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建設業はなぜ人手不足?国土交通省の施策や企業による解決策とは

リーマンショック以降の建設需要の落ち込みから一変、東日本大震災の復興工事や東京オリンピックの開催によって、建設業界は大きな需要が押し寄せています。しかし、一方で人手不足が深刻化し、建設コストにも影響する事態となりました。

建設業界の人手不足の理由を解説したうえで、国土交通省や企業の取り組みによる解決策を紹介していきます。

建設業の人手不足の現状とは

建設業界の人手不足の現状をデータからみていくと、ハロワークにおける2019年10月の建設技術者の有効友人倍率は7.03倍で、9月の6.89倍、前年同月の6.5倍と比較しても上昇しています。この数字からは7社が求人を出しても1社しか人材を確保できない状況であり、建設業は人手不足が顕著であるといえるのです。

建設業の就業者数はバブル期より減少

建設業で人手不足が深刻な理由として、求人ニーズが高いにも関わらず、建設業の就業者が減少していること挙げられます。国土交通省がとりまとめた「建設産業の現状と課題」という資料の「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」を見ていくと、建設業者数と建設業就業者数のいずれもピーク時から大幅に減少していることがわかります。

出典:国土交通省『建設産業の現状と課題』より「建設投資、許可業者数及び就業者数の推移」

建設業界の就業者のピークは1997年(平成9年)の約685万人で、2015年(平成27年)の500万人と比較すると約27%減少しています。建設業の許可を持つ事業者の数は1999年(平成11年)の約60万事業者がピークで、2015年(平成27年)には約46万8000事業者とピーク時から約22%減少しました。

2018年の厚生労働省の「労働力調査」でも、建設業の従事者は503万人で大きく変わっていない状況です。

リーマンショックによる建設需要の落ち込みとオリンピックによる建設需要の増大

建設業界の人手不足の要因として、ここ数年の建設需要の増大も理由に挙げられます。国土交通省が公表する建設投資額の推移から、建設需要の変遷をみていきます。

出典:国土交通省『平成30年度建設投資見通し』

1986年(昭和61年)から始まった1989年(平成元年)はバブル景気の真っただ中で、建設投資額は73兆円でした。好景気を背景に建設投資額が右肩上がりで上昇し、1991年(平成3年)にバブル崩壊が始まったものの、1992年(平成4年)には過去最高の84兆円に達しました。その後バブル崩壊によってやや建設投資額は落ち込みましたが、1995年(平成7年)に阪神・淡路大震災が起きたことで、復興工事による建設特需から、再び1996年(平成8年)には83兆円に達しました。

しかし、その後は平成不況といわれる景気の低迷期に入り、建設投資額は右肩下がりで落ち込んでいきます。さらに、2008年(平成20年)にリーマンショックが起きた後の2010年(平成22年)には、建設投資額は42兆円にまで低下しました。

その後、2011年(平成23年)に東日本大震災が発生したことにより、復興工事による建設需要が起こりました。さらに、2013年(平成25年)には2020年(令和2年)の東京オリンピック開催が決まったことや景気の回復により、平成30年(2018年)の建設投資額は57兆円にまで及んでいます。

一方で、リーマンショックの時期に建設業界では職人の仕事が激減したため、廃業や他業界への転身が進みました。建設需要が再び回復しても、職人が戻ってこなかったことが人手不足の要因のひとつとなっています。

若者の建設業離れと建設業従事者の高齢化

建設業の人手不足が深刻な要因として、若者の建設業離れと就業者の高齢化も挙げられます。

出典:国土交通省『最近の建設産業と技能労働者をめぐる状況について』

国土交通省が総務省の「労働力調査」をもとに作成したデータによると、2015年(平成27年)の建設業の従事者のうち55歳以上の割合は33.8%で、3割を超えています。一方、29歳以下の割合は10.8%と1割程度です。1997年(平成9年)の段階では55歳以上は23.5%、29歳以下は22%とさほど割合が変わらなかったことから、建設業では就業者の高齢化が進み、若者の建設離れが起きているといえます。少子高齢化によって生産年齢人口は減少していますが、全産業では55歳以上は29.2%、29歳以下は16.2%ですので、特に建設業で高齢化が顕著だといえます。

出典:国土交通省『建設業及び建設工事従事者の現状』

また、国土交通省が厚生労働省の「労働力調査」をもとに、建設業の従事者を年齢層別にまとめたデータからは、若年層の建設業従事者が著しく少ないことがわかります。5歳ごとに区切った、30代後半~60代までの各年齢層はいずれも30万人以上の従事者がいて、次いで40~44歳が47.7万人、次いで65歳以上は42万4000人です。一方、20歳~24歳は13万9000人、25~29歳は19万2000人となっています。今後、60代の建設業の従事者の引退が進むと、ますます建設業の人手不足が深刻化することが危惧されているのです。

若者の建設業離れが進んだ理由とは?

なぜ若者の建設業離れが進んでいるのでしょうか。若者に建設業が敬遠される主な理由をまとめました。

理由1:休日が少ない

建設業界は休日が少ないことが若者に敬遠される理由のひとつです。2017年(平成29年)の厚生労働省の「就労条件総合調査」では、産業別の週休2日制の実施状況が明らかにされています。1週間に2日休日がある週が1ヶ月に1回以上ある「何らかの週休2日制」を導入している企業は全産業で87.2%、建設業で89.2%と同水準です。しかし、「完全週休2日制」を導入している企業は、全産業では46.9%なのに対して33.1%にとどまっています。他産業に比べて完全週休2日制の導入率は低い水準となっています。

出典:国土交通省『建設業における働き方改革』

さらに、実際に休日を取得できるかという面では、さらに厳しい実情が浮かびあがってきます。国土交通省が2015年に日建協(日本建設産業職員労働組合協議会)へのアンケートをもとにまとめたデータでは、建設業の4週あたりの休暇日数の平均は4.6日でした。「完全週休2日制」にあたる4週8休と回答したのはわずか5.7%で、「何かしらの週休2日制」に該当する4週7休と4週6休、4週5休の合計は30.3%。「週休1日制」にあたる4週4休が52.8%と過半数を占めています。さらに、労働基準法では原則として週1日以上の休日が義務付けられていますが、4週4休未満という回答が11.2%もありました。

何かしらの週休2日制が制度としてあっても、現実的には週1回しか休めていないか、それ以下の休日数の人が過半数を超えているのです。限られた工期で工事を終わらせなければならず、天候にも左右されやすいことが、建設業で休日をとりにくい要因のひとつです。

理由2:給与水準が低く不安定

建設業に従事する職人の給与水準は低いとされ、給与形態は日給月給制がとられているケースが少なくありません。日給月給制は業務に従事した日のみ賃金が発生するため、年末年始やGW、お盆など休日が多い月は給与が少なくなります。また、天候によって作業ができない日も賃金が発生しないケースが一般的なため、収入が不安定です。また、日給月給制の場合、週休2日制で休日が増えると収入が減少してしまうことも、完全週休2日制の浸透が進まない要因になっています。

理由3:「3K」のイメージを持たれている

建設業界はガテン系とされ、いわゆる「3K」といわれる、「きつい」「危険」「汚い」といわれることがあります。肉体労働できつい、高所作業などがあり危険、工事現場は汚いというイメージによるものです。

国土交通省による「建設業働き方改革加速化プログラム」とは

建設業の従事者の高齢化が進み、建設業界の人手不足がさらに深刻化すると、インフラの整備や既存の建築物のメンテナンス、災害対応、住宅建設などに支障をきたし、国家の衰退にまでつながることが危惧されます。そのたM、少子高齢化によって生産労働人口が減少していく中、建設業に携わる人材を確保するには、労働環境を整えていくことが急務です。

そこで国土交通省では建設業界の人手不足を解消するため、官民一体となって働き方改革を進めるため、2018年3月に「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。主な内容について解説していきます。

週休2日制の推進と長時間労働の是正

災害復旧など工期に制約のある工事を除いて、国の直轄工事など公共工事で週休2日制工事の拡大が図られました。まずは、公共工事を週休2日制化することで、民間工事の週休2日制化を後押しする狙いがあります。週休2日制の実施に伴い、現場閉所の状況に伴って必要経費の形状が可能です。労務費と機械経費の賃料の補正係数が新たに設定され、共通仮設費と現場管理費の補正係数の見直しが図られました。対象となるのは4週6休相当以上の現場です。

また、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」をもとに適正な工期設定を行うことも推進されています。建設業は天候によって工事の進捗が左右されやすいため、無理な工期設定は休日出勤や長時間労働の要因となるためです。

ただし、日給月給制のまま週休2日制が推進されると、収入の減少につながりかねないため、給与体系の見直しなどの取り組みを行うことが企業側に求められます。

技能や経験に見合った給与の実現

建設業に従事する労働者は様々企業の工事現場で業務経験を積んでいくため、個々の能力が統一的な評価を受けにくく、一定の能力を持っていても給与に反映されにくいという課題がありました。そこで、「建設業働き方改革加速化プログラム」では、統一的な評価を行うための「建設キャリアアップシステム」が打ち出され、2019年4月から本格的に稼働しています。

建設キャリアアップシステムは、建設業に従事する技能者の資格や社会保険加入状況、現場の就業履歴などの登録を行い、カードを交付して現場の入場時に読み取りをし、就業履歴を蓄積していくものです。登録する情報は事業者の所在地や建設業の許可、現場名や工事の内容のほか、本人情報として保有資格や社会保険の加入状況などが登録されます。また、就業履歴による「経験」と保有資格による「知識・技能」、登録基幹技能者講習や職長経験などによる「現場で発揮する能力」の評価基準から、カードの色分けを行っていくとされています。

社会保険の加入のミニマム・スタンダード化

建設業は社会保険に未加入の事業者が多いことが問題視され、国土交通省ではこれまでも社会保険の加入を促進する取り組みを行ってきました。社会保険による公的な保障が受けられない状況では、若年層の建設業離れの要因となります。

国土交通省によって、2017年以降は社会保険の未加入の事業者は下請に選定するべきではないという方針が打ち出されていました。「建設業働き方改革加速化プログラム」では、すべての発注者に対して、発注は社会保険加入業者に限定するよう要請が行われています。また、社会保険に未加入の企業は建設業の許可や更新が認められない仕組みが構築されます。

ICTの活用による生産性の向上

ICT建機の導入を促進するため、にCT建機のみで施工する単価が新設されました。従来は公共工事の積算基準はICT建機の使用割合を一律で25%に設定していましたが、通常建機のみで施工する単価と区分されたことで、ICT建機の稼働実態に応じて積算や精算を行なえるようになりました。また、IoTの導入によって書類作成を効率化するため、タブレットやウェアラブルカメラの活用も打ちだされています。

技術者配置要件の緩和化の検討

建設業の許可を得ている事業者は、すべての工事現場に主任技術者を配置することが義務付けられています。請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の公共性のある工事は、専任の技術者の配置が必要です。さらに、元請け事業者が請負代金総額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)の下請契約を結ぶ場合は主任技術者に替えて、監理技術者を配置することが義務付けられています。また、専任の技術者が複数のくじ現場を兼任するには要件があります。

限られた人材を効率よく活用するため、技術者の配置要件の緩和が検討されています。

企業による建設業のイメージ向上や人材確保のための対策

建設業では人手不足倒産も起こる今、企業にとっては人材の確保は差し迫った課題です。企業が建設業のイメージアップや人材確保のためにできることをまとめました。

月給制の導入

日給月給制は給与が安定しないため、採用にあたっては不利になります。経営状態が安定しているのであれば、月給制を導入することで、労働者が安定して働き続けられる環境を整えることができます。ただし、月給制の導入にあたっては最低賃金を下回らないように給与額を設定することが必要です。

教育体制の整備

かつては「仕事は見て覚えるもの」という時代もありましたが、それでは若者がモチベーションを保つのは難しく、離職を招く要因になります。また、教育体制を整備することで、一通りの業務を覚えるまでの期間を短縮することができます。そのためには、新たな労働者を受け入れるときには教育制度を整えておくことが大切です。

OJTで仕事を教えていく場合も、マニュアルを整備する、教育プログラムをつくるなど、一から学んで技術を身につけていきやすい環境を整えることが大切です。無理なく未経験からスタートできる環境が整えられていることは採用にも有利に働きます。

作業着を刷新しておしゃれなイメージに

「3K」といわれる建設業を一新するための取り組みのひとつとして、作業着を一新するという方法があります。昨今では様々なメーカーから、デザイン性と機能性が向上したおしゃれな作業着が展開され、タウンユースできるものの少なくありません。実際に一般の人が作業着をワークマンで購入し、日常的に着ていたりしています。そこで、建設業や企業イメージの向上のため、おしゃれな作業着を採用する企業も出てきました。

デザイン性の高い作業着なら、仕事帰りに買い物などに立ち寄りやすくなり、女性の採用力の向上にもつながることが期待できます。

まとめ

建設業界は人手不足といわれていますが、労働環境を整えることで人材の確保に成功している企業もあります。雇用条件や職場環境を見直して、働きやすい環境の整備に努めることが人手不足の改善につながっていくでしょう。

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