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ジーンズは、ゴールドラッシュの中で生まれた作業着だった!

いまや、ファッションアイテムとしてなくてはならないジーンズ。

着る人の個性を引き出し、穿けば穿くほど体になじみ、傷んだり色落ちするのも風合いが出ることでジーンズの魅力とされています。買ったばかりの新品より、穿きこなして自分流にアレンジしたジーンズがおしゃれ……ということで、やすりやナイフで裂いたり傷をつけたり、何度も洗濯機で洗ったり、漂白液につけたり、弾痕状の穴を開けたり……と、さまざま方法でおしゃれ感を演出しています。こうした作業をダメージ加工といいますが、こんなふうに自分だけの個性的な一本を作れるのもジーンズの魅力ですね。きっとみなさんも、穿き慣れた愛着あるジーンズをお持ちでしょう。

そんな身近なジーンズですが、もともとはアメリカのゴールドラッシュを背景に誕生した、労働者の作業着でした。ジーンズ誕生からおよそ150年。今回は時代を超えて愛され続ける、ジーンズの長い歴史と、奥深き魅力をみていきましょう。

ジーンズが生まれたゴールドラッシュとは?

1848年1月、アメリカのカリフォルニアで金鉱が発見され、その噂はまたたく間にアメリカ全土に広まりました。世界各地から移民が殺到し、当時、2万人にも満たなかったカリフォルニアの人口が翌年1849年には10万人、1852年には25万人、1860年には38万人……と、一攫千金を夢見る人々がカリフォルニアに群れをなして集まりました。

特に、1849年に多くの労働者が集まった現象から、49er’s(フォーティー・ナイナーズ-1849年組)と呼ばれるほどの一大ブームに。これぞまさに、アメリカンドリームですね。

ただ、「49er’s」と呼ばれる移民の旅路は困難を極め、船の難破やコレラなどの伝染病で、現地に到着する前に亡くなる人も多かったようです。

その後しばらくは、年間数万トンという莫大な金の採掘量を誇ったカリフォルニアですが、数年でほとんど掘り尽くされ、移民たちは故郷に帰るか、新たな採掘地を求めてカリフォルニアを出ていくことになったといわれています。

金の採掘は劣悪な労働条件──「丈夫な作業着がほしい」

ゴールドラッシュで本当に儲けたのは、金を掘り当てた人(プレイヤー)ではなく、実はゴールドラッシュに集まった人々に物資やサービスを提供した人々(サプライヤー)だと言われます。

鉱夫への物資やサービスを提供する商人や職人、鉱山の利権トラブルを調停する弁護士、住居を提供する人々、銀行マン……など、金採掘者以外にもさまざまな人が移住していました。

その中で、金の採掘に奔走する人々にワークパンツを提供したのが、リーバイス創業者のリーバイ・ストラウスでした。

リーバイスといえば、誰もが知るジーンズの老舗ブランド。その創業者であるリーバイ・ストラウスは、ユダヤ系ドイツ人で、ゴールドラッシュの始まる前年(1847年)にニューヨークに18歳で移住します。その後の1853年、カリフォルニア州北部のサンフランシスコからわきにわくゴールドラッシュにやって来て、衣類を扱う雑貨商をしていました。

そんな彼のもとに、金鉱で働く人々から「丈夫な作業着がほしい」という要望が寄せられます。金の採掘は、常に土と水にさらされる過酷なもの。作業着はすぐにボロボロになっていたからです。

この要望に応えるかたちで、1850年、テントや帆に使われていたキャンパス地を使ったワークパンツが生まれました。最初に作られたのはオフホワイトで、綾織りの10オンス・キャンパス地。しばらくして、より丈夫な9オンスのブルーデニム地が使われるようになり、やがてキャンパス地からデニム地に切り替わります。

デニムは色を統一するために、インディゴ(藍色染料)ブルーに染められました。これは鉱夫たちに喜ばれ、1853年には現在のリーバイ・ストラウス社の母体が設立。その後、キャンパス地からデニムへと切り替わり、インディゴ染料によって汚れが目立たず独特の風合いの出る「リーバイスのワークパンツ」は、ジーンズの前身となったのです。

ポケットをリベット(鋲)で補強──ジーンズの誕生

ここまでは、まだジーンズの前身でジーンズではありません。デニム地で作られたインディゴブルーのズボン、これが「ジーンズ」となった背景には、ある画期的なアイデアがありました。

そのアイデアの発案者はヤコブ・デイビス。リーバイより2歳年下の、リーバイと同じヨーロッパからの移民でした。ヤコブはもともと仕立職人でしたが一攫千金の夢を捨てきれず、転職と投資を繰り返しながら各地を転々としていたのですが、結局もとの仕立屋にもどり、リーバイから買い入れた生成りのキャンパス地で馬用の毛布や荷馬車のカバーやテントを作って売っていました。

1870年の暮れ、ヤコブは体の大きな木こりから、丈夫なズボンの注文を受けます。その際、木こりは「すぐにポケットがはがれてしまう」とこぼしたと言います。そして、ズボンが出来上がった時、テーブルの上に馬の毛布を留めるためのリベット(鋲/びょう)がたまたま転がっていることに気づいたヤコブは、そのリベットをズボンの前と後ろのポケットの両端にハンマーで打ち付け、自分なりの“補強”を施します。このとき、ヤコブはこれを大した手法とも考えず、しばらくはリベットのことを忘れていたそう。

こうして、ワークパンツの難点であったポケットのほつれやすさが、リベットで解消されることになるのですが、リベットを施したポケットがはがれにくいズボンは評判に評判を呼び、生産が追いつかなくなった一方、ヤコブの成功をねたんで真似する者も現れるようになります。そこでヤコブは、リベットのアイデアを守るために特許出願を決意。しかし、出願費用は68ドル。当時のヤコブには捻出できない大金でした。

そこでヤコブは、取引のあったリーバイに話を持ちかけ、費用を二人で折半して特許を出願することに。1873年5月、正式に特許として認められることになり、リーバイは経営するリーバイ・ストラウス社に衣料生産部門を立ち上げ、ヤコブを生産部門の監督に任命。こうしてジーンズブランド「リーバイス」が生まれたのです。

ジーンズ好きの人はご存じのようですが、ジーンズの最大の特徴が「補強のためのリベット」にあったとは、ちょっと驚きですね。

その後、リーバイスはデニムを使ったワークパンツを世に送り出し、リベットで補強した個性的な仕様が、後にジーンズと呼ばれる新しいパンツのカテゴリーに。こうした変化の中で、素材にデニムを使用する基盤ができたのは1870年から1900年頃といわれ、さらに「ジーンズ」と呼ばれるのようになったのは1920年頃のこと。そして、ジーンズが世界に広まったのが1950年頃といわれています。

ジーンズの原点「リーバイス501」

1873年、デニム生地をリベットで補強した作業用パンツは、ジーンズの原点として名高い「リーバイス501」の原型となったものでした。その後、1890年のロットナンバー制度採用に伴い「501」の名が正式に与えられることとなります。

ここでは、現行モデルにも受け継がれている「501」の特徴をみていきましょう。

【リーバイスのリベット】

ジーンズのポケット部分には、ほとんどリベット(鋲)が取り付けられています。前述したように「衣料品のポケットの補強にリベットを使用する方法」について、特許を取得しました。

【リーバイスのアーキュエット・ステッチ】

ジーンズの後ろポケットにはアーキュエット・ステッチと呼ばれる弓型のステッチが入っています。アーキュエットとは弓型の曲線のことで、日本では「かもめステッチ」とも呼ばれています。1943年に商標権を取得し、このデザインに関してエドウィンと裁判を起こすほど、リーバイスにとっては重要なディテール。

【リーバイスのツーホースパッチ(ジーンズの後ろに縫われている品質保証書)】

1886年より、リーバイスジーンズに取り付けられるようになったツーホースパッチ(ベルトループの近くにある紙やレザー製のラベル)。このラベルに描かれた二頭の馬やロゴマークには「二頭の馬に引っ張られても裂けないほど丈夫なジーンズ」というコンセプトが表されています。

1890年にリベットの特許がなくなることで、リベットを取り付けた模倣品が出まわる恐れがあり、リーバイスジーンズが他社の類似品と異なることを証明し、品質を保証するためのものでした。

また、労働者をはじめとする消費者は、英語を話す人だけではないという配慮から、一目見ればリーバイスのジーンズだと認識できるシンボルマークが必要であるという見解から、このマークが誕生したという説もあります。

すべてのジーンズの原点となる「リーバイス501」。初めての製品はワシントンのスミソニアン博物館に展示されています。ビンテージ物では100万円以上するものもあるといわれ、復刻版であっても数万円するそうです。

1950年代にジーンズ姿で若者を魅了したスター

【マーロン・ブランド】

1873年に誕生したジーンズでしたが、それはまだ頑丈な作業着の一種にすぎず、一般の人々にまで普及することはありませんでした。しかし、1950年代に大きな転機を迎えます。

1953年、ハリウッド俳優のマーロン・ブランドが映画『The Wild One(乱暴者)』でリーバイスの501を着用したのです。

この映画でマーロン・ブランドは暴走族のリーダーを演じ、黒の革ジャンに黒いブーツ、そしてジーンズという出で立ちでバイクを乗りまわし大暴れします。マーロン・ブランドが演じた暴走族のリーダーは、それまでのスターが演じた不良よりも暴力的で若いエネルギーにあふれていました。

また当時、大人たちが自分の子どもにはジーンズを穿かせないようにし(アメリカ東部ではジーンズの着用を禁止した学校もあった)、それに反発する若者たちはこぞってジーンズを穿くようになったといわれています。そうした若者の中にエルヴィス・プレスリーやビートルズのメンバーなどもいたそうです。

【ジェームズ・ディーン】

ジーンズを穿いた映画スターといえば、マーロン・ブランドのほかに真っ先に思い浮かぶのが、ジェームズ・ディーンでしょう。

ジェームズ・ディーンは『エデンの東』(1955年)で初主演し、アカデミー賞最優秀主演男優賞にノミネート。つづく『理由なき反抗』では、大人や社会に反抗する若者を演じました。「大人」と「子ども」の境界にある、それまでの映画にはなかったナイーブで傷つきやすい「若者」を見事に演じきり、観客の心をつかみます。

ジェームズ・ディーンは『理由なき反抗』の中で、Leeの「101ライダース」を着用、若者を中心とした観客は共感・熱狂し、Leeの「101ライダース」もリーバイス「501」と同じく、若者たちの人気となりました。

このように時代の象徴としてジーンズを流行らせたのがジェームズ・ディーンであり、Leeの「101ライダース」は、プライベートでも愛用するほど好きなジーンズだったようです。

マーロン・ブランドとジェームズ・ディーン……。

タイプは違うけれど、どちらも映画の中で不良を演じています。若者とジーンズの組み合わせは、社会や大人、体制に反発する当時の若者をしびれさせる象徴的アイテムであり、怒りのメタファーだったのかもしれません。

デニムとは、どんな布地?

ジーンズの大きな魅力は、色落ちや傷や汚れ、しわやゆるみ……などのダメージ感がマイナスにならず、逆に個性となって楽しめ、汚れや傷みを気にせず着用できますが、そんなジーンズの魅力の原点は、デニムにあるといえます。

●デニムは、厚手のコットン糸を綾織りにして作られた生地。縦糸はインディゴブルーの糸で横糸は白を使っているため、表面はインディゴブルーで裏面は白

●デニムジーンズなどがダメージ加工などで色落ちしていくと、表面に白い横糸が出てきてほどよい風合いを醸し出す

●丈夫で手入れも簡単。そのうえ、おしゃれ         

もともと、デニム発祥の地はフランスのニーム地方で、デニム素材は「サージ・デ・ニーム」(ニーム産のサージ生地)と呼ばれていました。これが「デニム」の語源であったといわれています。

ジーンズの語源は、かつてデニムは北イタリアで生産され、ジェノバ港から各国に輸出されました。その際、荷札に出航地「Genova 」をフランス語で「Gênes 」と記したため、アメリカで英語風に「Jeans 」と呼ぶようになったそうです。

丈夫で傷や汚れを気にせずにすみ、手入れも簡単、動きやすく、使い込めば使い込むほど肌になじみ、風合いも出る、そのうえおしゃれ……なデニム。

はるか昔、労働者の作業着として活躍したデニムは、現在も鳶服やつなぎ、オーバーオール、カフェエプロン……など作業着やユニフォームとして人気を呼んでいます。

デニムのメリット

作業着やユニフォームとしても活用されているデニムのメリットを挙げてみましょう。

●作業着感が少なく、カジュアルに着られる

●誰にでも似合う(個性に合わせられる)

●カジュアル感がありながら、だらしなくない。キチンと感がある

●(鳶服やつなぎなど)膝や尻などの破れやすい部分は補強をし、補強部分はステッチを施すなどデザインアクセントにし、丈夫でおしゃれに仕上げることもできる

●(カフェエプロンなど)客や周囲に親しみやすい印象を与える

●飽きがこず、コーディネートしやすい

また、デニムにポリウレタンなど伸縮性のある素材を混紡した「ストレッチデニム」も体にフィットして動きやすいと好評のようです。

デメリットとしては、

●色落ちや色移りがある

●染料等の匂いがある

●洗濯や水に濡れると乾きにくい

色落ちはしばらく続くものもあるので、洗濯の際には、白物や色移りしてほしくない衣類とは分けて洗いましょう。また、染料等の匂いは、洗濯するうちに気にならなくなります。

洗濯や水に濡れると乾きにくい……洗濯後は左右に広げ、干す時にはハンガーにかけるなど生地が重ならないようにします。ポケットは、洗濯バサミなどを入れて膨らみを持たせるといいですね。

誕生から150年。日本でも愛されるジーンズ

リーバイ・ストラウスとヤコブ・デイビス……。この二人の出会いによって誕生したジーンズですが、労働者の作業着だったジーンズが“ファッション”化することに一役買ったのは、ジーンズを労働服として着ていたカウボーイ(畜産業に従事する牧場労働者)だといわれています。

アメリカ映画を語るうえで欠かせないカウボーイたちが映画の中で着用していたのがジーンズであり、颯爽と身をこなし、あるいは息詰まる決闘を演じた彼らの姿に、多くの観客が熱狂しながら憧れを抱きました。

また戦後、海外に派遣されたアメリカ軍の兵士たち(G.I.)がジーンズの普及に貢献したともいわれています。リーバイスの「501」を穿いたG.I.は、まさにジーンズの広告塔だったと……。

ちなみに、ジーンズとはデニム生地で作られたズボン。ジーンズ一般を「デニム」と呼ぶこともありますが、正式な表現ではありません。ジーパンはジーンズの和製英語だそうですが、ジーンズが誕生した1873年は、日本では明治6年にあたり、少しずつ洋装が普及していく頃のこと。それから150年を経た現代、アメリカにとどまらず日本でも、若者や学生は無論、背広やスーツ、制服、ユニフォーム、作業着などで働く社会人も、休日はジーンズで……ということが多いのではないでしょうか。

── 年齢性別を問わず、私たちの生活にすっかりなじんでいるジーンズには、今回ご紹介した通り、ゴールドラッシュに始まり、アメリカの歴史とともに成長した長い長い歴史があったことがわかります。そう考えると、ビンテージ物が100万円以上の値をつけることにも納得がいきますし、さりげなさの中にアメリカの精神的アイコンとして多くの人に愛されたジーンズは、最高にカッコいいですね。

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