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カジュアル化が進んだと思いきや、オフィスウエアが意外に支持されているワケ

オフィスでの装いといえば、男性の場合、スーツにネクタイが一般的でしたが、リーマンショック以降、さらには働き方改革の一環として、スーツや事務服・オフィスウェアを廃止する企業が、昨今増えてきているようです。

例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループは今年の5月からノーネクタイOKになり、三井住友銀行は7月から試験的にスーツ着用の原則を取りやめ、行員の好評をうけて9月からは東京・大阪の本社勤務・約7000人を対象に、通年でのカジュアルウェア出勤を認めました。今後は各店舗の接客担当者にも広げていく方針だそう。

三井住友銀行のこうした動きは、金融とITを融合したフィンテック分野の重要性が一層増す中で、行員に新しい視点や柔軟な発想を求める企業姿勢が背景にあるようです。つまりは、「自由な服装」を、既成概念にとらわれないアイデアを生み出すきっかけにしたい、という期待が今回の方針に込められていることに。

一方、オフィスで働く女性の場合、一般的に制服(事務服)を着用するスタイルが多かったのですが、いわゆる総合職の女性が増えたことにともない、スーツに準じた装いであればOKという職場が増えています。実際に、2007年4月に改正男女雇用機会均等法が制定された際には、多くの職場で制服廃止が検討されたものです。これは「男性は自由な服装が認められ、女性には自由がない」と、男女の不平等が問題になったため。

ところが、それから12年経った現在も、オフィスでの女性の制服はなくなるどころか、一部の業界では逆に増えている傾向にあるといいます。いったいどういうワケでそうなっているのでしょうか? その理由を、私たち日本人と制服の歴史からひも解いていきましょう。

幼少期から制服に慣れ親しんだ日本人

私たち日本人は、幼い頃から制服に身を包む習慣がありますよね。リボン付きの帽子を被って肩掛けバッグを持ち、ブレザーの制服を着て幼稚園に通った記憶がある方も多いはず。あるいは制服でなくても、揃いのスモッグを着てお絵かきをした方も多いことでしょう。そして、小学校では揃いの体操着や給食着、中学・高校は制服や指定ジャージを着ましたよね。

もちろん、こうした制服着用の習慣は理由あってのことです。幼稚園や学校など集団で活動する場では、制服を着ていることで「あの幼稚園(学校)の児童(生徒)だ」と周囲の人は即座に識別できます。学校側にとってても、限られた大人(教員等)が大勢の子どもを預かっている状況で、保護すべき対象の見分けがつくのは大きなメリットとなります。

さらに、子ども自身にとっても「この制服を着ているから、ぼく(わたし)はもうおにいちゃん(おねえちゃん)だ」というような、自覚やプライドが芽生えるという面もありそうです。給食着や体操着、ジャージなどは、子どもたちの衛生意識や衣服がもつ機能への理解、またTPOに合わせて服を変えるという社会常識の醸成にひと役買っているかもしれません。
また、受験をして入学する私立学校では、“かわいい制服”と認知されることで入学希望者が増えているといいますし、偏差値の高い学校であれば、その制服を着ていることで自らの優秀さをアピールでき、プライドをくすぐられるということもありますよね。

義務でなくても、制服的なモノを身に着けたい帰属心理

このように、制服は私たちにとってとても身近な存在であり、着用することで一種の安心感(帰属意識)さえ感じることも。それゆえ、特に義務づけられていなくとも、「この場面ではこの服」というようなお決まりの装いをすることもよくあります。

たとえば、就職活動もそのひとつです。
「紺色または黒の無地のスーツに白いシャツ(ブラウス)、女性なら髪は一つにまとめて薄化粧をする」という暗黙のルールがあります。子どものお受験でも「白いブラウスに紺色の半ズボン(スカート)、白いソックスに黒い靴」が定番ですし、付き添う親も「紺色のスーツに低めのヒールパンプス、髪はまとめる」のがオーソドックスな出で立ちです。同様に、入学式や卒業式、入社式、お葬式なども「すべき装い」が暗黙の了解となっています。

このような場面では、個性を主張することでマイナスの影響をおよぼしたくない、という意識が強く働き、「ほかのみんなと一緒」であることに安心感を持つのです。
・面接官に悪い印象を与えたくない
・これからお世話になる先生や先輩・仲間に面倒くさそうなヤツだと思われたくない
・厳粛な場の雰囲気を壊したくない

一見、消極的ともとれるこうした意識は、見方を変えれば「礼儀」にもつながります。我(が)を通さず、相手や場の空気を重んじ、それを受け入れる……。日本人にとっては当たり前でも、海外の人から見るとこの感覚は、実に日本的なものなのです。

職場でのオフィスウエアの役割

次に、制服の働く現場での役割を考えてみましょう。

1:識別性
幼稚園や学校における、“ひと目みれば、その学校の生徒だとわかる”識別性は、職場や社会でもそのまま通じる制服の役割です。たとえば、スーパーや百貨店で目当ての商品のありかを店員に尋ねたい時、制服の識別性はとても有用です。

2:自覚促進・プライド刺激
“自分はこの制服を着ているのだから”と自らの立場を自覚し、会社へのロイヤリティ(忠誠心)を育むことも、職場や社会での制服にある働きのひとつでしょう。警察官、医師、裁判官などは、その出で立ちによって人々から無条件の尊敬や信頼を得ており、着ている本人もその信頼に値する態度・行動をとろうとします。このように、制服には知らず知らずのうちにそれを着用することで「心がけ」が醸成される働きがあるといえます。

3:安全性・快適性・機能性
給食着や体操着、ジャージなどは、料理の取り分け・運動・スポーツなど、安全性や動きやすさが求められる場面で着用します。外気や汚れから身を守り、速やかに汗を吸い取り、手足を動かしやすくする……といった機能を備えているわけです。大工や工場作業スタッフ、引っ越しスタッフなどが現場で身に着けているユニフォームも同じですよね。

4:ブランディング
オシャレな制服の高校に入学志願者が増える現象は、航空会社の客室乗務員にあこがれる女子大生が多いこととイコールです。職場での制服の場合、デザインが魅力的であることはもちろんですが、その企業・職種のよいイメージと制服が結びつくことも重要です。“自分もあの制服を着て働きたい”と思わせることは、リクルーティングの観点でも、とても効果的なのです。

このように制服は、職場や社会でもその役割をしっかりと果たしてきました。では、オフィスにおける女性の制服はどうでしょう?

オフィスウエアの歴史

オフィスにおいて制服が着用され始めたのは、1960年代のこと。戦後のモノがない時代に、働く女性が身に着けていたのは丈の長い羽織ものでした。これは衣服を汚さないようカバーする意味合いが強く、それぞれ自前で用意していたのですが、高度経済成長期に入り、働く女性が増えるとともに衣料素材の開発が進んだことで、女性の事務服にも改善の動きが出始めたのです。

まずは、銀行の女性行員に制服が導入されました。ひざ丈ほどあった長さの羽織ものはジャケットに代わることで丈が短くなり、軽く明るい色合いのものに統一。さらにジャケットの変化だけでなく、ジャケット+スカートのスーツへとオフィスウエアの出で立ちは移行し、その制服が企業のブランドイメージをも担うようになったのです。
この流れは1970年の大阪万博で決定的なものになります。各パビリオンのコンパニオンは、“フレッシュ”であるとか“スタイリッシュ”であるとか、企業が打ち出したいイメージの制服を着用。時はミニスカート全盛期、制服も丈の短いワンピースが主流でした。

その後、機能性の面から袖なしのジャンパースカートスタイルが流行し、1980年代にはDCブランド※ブームが到来したことで、オフィスウエアもお仕着せのものではなく、女性たち自身が自ら着たい制服を選び決定するように変化します。結果、色・形・素材などが多様化し、制服の価格も上昇していきます。
ところが、1990年代のバブル崩壊にともなって、オフィスウエアの在り方も見直されるようになります。コスト削減の一環で制服廃止の動きが進み、オフィスウエアの意義についてあらためて検討されることになるのです。

※DCブランド=はデザイナーズ(Designer’s) & キャラクターズ(Character’s)の略

オフィスウエアの問題点

制服 = オフィスウエアは本当に必要なのか、という議論の中で、最もやり玉に挙がったのはそのコストです。企業が制服を用意するには、大手企業であればあるほど社員数も多くなり、バカにならないほどのコストがかかります。当然ながら、従業員の体形は一律ではありません。対象となる従業員すべてに制服を用意するにはサイズ展開が必要ですし、夏用・冬用など素材やデザインを変えた制服も必要になるでしょう。企業の顔となる制服はデザインも重要です。有名デザイナーにデザインを依頼するなら、その分のコストもかさむことになります。

また、自宅から制服を着て出勤する人はまれです。職場内に制服を置いておくロッカーなどのスペースや着替えるスペースも必要です。これもオフィスウエアにまつわるコストの一環といえます。
さらにコスト面だけでなく、オフィスウエアを着用する従業員の意識の中にも問題点がありました。

多様化した趣味嗜好の中で、できるだけ全員が納得するデザインのものをとなると、どうしても無理が生じます。決定するまでに難航することは必至ですし、いざ導入されても数年経てば好みも変わり、飽きてしまうことも考えられます。さらに、気に入らない制服を毎日着続けることにストレスを感じて、働く意欲がそがれることも考えられます。

就業時間の前後に必ず着替えの時間を取られること、これもストレスの要因になりえるでしょう。そして、男女平等の意識が高まる中で、スーツ姿(私服)の男性に対して女性だけ制服着用を強いるのは不平等ではないか、と考える人も増えたに違いありません。ともすると、そうした”古い”慣習を温存しているということで、その企業のイメージダウンにもつながりかねないのです。

近年、オフィスウエアに起こった新たな動き

こうした問題点を受けて、バブル崩壊や改正男女雇用機会均等法を機に廃止へと傾いていったオフィスウエア。直接顧客と接する銀行の窓口行員でさえ、2001年・沖縄銀行、2002年・中京銀行、2003年・百五銀行、2004年・常陽銀行、2005年・高知銀行、2008年・香川銀行、2010年・三菱東京UFJ銀行、2013年・三井住友銀行……と、次々に制服を廃止。経費削減や“お堅い”イメージを払拭する狙いで、オフィスウエアから私服着用に切り替えたのです。

ところがここ数年、一度廃止したオフィスウエアを復活させる金融機関が続出しています。十六銀行は2013年に、香川銀行や静岡銀行は2014年に、中京銀行は2016年に、沖縄銀行は2017年に、そして三菱東京UFJ銀行も2016年に、支店の窓口行員の制服を復活させました。

制服メーカー主体の日本ユニフォームセンターによる調査、「ユニフォーム白書(2014年度)」によれば、制服がある企業の割合は2008年の79.5%から74.9%と低下したにもかかわらず、「金融・不動産業」に限れば52.7%からなんと86.4%に急増しているのです。
理由としてあげられるのは、
私服だと行員なのか客なのか見分けがつかないという声が多く寄せられたから
・私服のセンスによっては、企業のイメージダウンにつながりかねないから

ということのようです。つまり、銀行という信用第一の機関においては、制服がないことのデメリットが大きかったということになります。

三菱東京UFJ銀行によれば、
・東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して10年の節目にあたるのを機に、さらなる行員の一体感を醸成したい
・来店客の安心感を高めたい

こうした狙いがあったとのこと。紺とグレーを基調としたスーツに、胸元にはシンボルマークをアレンジした大きめのリボンをあしらい、落ち着きの中にも華やかさを感じる制服となりました。

オフィスウエアは着る人にとってのメリットも大きい

一度廃止された制服=オフィスウエアですが、廃止されたことによって制服のありがたさを痛感した女性も多かったようです。
・制服なら毎朝服を選ぶ手間が省けていた
・オフィス用の私服を揃えるのにお金がかかる
・オフィス用の私服はオフの時よりも厳しくセンスが問われる
・制服に着替えることでオン・オフの切り替えがスムーズにできていた
・終業後のプライベートで着る服が制限される

など、オフィスの私服化には確かに悩ましい問題が生じました。

実は「終業時、制服と私服を選ぶなら?」というアンケートに、約7割の女性が「制服」と答えており、気に入らない制服を毎日着続けるストレスや、就業時間の前後に必ず着替えの時間を取られるなどのデメリットを差し引いても、オフィスウエアがあることのメリットは大きかったといえます。
こうしたメリットに加えて、昨今ではオフィスウエアの機能の高まりによって「ぜひ制服を着たい」という声も多くなっているそうです。詳しくご紹介しましょう。

オフィスウエアは劇的に進化している

オフィスウエアでいまブームになっているのが、ニット素材のもの。生地が柔らかいので動きやすいうえに着心地がよく、長時間着ていても疲れにくいといったメリットがあるニット素材。また夏場は、カジュアル過ぎないポロシャツも人気です。サラッとした着心地で快適に過ごせることと、着替えのしやすさがポイントだそう。

オフィスウエアといえば、一般的にシャツやブラウスの上にベストを着るスタイルをイメージしますが、“夏に重ね着は暑い”という声から、涼感ブラウス一枚の「オーバーブラウス」というスタイルも登場しました。
さらに、通年で着られるオフィスウエアとして、寒い時期には体温を逃さず湿度を保ち、暑い時期には通気性高く調温・調湿してくれるという驚きの機能を備えたものもあるのだとか。

胸ポケットひとつとっても、収納力や、ペンのインクが付きにくい生地を内側に使うなどさまざまな細かい工夫が施されており、オフィスの制服離れが進む中、生き残りをかけた制服メーカーのこだわりと努力を感じます。

また、オフィスウエアの大きなデメリットだったデザイン性の面でも、大きな改善が見られます。
●なにげないスーツでもラインにこだわり、“ほっそり”なシルエットに見えるよう計算されている
●オーバーブラウスなら気になる二の腕を隠しつつ、デスクワークの邪魔にならない七分丈である

など、モニター調査やアンケート調査をもとにユーザーの声を反映した商品開発をしているのです。

昨今のオフィスウエアの“うれしい機能”はまだある

オフィスウエアは、毎日着るものだけにマメな手入れも必要です。高価なうえ、かつては素材がデリケートでしたから、週末ごとにクリーニングに出していた人もいるでしょう。今では家庭の洗濯機で洗っても生地が傷まず、型崩れも起こりにくくなりました。

また、アイロンがけ不要の制服も増えました。形状記憶シャツの登場はサラリーマン家庭に衝撃を与えましたが、シワになりにくく洗って干すだけでOKの素材がさらに開発されています。制電効果がある素材や防汚加工された生地の制服は、チリやほこりがつきにくくお手入れも簡単です。

こうした素材や加工技術の著しい進化によって、制服のメンテナンスも非常にラクになりました。今後もますます増えると予想される「働くお母さん」にとってもうれしいことですよね。

制服は、ほつれや破けなどが生じた時にメーカーの修繕保証があるなど、長期間着ることを前提にしたサービスもあります。企業にとっても、着る個人にとってもメリットが多いオフィスウエアは、今後まだまだ需要がありそうですね。

今回ご紹介した観点から、自分が着ているオフィスウエアやスーツだけでなく、取引先の制服、よく行く銀行の制服などをあらためたみつめてみると、そのウエアを着て働く人の意識や、社員に対する会社の思いなどが透けて見えてくるかもしれませんね。

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