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ゼネコンとは?建設業界での役割や仕事内容、代表的な企業は?

重層下請構造となっている日本の建設業界で、ゼネコンは注文者から工事を請け負い、下請事業者を率いて、土木工作物や建築物を完成させる役割を担っています。ゼネコンの定義や役割を解説したうえで、特に規模の大きいスーパーゼネコンについて触れていきます。

そもそも「ゼネコン」とは?

ゼネコンとは「General Constructor(ゼネラル コンストラクター)」の略で、総合建設業を営む企業です。建設業法による分類では、土木一式工事や建築一式工事を請け負う業者が該当します。一式工事とは、元請業者として総合的な企画や指導、調整を行い、土木工作物、あるいは建築物を建設する工事で、複数の下請業者によって施工される大規模で複雑な工事を指します。

ゼネコンは土木一式工事や建築一式工事で、工事事全体をマネジメントする役割を担っています。実際に現場で工事を行うのは専門工事業者で、建設業法の分類では、大工工事や左官工事など27業種に分かれています。専門工事業者は元請業者のゼネコンから請け負う一次下請けのサブコンのほか、サブコンから工事を請け負う二次下請け、三次下請けというように、建設業界は重層下請け構造になっているのが特徴です。

ただし、総合建設業を営む工務店や建設会社のすべてがゼネコンと呼ばれるわけではありません。ゼネコンには明確な定義はありませんが一般的には、自社で設計や施工、研究の部門を持っていて売上高が高い企業がゼネコンと呼ばれます。一次下請けや二次下請け、三次下請けといった専門工事業者を率いて大規模な工事を請け負い、設計や施工、研究の部門を抱えるには資金力が必要です。

ゼネコンの設計・施工・研究部門の仕事内容や役割とは

ゼネコンの持つ設計部門・施工部門・研究部門のそれぞれの役割について紹介していきます。

設計部門

ゼネコンの設計部門は、意匠設計と構造設計、設備設計の3部門に分かれているのが一般的です。意匠設計とはクライアントの要望をもとに、建物の配置や形状、間取り、デザインなどを設計する業務です。構造設計は安全性能を満たすように、建物の土台や柱、梁といった骨組みの設計を行います。設備設計は上下水道などの衛生設備や電気設備、空調設備の設計を担います。

設計部門では主に設計・施工で受注した案件の設計や工事監理のほか、案件を受注するためのコンペの企画、他社設計の案件の検討などの現場支援といった業務を担っています。

施工部門

ゼネコンの施工管理は工事現場全体の統括を担う役割です。元請業者として工程管理と原価管理、品質管理、安全管理を行います。

工程管理では、施工計画を立案して下請業者に工事を割り振り、スケジュール通りに工事が進んでいるか進捗管理をします。原価管理とは予算内で工事を進めて利益が出るように、人件費や重機、機材のレンタル費、材料費などを管理することです。品質管理とは、設計図書や仕様書で定められた品質を満たしているか、確認をしながら、工事を行っていくことをいいます。安全管理は工事現場で事故が起きないように、下請業者が安全に作業を行える環境を整備します。

研究部門

ゼネコンの研究部門では、耐震性など強度の向上、あるいは施工の合理化を図るため、工法やコンクリート、資材の研究開発を行っています。仮説を立案したうえで実験による検証を繰り返すことで、独自の技術の開発や技術力の向上を図る役割を担っています。

スーパーゼネコンとは?

スーパーゼネコンとは、ゼネコンの中でも売上規模が特に大きく、連結売上高が1兆円以上で、技術力にも優れた企業をいいます。また、土木や建築で海外でも事業展開していることも特徴です。スーパーゼネコンと呼ばれるのは、鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店の5社です。スーパーゼネコンはいずれも歴史が古く、企業によって異なる特徴があります。

鹿島建設

鹿島建設は江戸時代の1840年に創業しました。鹿島建設の2019年3月期の連結売上高は1兆9,742億円です。

鹿島建設では「進取の精神」という理念を掲げて、時代の先駆けとなる取り組みを行ってきました。大正時代の1924年には日本初の日本初のコンクリート高堰堤ダムである大峯ダムを完成させました。明治時代の1872年に日本初の鉄道として「新橋-横浜間」が開通し、政府直営で工事が行われましたが、鹿島建設は砂利などの納入で関わり、1880から鉄道請負業に進出しました。

昭和時代に入ると、1949年に建設業界で初となる研究所の鹿島建設技術研究所を設立しています。また、土木工事も展開し、1952年には日本初のアーチダムの九州電力上椎葉ダムを着工し、1957年には日本初の原子炉の日本原子力研究所第一号原子炉が完成しました。また、1968年には日本初の超高層ビルの霞が関ビルを完成させています。平成に入ってからは、天王洲シーフォートスクエや恵比寿ガーデンプレイス、フジテレビ本社ビル、国立新美術館、東京ミッドタウン日比谷、GINZA SIXなどを手掛けています。

昨今では少子高齢化による人手不足を背景に、生産性の向上に取り組んでいます。土木部門では、次世代建設生産システム「A4CSEL®」など建設機械の自動化技術の開発を推進。建築部門では、「鹿島スマート生産」による効率化を目指しています。鹿島スマート生産はBIM(Building Information Modeling)によってすべてのプロセスをデジタル化。施工管理の半分を遠隔で行い、作業の半分をロボットが担うというものです。

大成建設

大成建設は明治時代の1873年の創業で、「人がいきいきとする環境を創造する」という理念を掲げています。スーパーゼネコンの中で唯一非同族会社という点が特徴です。2019年度の連結売上高は1兆7,513億円でした。

また、「地図に残る仕事」をキャッチコピーに、多くのランドマークとなる建造物を建設してきました。明治時代の1889年には日本初の大規模建築となる歌舞伎座を手掛け、大正時代の1924年には日本初の大型重力ダムの大井ダムを完成させました。

また、昭和時代には国家プロジェクトにも関わり、本州と四国を結ぶ本州四国連絡橋の工事では3ルートとも関わっています。本州と北海道を結ぶ青函トンネルの工事では、吉岡工区を担当しています。

1990年には東京都庁の第一本庁舎、1993年には横浜ランドマークタワーを手掛けています。また、1958年に旧国立競技場の建設を請け負ったのも大成建設ですが、東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場も大成建設が手掛けました。

清水建設

清水建設は江戸時代の1804年に創業し、現在では「子どもたちに誇れるしごとを。」を理念に掲げています。ダイバーシティの推進に取り組み、女性や外国籍の従業員、障害者が活躍できる環境の整備を行っているほか、ESG経営にも力を入れているのが特徴です。2019年度の連結売上高は1兆6,982億でした。

1959年には世界的な巨匠ル・コルビュジェの設計による国立西洋美術館を建設し、1996年には免震レトロフィットの採用による免震化工事を行っています。横浜スタジアムや横浜八景島シーパラダイス、東京湾アクアライン海ほたるなども清水建設の施工によるものです。また、東大寺金堂(大仏殿)の昭和大修理や出雲大社本殿の修理・保存といった、歴史的建造物の修理などにも関わっています。

大林組

大林組は明治時代の1892年に創業し、「時をつくる こころで創る」という理念を掲げています。2019年度の連結売上高は2兆730億円です。大林組ではサスティナビリティに取り組み、サプライチェーン全体での低炭素・循環・自然共生づくりや多様な人材が活躍できる環境の実現などに努めているのが特徴です。また、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの活用にも取り組んでいます。

大林組は1931年に大阪城天守閣を鉄骨鉄筋コンクリート造の5層7階の構造によって建設し、1997年に平成の大改修を完了しています。大本山成田山新勝寺総門を建設するなど、歴史的建造物も手掛けています。近年では東京スカイツリーの施工を手掛けたのは大林組です。海外の台湾新幹線の建設工事では路線の約52kmの部分と台北近郊の桃園駅の建設で、設計・施工として携わっています。

竹中工務店

竹中工務店は江戸時代の1610年に創業し、現在でも非上場企業です。2019年度の連結売上高は1兆3,520億円となっています。

竹中工務店は創業以来、匠の心である棟梁精神を貫き、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を理念に掲げて、手掛けた建築物を「作品」と呼ぶのも特徴です。設計施工一貫方式にこだわり、設計施工による受注が2019年度で約70%となっています。

また、建築物の評価も高く、2019年度までの累計で、一般社団法人日本建設業連合会が日本国内の優秀な建築作品に与えるBCS賞の受賞は設計115件、施工225件。公益社団法人ロングライフビル推進協会が長期にわたって適切な維持保全や優れた改修を実施した既存の建築物の関係者を表彰するBELCA賞は、設計36件、施工71件受賞しています。

竹中工務店では1958年に東京タワー、1987年に有楽町マリオン、1988年に東京ドーム、2013年にあべのハルカスを手掛けるなど、ランドマーク的な建築物を建設してきました。1981年にはシンガポールのチャンギ国際空港ターミナルを建設するなど、海外でも事業を展開しています。

準大手・中堅ゼネコンとは?

スーパーゼネコンに次ぐ規模のゼネコンは準大手ゼネコン、されにそれに続くのが中堅ゼネコンと呼ばれています。ただし、両者に明確な定義はありません。準大手ゼネコン・中堅ゼネコンと呼ばれるのは、長谷工コーポレーションや戸田建設、五洋建設、前田建設工業、三井住友建設、西松建設、熊谷組、東急建設、フジタ、安藤ハザマ、鴻池組、錢高組などです。

ゼネコンで働く魅力とは?

ゼネコンでの仕事は土木工作物や建築物の建設を通じて、主に3つの魅力があります。

社会貢献性が高い

ゼネコンは土木工事では道路や橋、トンネル、鉄道、ダム、建築工事ではオフィスビルや商業施設、マンション、ホテル、病院といった社会基盤となるものをつくっています。また、地震などの災害の復興に携わることもあります。ゼネコンでは、人々の生活に欠かせないものをつくる社会貢献性の高い仕事に直接的、あるいは間接的に関わることができます。

ひとつしかないものをつくる

メーカーなどの工場では、大量生産によって商品をつくるケースが多くを占めています。一方、ゼネコンでは土地や用途に応じた土木工作物や建築物をそれぞれに適した工法や資材でつくっていきます。基本的にはほかにはないひとつだけのものをつくる仕事であり、地図に残るランドマーク的な建築物に関われるケースもあります。

大規模なプロジェクトのマネジメントができる

ゼネコンでは大規模なプロジェクトの場合、自社の営業や設計、施工のほか、専門工事業者を含めて、数千人が関わることがあります。専門工事業者の職人をまとめあげて、大規模なプロジェクトの建築物を完成させることは大きなやりがいのある仕事です。

サブコンとは?

サブコンとは「subcontractor(サブコントラクター)」の略で、ゼネコンから工事を下請けする専門工事業者をいいます。サブコンは鳶工事や大工工事、左官工事、電気設備工事、塗装工事といった専門工事をそれぞれ担い、職人を抱えています。

建設工事ではゼネコンの現場監督はサブコンのマネジメントを行いますが、サブコンにも現場監督がいて、自社の職人の施工管理を行います。

マリコンとは?

マリコンとは「marine constructor(マリンコンストラクター)」の略で、ゼネコンのなかでも海洋土木工事を中心に請け負う企業を指します。海洋土木工事に該当するのは、護岸・海底工事や湾岸施設の建設工事、埋め立て工事や海底の土砂をすくい取るしゅんせつ工事、海底トンネルや橋梁の建設工事などです。海洋土木工事にはしゅんせつ船のほか、起重機船や深層混合処理船といった大型の船が用いられ、専門的な知識が必要とされます。

海洋土木工事は官公庁による公共工事が多く、また、日本の高い技術力が評価され、東南アジアなど海外からの需要もあります。

マリコンの代表的な企業として、五洋建設や東亜建設工業、東洋建設が挙げられます。

ゼネコンで必要とされる資格

ゼネコンなどの建設業界は資格を保有していることが重視される業界です。実務上の必要性はもとより、公共工事の入札の際の経営事項審査の技術力評価において、有資格者は得点が加算されることが理由として挙げられます。ゼネコンで重宝される資格をまとめました。

一級建築士

建築士は建築物の設計や工事監理、建築工事の指導・監督のほか、建築工事契約に関する事務、建築物に関する調査や鑑定、建築物の建築に関する法令や条例に基づく手続の代理が行える資格です。建築士の資格には一級建築士、二級建築士、土木建築士という種類があり、取り扱える建築物の範囲が異なります。

ゼネコンではRC造やSRC造、あるいはS造の大規模な建築物に携わるため、設計や施工管理などの職種では、一級建築士の取得が求められます。

1級建築施工管理技士

1級建築施工管理技士は、建築部門で施工管理に携わる場合に取得が求められる資格です。
元請業者として発注者から建築一式工事を受注し、請負金額6000万円以上の下請け契約を結ぶ場合には、工事現場に主任技術者に代わって監理技術者を置くことが義務付けられています。1級建築施工管理技士や一級建築士は監理技術者になることができる資格です。2級建築施工管理技士では、すべての工事現場に配置が義務付けられている主任技術者になることはできますが、建築一式工事で監理技術者になることはできません。一般的にゼネコンの建築部門で現場所長になるには、一級建築士または1級建築施工管理技士の資格が必要です。

1級土木施工管理技士

1級土木施工管理技士は、土木部門で施工管理などに携わる場合に取得が求められます。元請業者として発注者から土木一式工事を受注し、請負金額4000万円以上の下請契約を結ぶ場合には、監理技術者を置くことが義務付けられています。1級土木施工管理技士は土木一式工事で監理技術者になれる資格の一つです。

建設業経理士

建設業経理士は建設業界における会計のスペシャリストとなる資格で、事務部門で求められます。建設業経理士の資格には1級~4級がありますが、経営事項審査で得点の加算の対象となるのは2級以上です。

まとめ

ゼネコンはサブコンなどの下請業者のマネジメントを行って、多くの職人をまとめあげています。納期に間に合うようにスケジュールを管理し、品質を確保するほか、安全に工事ができる環境を整えるのも、ゼネコンの施工管理の役割です。ゼネコンの仕事には社会貢献性があり、大規模な工事に関わっていくといった魅力もあります。

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