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食の安全を守る、 食品の衛生管理プログラム「HACCP(ハサップ)」

食中毒にまつわる報道は、定期的に世間を騒がせるトピックスです。また最近は、インターネットの普及によって情報の入手が容易になったことに加え、SNSの拡散力も手伝って、店舗で食事をした客から髪の毛、昆虫などの異物混入を指摘する報道も数多く目にするようになり、食の安全に対する意識がますます高まっている傾向にあります。

食品は私たちの口に直接入ってその健康に影響をおよぼすもの。だから、人々の関心の高さは当然のことといえるかもしれません。

実際に、食品衛生に対する消費者の視線はとても厳しいものがあり、各自治体に寄せられる食品への苦情や企業へのクレームは後を絶たないといいます。例えば、東京都の保健所等には、毎年5000件を超える苦情が寄せられています。

企業側にとっても、製品の衛生管理は会社の信用にかかわる大問題です。もちろん、すべてが製造者側に原因があるとは限りません。流通や調理、あるいは、当の消費者自身が気づかずに異物を混入するケースや食品の保存方法を誤っている場合も多々あるからです。

── そこで今回は、食品等事業者への衛生管理の施策について、見ていくことにしましょう。

食品衛生法に基づく規制・指導は厚生労働省の管轄

昨今、SNS上などに飲食店の信用を根底から覆す衛生管理トラブルや“ネットテロ”と名付けられた事件・事故が数多く報じられたことで、多数の苦情が保健所や警察に寄せられています。なかには事業者(飲食店)が問題を起こした10代のアルバイトを刑事告訴する事態にまで発展しています。当人によると、軽い気持ちで動画をSNSにアップしただけのようですが、見ている側としては、その店には絶対行きたくなくなるような不愉快さが満ちています。

多くの場合、社会性が欠如したアルバイトの問題行動にその“根”があると言えますが、しかしだからといって、製造者が衛生管理を怠っていいということにはなりません。しかも、製造元での衛生管理トラブルは、個々の飲食店での問題とは違って日本全国、しいては世界的にも大きな影響をおよぼすこともあるのです。そのような重大事につながりかねない、食品加工業への行政の指導はどうなっているのでしょうか。

食の安全にかかわる省庁には、農林水産省、厚生労働省、消費者庁などがあります。交わっている部分もあって少しややこしいのですが、ざっくり言えば、農林水産省は農畜産物に関連する分野、消費者庁は食品表示、そして、厚生労働省は食品加工を含む食品にかかわる事業を管理しています。

さらに、食品衛生法の所管も厚生労働省になりますので、厚生労働省では食品にかかわる事業者に対し、食品衛生法に基づく規制や指導を行っているのです。そして、その中に「HACCP(ハサップ)」 の考え方を取り入れた衛生管理があります。平成30年6月に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律では、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことが盛り込まれました。

HACCPとは?

ところで、HACCP(ハサップ)とは何なのでしょうか。

※ 画像の出典/厚生労働省

HACCPは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、日本語では「危害分析重要管理点」と訳されます。ハサップという読み方が定着してきましたが、ハシップ、ハセップと呼ばれることもあるようです。

HACCPは1960年代にアメリカ合衆国で誕生しました。NASAのアポロ計画で、宇宙食の安全性を確保するために考案されたのです。地球から離れた宇宙空間で食中毒などが起こると困りますから、絶対の衛生管理が必要だったたわけですね。

その後、1980年代にアメリカのマクドナルド社がO157(病原性大腸菌)の問題を解決するためにHACCPの仕組みを取り入れ、食中毒の予防に効果があることを実証しました。このようにHACCPはアメリカで生まれて応用・普及してきた衛星管理システムなのです。

現在のHACCPのガイドラインは、原材料の受け入れから製品の出荷までの各工程におよんでいます。

①食中毒菌の汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を予測

②危害防止につながるポイントを継続的に監視・記録して製品の安全性を確保

従来の検査方法は、最終製品を一定率抜き取って、規定した基準を満たしているかどうかで安全性を確認するものでした。しかし、HACCPではより確実に安全な製品を消費者に提供できるとされています。

つまり、ハンバーグであれば、決められた数の焼きあがったハンバーグを検査して安全性を確認するのではなく、仕入れから焼きあがるまでの各工程にハザードがないか、例えば、ハンバーグの中心が何度になれば病原菌が死滅するかなどを、工程ごとに分析して監視・記録し、安全管理を行うということになります。

広がる品質管理の国際基準「HACCP」

この手法は国際的に認められたもので、国連の専門機関から各国に推奨されています。EUでは、2006年から一次生産を除くすべての食品事業者にHACCPによる衛生管理が義務付けられています。

また、カナダでは1992年より水産食品、食肉製品について順次HACCP導入を義務付けていますし、アメリカ合衆国では2011年に成立した食品安全強化法により、国内で消費される食品すべてについてHACCP導入が義務付けられました。

フィリピン、インドネシアなどの東南アジア諸国でも輸出用食品を製造する事業者では、輸入国の規制に合わせてHACCPシステムを導入するところが増えています。もちろん、日本も食品を輸出する際には、輸出先国が求めるHACCPに対応することが求められています。

HACCPの「7原則12手段」

日本ではHACCP による衛生管理は、2021年6月までに、原則としてすべての食品事業者を対象に義務化されます。HACCPの対象となる業者は、食品の製造・加工、調理、販売などの食品を扱うすべての業者です。

しかし現在、大企業の導入は増えているものの、中小企業での導入はまだまだの状況です。そこで、どこから手をつけていいか分からない企業のために、厚生労働省ではHACCP導入のための「7原則12手段」を勧めています。

【手順1】HACCPチームを結成。まずは、みんなで話し合いましょう。

【手順2】商品説明の作成。自分たちが作っている商品を書き出してみましょう。

【手順3】用途と消費者の確認。商品が誰にどのように食べられるのかを書き出しましょう。

【手順4】製造工程図の作成。商品の作り方を書いてみましょう。

【手順5】製造工程図の現場確認。実際に現場で確認して違っているところは直しましょう。

【手順6(原則1)】危害要因分析。製造工程ごとにどのような「危害要因」が潜んでいるか考えましょう。

【手順7(原則2)】重要管理点の決定。健康被害を防止するうえで特に厳重に管理しなければならない工程を見つけましょう。

【手順8(原則3)】管理基準の設定。手順7で決めた工程を管理するための基準を決めましょう。

【手順9(原則4)】管理基準を確認。手順8で決めた基準が常に達成されているかを確認しましょう。

【手順10(原則5)】改善方法の設定。問題点が発生した場合、修正できるよう事前に改善方法を決めておきましょう。

【手順11(原則6)】検証。ここまでのプランが有効に機能しているのか見直しましょう。

【手順12(原則7)】記録。各工程の管理状況を記録しましょう。HACCPを実施した証拠であると同時に、原因を追究するための手助けとなります。

HACCP導入にはこんなメリットも!

HACCPに取り組むと、安全な食品を消費者に届ける以外に、どんないいことがあるのかなと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。実は導入すると、次のようなメリットもあるといわれています。

【HACCP導入のメリット】

・社員の衛生管理に対する意識が向上する、およびモチベーションが上がる

・工程ごとに確認すべきことが明確になる

・製品に不具合が生じた場合の対応が迅速化する

・品質のばらつきが減る

・クレームやロス率が下がる

・取引先からの評価が上がる

注目! HACCP関する資格

導入後も、継続して現場でシステムが生かされるためには、専門の知識をもつ人材が必要となってくることが予想されます。HACCP関する資格について、主なものをご紹介しましょう。

【HACCPに関する資格】

●HACCP普及指導員

公益社団法人日本食品衛生協会が設けている資格。

HACCPに関する知識を有し、HACCPの構築や検証を行うことができ、中小事業者のHACCP導入のニーズに応えられる人材と認定される。

資格取得には、要件を満たす講習会および研修会を修了した上で、別途申請手続きを行う。

●HACCP管理者資格

日本食品保蔵科学会が設けている資格。

食品衛生法で定められた「HACCPに沿った衛生管理の制度化」において、HACCPシステムについて相当程度の知識をもつ者と認定される。

①大学院・大学・短大における修得単位を基にした認定(基礎科目認定)および②学会主催のワークショップを受講またはそれと同等の講義科目を履修することによる認定(HACCP ワークショップ認定)の2段階認定制度を採用。

食品系、農林水産系、医薬系などの専門教育を受けた人が取得しやすい。

●HACCPリーダー(食品安全管理技術者)

一般財団法人日本要因認証協会が設けている資格。

該当する組織において、HACCPの構築、運営を中心となって行なうことができる者と認定される。

登録には①フードチェーン関連産業や食品安全マネジメント分野に係る実務経験と②協会が承認する研修コースの修了が必要。

実務経験者向け。

── 日本でも導入が本格化していく中で、食品衛生は、私たちの健康に直接かかわる問題であることからも、これからHACCPという言葉を耳にする機会が増えてきそうですね。

とはいえ、“食の安全性”を確保し、品質のよい食事を提供することは、日本のお家芸ともいえる領域です。おいしいうえに安全性の高い和食を多くの外国の方に堪能していただくためにも、国際的に認められたHACCPのガイドラインを遵守し、諸外国のお手本となる存在でありたいものですね。

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