一緒に暮らしていても孤独を感じるケースもあります。そんななかで、ホームヘルパーがいないと生活が成り立たない利用者も少なくはなく、また、人と話したい、人に話を聞いてもらいたいと思っている人も多いといわれています。そうした実情から、利用者のなかには、ホームヘルパーが来る日を楽しみにしている、という声も多く聞かれます。
一方、だからといって、自分の介護をしてくれる人とはいえ、利用者はすぐに他人には心を開いてはくれません。介護をしながら、根気強く利用者の心に寄り添い信頼関係を築いていくことが大切であり、ホームヘルパーは人とかかわることが好きな人に向いているでしょう。利用者とホームヘルパーとは一対一のおつき合い。そのなかで信頼関係が築ければかかわりも深まり、感謝や笑顔を向けられることは大きなやりがいとなり、張り合いになります。
また、終わりのない介護を日々行い、そんな毎日に疲れ果てている利用者の家族にとっても、ホームヘルパーが間に入ることで介護の負担が軽減され、利用者と家族との潤滑油のような役目を果たすことも可能です。この効果は支払う介護料をうわまわる恩恵ともいえるかもしれません。
ホームヘルパーは、利用者本人だけではなく、介護している家族にも安心、喜びを与え、心の支えとなることもできるのです。
コロナ禍での介護現場への対策
突然、私たちの生活を変えてしまったコロナ禍の今、要介護者のライフラインとして日常生活の基盤を担っている介護現場では大きな混乱が生じ、さまざまな対策や取り組みが行われています。また、「経営が悪化」「人員不足」となっている介護サービス事業所も多く、国からの対策も打ち出されました。その一部をご紹介しましょう。
【介護現場での対策】
〇面会者や出入り業者を制限する。
〇要介護者の入浴は極力控える。
〇コロナにまつわるルールを利用者・入居者が理解できるよう説明し、理解できない場合にはその対策を行う。
〇訪問業務は直行直帰。
感染経路になりうるものを遮断する目的で、やむを得ない限りは面会者を断る、出入り業者を玄関対応にするなどの対策をとり、新型コロナウイルスが施設内に入ってくる可能性をゼロにする必要があります。また、やむを得ない場合の面会であっても、マスク着用・検温・アルコール消毒の徹底は当たり前の措置となります。
入浴に関しては、要介護者個人の部屋に専用の浴室がない限り、極力入浴は控えて清拭をするにとどめ、使った器具は熱湯や塩素消毒するなど、入浴、食事といった日々の生活のなかで、さまざまな対策が必要となります。
さらに、事業所や施設の利用者・入所者は、コロナ禍を理解できる人たちばかりではありません。たとえば発熱しているなど体調がよくない入居者に、なるべく自室で過ごしてもらおうとしても、認知症や機能的な障がいにより自室待機ができない場合には、異常のない入居者に自室にいてもらうなど、その場その場での対応が求められます。
こうした難しい状況の下で、多くの介護職員にコロナ対策を理解してもらい、適切に実施してもらうことに現在は時間を費やしているのが現状です。
【国からの対策】
〇障害福祉サービス施設・事業所などに勤務する職員に対する慰労金の支給。
〇特例の介護報酬アップ。
〇無資格者でも訪問介護サービスに従事可能。
〇介護報酬請求、遅れても請求可能。
2020年度に行われた国の対策は、まず、介護職員などへの最大20万円の慰労金支給が目玉となりました。これは、施設内で感染者が出た場合、入所者・利用者が濃厚接触者となった場合に1人20万円が支給されるというもので、感染者がいなくとも1人につき5万円が支給されます。これは、コロナ禍により介護業界の人材不足にますます拍車がかかる事態に、以前から要望のあった介護職員への慰労金をいち早く支給することにより、介護職離れを防ごうとするものです。
また、訪問介護ではヘルパーが看護師と同行訪問した場合、通常の2倍の報酬を算定できる特例を発表。人員不足が生じている訪問介護のヘルパーは、無資格者でも介護業務の経験さえあれば訪問介護のヘルパーとして認める方針も打ち出されました。サービス提供時間についても利用者やヘルパーの感染リスクを下げるため、サービス提供時間がケアプランの時間を下まわった場合、ケアプランの標準的な時間で報酬を算定できることにしました。
新型コロナによって介護業界にもたらされた問題は、これまで未解決だった介護職の待遇や人材不足があらためて浮き彫りになりましたが、反面、それらに対する対策や取り組みを急遽、講じることにもなり、このようなコロナ禍におけるサポートは今後、情勢に合わせて適宜修正されることが予測されます。
介護業界は、これから成長産業へ

「人生100年時代」を迎え、「老い」との向き合い方、豊かな老後の暮らし方に人々の関心が集まり、これを介護問題と切り離すことはできません。「4人に1人が65歳以上の高齢者」の今日、介護サービスの受給者は年々増加し、とくに在宅サービスを利用する人は急増。こう考えると老後を不安に感じる人も多いかもしれませんが、裏を返せばホームヘルパーの活躍の場はどんどんふえ、明るい「人生100年時代」を実現するためにも、介護業界はこれから成長産業になることが期待されます。
ホームヘルパーとしての経験や取得した資格は一生ものであり、いったん現場を離れても復帰する機会は多く、人材不足から転職先にも困ることはないでしょう。現在、コロナウイルスの影響で国をあげての対策や取り組みが行われていますが、今後も介護保険制度についてはさまざまな働きかけが予想され、介護職に就く人に働きやすい環境もさらに整えられていくことでしょう。
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